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超高級時計 リシャールミル。高いのになぜ売れる?その驚きの価格やブランド戦略を徹底解説!
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2001年に創業した超高級時計ブランド・リシャールミル。その誕生以来、何かと時計業界の巷間で取り沙汰されてきたものでした。
とりわけ価格面での話題には事欠きません。平均単価は2000万以上、モデルによっては億超えが当たり前という衝撃プライスで、「最も盗難に気をつけなくてはいけない高級時計」のトップ5に名を連ねるとか連ねないとか。
そんな中でよく頂くお問合せが、「なぜリシャールミルはこんなに高いのか?」です。
近年、多くのブランドが高価格帯路線に舵を切っているとはいえ、平均価格が2000万円超などと言うリシャールミルは異例中の異例。「本当に価値があるの?」「売れているの?」といった疑問点も併せて頂いております。
結論から申し上げますと、売れています。
そして、多くの時計メディアや時計業界人が、リシャールミルの価格帯について「適正」とし、好意的に見ていることも事実です。
この理由は、リシャールミルは確かに価格も超ド級ではあるものの、製品自体もブランド戦略も超ド級であることから見出していけるでしょう。
そこでこの記事では、超高額時計を世に放ち続けるリシャ―ルミルの凄さと、「なぜこんなに高いのか?」かつ「なぜこんなに高いのに成功しているのか?」この秘密について解説いたします。
目次
超高級時計リシャールミルの価格はどれくらい高いのか?最高額は?
高い高いと言いつつも、リシャールミルの製品はいったいどの程度の価格帯なのでしょうか。
高額順に並べてみました!
モデル画像 | 商品名/型番 | 素材 | 定価 |
---|---|---|---|
トゥールビヨン サファイア RM56-02 | サファイアクリスタル | 2億800万円 | |
トゥールビヨン バイブレーションアラーム RM53-01 | グレード5チタン×カーボンTPT | 1億3200万円 | |
トゥールビヨンスプリットセコンド クロノグラフ RM50-02 | チタン・アルミニウム合金 | 1億3120万円 | |
トゥールビヨンスプリットセコンドクロノグラフ キミ・ライコネン RM50-04 | グレード5チタン×カーボンTPT | 1億2300万円 | |
ウルトラライト トゥールビヨン スプリットセコンドクロノグラフ マクラーレンF1 RM50-03 | グラフTPT | 1億1270万円 | |
トゥールビヨン ファレル・ウィリアムス RM52-05 | グレード5チタン×カーボンTPT | 1億1200万円 | |
トゥールビヨン アドベンチャー シルヴェスター・スタローン RM25-01 | グレード5チタン×カーボンTPT | 1億1060万円 | |
トゥールビヨン クロノグラフ アヴィエーション RM039 | カーボンTPT | 1億750万円 | |
トゥールビヨン パブロ・マクドナウ RM62-01 | カーボンTPT | 1億230万円 | |
トゥールビヨン アラン・プロスト RM70-01 | カーボンTPT | 9400万円 | |
トゥールビヨン エロティック RM69 | チタン | 8334万4千円 | |
トゥールビヨン Gセンサー セバスチャン・ローブ RM36-01 | チタン合金×ブラウンTZPセラミックス | 6100万円 | |
トゥールビヨン ワールドタイマー ジャン・トッド RM58-01 | グレード5チタン×18Kレッドゴールド | 5775万円 | |
スプリットセコンド クロノグラフ RM65-01 | カーボンTPT | 3260万円 | |
ライフスタイル フライバック クロノグラフ RM72-01 | 18Kレッドゴールド | 2860万円 | |
フライバッククロノグラフ デュアルタイム RM11-02 | チタン | 2008万8千円 | |
ワールドタイマー RM63-01 | 18Kローズゴールド | 1740万円 | |
ワールドタイマー RM63-02 | チタン | 1420万円 | |
ヨハン・ブレイク アルティメット・エディション RM61-01 | ホワイトクオーツTPT×カーボンTPT | 1730万円 | |
フライバッククロノグラフ デュアルタイム RM11-02 | チタン | 1695万6千円 | |
オートマティック エキストラフラット RM67-01 | 18Kローズゴールド | 1280万円 | |
オートマティック エキストラフラット RM67-02 | クオーツTPT×カーボンTPT | 1390万円 | |
バッバワトソン RM055 | チタン・ホワイトラバー | 1296万円 |
画像出典:https://www.richardmille.com/ja
※参考定価となります。後述しますがリシャールミルは少量限定生産が基本となるため、生産終了モデルを含みます。
今回お調べしたところ、最高額は2億超え・・・また、近年の新作を中心に億超えが珍しくなく、超高級時計の名も伊達ではないと感じますね。
いったいなぜ、これだけ高いにもかかわらず、リシャールミルは売れているのでしょうか。次項より解説いたします。
超高級時計リシャールミルとはどのようなブランドか?
前項でご紹介したように、まさに超ド級の価格帯で他を圧倒するリシャールミル。2001年に誕生した、比較的新興のブランドです。
バーゼルワールド2001で発表した処女作はRM 001。トノー型のケースにスケルトナイズされた文字盤(と言うか取り払われた文字盤)からは、トゥールビヨンが垣間見えるなんとも衝撃的な逸品でした。
今でこそウブロやタグホイヤーを中心に文字盤がスケルトナイズされた機構は人気のデザインコードとなっていますが、当時としては内部をむき出しにするなどといった考え方は常識外。もっとも1900万円という価格設定の方にも心底驚かされたことは想像に難くありません。
※初代リシャールミル RM001 トゥールビヨン(画像出典:http://www.richardmille.jp/watch/RM-001_TI_LTD.html)
リシャールミルの創業者は、幾多のラグジュアリーブランドでマネージャーを務めたリシャール・ミル氏。ちなみにこのラグジュアリーブランドにはフランスの名門ジュエラー・モーブッサンなどが名を連ねます。
リシャール・ミル氏は時計職人でもなければ時計デザイナーでもありません。モーブッサンでは時計部門を担っていたため、もちろん時計に対する造詣の深さは申し分ありませんが、氏曰く、自身は「ウォッチコンセプター」である、と。
そのため同社では、リシャール・ミル氏が考案したコンセプトに従って、時計製造・販売が行われているのです。
そしてこのコンセプトは、ブランドの根幹にある理念「エクストリーム・ウォッチ―過激、極端な時計―」を主軸としています。これは2001年の創業以来、変わらぬ理念だと言います。
出典:https://www.richardmille.jp/
リシャールミルはエクストリーム・ウォッチを一貫して作り続けてきたことで、下記のようなブランドイメージを定着させました。
「超軽量かつ衝撃にきわめて強い複雑機構(トゥールビヨン)」
「時計界のF1」
「スポーツ界や銀幕の世界のスターたち―ラファエル・ナダル氏,パブロ・マクドナウ氏,シルヴェスター・スタローン氏など―が愛するブランド」
このエクストリーム・ウォッチ、ただ奇抜だとかそんなものではありません。詳細は後述しますが、F1カーや航空機並みに製造コストのかかる製品です。
エクストリーム・ウォッチにこだわり抜くことでリシャールミルは大量生産とは無縁の、限定的かつ超高価格帯路線を突き進み、時計業界の中で競争優位性を獲得するに至ったのです。
「なぜリシャールミルは高いのに売れているのか」
この秘密は、エクストリーム・ウォッチとはいったい何なのかを知ることで紐解かれていきます。
リシャールミルの時計はなぜ高いのに売れているのか?
リシャールミルが登場した2001年、一本1900万円という価格に、誰もが驚きを禁じえませんでした。
当時1000万円超えというプライスレンジの時計が無かったわけではありません。しかしながら、それらはゴールドやプラチナケースにコンプリケーションを搭載した、とか、ハイジュエリーウォッチとか、コンプリケーションを幾重にも重ねたものとか、日用品と言うよりも工芸品・家宝の側面が強い製品ばかりでした。
しかしながらリシャールミルは「デイリーユース」として、貴金属や貴石を使っていないモデルを1900万円で打ち出したのです。当初は「聞いたこともないブランドの超高額時計なんて、誰が買うんだ?」と言われました。でも、蓋を開けてみれば、この処女作のファーストロット17本は、瞬く間に完売しています(しかもうち、初期不良は一本だけだったとか)。
リシャールミルはその後、著しく急成長を経て、トップクラスの高級時計ブランドへとのし上がります。むしろリシャールミルに時計業界全体が追随し、高価格帯に舵を切るようになりました。
なぜ、リシャールミルは荒唐無稽とも思われる価格で、成功したのでしょうか。なぜリシャールミルの時計は高いのに売れるのでしょうか。
それは、エクストリーム・ウォッチを実直に作り続けてきたからに他なりません。
エクストリーム・ウォッチは、基本的に以下の哲学を踏襲しています。
「全く新しい素材イノベーション」
「唯一無二の技術」
そしてエクストリーム・ウォッチを売れるモデルにするために、「巧みなブランド戦略」を行ってきたことも、リシャールミルを現在の成功へと導くこととなりました。
それぞれを解説いたします。
①全く新しい素材イノベーション;腕時計のF1を目指す
出典:https://www.richardmille.jp/watch/RM-11-03_TPT_BK.html
前述したリシャールミルの理念「エクストリームウォッチ」のうちの一つの考え方に、「腕時計のF1を目指す」というものがあります。
F1マシンは莫大な資金を投資し、最先端の素材、技術、設備を使用して製造されています。そのF1マシンになぞらえ、リシャールミルは「全て最高品質のパーツ」を集めた、究極の腕時計を完成させようと考えたのです。つまり、全てにおいて究極を目指した時計がエクストリームウォッチといえます。
この「腕時計のF1」は、ただの喩えではないところがミソ。実際にリシャールミル製品には、航空機体やF1の車体に用いられる最先端の素材が使われています。
と言うのも、ネジや歯車といった内部パーツがチタンやカーボンといった従来ではありえない素材で作られているのが最大の特徴です。この素材へのこだわりこそがリシャールミルの脅威的パフォーマンスに繋がっています。
こういった、これまで時計業界ではありえなかったような新素材を使うことによって、「低負荷」「軽量」といった日常使いにおける高い実用性を獲得することとなりました。機械式時計でありながら、この軽さを誇る時計はリシャールミル以外には作れないでしょう。
「低負荷・軽量」という特徴を持つリシャールミルですが、「耐久性」の高さも脅威的です。
リシャールミルの凄さがわかるのが、耐久性を限りなく向上させたトゥールビヨンモデル。先ほども少し触れましたが、リシャールミルのトゥールビヨンは、見た目の鮮烈なインパクトのみならず「投げても壊れない」ことでも大きな話題を呼びました。
そもそも機械式時計自体が繊細なモノであり、衝撃を与えると普通は壊れてしまいます。ましてや複雑機構を搭載したモデルなら尚更のことです。
しかし、その常識を覆したのが「リシャールミルの技術」。まさに世界最高峰の技術で作られた究極の時計といえるでしょう。
ちなみに現在ではリシャールミルは必ずしも「投げても壊れない」ことにこだわってはいませんが(そもそもリシャールミルのコンセプトありきのため、投げても壊れないは当時のコンセプトに必要であったがゆえで、ブランドの理念ではない)、ブランドイメージとして「軽量」「丈夫」なトゥールビヨンが根付いています。
出典:https://www.facebook.com/richardmille.watches
なお、この素材こそがリシャールミル製品が超ド級の高価格帯になっている理由の一つです。
開発に莫大なコストと手間がかかり、かつ少量生産しか出来ない理由、それはリシャールミルの時計は最高級の素材しか使われていないため。実はネジ一本製作するのに20回以上ものトライ&エラーが繰り返されているほど、品質に拘っています。
よく戦略として製造本数をあえて抑えて、稀少価値を高めるブランドがありますが(ロレックスなど)、リシャールミルは「本当に数を作れない」んだ、とのことです。
実際に使う素材も、チタンもグレード5の最上位なものが使われ、その他もARCAP合金、LITAL合金等といったハイテク素材のみを使っているのですから、リーズナブルな価格で済むわけはありませんね。
リシャール・ミルの時計は1000万円を超えるものがほとんどであり、中には「家」が買えるほどのモデルも存在します。でも、それらが「適正価格」であることがおわかりいただけたかと思います。
②唯一無二の技術
出典:https://www.facebook.com/richardmille.watches
ブランドが成功する一つの要因に、「競争優位性」というものがあります。
この競争優位性は様々で、例えば「価格が安い」とか「オシャレ」とか「知名度が格段にある」とか。優位性が他社よりも抜きんでていればいるほど、そのブランドの競争力は高いことを示唆しています。
リシャールミルの競争優位性は、ほとんど誰も真似できない技術にあります。それは前述した素材にも言えることですが、自社の理想のコンセプトを実現するためには、徹底した技術革新を怠りません。
その一つが、今やリシャールミルの代名詞ともなっている、「世界最軽量のトゥールビヨン」です。ちなみに処女作のRM 001はトゥールビヨンでしたが、世界最軽量ではありませんでした。
同機構の軽量化が図られたのは、2004年にリリースされたRM 006からです。
出典:https://www.instagram.com/richardmillejapan/
リシャールミルが誕生するまで、トゥールビヨンは鑑賞用のような役割がありました。
2000年代初頭と言うのは多くのブランドがコンプリケーション合戦をしていたような時代でしたが、決して実用的なものが多いとは言えない状況です。機械が複雑になればなるほど時計は衝撃や磁気、水・湿気などに弱くなります。もちろんこういった工芸品のような側面も伝統的な機械式時計には必要なのですが、一般受けは難しいと言えるでしょう。
実際、トゥールビヨンを搭載したモデルは、「デイリーユースではない」と言い切る方もいらっしゃるほどです。拍手をしたら壊れた・・・なんて逸話も。
しかしながらリシャールミルは、「投げても壊れない」というコンセプトのもと、あの複雑機構の代名詞的存在であるトゥールビヨンを、実用化させてしまうのです。この功績は、時計業界にとって非常に大きいものがあります。
事実、リシャールミルが登場して以降、「安価なトゥールビヨン」「薄型トゥールビヨン」など、実用化が促進されました。
ちなみに言うは易し、と申しますが、軽量化と耐衝撃性の向上を両立することはきわめて困難です。通常、時計を堅牢にしようと思った時、ケースをしっかりとした構造にすることが求められます。ねじ込み式裏蓋を採用したり、ケースに厚みを持たせたりすることで、時計は重量を持つこととなります。
そのためトゥールビヨンの軽量化・実用化などは、例え思いついたとしても、誰もができることではありませんでした。
リシャールミルは前述した革新素材を採用することで、この試みに挑戦し、成功を遂げてきたのです。
出典:https://www.facebook.com/richardmille.watches
なお、リシャールミルはこういったコンセプトを実現するために、必ずしも「自社製造」にこだわらないことも他社とは一線を画しています。
リシャールミルでは優れたサプライヤーを見つけ出し、自社製品を作り上げるために必要なパーツ・ムーブメントを外注していることが大きな特徴です。「餅は餅屋」とでも申しましょうか。2013年にはパーツ工房が設立されていますが、同社自身が今なお自社で全てを製造する必要はない、と豪語しています。
最たる強力な味方はムーブメント工房のルノー・エ・パピではないでしょうか。現在オーデマピゲ傘下にある名門工房で、リシャールミルのトゥールビヨンムーブメントは誕生しました。
近年マニュファクチュール(自社で時計のムーブメントや外装を一貫製造すること)は多くの高級時計ブランドの一つのブランディングです。
自社で優れた製品(その中心はムーブメント)を一貫製造できることが一つの付加価値となっており、自社製ムーブメント搭載機はそうでないモデルに比べ、一般的にはハイエンドの位置づけとなります。
つまり、リシャールミルはその潮流の真逆を突き進んでいる、ということです。
理想のコンセプト、そしてエクストリーム・ウォッチのために世間一般のマーケティングに追随せず、やりたいこと・作りたいものを作っている姿勢が、リシャールミルの唯一無二のアドバンテージを形成していると考えられます。
③巧みなブランド戦略
出典:https://www.instagram.com/richardmillejapan/
これまでリシャールミルのエクストリーム・ウォッチについて解説してきましたが、製品は「良い物が売れる」とは限りません。そこには緻密なブランド戦略が求められます。
リシャールミルでは前述した「競争優位性」に加えて、アンバサダー戦略でも成功を確立してきたブランドです。
リシャールミルを身に着けている芸能人・有名人が気になる、という声を耳にしたことはありませんか?なぜなら、リシャールミルの時計は真の成功者が身に着ける時計として、近年その人気を高めているためです。
国内だけでもZOZOTOWNで高名となった前澤友作氏や秋元康氏、海外に目を向けると俳優のジャッキー・チェンさんやケビン・ハートさん、アーティストのファレル・ウィリアムスさんやカニエ・ウエストさんなどが挙げられます。皆さん成功している方々ばかりですよね。
とりわけスポーツ選手に絶大な支持を集めているのもリシャールミルの特徴です。
「プロテニスプレーヤー:ラファエル ナダル氏」「プロサッカー選手:ネイマール氏」「元プロバスケットボール選手:マイケルジョーダン氏」「プロF1レーサー:キミ・ライコネン氏」など、そうそうたる顔ぶれのスポーツ選手に愛用されています。
これは、リシャールミルのブランドアンバサダー(同社曰くパートナー)を務めているから、と言うのもあるのですが、同社のこの戦略が他社とは異なります。
と言うのも、リシャールミルはあるコンセプトを打ち出し、実際にその道のプロに使ってもらうことによって自社製品の認知度を高めるとともにその性能をアピールする、という戦略をとっているのです。
例えば2012年に発表され、テニスプレイヤーのラファエル・ナダル氏が試合中に着けていたことで話題となったRM027。実はこれ、リシャールミルがナダル氏のために「テニスプレイ中に着けても壊れないトゥールビヨン」というコンセプトのもと、開発したという経緯があるのです。実際、ナダル氏は「第二の肌」と称し、プレイ中も着用していました。
出典:http://www.richardmille.jp/watch/RM-027_BK.html
また、2017年に発表されたRM50-03も名機として名高いですが、これはF1チーム「マクラーレン」のために、「F1レース中に着けても壊れないトゥールビヨン」というコンセプトのもとで開発されており、ナダル氏の例と同様、実際のレース中に使用されていました。
私は、ただ壊れづらいだけでは、リシャールミルはここまで成功しなかったと思います。誰もが憧れるブランドアンバサダーを起用し、実際に使用してもらうことでリシャールミルの認知度を上げるとともに、リシャールミルの時計=なんだかすごい時計という方程式を認知させた、と言えるでしょう。
出典:https://www.richardmille.jp/blog/?p=773
こういった、誰もが憧れるブランドアンバサダーが自社コンセプトを実現した、というプロモーションに成功したことによって、リシャールミルは主なアピール先であったスポーツ界と太い繋がりを持つに至ります。
そうして有名選手がリシャールミルを着用するようになったことで、世間でも一流選手=リシャールミルが認知され、今ではリシャールミルは「一流が着ける」とも言われるようになりました。
④正規認定中古制度というブランド戦略
もう一つ、リシャールミルならではのブランド戦略をご紹介して、筆を置きたいと思います。
「認定中古」という用語を、中古車のご購入で耳にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。
これは時計業界でも始まりつつある流れで、メーカー自身が認定した中古、といった意味合いになります。そのため消費者にとってはメーカーのアフターサービスが受けられ(新品ほどではないにせよ)、かつ人によっては安心感が得られる、と言う方もいらっしゃるでしょう。
現在、フランクミュラーやオーデマピゲなどが参画していますが、実はリシャールミルも認定中古制度を始めました。
これは、実はメーカー側にもメリットがあります。
なぜなら、ブランド価値を維持するのに一役買うためです。
出典:https://www.instagram.com/richardmilleofficial/?hl=ja
中古市場は年々拡大しています。
メルカリやヤフオクなどオークションサイトの出現で、USED品の売買がより身近になったこと。サスティナビリティ(持続可能性)など地球環境にとっても有意義であること。何よりリシャールミルのような人気の高級時計であれば、年月を経てもデイリーユースに足る機能を保っているにも関わらず、新品よりもずっと安価に購入できることなどが拡大の大きな理由です。
一方で中古品が市場にたくさん出回ると、ブランドが設定したい相場から乖離してしまう傾向にあります。
中古は正規定価に縛られないため並行輸入店などが仕入れ値で価格をつけており、どうしても新品に比べて安価になり、結果として「この安さが当たり前」になってしまいかねないためです。
そこで「正規認定中古制度」としてメーカー自身が中古販売に加わることで、メーカーが自社製品の中古の価格をつけることができ、多少割高になってもメーカー保証を約束する、とすることで差別化を図っているのです。
これは賛否両論もあり、決して一般的と言える手法ではありません。
しかしながらこれらの戦略で以てリシャールミルは成功を収めていき、年々時計業界でシェアを拡大していっていることは周知の通りです。
むしろ年々新作を意欲的に発表しており、その成長は止まりません。
まとめ
一切の妥協を許さず、コストを度外視して作られた究極の時計。それがリシャールミルが作り上げたエクストリームウォッチです。1000万円を超える価格で作られる時計達は、真の成功者が身に着ける時計として、雲上時計ブランドとは別のベクトルで時計界の頂点に君臨しています。
一般の方がリシャールミルの時計を身に着けることはなかなか難しいですが、「こんな時計も存在するんだ!」と超高級時計にも興味を持って頂けたなら幸いです。
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年