2023年はロレックスで最も話題性が高いと言って過言ではないデイトナの60周年。この節目の年に同コレクションのフルモデルチェンジが敢行されたことは、記憶に新しい方も多いでしょう。
新型デイトナへの興奮冷めやらぬ間に、さらにロレックスは特別なデイトナを発表しました!ロレックスが公式計時を務めるル・マン24時間レース100周年を寿ぐ逸品です。しかも、往年の「エキゾチック」ダイアル―通称ポール・ニューマンダイアル―のモチーフを伴って!
この記事では、新しいデイトナ 126529LNについて解説いたします!
出典:https://www.rolex.com/ja
目次
ル・マン24時間レース100周年を祝したロレックス デイトナ 126529LN スペック
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径40mm |
素材: | ホワイトゴールド |
文字盤: | ブライトブラック |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.4132 |
パワーリザーブ: | 約72時間 |
機能
防水: | 100m |
定価: | 要問合せ |
ル・マン24時間レース100周年を祝したロレックス デイトナ 126529LN 概要
ル・マン24時間レースは、デイトナ24時間レースおよびスパ・フランコルシャン24時間レースと並んで、世界三大耐久レースの一角を担います。さらにル・マン24時間レースは、この三大レースの中で最も有名と言って良いでしょう(ちなみにモナコグランプリとインディ500と並んで世界三大レースとも)。
1923年に初開催された当レース、2023年で100周年を迎えました。今年もフランスのル・マン24時間サーキットで6月10日からレースがスタートしましたが、序盤戦からの多数のクラッシュや降雨もあり、なかなか目が離せない展開となっております。
この100周年ル・マン24時間レースの開催に合わせて、同レースの公式計時を務めるロレックスから特別なデイトナが発表されました!ホワイトゴールド製のRef.126529LNです!
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ちなみにデイトナの正式名称はコスモグラフ デイトナで、1963年に誕生したロレックスのクロノグラフ・コレクションです。
「コスモ(宇宙)グラフ」の名称からも予想できるように、もともとは宇宙開発での携行を視野に入れて開発されたコレクションと言われています。当時アメリカ・旧ソ連で宇宙開発競争が繰り広げられており、また人工衛星や有人飛行が現実のものとなりつつあったことから、宇宙市場でのシェア拡大が目論まれていたのかもしれません。しかしながら実際は宇宙ではなく、やはりその当時世界中で熱狂していたモータースポーツ分野でデイトナの才能を開花させていくこととなりました。
もともとロレックスのクロノグラフ自体は1950年代から製造されており、初期デイトナにはデイトナ表記がなく「コスモグラフ」とのみ表記された個体もあるのですが、1962年、アメリカ フロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイのオフィシャルタイムキーパーに就任したロレックスは、翌年新たにモデル名にデイトナを加え、レーシングスピリットを全面に押し出したプロモーションを行ったのです。
堅牢で信頼性の高いデイトナ、モータースポーツとの相性が悪いはずがありません。以降のロレックス史の中で、デイトナはモータースポーツと深い関連性を築いていきます。前述の通りロレックスがル・マン24時間レースやデイトナ24時間レースのオフィシャルウォッチであることも然り、ですが、レーサーらもまたデイトナを愛しました(当24時間レースの勝者には特別なデイトナが贈られるのだとか)。
とりわけポール・ニューマンという人物はご存知の方も多いでしょう。
ポール・ニューマンは『ハスラー(1961)』『明日に向かって撃て!(1969)』等で有名な俳優ですが、映画監督や実業家といった面でも高名です。また、レーサーとしても活躍しており、デイトナ24時間レースで5位、ル・マン24時間レースでは2位といった結果を残しました。
詳細は後述しますが、このポール・ニューマンが身に着けていたデイトナは、エキゾチックダイアルと呼ばれる文字盤を持つことが大きな特徴でした。そのため、ポール・ニューマンダイアルなどといった呼び名でも親しまれています。
※ポール・ニューマンダイアルを有したデイトナ Ref.6239。ミニッツサークルが赤く彩られていることから、赤巻きとも呼ばれていました
2023年のル・マン24時間レース100周年と合わせて発表された新作デイトナは、このエキゾチックダイアルのモチーフがインダイアルに用いられていることでも、ファンの胸を熱くしています。
さらにケース・ブレスレットともにホワイトゴールド製でありながらも、往年の手巻きデイトナを彷彿とさせるセラクロムベゼル―もっとも、ポール・ニューマンが実際に使用したモデルはメタルベゼルだったようですが―を搭載させており、特別感は満載です。
前置きが長くなりましたが、次項で新しいデイトナ 126529LNの詳細を見ていきましょう!
ル・マン24時間レース100周年を祝したロレックス デイトナ 126529LN 詳細
2023年、100周年を迎えたル・マン24時間レース開催とともにローンチされた新作デイトナ 126529LNのポイントは以下の通りです。
・特別なデザインコード
・往年のヴィンテージモデルのモチーフ
・新型クロノグラフムーブメントCal.4132(4131ではなく!)
それぞれをご紹介いたします。
①特別なデザインコード
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多くのコレクションでロレックスは、デザインの大幅な刷新を行うことは稀です。
そのため2023年にフルモデルチェンジした新型デイトナも、本項でご紹介する特別なデイトナ 126529LNも、デザインコードは既存のそれと大きく変わりません。シンプルながらレーシーな顔立ち。ねじ込み式リューズとプッシュボタン。そしてケースはポリッシュ仕上げが基調となっており、随所のサテン仕上げとのコンビネーションによって高級機らしい立体感を醸し出しているのは、いつも通りクールなデイトナです。
しかしながら、愛好にはたまらない「新しい」「特別な」デザインが、随所に見受けられます。
その一つが、ケース・ブレスレットともにホワイトゴールド製でありながらも、セラクロムベゼルが搭載されていることではないでしょうか。
セラクロムベゼルはロレックスのハイテクセラミック製ベゼルで、スケールがプラチナまたはゴールドで薄くPVDコーティングされていることを特徴とします。現在ロレックスのプロフェッショナルモデルの多くに搭載されている素材で、デイトナでは2016年の116500LNを皮切りに用いられるようになりました。セラクロムベゼルを用いたデイトナがリリースされた折、往年の「手巻きデイトナ時代のプラベゼル」を彷彿とさせる、と大いに話題になったものです。
と言うのも、デイトナは1988年に自動巻きクロノグラフがリリースされて以降はメタルに直接タキメータースケールを印字したベゼルが用いられてきたのですが(こちらも、とてもかっこいい)、それ以前の手巻き時代にはベゼルインサートにプラスティックを用いたバリエーションが展開されておりました。
セラクロムベゼルモデルの登場が、このプラベゼルを思わせるというわけなのですが、さらに2023年のモデルチェンジでセラクロムベゼルにメタルのフチ取りができたことで、いっそう手巻きデイトナ時代に近づくこととなります。実際ロレックスも「1965年モデルをイメージさせる」と称します。
ただしセラクロムベゼルが搭載されたデイトナは、ステンレススティール製、プラチナ製、そしてゴールド製の中ではオイスターフレックスと組み合わされたモデルがメインでした。
しかしながら今回発表されたデイトナ 126529LNでは、オールホワイトゴールドの外装にセラクロムベゼルが搭載されています!プラチナ製デイトナも素晴らしいですがアイスブルー文字盤のみの展開です。よりシックな印象となる、サンレイ仕上げが施されたブライトブラック×ホワイトダイアルのパンダ文字盤の126529LNに惹かれるファンは多いのではないでしょうか。なお、タキメータースケールがSSモデル同様にメモリがプラチナコーティングされますが、「100」はレッドセラミックとなっており、ル・マン24時間レースの100周年という節目を強調します。
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ケース直径は従来通り40mmサイズです。
ただしケース厚は、既存コレクションが11.9mmにサイズダウンしたことに対し、126529LNは12.2mmほどと僅かに厚くなっているとのこと。もっとも旧型116500LNと同程度ですので、厚すぎるとかそういったことはありません(むしろクロノグラフモデルとしては薄型)。
さらに言うと、9時位置のインダイアルは従来12時間積算計でしたが、やはりル・マン24時間レースを彷彿とさせる特別な24時間積算計にモデファイされています。
②往年のヴィンテージモデルのモチーフ
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前項でも言及しているように、126529LNには往年のヴィンテージモデルに見受けられたモチーフが採用されていることも、特筆すべき点です。そのモチーフとは、エキゾチックダイアル―またの愛称をポール・ニューマンダイアル―です。
俳優であり、映画監督であり、レーサーでもあったポール・ニューマン。
実際にポール・ニューマンが身に着けていたデイトナの個体はRef.6239で、女優ジョアン・ウッドワードからプレゼントされたと言います。ポール・ニューマンもこの時計を愛用していたようですが、1984年を境に着用が見られなくなったため、紛失してしまったのでは?などと囁かれることもありました。
しかしながら2017年10月26日、フィリップスによってアメリカ ニューヨークで開催されたオークションにて、ポール・ニューマンが所有していた伝説のデイトナが出品。腕時計の最高落札額(当時)となる約20.3億円で競り落とされました。どうもポール・ニューマンは、自身の子女のボーイフレンドであったジェームズ・コックスにデイトナ Ref.6239を譲っていたようです。
ポール・ニューマンが愛用していたのはRef.6239ですが、実際にポール・ニューマンダイアルと言った時は、1960年代初頭から1970年代頃まで製造されていた手巻きデイトナのバリエーション「エキゾチック・ダイアル」を指します。ちなみに文字盤製造メーカー「シンガー社」がデザイン・製造していました。
手巻きデイトナと言うと、ワンカラーベースの文字盤にバーインデックスが搭載されていますが、一方のエキゾチックダイアルは文字盤外周・インダイアルのカラーがベース文字盤とは反転しており、なんともエキゾチックな印象を醸し出すことが特徴です。外周のミニッツトラック部分は反転カラーであるのみならず、段差が設けられているので、メリハリある印象となっております。
また、インダイアルのスクエアマーカーのトラックも特徴的ですね。
このインダイアル部分が、新しいデイトナ 126529LNで採用されているのです。
なお、ポール・ニューマンダイアルというとホワイトカラーの文字盤をベースにインダイアルがブラックとなった個体が思い浮かぶかもしれませんが、第1、第2世代のデイトナにブラックが存在します。希少なホワイトよりもさらに希少となっており、コレクターズアイテムとして名前が挙がります。2023年モデルはベースがブラックとなることで、そんな希少モデルをも感じさせる逸品に仕上がりました。
ポール・ニューマンダイアルのモチーフを採用した特別なデイトナ 126529LN・・・ロマンが溢れますね!なお、新型デイトナはインダイアルのトラックの幅が細くなりましたが、126529LNはサークルがないため、また印象が変わってきます。
余談ですが、ポール・ニューマンダイアルはあまり製造数が多くないにもかかわらず、昔は結構気軽に交換などされていました。そのため希少性はきわめて高く、市場価格も青天井の状態です。コピー品なども出回っていますので、ヴィンテージモデルを購入する際は要注意です!
③新型クロノグラフムーブメントCal.4132
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プラチナデイトナ同様、126529LNでもシースルーバック仕様となっております!
手巻きチェリーニ プリンスを除き、ロレックスはソリッドバックを基調としてきました。しかしながら2023年、新型プラチナデイトナおよび新コレクションとなる1908でシースルーバックモデルをリリース。コート・ド・ジュネーブ装飾(縦じまのような装飾)が施された受け板や、肉抜きされたゴールド製のローターは、特別な高級機であることをいっそう私たちに伝えてくれます。
なお、ムーブメントも従来のCal.4130からCal.4131へとアップデートされました。
高精度クロノメーター認定の、日差±2秒の正確さ(検査環境下)やパワーリザーブ約72時間、耐磁性・耐衝撃性に優れたパラクロム・ヒゲゼンマイなどといったスペック面は大きく変わりません。しかしながらCal.4131、ロレックス曰く「前身のキャリバー 4130が備えていたすべての技術を採用し、さらに向上している」とのこと!この言葉通りCal.4131は、エネルギー効率が高められたクロナジー・エスケープメントや独自の耐震装置パラフレックス・ショックアブソーバー、そして最適化されたボールベアリング(自動巻きのゼンマイ巻き上げの要ともなるローターの、軸で用いられる軸受け)が標準装備となりました。なお、パーツ点数が低減されているのも特筆すべき点です。
さらに特別なデイトナ 126529LNでは、Cal.4132の番号が振られました。
やはりCal.4131とスペックは変わりませんが、9時位置の12時間積算計が24時間積算計に変わったことで変更されたと思われます(歯車の回転速度を変更するため)。
④価格
価格はプラチナデイトナ同様に「要問合せ」。限定生産などといった言及はありませんが、非常に希少なモデルであろうことは想像に難くありません。
もっとも近年のデイトナは、いずれも品薄傾向が強く、ほとんど全てのモデルで正規店での入手は困難と言って良いでしょう。新型デイトナが市場に出回ったという話は記事執筆時点ではまだ聞いていませんが、市場流通価格は定価を大きく上回るであろうこともまた、容易に推測できます。いわんや、特別なデイトナをや。
とは言え待望のポール・ニューマンダイアルモチーフ、ホワイトゴールドとセラクロムベゼル―特別なカラーリング入り―の融合、そしてシースルーバックともなれば、ロレックスファンとしては一度は実機を手にしてみたいところです!
まとめ
ロレックスがル・マン24時間レース100周年を記念して発表した、特別なデイトナ 126529LNについてご紹介いたしました!
往年のヴィンテージなディテールを組み込みつつ、新しいデイトナとしても完成されている当モデル。近年いっそう巧みになったロレックスのブランディングや、優れた開発力を感じさせます。
今後の出回りや市場動向に要注目ですね!
当記事の監修者
池田裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年