高級腕時計に採用されている素材の多くはステンレススチールです。
ステンレススチールは「錆びない」ことが最大の特徴であり、強度も強く、熱にも強いことから、時計に最適な素材として知られています。
しかし、ロレックスの公式サイトを覗いてみると、自社のステンレスモデルに採用している素材を「オイスタースチール」と呼んでいます。
ステンレススチールとオイスタースチールは一体何が違うのでしょうか?
気になったので調べてみました。
目次
ステンレススチールってどんな素材?
ステンレススチールは鉄やクロム、ニッケルといった金属や元素で構成された、最もメジャーなケース素材です。
「錆びない」という最大の特徴をもつため、高級腕時計ととても相性が良いです。
また、ステンレススチールは1種類ではなく、用途やコスト、デザインによって無数のステンレス素材が存在します。
最も有名なステンレス素材は「SUS304」。低価格帯のカジュアルな時計に使用されている素材です。
https://www.kiriita.com/
敢えて時計を例に挙げましたが、調理器具や工具など、様々な商品に採用されています。
高級腕時計に使われているステンレスはSUS316L
高級腕時計には同じステンレス素材でも高級な「SUS316L」という対アレルギー性が強いステンレス素材が使われており、オメガ・ブライトリング・パネライといった多くの有名ブランドに採用されています。
つまりカタログに記載されている高級腕時計のステンレススチールは「SUS316L」を使ったステンレス素材といえるでしょう。
SUS316LはSUS316という固く加工しにくいステンレス素材を「炭素の量」を低くすることで、柔らかく加工しやすくしたステンレスです。
一般的によく使われているSUS304よりも耐食性にも優れています。
オイスタースチールについて
高級腕時計に使用されているステンレス素材は「SUS316L」が使われているということは前項で説明しましたが、ロレックスはどうなのでしょうか。
そう、実はロレックスのステンレス素材には「SUS316L」が使われおらず、全ての時計に「SUS904L」という更に高級な素材が使われています。
これこそがステンレススチールとオイスタースチールの違いなのです!
SUS904LはSUS316Lよりも堅牢度と耐食性が高い特殊な合金です。SUS904Lは丈夫で堅く、加工が困難な素材と言われ続けてきましたが、ロレックスの技術力により、SUS904Lをケース素材に採用することに成功。牡蠣のように高い機密性を誇るオイスターケースの完成に大きく貢献しました。
SUS904Lを使用していなければ、現在のオイスターケースの防水性能と堅牢性は実現できなかったことでしょう。
つまりは
- SUS304=一般的な時計
- SUS316L=高級腕時計
- SUS904L=ロレックス(オイスタースチール)
結局のところ、オイスタースチールはオイスターケースを構築している素材だからオイスタースチールと呼ばれています。
オイスタースチールもステンレススチールの一種であることには変わりありませんが、素材の品質がとても高いです。
通常のステンレススチールとの違いをアピールするために、ロレックスは自社製品のステンレスの事をオイスタースチールと呼んでいるのでしょう。
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年