最近「上がり時計」という言葉を、時計関連のメディアでとみに目にするようになりました。上がり時計とは「人生の最後に買う時計」「一生の相棒として買い替える予定の無い時計」などの意味を持ちます。言ってみれば「極地」ですね。
その上がり時計に、時計業界の大御所や専門家、バイヤーなど人にはよれど、必ず話題となるブランド。それが、パテックフィリップです。
パテックフィリップは、言わずと知れた世界最高峰の時計メーカーです。その座は長らくどのブランドにも明け渡してきていません。
では、なぜパテックフィリップは圧倒的なまでにナンバーワンなのでしょうか。
なぜパテックフィリップは、多くの時計好きにとって極地的存在なのでしょうか。
この記事では、そんなパテックフィリップについて、歴史や魅力、資産価値・価格などを徹底解説するとともに、ノーチラスやカラトラバにアクアノートなど、パテックフィリップを支える人気モデルの魅力を語ります。
※掲載する定価・価格は2024年7月現在のものとなります。
目次
パテックフィリップとは?
創業年:1839年
創業者:アントニ・パテック/フランソワ・チャペック
本社・本店所在地:スイス・ジュネーブ
代表者:ティエリー・スターン(Thierry Stern)氏(2019年10月現在)
パテックフィリップは、オーデマピゲ、ヴァシュロンコンスタンタンとともに世界三大高級時計メーカーに名を連ねる名門ですが、さらにその二社からも群を抜いて世界最高峰に君臨しています。
特にムーブメントの製造から外装デザイン・設計・製造、そしてケーシングまでを自社工房で一貫して行うマニュファクチュールが高名で、そのノウハウは永続的かつ全て保管されているとのこと。
そのため、時計メーカーでは数少ない「永久修理」を掲げており、購入した時計は何年・何十年・・・あるいは100年経とうが修理可能としています。
①創業の歴史
パテックフィリップの始まりの歴史は1839年にまでさかのぼります。
ポーランドからの亡命貴族であったアントニ・パテック伯爵(後にアントワーヌに改名)とフランソワ・チャペックによってPatek,Czapekco.(パテック・チャペック社)が創業されました。
ちなみに日本では江戸時代後期。パテックフィリップがいかに深い歴史を有しているかおわかりいただけるでしょう。
創業当時は高級懐中時計の販売がメインでしたが、理念は「世界一の時計を作る」こと。
1844年、発明の天才として今なおその名を時計史に残すジャン・アドリアン・フィリップが経営に参画したことで時計製造をさらに意欲的に行うこととなります。
ちなみにフィリップ氏がこの時開発していたリューズによるゼンマイ巻き上げ・時刻合わせ機構は、翌年に同社名義で特許が取得され、現在の機械式時計の礎ともなります。
また、同年に自社初となるミニッツリピーターの製造に成功しました。
その後ヨーロッパを中心に同ブランドの名声が広がり始め、イギリスのヴィクトリア女王,ローマ教皇ピプス9世,ロシアのチャイコフスキーなど偉人たち御用達としても話題となりました。
ちなみに、パテックフィリップ製品にはしばしば「ティファニー」社とのWネーム(ロゴにパテックフィリップ・ティファニーの両社名が入ったもの)が見られます。
なぜアメリカのジュエリーブランドのロゴがパテックフィリップに?と思うかもしれませんが、これは1849年からティファニーに製品供給をスタートさせたり、その後ティファニーが始めた時計工房をパテックフィリップが買収したりといった深い関係性があるためです。
②スターン兄弟による買収
画像引用:PATEK PHILIPPE
1932年になると現在の経営一族にあたるスターン兄弟(ジャン・スターンとシャルル・スターン)に同社資本が売却され、社名も現在の「パテックフィリップ S.A.」に変更されました。
しかしながら創業当時の「世界一の時計を作る」という理念は受け継がれ、同年誕生させた「カラトラバ(Ref.96:クンロク)」は、その理念を一身に体現するものでした。
ちなみにこのカラトラバは誕生から80年近く経とうとする今なおパテックフィリップのフラグシップであり、全ての丸形時計の規範と言われています。
その後も「世界一」への道は着々と進められていきます。
1933年にはマサチューセッツ州の高名な銀行家ヘンリー・グレーブス・ジュニアに「史上最も」複雑な懐中時計「グレーブス・ウォッチ(スーパーコンプリケーションウォッチ)」を制作。
1941年にはパーペチュアルカレンダーシリーズの生産をスタート。
時計精度を競う世界的な天文台コンクールにおいて、数々の世界最高記録を樹立していくなど、技術面では間違いなく世界最高峰の地位を確立していきました。
ちなみにグレーブス・ウォッチは1999年のサザビーズ・オークションで1100万ドル(現在の為替で約11億7千万円)、さらに2014年で時計史上最高値となる2320万スイスフラン(約25億円)で落札されています。
③現在のパテックフィリップ
画像引用:PATEK PHILIPPE
以上でご紹介したように、創業当時の理念の通りパテックフィリップは自他ともに認める世界ナンバーワンブランドへと成長を遂げていきました。
ただ、いつも順風満帆だったかと言うとそうではありません。その最たるものが1969年の「クォーツショック」です。
時計好きはご存知かもしれませんが、クォーツショックはセイコーがクォーツ時計「アストロン」を市販化したことで起こった機械式時計メーカーの危機です。
金属パーツで緻密に設計される腕時計は量産が難しく、当時から高級嗜好品に位置付けられていました。
しかしながら駆動に小型電池を用いることでシンプル設計を実現したクォーツ時計が出たことにより、腕時計の価格は一気に下がります。
多くの消費者が時計を享受することができた一方で、昔ながらの伝統的な時計メーカーは打撃を受けることとなりました。
ちょうど世の中が大量消費社会に移行しつつある時で、「高くて長持ちするもの」よりも、「安価で買い替えの効くもの」を購買する傾向が強まったためです。
ブランパンが休眠に陥ったり、IWCが倒産の危機に瀕するなど、有名メーカーもその影響から逃れることはできませんでした。
画像引用:PATEK PHILIPPE
しかしながらそこはパテックフィリップ。当時から世界最高峰の時計メーカーとして名を挙げていた同社ですから、クォーツショック後も連綿と機械式時計を製造し続けていきます。
ちなみにロレックスもこの当時、着々と機械式時計を製造していたメーカーです(クォーツモデルもいくつか製造しましたが)。
もちろん打撃を受けなかったわけではないでしょうが、やはり一流と呼ばれるブランドは逆境にも強いですね。
パテックフィリップもまた、長年ノーチラスやカラトラバの基幹ムーブメントとして活躍した超薄型自動巻きキャリバー240を開発したり、超薄型パーペチュアルカレンダー3940を発表したりと、数々の名作を世に放ち続けてきました。
画像引用:PATEK PHILIPPE
その集大成とも言うべき傑作が、キャリバー89でしょう(上の画像)。
これは1989年、パテックフィリップが創業150周年を記念して、そして「再び機械式時計の素晴らしさを世に知らしめる」ために製造したスーパーコンプリケーションです。
ソヌリ(ミニッツリピーター)機構やパーペチュアルカレンダー、スプリットセコンドクロノグラフ、日の出・日の入り時刻、天体図など33もの複雑機構を搭載させた、世界で最も複雑な時計と言われています。
これだけの機構ですから、表裏両面の文字盤でその機能を再現する仕様となります。
9人の熟達した職人らによって、9年の歳月をかけて生み出されたとか。
直径は9cmにもかかわらず、その重さは1.1kgという驚くべき重量からも、いかに多数のパーツが複雑に絡み合っているかが理解できますね。
このキャリバーが功を奏した・・・と言うわけではありませんが、その後は機械式時計が再興し、今では高級時計市場の大きな位置を占めるようになりました。
こういったエピソードが、パテックフィリップを世界最高峰たらしめる背景のように思います。
現在、リシャールミルや一部の独立時計師によるブランドなど、パテックフィリップより高いプライスレンジのメーカーはあります。
また、ミドルクラスであっても、技術面において高名なブランドもあります。
そんな中でも、誰にもパテックフィリップがナンバーワンの座を明け渡さない理由は、クォーツショックの真っただ中にあって、その逆をいく発想で自社の強みを活かしたこと。
むしろ、自社の機械式時計の製造技術をブラッシュアップし続けたこと。
こういった「骨の髄まで伝統的な職人気質」である面に、パテックフィリップが世界最高峰であり続ける理由を垣間見ることができるように思います。
時計好きがパテックフィリップに惹かれる4つの理由
①世界最高峰の技術力
言うまでもなく、パテックフィリップをパテックフィリップたらしめている最たるものは、「世界最高峰の時計製造技術」です。
とりわけコンプリケーション(複雑機構)製造には一家言持っています。
それは歴史が証明するところでもあるのですが、パーペチュアルカレンダーやミニッツリピーターなどと言った、数々の超絶複雑技巧を駆使した名機を世に送り出してきました。
コンプリケーションは、製造技術が飛躍的に上がった今なお作れるブランドは限られています。
作れたとしても、採算が合わなかったり、複雑ゆえに機構に厚みが出てしまい任意のデザインに収めきれなかったりで、手を出すブランドは多くはありません。
それでも最近ではブランドの付加価値として、様々な価格帯のメーカーがコンプリケーションをラインナップするようになってきましたが、パテックフィリップはやはり至高。
モデルにもよりますが超薄型ムーブメントをベースにモジュール的に機構を組み込んでいるので、ケース厚を最小限に抑え込んで、コンプリケーションでありながらもきわめて上品かつ清楚な時計として仕上げることを実現しています。
また、パテックフィリップのすごいところは、多くのブランドがやるようにシリーズ内のハイエンドラインとしてコンプリケーションモデルを出すのではなく、「コンプリケーション」としてシリーズ展開していること。
もちろん製造本数に違いはありますが、「ノーチラス」「カラトラバ」「アクアノート」などと同列、ということです。
ここに、同社の複雑機構へのこだわりと矜持を感じます。
ちなみにそのさらに上位にあたる「グランドコンプリケーション」もシリーズ化されています。
コンプリケーションの定義は様々ですが、一般的には3針以外のクロノグラフやGMTと言った機構をコンプリケーション、さらに難易度の高いパーペチュアルカレンダーやアニュアルカレンダー(年次カレンダー)、ミニッツリピーターなどを指します。
そしてパテックフィリップは、こういったコンプリケーションのみならず実用機に対しても高い技術力を発揮してきました。
例えば、ムーブメントにシリコン製ヒゲゼンマイを使用することは現在時計業界の主流となりつつあります。
シリコンは半導体などでも使用されているように非常に汎用性の高い素材ですが、ヒゲゼンマイほど極小かつ精密さが求められるパーツの素材としては、その製造難易度が高いとされています。
そもそもヒゲゼンマイを製造できるメーカーも限られています。
しかしながらムーブメントは2005年という早い段階でシリコン製ガンギ車を、次いで翌2006年にシリコン製ヒゲゼンマイ(同社の命名ではスピロマックス)を完成させました。
画像引用:PATEK PHILIPPE
また、ノーチラスやカラトラバなど数々のフラグシップに搭載された自動巻きの基幹ムーブメントCal.324系は、誕生から2019年で15年が経過するにもかかわらず、時計界屈指の名機として君臨します。
一つ一つのパーツが丁寧に仕上げされた美しさもさることながら、実はその実用性も見事と言う他ありません。
精度面の優秀さはもちろんのこと、きわめて高い耐久性を誇るのです。
なんでも落としても従来の精度を保つとか(もちろん一例であって、強い衝撃は故障の大きな原因となります)。
さらに言うとこの自動巻きは非常に薄型。
自動巻きはローターを持つためどうしても手巻きに比べて厚みが出てしまうのですが、設計を工夫(具体的には、輪列と自動巻き機構を同階層に置くことでスリム化した)することで驚きの薄さを獲得しました。
ちなみに2019年より、この324系をさらにブラッシュアップしたCal.26-330が主要モデルを中心に順次入れ替えられていっています。
この入れ替え、かなりひっそり行われていたこともミソ。
新ムーブメントを大々的に宣伝するブランドは少なくありませんが、あくまでパテックフィリップは実用性向上の一環として行っているのでしょう。
なお、パテックフィリップの技術力をお話する時、「パテックフィリップシール(PPシール)」の話は欠かせません。
パテックフィリップシールとは、同社独自規格の認定を示す刻印です。
2008年まで、同社は「ジュネーブシール」というスイス・ジュネーブ州制定の規格認定を全てのモデルで行っていました。
これも600時間という膨大な時間をかけて行われる非常に厳格な規格で、最高級スイス時計の証なのですが、さらに厳格さでその上をいくのがパテックフィリップシールです。
2009年、同社の創業170周年を祝して新たに制定され、以降、全てのモデルにおいてPP刻印を入れることとなりました。
ちなみにパテックフィリップシールはジュネーブシールに準拠しているため、PPシールがある=ジュネーブシールの資格がある、ということです。
この刻印は、シースルーバックを持ったモデルで確認することができます。
こういった世界最高峰の技術力を持つゆえに打ち出せるのが、冒頭でも言及した「永久修理」です。
永久修理は文字通り「自社製品を永久に修理・サポートする」というアフターサービスですが、どのブランドでも行えることではありません。
まず、ノウハウを永続的に取っておかなくてはなりませんし、加えて生産終了した機構を作るには莫大なコストがかかります。
もちろん必ずしもオリジナルと同じパーツ・技術が使われるというわけではありませんが、いかに難易度の高いサポートであるかをご理解いただけるでしょう。
なお、永久修理を行う=パテックフィリップの時計は一生ものというブランドイメージを見事に構築することにも成功しています。
ご自身の代で購入した時計が、その子ども、孫、ひ孫・・・代々引き継いでも、サポートを受けられる、ということなのですから。
ちなみにこの永久修理を掲げているのは、オーデマピゲやブレゲ、IWCなど、一部のブランドに留まっています。
こういった技術力に裏打ちされた数々のエピソードが、時計好きを魅了して止まないのでしょう。
ただ高いだけではない。高いことには理由がある。そして、その高さを知ってなお欲しい。
そこがパテックフィリップの何よりの魅力ではないでしょうか。
②世界最高峰の美しき外装
技術面と重なる部分もありますが、パテックフィリップの外装は世界一の技術力が、内部機構と同様に惜しみなく使われています。
スポーツウォッチであろうとドレスウォッチであろうと、「美しさ」「気品」が一歩抜きんでているのは、やはり伝統的に職人たちが時計の外装にあるべき技術・ノウハウを連綿と受け継いできたからでしょう。
デザインと言うのは、えてして個人的主観で判断されやすいもの。
むしろ、時計の外装は、ご自分の好みで選ぶことは非常に大切です。
ブランドバリューや実用性も大切ですが、一目見て「これだ!」と思った時計を選ぶことをお勧めしております。
しかしながら、稀に万人の心を打つ外装があります。
それは、パテックフィリップのような、一言で言えば「美しい」と思う逸品です。
例えばパテックフィリップのロングセラーであり、ブランドの根幹を担うカラトラバ。
前述したように、スターン兄弟に買収された同年に「Ref.96」、通称クンロクとして輩出された銘シリーズとなりますが、以来、外装デザインは大きく変わっていません。
この96系を受け継ぐRef.5196やRef.5296はクンロクと呼ばれ、今なお色あせない魅力を放ちます。
どこまでも丸形にこだわった正統派のフォルム。
無駄の一切が排除されたシンプルさ。
ジュエリーメーカーと全く遜色のない上質なゴールド素材を使うことで獲得した美しさ・・・全てが控えめに言って最高です。
また、1976年に誕生したノーチラスは、伝統的腕時計の常識を大きく逸脱したフォルムや「耳」と呼ばれるケース両サイドの突起が特徴的ですが、やはり無駄のないシンプルさの中に唯一無二の美しさがあります。
職業柄、様々な時計に触れることが多いですが、最近「実は奇抜なものより、美しいデザインの方が難しい」ということを改めて認識しました。
なぜかと言うと、美しさを保つには、あらゆる方面において高い技術力が求められるため。
それは素材使いであったり、バランス感覚であったり、ケースの仕上げであったり・・・ちなみに「仕上げ」は大変重要で、量産品はどうしてもステンレススティールに「す」と呼ばれる素材攪拌時の気泡が入ってしまったり、筋目が荒くなったり、ケースに歪みが出たりします。
ディテールへ徹底してこだわり、そういった美しい時計にあるまじき欠点を高い技術力でもって潰していく。そうしてパテックフィリップの非の打ち所がない外装は実現しているのです。
ちなみに、パテックフィリップお得意のコンプリケーション(あるいはグランドコンプリケーション)でこそ、その本領は発揮されています。
機構が複雑になればなるほど、文字盤もまたシンプルさから遠のいてしまいます。
裏蓋側にインジケーターを設置する、という裏技もありますが、基本的には文字盤表面で全ての機構を視認できるような仕様にします。
そのため表示が多く、どうしてもゴチャゴチャしてしまいがち。
その点パテックフィリップは文字盤デザインも「妙」で、全くゴチャゴチャしたものを感じません。
むしろ、これだけ表示があるのに、どこか端正で、由緒正しさを感じます。
画像引用:PATEK PHILIPPE
こういった美しさに惹かれる時計好き、あるいは男性は多いもの。
30代・40代の頃はスポーティーなロレックスのサブマリーナやオメガのシーマスターを愛用してきたけど、年齢も社会的な地位も家庭も落ち着いてきた今、それに見合ったデザインの一本が欲しい。
フォーマルシーンやパーティーに参加する機会が増えたから、ドレスコードに反しない時計が欲しい。
そんなニーズが強まる年代からパテックフィリップの「美しさ」は圧倒的支持を誇っており、そのためパテックフィリップは上がり時計として最適であり、多くの男性にとっての「いつかは欲しい」時計に名を連ねるのでしょう。
③世界最高峰のお値段と資産価値
これまで技術面からパテックフィリップが「ナンバーワン」であるお話をいたしましたが、お値段も世界最高峰です。
先ほどリシャールミルなど、パテックフィリップよりプライスレンジを高く設定しているブランドはある、ということをご紹介いたしましたが、それでもパテックフィリップのブランド規模感を考えれば、お値段は最高峰。
と言うのも、リシャールミルのようなまだ小規模なブランド、あるいは独立時計師はどうしても年間製造本数が限られているため、一本一本の製品価格が高くなります。
パテックフィリップの年間製造本数は6万本程度と言われています。
これも十分少ないのですが、しかも定価は最低でも350万円超えという驚くべき価格帯。
このブランド規模を考えると、非常に高値と言えます。
リシャールミルの平均価格は2180万円と言われていますが、その製造数は年間数千本程度。
しかもそのいずれもトゥールビヨンや高度な素材が使われているので、当然と言えば当然です。
しかしながらパテックフィリップは、ステンレス製の3針モデルであっても定価350万円超え。
さらに人気モデルともなるとステンレススティール製の3針モデルが1500万円近い相場を描いています。
加えて、パテックフィリップのグランドコンプリケーションともなると、そのはるか上をいく高値に!モノによっては億をゆうに超えるものも・・・お値段もまた、世界最高峰と言っていいでしょう。
画像引用:PATEK PHILIPPE
もちろん値段に見合った価値、あるいはお値段以上の価値がそこにはあるのですが、加えてパテックフィリップは世界最高峰の資産価値をも有します。
「資産価値」は文字通り資産としての価値やリセールバリューなどを指しますが、パテックフィリップのそれは尋常ではありません。
近年、機械式時計のこういった資産価値は、消費者の購買マインドを大きく左右するようになりました。
腕時計は精密機器ですので、通常はパソコンやカメラなどと同様に、経年によって価値は落ちていきます。
しかしながら「メンテナンスさえ行えば長く使用できる」という機械式時計ならではの特性は、「使用後も価値が落ちづらい」「経年劣化による影響が少ないので、二次流通市場(中古市場)を築きやすい」ことに繋がります。
全ての機械式時計がそうだとは言えませんが、ロレックスやオメガ、ウブロにブライトリングなどと言った人気ブランドの個体であればあるほど、資産価値は高い傾向にあります。
そんな資産価値が、パテックフィリップは随一なのです。
まず、長い歴史の中で築き上げてきた「世界最高峰」というブランドの強みによって、年月が経っても世界的な人気(つまり需要)が落ちず、結果としてどのモデルも価格暴落が置きづらいこと。
加えて前述の通り「一生もの」であることが永久修理などで保証されていますので、中古市場が活発化しやすいことが理由として挙げられます。
ちなみにこれらに加えて、パテックフィリップはオークションなどで自社時計を高値で買い戻すことで、二次流通であっても価値が落ちないようなブランド戦略をとっているとか。
なお、中古・アンティークで購入した時計であっても、リファレンスとシリアルがわかれば保証書なしでもメーカーメンテナンスは受けられます。
ただし、保証期間が過ぎた場合などにも言えることですが、その場合は有料修理となり、コンプリケーションや年式の古いモデルはスイス本国修理という対応によって高額のメンテナンスコストがかかる可能性もあります。
さらに言うと、世界一の資産価値を有することはもちろんですが、需要が集中しすぎたモデルにおいて、定価を大きく上回るプレミア相場を叩き出している、という現象もパテックフィリップには見られます。
その最も顕著なものは、詳細は後述しますがノーチラスです。
ノーチラスの基幹モデルはRef.5711/1Aで、ステンレススティール製×3針+デイト表示のみ、というシンプルなものとなりますが、相場が急騰。
もともと人気があって高値でしたが、ここ2年ほどの相場急騰は目を見張るものがあり、数百万円の値動きを見せています。
具体的な数字をお伝えすると、5711/1Aの青文字盤は、定価3,872,000円に対して実勢相場(並行輸入店で売られている価格帯)は1300万円ほど。ちなみに3年前ですら600万円でした。
ロレックス相場も同じようにここ数年で急騰しているのですが、最近では落ち着きを見せています。
しかしながらことパテックフィリップに至っては、多少のアップダウンはあるにせよ、下げ止まりがほとんど見られません。
なお、このノーチラス、正規店では品薄・予約不可は言わずもがな。
数年待っても購入可能かどうか不明です。並行市場でも常時品薄で、プレミアム化がプレミアム化を呼ぶ、みたいな存在になっています。
実勢相場は需要と供給がダイレクトに反映する、言ってみればプリミティブな存在です。
つまり、パテックフィリップがこれほどまでに高い相場を記録すると言うことは、供給を大きく上回る圧倒的な需要があるため。
先ほど年間製造本数はブランド全体の6万本程度、と申し上げましたが、これは、中国やインドといった人口大国の、パテックフィリップの顧客・あるいはこれから顧客になる富裕層のニーズに応えられるような本数ではありません。
ちなみに同じく時計メーカーを代表するロレックスは年間約80万本製造していると言われています。
普通ここまで上がってしまうと「買えない」と思う層が増え、相場は下がるもの。
その兆しが見えないということは、まだどんどん上がるポテンシャルを秘めていることをも意味します。
これらを総合的に考えると、値段も世界最高峰だけれども、その分資産価値もナンバーワンであることがわかりますね。
イニシャルコストはたとえ高くとも、子々孫々に受け継いでいける家宝となる。あるいは有事の際に、元手を作る資金源となる。
実際、情勢が不安定で自国通貨が弱い国では、パテックフィリップの時計は有事の際の資産として扱われることもあります。
資産価値が高まることで、パテックフィリップを特別な存在にする。
そうしてさらに世界的な需要が集まり、相場が上がる・・・
こんなスパイラルを描いているのが、パテックフィリップ相場の現状です。
今後の相場動向はハッキリとは予測しかねますが、下がるとも言い切れません。
バイヤーの中には、「ノーチラスを買えなかった顧客が他モデルに流れ、結果としてパテックフィリップ全体の相場が上がる」という意見もあります。
実際、比較的リーズナブルであったスポーツラインのアクアノート相場も急騰しています。
そのため本当に欲しいモデルがある方は、まだお買い得と言えるうちにご決断することをお勧めいたします。
■超高級時計ブランドの価格相場2019~パテックフィリップ、オーデマピゲ、ヴァシュロンコンスタンタン~
④世界最高峰のステータス
冒頭で、多くの時計業界の大御所や時計好きが、「上がり時計」としてパテックフィリップを挙げる、と言及しました。
上がり時計でなくとも、誰もが憧れる・一度は手にしてみたい、と言われることがしばしばです。
もちろん時計業界や時計好きに限らず、「経営者」「敏腕ビジネスマン」と呼ばれるエグゼクティブな男性陣の中にも、「いつかはパテックフィリップ」と心に決めている方もいらっしゃるでしょう。
そんな「誰もが憧れる」存在として、パテックフィリップのステータスは凄まじいものがあります。
「なぜ高級時計を着けるのか」に対する一つの回答として、ステータスは欠かせませんね。
むしろステータスだけを考えて時計を着けている方もいらっしゃるかもしれません。
「いまどき腕時計で時間を確認する人がいる?」とは、長らくウブロで手腕を振るったジャン・クロード・ビバー氏の言葉です。
ビバー氏は時計は実用品ではなく、あくまで自分自身をスペシャルな存在とするために着ける、と語ります。
これは極端かもしれませんが、腕時計は「自分がどのような人間か」「どれくらいの年収・社会的地位があるか」「身だしなみにどのように気を遣っているか」などを示す、一つのバロメーターのようなもの。
その点パテックフィリップを身に着けていれば、これらの点では「最上級」の認識を周囲に与えられますね。
ちなみにこの「誰もが憧れる」存在としてのパテックフィリップは、昨日今日の話ではもちろんありません。
先ほど同社の歴史を簡単に解説いたしましたが、180年に渡ってあらゆる偉人たちから愛され続けてきた史実もまたあります。
パテックフィリップには、歴代の顧客台帳があります。
そこには前述したヴィクトリア女王やローマ教皇の他、アインシュタイン、キュリー夫人、ワーグナー、チャイコフスキー、リスト、シャーロット、トルストイ、ウォルトディズニー、クラークゲーブル、チャリーシーン、ブッシュ大統領、徳川昭武、大正天皇、昭和天皇、今上天皇などと言った、教科書に出てくるような人物が名を連ねます。
現代においても著名人・高名な芸能人が愛用者として挙げられます。
例えば俳優のレオナルド・ディカプリオさんやブラッド・ピットさん。
ミュージシャンの福山雅治さんやロシアのプーチン大統領。その他世界的に有名な企業の社長・CEOなど、世界中を見渡せば、枚挙にいとまがありません。
パテックフィリップの人気シリーズ①ノーチラス
画像引用:PATEK PHILIPPE
パテックフィリップのブランドネームや価値、そして人気に魅力を支える、代表シリーズについてご紹介いたします。
まず始めはノーチラス。先ほどから何度か言及していますね。
ノーチラスはパテックフィリップ初のスポーツウォッチとして1976年に誕生しました。
コンプリケーションやカラトラバと比べると歴史は浅いですが、今やパテックフィリップ=ノーチラスと思われる節すらあります。
ラインが強調されたケース、ブレスレットおよびエンドピースとシームレスになったラグ、ケース両サイドの「耳」などが特徴的なこちら。
名前の通り潜水艦「ノーチラス号」の舷窓をモチーフとして制作されています。
ちなみにデザインはかの有名なジェラルド・ジェンタ氏。
「時計界のピカソ」とまで言われる天才時計デザイナーで、ノーチラスを手掛ける前はオメガのコンステレーション「Cライン」、オーデマピゲのロイヤルオークなどを輩出していた実力者です。
ちなみにロイヤルオークは誕生当初はキワモノ的な扱いでしたが、今ではノーチラスに次ぐ価格高騰スポーツウォッチとなっています。
こういった背景を持って生まれてきたノーチラス。
1970年代当時から世界最高峰の呼び声をほしいままにしてきたパテックフィリップが手掛けているだけあり、逸品です。
そのため、「世界一高価かつ最高級のステンレスウォッチ」として世を席捲しました。
なお、ノーチラスはそのユニークなフォルムがよく取沙汰されますが、魅力の神髄は極めて薄型のケースにあるのではないでしょうか。
ノーチラスのコンセプトは―当時クォーツショックで、機械式時計メーカーとしての起死回生的な意味合いがあったにせよ―「タキシードにもウェットスーツにもマッチする」です。
そのためスポーツウォッチでありながら、ドレスウォッチと言ってもいいほどの上品な薄さを保ちます。
なお、ここで活きてくるのがパテックフィリップの超薄型キャリバーとなります。
つまりデザインの見事さは言うに及ばず、ノーチラスの真の魅力は同社のムーブメント製造という技術力なくしては生まれなかったことを意味しますね。
ちなみに基幹モデルのケース厚はわずか7.5mmとなっています。スポーツウォッチとしては異例中の異例です。
2006年以降のノーチラスは全てシースルーバックを採用しており、この美しき薄型キャリバーを鑑賞することが可能です。
ちなみにスポーツウォッチですから、堅牢性―とりわけ防水性の高さも特筆すべき点です。
パテックフィリップクラスの上級ブランドは、えてして防水性が弱くなりがち。
ケースを薄くするためには、防水面を妥協することがしばしば行われるためです。しかしながらそこは世界最高峰のブランドです。
と言うのも、ノーチラスの「耳」は飾りではなく、実は内部機構への防水を目的にセッティングされた突起。
現行ノーチラスの定番モデルは、120mの防水性能を誇っています。
現在300mとか500mとかあるいはそれ以上の、技術発達によって高い防水性を持つモデルは多くのブランドが製造していますが、厚みが8mmにも満たないケースに120mという防水性を持たせることのできるメーカーはそう多くはありません。
そして前述の通り、ノーチラスは時計界屈指の相場高騰を描いています。
現行のRef.5711/1Aを取り上げましたが、歴代モデルの全体が相場を上げています。
とりわけ「パテックブルー」とも呼ばれる、シルクのような質感を持つ特徴的なブルー文字盤の人気がすさまじく、圧倒的な高値を誇ってきました。
次項で、それぞれのモデルの詳細をご紹介いたします。
①ノーチラス 5711/1A-010
型番:5711/1A-010
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径43mm×厚さ8.3mm
文字盤:ブラック・ブルー
駆動方式:自動巻き(Cal.324SC/2019年より順次Cal.26-330SC)
何度かご紹介しているように、現行のノーチラス基幹モデルがこちら。
もともと2006年から製造されていた5711/1A-001をランニングチェンジしたもので、2010年の発売以来高い人気を誇ってきました。
相場は前述の通り定価3,872,000円に対し相場1750万円台と、ステンレス製腕時計としては類を見ない金額です。
なお、同じ3針モデルのホワイト文字盤の方が相場は落ち着いていますが、これだって決して低いわけではありません。現在1600万円ほどで、どちらも正規店では滅多に手に入らないレアモデルとなっています。
ちなみに金無垢モデルも存在します。
とにかく豪華な一本が欲しい、という方はこういったゴージャスな金無垢から選ぶと良いでしょう。
2006年以降のノーチラスは、シースルーバックが採用されているため、裏蓋からその意匠を眺めることができます。
そんな時計好きの心をくすぐる要素も、5711系が価格急騰する大きな理由でしょう。
②ノーチラス 3800/1A
型番:3800/1A
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径37mm×厚さ8mm
文字盤:ブルー、ホワイトなど
駆動方式:自動巻き(Cal.315SC(前期は335))
こちらは1981年~2006年まで製造されていた、一世代前の37mmノーチラスです。
製造期間が長く、現行品と異なり、色を含めたいくつかの文字盤バリエーションがあることが特徴です。
現在は生産終了していますが、今はないサイズ感・文字盤デザインが中古市場において年々人気を高めており、価値上昇中の要チェックモデルです。
スタンダードは40mmオーバーと言われていますが、近年のヴィンテージ流行によって小径ケースへお需要が高まっており、こちらのノーチラスはその流れに非常にマッチしていることも相場上昇に無関係ではないでしょう。
また、現行ノーチラスに比べれば品薄感は弱く(それでも品薄ですが)、製造期間の長さから、どのモデルも全く手に入らないというわけではありません。
こういった背景から、なんでもいいからノーチラスが欲しい!小径サイズのパテックフィリップが好き。
そんな方々にお勧めしたい逸品です。
ちなみに搭載されるCal.315は324のプレ機で、厚みは324に比べると出ていますが、324のベースを築いた信頼性高い名機と言って間違いありません。
③ノーチラス プチコンプリケーション 5712/1A
型番:5712/1A
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径43mm×厚さ8.52mm
文字盤:ブラック・ブルー
駆動方式:自動巻き(Cal.240PS IRM C LU)
パテックフィリップの真髄と言えばコンプリケーション。
こちらは3針の基本機能に加えて、ムーンフェイズ、パワーリザーブインジケーター、ポインターデイトといった付加機能を備えたプチコンプリケーション―通称プチコンとなります。
文字盤を一目見れば、その多機能さがおわかりいただけるでしょう。
前述の通り、こういったコンプリケーションというのはムーブメントにモジュール的に搭載していくことが一般的なのですが、腕時計という小さな箱の中で組み込みが必要となるため、高い設計力と技術力を要します。
そのため、全てのブランドで行えるものではなく、ムーブメント専業メーカーなどの機械を仕入れて開発しているところもあります。
しかしながらパテックフィリップは設計から組み立てに至るまで、全てを自社で一貫製造しているマニュファクチャー。
長い歴史の中で時計製造技術を鍛錬してきたことがわかる一つの事実ですね。
しかも、ノーチラスという薄型時計に複雑機構を搭載してくるのだから驚きです。と言うのも、複雑になればなるほどパーツは多くなり、どうしても厚みが出てしまうのです。
そこを、こちらのノーチラスでは厚さ8.52mmに抑えているというのだから驚きを禁じえません。
もう一点同社の見事なところは、多彩な機能を備えながらも文字盤が端正なことです。
複雑機構はどうしてもインダイアルが増えてごちゃごちゃしてしまうのですが、こちらのノーチラスはそれらを巧妙な配置で置くことで綺麗にまとめており、上品なイメージを堅持しました。
ちなみにこのプチコンモデル、ホワイトゴールド製ケースに革ベルトを合わせた一本の人気が最近ジワジワきています。
それでも相場は1600万円台~と、ステンレス製3針のRef.5711/1Aよりかは安いという、貴金属市場においてパラドックス的な現象を起こしています。
パテックフィリップの人気シリーズ②カラトラバ
画像引用:PATEK PHILIPPE
こちらも何度か言及しているカラトラバ。現在ノーチラス人気の影に隠れがちですが、むしろパテックフィリップを代表する一大シリーズと言えばこちらとなります。
1932年に誕生したドレスウォッチで、誕生から90年近く経ちますが、オリジナルから大きくデザインを変えていません。
「世界の丸形時計の規範」「名門ドレスウォッチの本質」などとも称されるこのデザインは、20世紀初頭のドイツ・バウハウス哲学に強く影響を受けて製造されました。
バウハウス哲学とは、簡単に言うと「機能がフォルムを決定する」という考え方です。
その哲学の通り、きわめてシンプルな機能は洗練され、その機能を最大限発揮する―つまり高い視認性を提供することで正確な時刻を見やすくする―仕様の外装がカラトラバの特徴であり、魅力です。
もちろんただ視認性を重要視しただけではない美しい見せ方もパテックフィリップ。
優美なラウンドフォルム、そこから続くやはり優美なラグ。
無駄の一切を省いたシンプルな文字盤デザインながら、インデックスの立体感や上品なドフィーヌ針(針の真ん中が山折りになったフォルム)など、全てが完璧なバランスで造形された至極の一本となります。
また、カラトラバの誕生秘話も、現在のカラトラバ人気を後押ししてくれます。
1932年、スターン兄弟がパテックフィリップを買収した経緯としては、世界恐慌が無関係ではありませんでした。
危機に陥った同社の起死回生の救済策として、「ブランドの伝統と卓越性を維持しつつ、ファン層を広げる」ために誕生したのがカラトラバだった、というわけです。
この試みが大ヒットしたことは言うまでもありません。
1930年代初頭というのは鉄道や軍用など、正確な時間を知るための時計へのニーズがかつてないほど高まっていた、という時代の要請もあったのでしょう。
なお、ノーチラスがジェラルド・ジェンタ氏によってデザインされたことは有名ですが、初代カラトラバはイギリス人時計学者デビッド・ペニー氏が手掛けたものです。
「カラトラバ」の名前の由来は、パテックフィリップの伝統的なエンブレム「カラトラバ十字」です。
剣と十字架(4つの百合の花)を組み合わせたロゴで、12世紀頃、スペインで初めて設立された戦争騎士団の名前にちなみました。
もともと同社は、カラトラバ騎士団の勇猛果敢な戦いぶりに敬意を表していたためです。
すなわち、カラトラバはパテックフィリップの歴史の象徴とも言うべき存在なのですね。
このように歴史あるモデルのため、大きくデザインを変えていないと言えど、過去様々なバリエーションが輩出されてきました。
前項でも少し触れましたが、初代カラトラバはRef.96―通称クンロク―で、以降リファレンスに96がつくモデルはこのクンロク家系です。
クンロク家系がカラトラバの基幹モデルであり、迷ったらこちらを選ぶ、という方が多い印象です。
※初期クンロク
機構に関しては手巻きと自動巻きがあります。
価格は自動巻きの方がやや高くなりますが、ケースがアップサイジングされているのでモダンで日常生活では使いやすいでしょう。
近年の仕様では、シースルーバックを持ち、裏蓋から機構を鑑賞できるモデルもラインナップされています。
ケース直径は、よく出回っているものは33mm~39mm程度。手巻きでも37mmサイズの個体も存在します。
ケース素材は初期と2019年最新作の「ウィークリーカレンダー搭載 カラトラバ」で用いられたステンレスを除くと、基本的にはゴールドまたはプラチナ製が主流となります。
ただ、カラトラバは文字盤デザインもまた豊富ですので、機構と言うより「これだ!」と思う一本をお選びいただくと良いでしょう。
その際は、ぜひ一度試着してみてくださいね。スーツの袖口から気品を覗かせてくれます。
ちなみにカラトラバはノーチラスやアクアノートほど資産価値はない、と言われることがありますが、それは間違いです。
相場が急騰しているわけではありませんし、ノーチラスなどに比べると品薄感は少ないですが、使われる素材の上質さ(前述の通り、ジュエリーメーカーとも遜色がない素材使い。ほとんどのモデルでジュエリー界のスタンダードであるK18の純度を採用)、普遍かつ不変のエレガンスは伝統工芸品のようで、この先も家宝として資産価値を持つことは間違いありません。
事実、カラトラバは1960~70年頃に製造された個体が現在も市場にでまわっていますが、その多くが当時の価格を大きく上回る相場で取引されています。
同時に、現行モデルも系譜が踏襲され、派生型が多々あるとは言えいずれも高い評価がなされています。
※初期クンロク。現在200万円前後の相場
とは言え年式の古いモデルは現行に比べて比較的手に入れやすい価格帯となります。200万円前後で売られているものも。
そのためコンディションの良い個体を探すのも良いですね。
ただし、アンティーク・中古品を買う注意点として、文字盤の状態は特によく見極められたし。
クラックなどが入ってしまっているとそこからさらにひび割れができてしまう可能性があり、見た目に良くありません。
文字盤交換となると正規メンテナンス対応で、非常に高額な費用がかかってしまうので、二次流通品は信頼できるお店で購入しましょう。
カラトラバの人気モデル
①カラトラバ 3796R
型番:3796R
素材:ローズゴールド
ケースサイズ:直径30.5mm×厚さ7mm
文字盤:アイボリー
駆動方式:自動巻き(Cal.215PS)
こちらが「クンロク」を引いたカラトラバであり、現在当店のカラトラバの中で最も人気の高い一本です。
1986年初出、そして2006年に生産終了していますが、今なお中古市場でナンバーワンの存在感を保つ秘訣は、ローズゴールドとアイボリー文字盤の控えめなエレガンスでしょうか。
6時位置にスモールセコンドをセッティングすることで、正統派ドレスウォッチの規範は崩さず、爽やかにアクセントを加えました。
なお、後継機にあたるRef.5196ではケースが37mmと大幅アップサイジングされるのですが、カラトラバらしい小径ケースに惹かれてあえて3796系をお選びになる方は少なくありません。
カラトラバ史上、最も美しく伝統的な一本と言えるのではないでしょうか。
ちなみにパテックフィリップ製品全てに言えることですが、型番最後のアルファベットは使われている素材を表します。
すなわち、
- R⇒ローズゴールド
- J⇒イエローゴールド
- G⇒ホワイトゴールド
- A⇒ステンレススティール
となります。
②カラトラバ 5196R
型番:5196R
素材:ローズゴールド
ケースサイズ:直径37mm×厚さ7.68mm
文字盤:アイボリー
駆動方式:自動巻き(Cal.215PS)
こちらが現行手巻きカラトラバの根幹を担うモデルです。
ムーブメントは変更されていませんが、ケースを7mmにサイズアップ。手巻きながら、一気にモダンな印象となりました。
なお、同クンロクシリーズで自動巻きモデルの5296系も人気ですが、価格は手巻きよりやや高くなります。
ただ、5296は2018年までの生産で廃盤となりましたので、欲しい方は早めにご決断になることをお勧めいたします。
③カラトラバ 3919J
型番:3919J
素材:イエローゴールド
ケースサイズ:直径33mm×厚さ6.5mm
文字盤:ブルー、ホワイト
駆動方式:自動巻き(Cal.215PS)
こちらも2006年に生産終了していますが、中古市場で話題を席捲するカラトラバです。
細いラグ、鋲打ち(びょううち)模様と言われるホブネイルパターンが施されたベゼルなど、クンロクとは全く異なるテイストが何よりの魅力ですね。
ちなみにこの3919系を「もう一つのカラトラバ」と言う愛好家もいらっしゃいます。
発売以来、約10数年にわたってパテックフィリップの広告などに起用されたので、一度は目にしたことがある方も多いですね。
ちなみにこの3919が出て以来、カラトラバにバリエーションが増え始めたため、その先鞭をつけたモデルでもあります。
3919系のもう一つの嬉しいところは、ケースに非常にコストがかかっているにもかかわらず、中古市場では比較的落ち着いた価格帯で取引されていること。
状態にもよりますが、200万円をきるものもあります。
なお、3919の後継機が36mmケースのRef.5119です。
シースルーバックが採用され、一躍人気カラトラバの代表格になりました。
しかしながらこちらも2019年に廃盤に。
現在3919系を引くデザインコードは同社にはない状態ですので、気になる方は急ぎましょう!
パテックフィリップの人気シリーズ③アクアノート
かつてノーチラスの影に隠れていて、「知る人ぞ知る」の印象に留まっていたアクアノート。
確かにパテックフィリップのスポーツライン第二弾として1997年に誕生した新しいシリーズで、「シンプルなカラトラバ」と「スポーティーなノーチラス」の中間のようなデザインをしています。
エレガンス・スポーツウォッチというコンセプトのもと作られ、パテックフィリップらしい薄型かつ上品なケースに、120mという高い防水性も備えます。
基本はステンレススティール製ながら、多角形ケースは柔らかな丸みを帯びており、非常に優美。
文字盤の独特なデザインもエレガンスで、唯一無二の独創性が交わります。
もちろんスポーツですので、高い防水性や暗闇でも視認できる夜光アラビアインデックスなどスペック面で高いことも大きなポイントとなります。
画像引用:PATEK PHILIPPE
新しいシリーズであったことなどから、発売当初はノーチラスほどの注目度は集まりませんでした。
しかしながら今、ノーチラスに肉薄するのではないか、と思われる、圧倒的人気を誇るモデルに成長しています。
もちろんノーチラスが品薄すぎて、購買層がアクアノートに流れてきている、というのも一つの理由でしょう。
「スポーツウォッチ」が現在のトレンドであることも大きいかもしれませんね。
でも、やはりこの人気は、アクアノートそのものの魅力が大きいように思います。
実際、アクアノートをぱっと見て、ちょっと試着していただくと、その完成度の高さがノーチラスと決して遜色のないものだとおわかりいただけます。
薄くフィット感のあるケース・ブレスレットは丁寧に仕上げられており、スーツの袖口からスポーツウォッチらしからぬクラス感を発揮します。
むしろ、クラシカルなカラトラバとスポーティーなノーチラスの良いとこどりをした外観が、どのパテックフィリップとも違った存在感を示しているのではないでしょうか。
なお、世界的な人気はやはりノーチラスに軍配が上がりますが、アクアノートも決して流通量が多いわけではなく、品薄ぎみ。やはり正規店では予約すら受け付けてもらえない状況です。
基幹モデルが「エクストララージ」と呼ばれる40.8mmサイズのステンレス製アクアノートなのですが、こちらはメタルブレスレットタイプが定価4,191,000円に対し、並行輸入市場では相場が830万円台~。
トロピカルバンド(ラバー)タイプが定価3,663,000円円のところ相場は1080万円近くまで上がっています。
なかなかの高騰ですよね。
ただ、まだノーチラスよりかは手に入れやすい状況です。
今後さらに高騰する可能性は十分に考えられますので、なかなか相場から目が離せないシリーズと言えます。
アクアノート人気モデル
①アクアノート エクストララージ 5167/1A-001
型番:5167/1A-001
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径40.8mm×厚さ8.1mm
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き(Cal.324SS)
現在当店でパテックフィリップナンバーワン人気として君臨するのがこちらのアクアノートです。
ノーチラスがなかなか入荷してこないことも無関係ではありませんが、最近のアクアノート人気は本当にすごいとしか言いようがありません。入荷するとすぐに完売してしまう勢いで、在庫があればある分必ず売れると言っても過言ではありません。
メタルブレスレットという使いやすさも、幅広い層から支持される大きなゆえんでしょう。
実際、パテックフィリップの製品は「通好み」でしたが、アクアノートの登場で初めて高級時計を購入する、と言った方も、選択肢に入れやすいようになりました。
なお、「エクストララージ」という別名で呼ばれる理由は、アクアノート史上最も大きいケースサイズであるためです。
アクアノートは登場から大きく分けると三つの世代があるのですが、初期のRef.5060系はケース直径34mm、第二世代のRef.5066は34mm(以降ミディアム)、同時期のRef.5065は38mm(ラージ)と呼ばれます。
仕事でもプライベートでも「特別な存在」をアピールした、全ての男性陣にお勧めの一本です。
②アクアノート エクストララージ 5167A-001
型番:5167A-001
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径40.8mm×厚さ8.1mm
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き(Cal.324SS)
トロピカルというコンポジット素材のバンドを備えたアクアノートがこちらです。
実は初代アクアノートはトロピカルバンドのみのラインナップでした。
そのため、発売当初は「パテックフィリップらしくない」「スポーティーすぎる」といった賛否両論もあったようです。
その後第二世代でメタルブレスレットが採用された次第ですが、近年こちらのラバーベルトの方に注目度が高まっています。
よりスポーティーなテイストを持つデザインが流行していることも大きいでしょう。
確かにメタルブレスレットの方が汎用性は高いですが、ラバータイプの方がアクアノートらしさ、アクティブな印象を感じさせます。
一方でパテックフィリップらしく、ラバーベルトも厚すぎず文字盤と同系のエンボス装飾が施されていることから、スポーティーとエレガンスが両立していることがおわかりいただけるでしょう。
また、コンポジット素材「トロピカル」もただのラバーではなく、高い防水性や強度、紫外線耐性を誇っており、よりスポーツに特化した仕様となりました。
こういったスポーティーなモデルは現在幅広い年齢層から支持を集めていますが、40代・50代の渋い大人がアクアノートをアクティブに着けこなしていたら、かなりかっこいいと思います。
こだわりのスーツに着けてもよし、タウンユースのオシャレファッションに着けてもよし、アクティブシーンで使うもよし。
かっこいいオヤジを目指せる一本と言えるでしょう。
③アクアノート エクストララージ 5167R
型番:5167R
素材:ローズゴールド
ケースサイズ:直径40.8mm×厚さ8.1mm
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き(Cal.324SS)
現行アクアノートきってのラグジュアリーモデルと言えばコレ。
ローズゴールドとブラウン文字盤が非常に華やかなモデルです。
確かに現在の人気モデルはステンレス製が主流です。しかしながらゴールド製の美しさや絢爛な色味というのはやはり格別。
アクアノートはスポーツモデルなのに、ラバーベルトがそのスポーティーさをより強調しているのに、ゴールドのおかげで正統派のエレガンスを獲得しました。
よくゴールドって成金っぽくない?と言われたこともありましたが、ゴールドそのものの美しさは決してそのようなことはなく、むしろ男性に色気や風格を備えるのに欠かせません。
なお、ローズゴールドとは、銅を合金に使って赤みがかった配色を実現したカラーゴールドです。
エレガントな中にもどこか男らしさを感じさせるのは、このローズゴールドを採用したためでしょう。
ゴールド製のため、もちろん価格は高くなりますが、現在ステンレスモデルが高騰しすぎており、ゴールド製の方がお得感が強くなる、というパラドックス的な展開が高級時計市場で起きています。
ゴールドそのものの価値が落ちづらいことと併せて、ステンレス製時計が軒並み高騰している今、ねらい目な一本ではないでしょうか。
パテックフィリップの人気シリーズ④ゴンドーロ
あまり聞きなれない・見なれないかもしれませんが、1993年よりラインナップを開始しているゴンドーロ。
アクアノートとともに、新世代コレクションに当たります。
「アールデコの精神を再現」したデザインコンセプトが最大の特徴。
アールデコとは1910年代~1930年代にかけてヨーロッパ各地やニューヨークで流行したデザインで、幾何学図形をモチーフにしたり原色を使った対比表現で一世を風靡しました。
フランクミュラーやジラールペルゴでもよく見られる表現ですが、パテックフィリップも上手に高級時計として昇華させています。
ちなみに「ゴンドーロ」の名前の由来は、ブラジルの有名なパテックフィリップ正規販売店「ゴンドーロ&ラブリオ」から来ています。
ゴンドーロ社のために1902年~1930年代にかけて製造されていた「クロノメトロ・ゴンドーロ」をリバイバルした、というコンセプトであったためです。
クロノメトロとはCHRONO(時間)+METER(計器)=精密な時計、という意味となります。
画像引用:PATEK PHILIPPE
ゴンドーロの何よりの特徴はケースフォルムです。
同シリーズ内でありながらレクタンギュラーやクッション型、トノーなどいくつかのバリエーションを持ちます。
文字盤デザインもアールデコを表現しただけあり、美しくもアートのような華やかさを味わえます。
もちろんこういったオシャレに加えて、綿密なギョーシェ彫や美しい針・インデックス、歪みのない流麗なケースなど、パテックフィリップらしい高い外装技術は健在です。
そのため「ステータスも重要だけど自分らしさも大切にしたい」「オシャレが好き」といった男性はゴンドーロはいかがでしょうか。
なお、ゴンドーロの魅力は「オシャレさ」「独創性」に加えて、比較的相場が落ち着いている、ということも挙げられます。
モデルはゴールド製が基本であるにもかかわらず、モノによっては200万円台~300万円台という、現行パテックフィリップでは考えられないような価格で売られている個体も。
そんな「掘り出し物」を探してみても面白いですね!
ゴンドーロ人気モデル
①ゴンドーロ クロノメトロ 5098R-001
型番:5098R-001
素材:ローズゴールド
ケースサイズ:縦42mm×横32mm
文字盤:シルバー×ゴールド
駆動方式:自動巻き(Cal.25-21REC)
前述した「クロノメトロ・ゴンドーロ」をリバイバルした一本です。
流麗なトノーケースに組み合わされたアールデコ調の文字盤が非常にエレガント。
丁寧なギョーシェ仕上げと合わせて、どのデザインウォッチとも違った、クラシックで美しくて自分だけの個性を放ってくれますね。
ちなみに搭載される手巻きムーブメントCal.25-21RECも、由緒正しい機械の一つです。
パテックフィリップはその歴史の中で、角型ムーブメントはコンプリケーション搭載機でのみ採用してきました。
しかしながらこちらはシンプルな2針。
コンプリケーション機能を持たない角型は、Cal.9-90が創出された1934年以来、実に70年ぶりとして誕生しました。
そんな特別なムーブメントは、シースルーの裏蓋から鑑賞することができます。
②ゴンドーロ 5124J-001
型番:5124J-001
素材:イエローゴールド
ケースサイズ:縦43mm×横33mm
文字盤:ホワイト
駆動方式:自動巻き(Cal.25-21REC PS)
同じく角型ムーブメント25-21系を搭載したゴンドーロです。
ケースとベゼルが二段構えとなっており、独特の立体感が特別な一本ですね。
こちらはスモールセコンドを搭載しており、文字盤もクラシカルながらインパクトを感じます。
なお、当モデルもスケルトナイズされた裏蓋からムーブメントを鑑賞することができます。
パテックフィリップの人気シリーズ⑤ゴールデンエリプス
画像引用:PATEK PHILIPPE
エリプスとは、楕円形フォルムを指します。
パテックフィリップが「完璧な均衡」と自負する、エリプス(楕円形)フォルムが特徴的な一大シリーズです。
ゴールデンはその名のまま、「ゴールド製」という意味となります。
イギリス女王・エリザベス二世が特別オーダーしたモデルをオリジナルに、1968年からシリーズ化。
その独創性から人々を驚嘆させるも、やがて受け入れられていきました。
なお、ケースの縦横の比率はかの有名な黄金分割です。
神聖なる比率とも呼ばれ、まさにパテックフィリップにふさわしい均衡と言えます。
尾錠もエリプスフォルムになっているというこだわりがいいですね。
ただ、中古の一部個体には異なる形状のものもあります。
シリーズとは言え細々と続けられてきた印象ですが、50周年を迎える2018年にメンズで大々的にプロモーションが始まりました。
画像引用:PATEK PHILIPPE
長い歴史の中で、ケースは現代風にアップサイジングされてはいるものの、デザインベースはオリジナルを踏襲しています。
ともすれば「アンティーク」とも取られがちなクラシカルなテイストはきわめて薄く、50代、60代の渋いオジサマ方の、高価なスーツやドレッシーなフォーマルウェアによく似あいます。
ちなみにゴンドーロ同様、ゴールデンエリプスも非常に価格が落ち着いています。
最新作はあまり出回っていませんが、比較的新しい前世代のRef.3738系でも298万円~。ゴールド製としては破格のお値段ですね。
さらに年式の古いモデルであれば実勢相場は200万円前後~。
そのため予算に限りがあるけどパテックフィリップが欲しい、という方は、ゴールデンエリプスもまたねらい目となります。
ゴールデンエリプス 人気モデル
①ゴールデンエリプス 3738/100G-012
型番:3738/100G-012
素材:ホワイトゴールド
ケースサイズ:縦35mm×横31mm
文字盤:グレー
駆動方式:自動巻き(Cal.240)
一世代前に席捲した、ゴールデンエリプスです。
自動巻き機構搭載、そしてケースがアップサイジングされており、現代風にアップデートが図られました。
2018年に惜しまれつつも生産終了となりましたが、まだ状態の良い個体が出回っている今、本当に欲しい方はチェックしておきましょう!
②ゴールデンエリプス 3987J
型番:3987J
素材:イエローゴールド
ケースサイズ:縦32mm×横27mm
文字盤:ホワイト
駆動方式:自動巻き(Cal.215)
カラトラバの3919系を彷彿とさせるゴールデンエリプスです。
同じようにホブネイルパターンがあしらわれ、風格あるローマンインデックスと合わせてかなりドレッシーな印象を獲得しました。
32mmという小径、しかも手巻きの薄さを持つため、どんなパーティーシーンにもふさわしい一本です。
パテックフィリップの人気シリーズ⑥コンプリケーション
繰り返しになりますが、パテックフィリップの本質はコンプリケーションです。
クロノグラフやワールドタイム、アニュアルカレンダーにパーペチュアルカレンダー・・・数々の複雑かつ精緻なめくるめく機構の世界。パテックフィリップならではのワンランク上の一大コレクションですね。
一口にコンプリケーションと言っても、機構によってさらにシリーズが細分化されています。
「人の思いつくだけ機構がある」とまではいきませんが、種類が多岐にわたりその全てを網羅することは困難です。
そこで、人気の機構に分けてそれぞれの詳細をご紹介いたします。
①ワールドタイム
パテックフィリップ好きであれば、一度はこの独特の「顔」を見たことがあるかもしれません。
ワールドタイムはその名の通り、世界の時間を一つの文字盤で視認できる機構です。
同種のトラベルタイムやGMTとは異なり。文字盤に備わったディスクを使って「世界の主要都市の時刻」が一目で認識できるようになりました。
機構そのものはもちろんのこと、文字盤一面に都市名が広がる個性的なデザインからも非常に評価の高い逸品です。
都市名が広がると一見複雑に見えるかもしれませんが、その操作は至ってシンプルです。
3時位置のリューズが時分針、10位置のプッシャーがアウターリング(都市ディスク)に連動しており、プッシャーを用いて12時の位置に現在自分がいる都市をセッティングします。
さらにインナーリング(アラビア数字が印字されている箇所)と時分針が連動しており、リューズを使って動かすと院ナーリングもまた動きます。
上の画像を見ていただくと、日本の東京が現在朝の10時過ぎ。
東京と-2時間の時差があるタイ・バンコクは朝の8時。
-8時間の時差があるロンドンでは夜中の1時、というわけです。
ちなみにサマータイムには対応していません。
このワールドタイム、現在ではいくつかのブランドが生産していますが、代表的なところと言えばやはりパテックフィリップです。と言うのも、パテックフィリップこそがワールドタイムの生みの親であるためです。
ワールドタイムが生まれたのは1930年代のこと。それまで現在時刻と別の場所の時間を同時に表示させるのには「GMT」機能が使われていましたが、航空網の発達や文明の進化により、世界各主要都市の時間がすぐにわかる腕時計の開発が求められていました。
そこで、当時ジュネーブで名を馳せていた時計師ルイ・コティエ氏が開発に成功したワールドタイムをチューニングし、同社が市販化した、という歴史を持つのです。
この長い歴史の中でワールドタイムはいくつかの系譜を持ちますが、現行は2016年に発売した5230系となります。
しかしながら2000年に発売した5110系、および2006年発売の5130系なども、今なお中古市場で出回ります。
どれもワールドタイム専用ムーブメントCal.240HUを搭載しているためスペックは大きく変わらず、好みの一本を選ぶことができるためでしょう。
代表モデルをご紹介いたします。
コンプリケーション ワールドタイム 5230G-001
型番:5230G-001
素材:ホワイトゴールド
ケースサイズ:直径39.5mm×厚さ10.23mm
文字盤:ホワイト×チャコールグレー
駆動方式:自動巻き(Cal.240HU)
こちらが2016年に発表されたワールドタイムの最新版です。
上品なホワイトゴールドとチャコールグレー文字盤が本当にオシャレですね。
この複雑な機構が搭載されているにもかかわらず厚みはわずか10mmちょっと。
どんなフォーマルなシーンでも活躍してくれる一本です。
コンプリケーション ワールドタイム 5130R-001
型番:5130R-001
素材:ホワイトゴールド
ケースサイズ:直径39.5mm×厚さ9.4mm
文字盤:シルバー
駆動方式:自動巻き(Cal.240HU)
現行にはないメタルブレスレットなども採用されています。
価格帯はハイエンドのため、中古であるにもかかわらず600万円超えが当たり前。
しかしながら間違いなく家宝として、代々受け継いで生ける銘品と言えるでしょう。
コンプリケーション ワールドタイム 5110J-001
型番:5110J-001
素材:イエローゴールド
ケースサイズ:直径37mm×厚さ9.4mm
文字盤:シルバー
駆動方式:自動巻き(Cal.240HU)
さらに一つ前のワールドタイムです。
現行よりも1.5mm小さいサイズのケースが特徴で、非常にエレガント。
前述の通りスペックは大きくは変わりませんが、コンプリケーションは繊細ですので、購入は信頼できて、アンティークや中古時計にノウハウのある時計専門店を選ぶようにしてください。
また、なるべくなら直近でメンテナンスをしっかり行った個体をお選びください。
②トラベルタイム
トラベルタイムはワールドタイムと同様に、ご自身が今いる地域以外の時刻表示を可能とした機構ですが、以下で構成されています。
- 出発地と現地の時刻を表示するデュアルタイムゾーン機構
- 出発地と現地の昼夜を窓表示
- 現地の日付を指針表示(6時位置)
- センターセコンド
よく言われるGMTの進化版ですね。
ノーチラスやアクアノートにも搭載されるなど、コンプリケーションシリーズ以外でも人気の機構となります。
ちなみに9時側ケースラインの上のプッシャーでデュアルタイムが進み、下のププッシャーで時間が戻る設計です。
最も有名なパテックフィリップのトラベルタイムと言えば、「パイロットウォッチ」の一環として2015年よりリリースされているカラトラバを忘れてはいけません。詳細をご紹介いたします。
カラトラバ パイロット トラベルタイム 5524G-001
型番:5524G-001
素材:ホワイトゴールド
ケースサイズ:直径42mm×厚さ10.78mm
文字盤:ブルー
駆動方式:自動巻き(Cal.324SC FUS)
これまでのどのカラトラバ、いえ、パテックフィリップ製品とも全く異なるパイロット顔が大きく話題となったこちら。
42mmという大振りのケースにトラベルタイムを備えたモデルです。
文字盤はニス塗装が施された濃いブルーで、ケースおよびインデックスにゴールドを採用するという、クラス感はパテックフィリップらしさを持ちますが、かなり攻めたデザインのように思います。
事実、登場したばかりの頃はかなり大きな話題となりました。
でもそれは決して不人気だったわけではなく、誕生以来高い相場をキープ。
定価8,657,000円のところ、現在の新品並行相場は680万円台~となっています。
定価超えではありませんが、初出から4年経っても高値安定というのは、さすがと言うべきでしょう。
一時期は1000万円を超えるプレミア感でしたが、さすがにそれは落ち着いたようで、今がねらい目とも言えます。
なお、トラベルタイムは5524Gより、新たに同社が特許を取得した「ロック機構」が追加されました。
ロック機能は10時位置と8時位置に配されているローカルタイム変更ボタンにロックをかける機能です。リューズを1/4周ほど回すと、リューズにロックがかかり、操作ができなくなります。
従来のトラベルタイムにはこの機能がついていませんでしたが、着脱時の誤操作が多く報告されていたことで開発に至ったようです。
より便利になったことは言うまでもありません。
③アニュアルカレンダー
アニュアルカレンダーは年次カレンダーとも言います。
ほとんどのカレンダーは1日~31日を順に表示する設計の日付表示機能となっていますね。
つまり、小の月(2・4・6・9・11月など30日以内の月)は手動で操作が必要になる、ということです。
そこで、むこう1年間の日付を機構に組み込み、自動的に大の月・小の月を修正してくれる機構。
それがアニュアルカレンダーです。
ちなみにアニュアルとは「年1界」という英語。
この名前の通り、2月の末尾は手動で修正する必要がありますが、あとは勝手に機械が計算してくれます。
言うはやすし、と申しますが、この機構は複雑機構の中でもさらに複雑とされていて、製造できるブランドは一流ばかりです。とりわけパテックフィリップの製品は見事と言う他なく、どうしても情報量が多くなる文字盤を端正にまとめ上げています。
価格はもちろん高いです。1000万円前後~します。
しかしながら、超高級品であり、超上質な逸品を所有する満足感を味わおうと思えば、あるいは適正価格と言えるでしょう。
代表的なモデルをご紹介いたします。
コンプリケーション アニュアルカレンダー クロノグラフ 5905P-010
型番:5905P-010
素材:プラチナ
ケースサイズ:直径42mm×厚さ14.3mm
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き(Cal.28-520QA)
落ち着いたブラック文字盤が、アニュアルカレンダーの特別感をさらに高めるこちら。
クロノグラフ機構をも備えた、正真正銘のコンプリケーションです。
文字盤上部で曜日、と月日窓をセッティングすることで、どこかメカニカル、でもエレガンスを感じられる逸品となりましたね。
極上のプラチナを丁寧にポリッシュ加工したことで、高級感もまた最上級です。
コンプリケーション アニュアルカレンダー クロノグラフ 5960/1A-001
型番:5960/1A-001
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径42mm×厚さ13.5mm
文字盤:ホワイト
駆動方式:自動巻き(Cal.28-520QA)
ファン待望のステンレススティール製アニュアルカレンダーとして、2016年の登場以来、熱狂的支持を集めてきたのがこちらのモデルです。
デザインもかなりスポーティーで、パテックフィリップの新境地とも言われた銘品。
わずか1年で廃盤となってしまったこともあり、状態にもよりますが980万円台~と高値キープを続けています。
スーツスタイルはもちろん、カジュアルファッションにも合うデザインですので、オンオフ問わずパテックフィリップを共にしたい。そんな方々にお勧めです。
④グランドコンプリケーション パーペチュアルカレンダー
最後にグランドコンプリケーションをご紹介いたします。
グランドコンプリケーションはパテックフィリップの最上級シリーズで、複雑どころか超複雑と呼ばれる機構の数々を搭載していることが特徴。
例えば世界三大複雑機構と呼ばれる「パーペチュアルカレンダー」「トゥールビヨン」「ミニッツリピーター」などこれに当たります。
価格も最上級で、中古であっても1千万円超えが当たり前。定価がついておらず「時価」としているものもあります。
年間製造本数はきわめて少なく、「選ばれた人間だけが着ける」なんて言われるほど。
もしグランドコンプリケーションを手に入れたら、恐らく他の時計は持てないのではないでしょうか。
私自身、グランドコンプリケーションに触れた時、やはり他とは全く違うな、と実感させられました。
画像引用:PATEK PHILIPPE
グランドコンプリケーションの代表的な機構は、やはりパーペチュアルカレンダーです。
アニュアルカレンダーの上位カレンダー機構で、月による日数の違いや、4年に1度の閏年の調整などを自動的に行うという驚愕のカレンダー機能です。
この機能は永久カレンダーとも呼ばれ、丸1世紀にも渡り手作業での更新の必要性がなくなりました。
ちなみに発明者は天才時計師ブレゲ。1795年にその基本が世に送り出されました。
またアニュアルカレンダーは2000年頃に開発された、比較的新しい機構です。
画像引用:PATEK PHILIPPE
パーペチュアルカレンダーの特徴は紀元前46年にユリウス・カエサルが制定したユリウス暦に完全適合していることです。
ユリウス暦とは1年を365日と制定し、4年に1度、2月の日数を1日増やすシステムを採用した暦のことをさします。この暦は16世紀に現代の暦である「グレゴリオ暦」が採用されるまで続きました。
「閏年」を自動で調整してくれます。そのため、時計ユーザーが2月であっても手動で日付調整する必要性がありません。
ただ、よく考えるとユリウス暦では毎年0.0078日分(4年で0.032日)のズレが生じている問題があります。
いくら閏年で帳尻を合わせても、限りなく僅かに日数がズレていくのです。パーペチュアルカレンダーはユリウス暦に適合しているため、同じようにズレが発生します。
この僅かなズレを解消するために制定されたのが次項で説明するグレゴリオ暦です。
現在の日本および世界主要先進国で使われているグレゴリオ暦。1582年にローマ教皇グレゴリウス13世が制定しました。
グレゴリオ暦は、4年ごとに閏年を設けるシステムはそのままに、新たに西暦の年数が100で割り切れるが、400では割り切れない年は閏年ではなく平年と定めたことにあります。
西暦2000年以降の閏年は2000,2004,2008,2012,2016…と続いています。
これらの数字に共通するのは4で割り切れているということです。これはユリウス暦でもグレゴリオ暦でも共通のルールでした。
ですが、問題は西暦2100年。
4年で割り切れる年を閏年とするルールで進むと、2088,2092,2096..と進みますが、この次の閏年は2104年です。
2100年はどこいったと思いますが、この年はグレゴリオ暦の新ルール「暦の年数が100で割り切れるが、400では割り切れない年は閏年ではなく平年」というルールが適合されたことにより、閏年ではなくなっています。
ちなみに2000年は400で割り切れていたため”閏年”でした。
これを踏まえると、現代に生きている私たちがパーペチュアルカレンダーを扱った場合、西暦2100年に「1日分」のズレを修正する必要があります。大半の人は生きている間に修正することはないかもしれません。
そんな、本当に驚くべき機構がパーペチュアルカレンダーなのです。
なお、2100年の次の修正年は2200年、2300年と100年刻みで修正が必要です。
ただ、2400年は400で割り切れるため、閏年となり修正の必要はありません。
このパーペチュアルカレンダーを、パテックフィリップでは積極的に採用しています。
パーペチュアルカレンダーが搭載された代表的なモデルをいくつかご紹介いたします。
グランドコンプリケーション パーペチュアルカレンダー 5327J-001
型番:5327J-001
素材:イエローゴールド
ケースサイズ:直径39mm×厚さ9.71mm
文字盤:ホワイト
駆動方式:自動巻き(Cal.240Q)
ノーチラスなどでもご紹介した、パテックフィリップが誇る超薄型自動巻きムーブメントCal.240系。
これをベースに開発されたグランドコンプリケーションとなります。
何度か言及しているように、コンプリケーションは非常に複雑な機構をしているため、衝撃に弱く壊れづらいです。
しかしながらこの240系は実用面でも改良が進められているため、耐衝撃性が考慮された仕様となります。
とは言え定価は1千万円超え。なかなか普段から気軽に使える時計とは言えませんので、入手した方は大切に使いましょう。
グランドコンプリケーション パーペチュアルカレンダー 5159J-001
型番:5159J-001
素材:イエローゴールド
ケースサイズ:直径38mm×厚さ11.8mm
文字盤:シルバー
駆動方式:自動巻き(Cal.324S QR)
現行グランドコンプリケーションの中でも、屈指のデザイン性と複雑性を誇るのがこちらのモデルです。
文字盤中央にはポインターデイトがセッティングされていますが、こちらはレトログラード機構となっており、その月の末日を過ぎると、また一日へとフライバックするユニークなものです。
もちろんパーペチュアルカレンダーですので、小の月や閏月でも手直しは必要ありません。
このムーブメントはCal.324をベースにして開発されており、ヒンジ付きケースバックを開くと、オーナーがその意匠を確認することが可能です。
全てにおいて至高のグランドコンプリケーションと言えるでしょう。
まとめ
時計好きはもちろん、世界中のセレブやエグゼクティブを魅了する、パテックフィリップについて徹底解説いたしました。
パテックフィリップは何においても世界最高峰であること。とりわけ時計製造技術においては、コンプリケーションや超薄型自動巻きムーブメント、美しい外装など、他社の追随を絶対に許さない強みを持っていること。
値段は高額ですが、その分の資産価値もまた絶大であることなどをご理解いただけたでしょうか。
文中でも述べたように、パテックフィリップは製造本数が多いとは言えず、欲しいモデルをすぐに入手できるとは限りません。そのため、出会った時にこれだ!と思ったら、すぐにご購入になることをお勧めいたしております。
当店GINZA RASINでは、48回まで無金利のショッピングローンキャンペーンを提供しておりますので、ぜひ一度ご相談くださいませ。