「ロレックス エクスプローラーIってⅡより人気なの?」
「エクスプローラーIの価値について知りたい」
「探検家」の名前を冠し、過酷な環境下でも優れた精度と視認性,堅牢性を発揮するエクスプローラーI。
性能面やデザイン面での評価の高さはもちろん、ロレックスの中では比較的お得に入手できるモデルということでも、幅広い年齢層のファンを獲得してきました。
しかしながら、近年ではこのエクスプローラーIの、市場の見え方が大きく変わっています。
と言うのも2021年にモデルチェンジが敢行され、注目度がいちだんと高まったためです。
そして注目度とともに高まり続けているのが、エクスプローラーI全体の実勢相場!
「価格の優等生」であったエクスプローラーIですが、今ではかつてとは全く異なる相場情勢を描いています。
そんなエクスプローラーIの価値について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
相場が上がっているということは、その分世界的な人気が上がっているということに他なりません。
この記事では歴代エクスプローラーIの過去の価格推移から、現在の人気と価値について解説します。
エクスプローラーIの特長についても解説しますので、ロレックスの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
※掲載している定価・相場は2023年1月現在のものとなります。
※当店に入荷した中古個体をもとに平均相場を採っております。状態・仕様によっては価格は上下します。
目次
ロレックス エクスプローラーIとは?
エクスプローラーIはサブマリーナなどと同年にあたる1953年、ロレックスから発表されました。
「探検家」の名前がつく通り、堅牢性や視認性に富んだ、プロフェッショナルモデルとなります。
1950年代当時は、こういったプロユースな腕時計が各社からラインナップされました。ブライトリングのパイロットウォッチ・ナビタイマー(1952年)。あるいはオメガの本格ダイバーズウォッチ・シーマスター300(1957年)などが有名どころです。
当時は深海や宇宙といった、人類未踏の地への開拓に世の中が湧きたっていたことがプロユースウォッチ誕生の背景として挙げられるでしょう。
エクスプローラーIもまた、この時代と自身の名を反映させた、大いなる冒険魂とともにローンチされています。
その冒険魂は同年に世界で初めて成功させられた、エベレスト登頂に起因するところも大きいですね。
1953年、イギリス登山隊が世界で初めてエベレスト登頂を成し遂げました。登山家エドモンド・ヒラリー卿とシェルパのテンジン・ノルゲイ氏が率いる登山隊の偉業です。ちなみにシェルパとはチベットの少数民族を指す用語ですが、ヒマラヤの案内人といった意味合いでも用いられます。
当時エクスプローラーIのプロトタイプが同登山隊に提供されており(ロレックスでは「オイスター」とのみ表明)、実際にエベレスト登頂時にこのロレックスウォッチが携行されていたと言われています。
ロレックスは「エベレスト登頂に携行された」ことをブランディングに大いに役立てます。すなわち、何人も征服できなかった過酷な地でも、正確な時刻を常時提供することで、探検家のサポートをする時計、と。
こういったロレックスのプロモーションの巧みさは、よく話題にのぼります。
しかしながらプロモーションだけでは終わらないのが、ロレックスが「実用時計の王者」とも称される所以。
ロレックスは1926年という早い段階から、「オイスターケース」の開発に成功していました。これはラウンド型防水ケースのパイオニア的存在です。高い防水性を有したオイスターは1930年代からヒマラヤ遠征隊で使用されており、1953年のエベレスト初登頂によって、ロレックスの信頼性が裏打ちされた形になったのではないでしょうか。ちなみにこのオイスターケースは1927年、イギリス人女性として初めてドーバー海峡横断を成し遂げたメルセデス・グライツ氏が、横断時に着用したことで大々的にプロモーションされました。
とにもかくにも、エクスプローラーIは以降、現代に至るまでその「探検家」としてのコンセプトとデザインコードを大きく変えず、ロレックスを代表する人気モデルとして君臨しています。
なお、わが国でもエクスプローラー人気は凄まじいものがありますが、人気の火付け役になったと言われるコンテンツがあります。
それが、月9ドラマ『ラブジェネレーション』です。
>1997年にフジテレビ系列で放送されたトレンディドラマで、主演の木村拓哉さんが当時の現行エクスプローラーI Ref.14270を着用していたことから大ヒット。一時期店頭では品薄が続き、並行価格が倍以上にも跳ね上がったとか!
こういった話題性はもちろん、エクスプローラーIの無駄の一切が省かれた、日付表示すら持たないシンプルさ。一方でケースの厚みは11mm前後に抑えられたスタイリッシュさは飽きの来ない、不変にして普遍の魅力として、人気に大いに貢献しています。
そんなエクスプローラーIはおおまかに分けると六世代となります。
- 初代 Ref.6350:1953年~1954年頃
- 二代目 Ref.6610:1954年~1958年頃
- 三代目 Ref.1016:1960年頃~1989年頃
- 四代目 Ref.14270:1990年~2001年
- 五代目 Ref.114270:2001年~2010年
- 六代目 Ref.214270:2010年~2021年(2016年にマイナーチェンジ )
- 七代目 Ref.124270および124273:2021年~
初代に関しては諸説ありますが、初めてロレックスのカタログに掲載された「エクスプローラー」として、Ref.6350を挙げさせて頂きました。
※1960年代にはイギリス市場でRef.5500、北米市場でRef.5504が発売されました。こちらは第二世代に当たりますが、ケース直径は34mmと通常版より2mm小さく、そのためボーイズエクスプローラーと呼ばれました。ただしRef.5504は当時のエアキングと同一リファレンスであったことから、ビッグエアキングと呼ばれることもあります。
この頃はまだエクスプローラーIのコレクションの土台が確立しておらず、販売拡大に向けて、様々な試行錯誤が採られたことが予想できます。
※また、三代目として長く製造されたRef.1016は、1957年に一度「スペースドゥエラー」として国内で販売された個体が存在します。1963年にマーキュリー計画(アメリカ初の有人宇宙飛行に関する一連の計画)の宇宙飛行士が来日したのを記念し、日本市場でのみ、ごく少量生産されたと言われています。
歴代ロレックス エクスプローラーIの価格推移と価値
エクスプローラーIはプロフェッショナルモデル(スポーツモデル)の中でも低価格帯に位置しており、またシンプル機能と相まって、初めてロレックスをご購入になる方にもお勧めできる一本です(そしてもちろん、腕時計を複数所有している通にも)。
とりわけ「価格の優等生」としての側面は絶大で、2018年頃からロレックス相場が全体的に上昇し始めた時であっても、落ち着いたプライスレンジを維持していました。
しかしながら2019年頃から、エクスプローラーIもまたジワジワと相場高騰。
さらに2020年頃から生産終了(モデルチェンジ)の噂が囁かれ始めたこと。加えて実際にモデルチェンジが敢行されたことから、今では立派なプレミアモデルの仲間入りを果たしています。
このように近年のロレックス相場の煽りは受けているものの、そもそもがデザイン・機能ともにベーシックなゆえ、純粋に人気を集めているといった声もあります(近年の価格高騰は、純粋な人気のみならず再販目的での購入マインドも見受けられる)。
また、確かに2021年から製造されている現行Ref.124270やその先代Ref.214270などは依然として高値ですがじょじょに落ち着いていること。また「100万円出さなくてはスポーツロレックスは買えなくなった」と言われている時代においても、歴代モデルの中にはまだお値打ちな個体も多いことから、今「買うのにねらい目」と言うこともできます。
そんなエクスプローラーIの、歴代モデルの価格推移を見て行きましょう!
冒頭でもご説明している通り、2017年~2022年12月までの価格推移を掲載致します。価格推移は当店GINZA RASINに入荷した中古モデルから一年間の平均相場を採り、グラフ化したものとなります。
中古時計は状態や仕様によって大きく価格が変動するためあくまで平均とはなりますが、ぜひ動向をチェックしてみてくださいね。
なお、エクスプローラーの初代・二代目(1953年~1960年代)の個体に関しては流通量がきわめて少なく、当店での入荷実績もデータが取れるほど多くはないため、割愛します。
また、1016は製造期間が長く、年代・仕様による価格差がきわめて大きいため、通常個体の直近の実勢相場とレア仕様の参考相場についてご紹介致します。
①エクスプローラーI 1016
ケースサイズ:36mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:自動巻きCal.1560またはCal.1570(ハック無・有)
防水性:100m(当時)
製造年:1960年頃~1989年頃
約30年に渡ってエクスプローラーIの顔を張ったRef.1016。現行エクスプローラーIのデザインの、礎を築き上げたモデルでもあります。
Ref.1016は従来モデルと比べて、いっそう「探検家」向きとなった世代です。
防水性は従来品の50mから100mへ向上。また針・インデックスも白へと改められます。ベースの黒とのメリハリが効き、現行デザインに近いことはもちろん、視認性が向上しました。
さらに特筆すべきはムーブメントです。
ロレックスのアンティーク市場を根幹から支えると言って過言ではない、名機Cal.1560および1570が搭載されることとなったのです。
このムーブメントについて補足すると、1960年代からロレックスで採用されていたクロノメーター認定機です。エクスプローラーIの他、サブマリーナやオイスターパーペチュアルなどにも搭載されてきました。
※クロノメーター・・・スイス公認クロノメーター検査協会。通称COSC。時計の規格の一つ。主に精度に関してテストを行い、認定機は高精度の象徴として「クロノメーター」を文字盤などに印字できる。なお、現行ロレックスはこのクロノメーター認定を前提に、独自のロレックス高精度クロノメーターを採用。
なぜアンティーク市場を根幹から支えていると言えるのか。
それは、アンティークと呼ばれる個体は、とにもかくにも経年への強さやメンテナンス性が求められるためです。
機械式時計は末永く愛用できるものです。だからこそ他のプロダクトと比べても、中古市場やアンティーク市場が活性化していると言えますね。しかしながら使用していくうえで定期的なオーバーホールが欠かせないこと。また修理の際に、パーツ交換が欠かせないことは知っておくべきです。
メーカーには「パーツ保有期間」があるため、アンティークウォッチとなると正規メンテナンスで必ずメンテナンス・修理できるとは限りません。
しかしながらロレックスの1500番台のムーブメントは長年定番であったため、修理ノウハウがよく出回っています。民間工房などでもメンテナンス対応できるケースが多く、それゆえ一大アンティーク市場を形成していると言えます。
もちろん1500番台ムーブメントが優秀ということもあります。
とりわけCal.1560は、フリースプラングテンプにあたる「マイクロステラスクリュー」をロレックスで初めて採用したムーブメントということもあり、長きに渡って安定的な高精度を維持することに定評があります。
フリースプラングテンプは現在、高級時計を中心に採用される精度調整方式です。
従来の緩急針に比べてヒゲゼンマイへの影響が少ない一方で、優れたパーツ精度や調整時に技術者の力量が試される機構でもあります。
現在ロレックスでは標準装備となるフリースプラングテンプですが、既に1960年代に確立していたのだから、その実用性への情熱には驚きを禁じえません。
このように傑出したムーブメントを搭載すること。また当時から既に堅牢な外装を実現していたことからRef.1016はアンティーク市場でよく売買されています。製造期間が長いゆえに流通量が豊富で、希望の個体に出会いやすいのもユーザーにとっては嬉しいですよね。
なお、エクスプローラーI 1016はCal.1560搭載モデルとCal.1570搭載モデルで、それぞれ「前期型」「後期型」に分類されます。
これはハック機能の有無の違いです。ハック機能とはリューズを引くと秒針が止まる機能のこと(ちなみに戦時下、兵士らが同時に時刻合わせする際の掛け声が「ハック!」であったことに由来)。Cal.1570にはこのハック機能が搭載されているため、実用性が向上したと言えます。
こういったムーブメントの違いや、後期型の方が年式としては新しいことから、前期型と後期型であれば、後者の方が需要・相場ともに高くなる傾向にあります。
この年代はコンディションや仕様によって大きく価格差が出るためあくまで参考となりますが、2023年1月現在、Ref.1016の前期型は180万円前後~、後期型の方は200万円台~といった相場感となっています。
なお、後期型の中でも1980年代後半に製造されたR番やL番シリアルはさらに高い値付けがなされることとなります。
さらに言うと、アンティークロレックスならではと言いますか。エクスプローラーI屈指のレア仕様もRef.1016には存在します。
代表的な仕様は前期型の中でも初期個体に見受けられる、ミラーダイアル。
ミラーダイアルとは現行のマットダイアルと比べて、鏡面のような質感を持つ文字盤のことです。
さらにミニッツサークルが配された上記個体は「MMダイアル」と称され、300万円前後の値付けとなることも!ちなみに上記の画像はMMダイアルに比べて6時インデックスの下に一点夜光が入った「6ドット」と呼ばれる、いっそう稀少なレア個体です。
その他では、ミラーダイアルがブラウンにエイジングしたトロピカルブラウンダイアル。ロレックスの王冠マークのロゴがまるでカエルの足のようになっていることから「フロッグフットダイアル」と称される個体が存在します。
アンティークエクスプローラーは「オリジナル性」も重視されます。
文字盤や針などが交換されていない、より当時に忠実な個体の市場価値が高くなる一方で、「価格の理由が見えづらい」といったお声も頂きます。
加えてアンティークエクスプローラーにはリダンされた個体なども存在するため、ご購入の際はアンティークモデルの売買実績を持つ信頼できるショップで、納得いくまで疑問点を解消してからご決断されることをお勧め致します。
②エクスプローラーI 14270
ケースサイズ:36mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:自動巻きCal.3000
防水性:100m(当時)
製造年:1990年~2001年
次にご紹介するのは、ロングセラーRef.1016の次世代機として1990年にローンチされた、エクスプローラーI 14270です!
冒頭でもご紹介致しましたが、俳優の木村拓哉さんがドラマ『ラブジェネレーション』でご着用されていたことから、日本国内でのロレックス人気を大いに盛り上がったことでも有名ですね。
Ref.14270では、Ref.1016にはなかったインデックスのメタルフレームが備わり視認性アップ。
さらに風防もサファイアクリスタルガラスへとアップデートされました。またCal.1570からよりハイビート化され、いっそう高精度な実用時計へと進化を果たしています。
ロレックスは生産終了モデルの価格が上がるとは言え、基本的に時計は精密機器。他の高級時計同様、高年式のモデルほど価格は高くなる傾向にあります。
これは裏を返せば、過去のモデルはお得に買える余地が高いということ!
エクスプローラーIにもこれは当てはまり、Ref.14270はそれ以降のモデルと比べて、入手しやすい相場感をまだ維持していると言えます。
とは言えRef.14270も、かつて40万円台で買えていた、といった時代ではなくなりました。
ロレックス相場が高騰していることはもちろん、経年によって市場からは状態の良い個体がどんどん少なくなっていき、一方でロレックスファンは増えていることから、どうしても品薄傾向が否めないのです。
そんなエクスプローラーI 14270の、2017年以降の価格推移は下記の通りです。
前述の通り、2017年以前は40万円台で購入できる個体が散見されました。
しかしながらジワジワと高騰を続けていき、ロレックス相場全体が一気に加速した2019年、次いでエクスプローラーIのモデルチェンジ説が濃厚になっていった2020年から70万、80万円の値付けが珍しくなくなってきました。
一時期は100万円前後の相場感を維持していましたが、2023年1月現在、通常個体であれば80万円前後~といった相場感です。
なお、エクスプローラーI 14270も高年式の個体ほど高い値付けが行われますが、Ref.1016などのように「最終品番(14270だとP番)だと価格が跳ね上がる」といった事象はまだ見受けられません。
逆にRef.14270では、1995年より前の製造個体で確認できる「シングルバックル」「オールトリチウム」仕様が、相場を上昇させつつあります。
シングルバックルは上記のようなタイプです。トリチウムは夜光塗料のことで、1999年頃からルミノバに切り替わりました。
これは何もエクスプローラーだけの話ではないのですが、シングルバックルとオールトリチウム(針・インデックスともにトリチウム夜光のこと)を備えた個体が再評価されているのです。
とりわけ文字盤や針は結構気軽に交換されてしまっている個体も多いため、オールトリチウムがオリジナルに忠実であることの証左となります。
こういった背景から、シングルバックル・オールトリチウムのRef.14270は、昨今では100万円超になることも珍しくありません。
一方特にこだわりがなく、価格を抑えたい方は通常個体が狙い目ということを示唆しますね。
ちなみに、上記の価格推移グラフには含めなかったエクスプローラーI 14270のレア仕様があります。それは、ブラックアウトです。
通常、Ref.14270のインデックス「3・6・9」は白エナメルとなっています。
しかしながらブラックアウトは、ここが黒く着色されている(あるいは何も着色されずメタルのまま)という、珍しい仕様となっています。Ref.14270の初期に製造されたE番およびX番にのみ確認されている仕様で、古くから価格高騰ロレックスの代表的存在でした。
さらに文字盤のロゴ・表記がシルバープリントされた「シルバーレター」仕様であれば、現在300万円超の価格となることもあります。
ブラックアウト以外のRef.14270のレア仕様は、「フローズンダイアル(スターダストダイアル)」も知っておきたいところです。
これは「スパイダーダイアル」などのように、文字盤がエイジングによって微細なヒビが入った仕様です。もちろんエイジングの一種なのですが、黒文字盤がまるで凍った大地のような模様を見せるこの変化は「ヴィンテージ」ならではの味わいで、高い評価も頷ける思いです。
③エクスプローラーI 114270
ケースサイズ:36mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:自動巻きCal.3130
防水性:100m(当時)
製造年:2001年~2010年
2000年代に入りエクスプローラーIの実用性は、いっそう研ぎ澄まされていくこととなります。現行から数えると既に二世代前となるRef.114270が、根強い人気を誇っているのも、実用面で非常に優れているからに他なりません。
2001年にローンチされたRef.114270、デザイン面で先代と大きく変わったところはありません(夜光はトリチウム化)。
先代から変わった―いや、進化した点は「ムーブメント」です。ついにエクスプローラーでも、Cal.3130が搭載されることとなったのです。
Cal.3100番台は1980年代後半から現在に至るまで、ロレックスの実用性を支えてきた立役者です。クロノメーター認定機であることはもちろん、耐久性や安定性といった、実用時計として欠かせない要素も十二分に兼ね備えた、傑作機となります。とりわけテンプを片方向で支えていた3000番台に対して、3100番台からはツインブリッジを採り入れることがミソ。このパーツ強化によって安定的な精度をオーナーに提供し続けてきました。
現在は次世代ムーブメントCal.3200番台へと移行していますが、1016の項でも述べたように、ロレックスの二次流通市場を支えているのは歴代ムーブメントの功績が小さくありません。
ムーブメントのみならず、エクスプローラーI 114270では、フラッシュフィット一体型を採用していることも特筆すべき点です。上記の画像は左がRef.114270、右がRef.14270のフラッシュフィットです。
フラッシュフィットとはケースとブレスレットを繋ぐパーツのことで、Ref.14270までは別体成型であったことに対し(14270だと、ラグ横に穴が開いている)、Ref.114270ではつなぎ目がなくなっています。これによってケースとブレスレットはシームレスに繋がり、強度と装着感が向上しました。
そんなRef.114270の価格推移は、下記の通りです。
Ref.14270同様、2017年より前は40万円台で購入できることも多かったRef.114270。まさに価格の優等生といった立ち位置で、幅広い年齢層からよくご購入頂きました。
御多分に漏れず、年を経るごとに価格高騰していることが上記グラフからは見受けられます。
しかしながら「100万円出さなくてはロレックスを買えなくなった(人気モデルに至っては200万円!)」と言われている時代においては、まだリーズナブルと言って良いでしょう。
デイト表示すら持たないベーシックな機能ゆえ、扱いやすいのも嬉しいところですね。
なお、エクスプローラーI 114270はRef.14270や1016と違って、一般的なレア仕様はそう多くはありません。しかしながら高年式の個体が高相場となる傾向にあります。
とりわけ2007年以降にルーレット刻印(偽造防止のため、インナーリングと呼ばれる文字盤外周にROLEXのロゴとシリアルを印字した仕様。ちなみに2001年頃に同じく偽造防止のため、風防に王冠ロゴがレーザー刻印された王冠透かしが通常仕様となっている)が採り入れられた個体は、高値傾向にあります。
また、2010年頃と生産終了前夜に製造されたG番・ランダムシリアルは流通量が少なく、高年式というアドヴァンテージと相まって、通常個体よりも高い値付けが行われます。
もっとも2023年1月現在、またロレックス相場が上がったと言われていますが、エクスプローラーI 114270であれば80万円台~購入できる個体にも出会いやすいでしょう。
④エクスプローラーI 214270
ケースサイズ:39mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:自動巻きCal.3132
防水性:100m
製造年:2010年~2021年(2016年にマイナーチェンジ)
次にご紹介するのは、2021年に生産終了したことで大きな話題となった、エクスプローラーI 214270です。
2010年~2021年と直近10年間、ロレックスの現行モデルを代表する人気機種として親しまれてきており、ロレックスと言えばこの顔立ちを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
そんなRef.214270は、歴代エクスプローラーIの中でも「特別感」に溢れていると、個人的には感じます。
その理由は二つあります。
第一に、ケース直径39mmへとアップサイジングを果たしたことです。
前項まででご紹介したRef.114270まで。そして後述する現行Ref.124270は、ケース直径36mmです。すなわちRef.214270は、エクスプローラーIの中で稀有な39mmサイズであることを示唆しています。
39mmはエクスプローラーIとしては大型になるものの、他のメンズ時計と比べれば大きすぎるということはなく、ちょうど良いサイズ感ですよね。エクスプローラーI特有の薄型設計により厚みは約11mmに抑えられているため、スタイリッシュさは堅持されています。
もう一つの特別感は、ムーブメントにあります。
Ref.214270だけは、エクスプローラー専用機と言って良いCal.3132が搭載されているのです(ただしオイスターパーペチュアル39にも搭載)。
Ref.114270まではCal.3130が搭載されていましたが、にわかにRef.214270でCal.3132が搭載されていることが見て取れます。
このCal.3132は3130をベースに、独自の耐衝撃装置パラフレックス ショック・アブソーバーを搭載しているのです。この装置は次世代機Cal.3200系では標準装備となったため、2021年から製造されているRef.124270ではサブマリーナ ノンデイト等とキャリバーは共通となります。しかしながら2010年にエクスプローラーI 214270で初めて当耐衝撃装置が備わったことで、エクスプローラーIは「探検家」というアイデンティティを、より強調することとなりました。
また、優れた耐磁性を誇るブルーパラクロム・ヒゲゼンマイが搭載されていることも、Cal.3132の大きな特徴です(このヒゲゼンマイも、3200番台からは標準装備に)。
Ref.214270から採用され始めた折り畳み式クラスプ,そしてクロマライト夜光も備わって、エクスプローラーIはよりアクティブな使用が前提となったことを示唆します。
そんなエクスプローラーI 214270は、2016年にランニングチェンジが行われたことでも有名です。
上:最新型の214270 / 下:旧型の214270
上記画像をご覧頂くと一目瞭然かと思います。
時分針が長くなり、かつこれまでメタルであった3・6・9のアラビアインデックス部分に、クロマライト夜光が塗布されています(余談ですが、214270から3・6。9インデックスも針と同様ホワイトゴールド製になったのだとか)。視認性という観点で進化を果たしたと言えますね。
もっともこのマイナーチェンジは、短い時分針のままだと「デザインのバランスがあまりよくない」といった声も少なからず関係していたのではないか、と囁かれています。
と言うのもエクスプローラーI 214270は前述の通り39mmへとアップサイジングが図られることとなりましたが、時分針は先代からサイズ面で変わっているようには見受けられませんでした。
そのためインデックスの端まで十分に長針が伸びておらず、マイナーチェンジに至ったのではないかと考えられます。
このマイナーチェンジで以て、「前期型」「後期型」にRef.214270は分類されています。
前期型は「デザインバランスが悪い」といった声も当時はあったようですが、現在では逆にこの仕様を好む方も多く、「ブラックアウト」として親しまれています(Ref.14270のように黒く着色されているわけではありませんが、確かに後期型と比べると陰影を感じさせます)。
逆に後期型の方をホワイト369などと称することもあります。
そして前期型・後期型で相場が変わってきます。後期型の方が、相場としては高くなります。
とは言えこれは「仕様」と言うより、高年式ゆえの高相場と見て良いでしょう。後期型は2016年~2021年の製造期間となるため、まだグッドコンディションのUSED品はもちろん、新品や未使用品も出回っている状況です。
◆後期型(2016年~2021年)
◆前期型(2010年~2016年)
なお、2022年9月現在では、前期型の中古で110万円台~、後期型は120万円台~140万円台といった相場感です。
先代エクスプローラーIと比べると、高値傾向にありますよね。
後述する現行モデルRef.124270発表当時と比べると落ち着きを取り戻してきたものの、今後生産終了から年を経るにつれてジワジワと個体数が減少していくことは必至。
価格急騰する前に、買っておきたいロレックスの一つです。
⑤エクスプローラーI 124270
ケースサイズ:36mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:自動巻きCal.3230
防水性:100m
製造年:2021年~
最後にご紹介するのは、エクスプローラーI最新作として2021年にローンチされた、Ref.124270です!
ちなみにこの年はエクスプローラーI、そしてその上位機種のエクスプローラーIIともにモデルチェンジが早い段階から噂されており、とりわけ後者の新作について喧々諤々であったものです。
蓋を開けてみればエクスプローラーIIはデザイン面ではそう大きく変わっていませんでした。一方エクスプローラーIは、39mmサイズから一転、ケースを36mmへとダウンサイジングさせてきたのです!
さらに文字盤レイアウトは先々代のRef.114270から範を取っていると見られます。リファレンスが124270であったことからも、214270とは全く異なる進化であったことを感じさせる、驚きの新作発表となりました。
なお、ムーブメントは何度か言及してきた、Cal.3230へと移行が果たされています。
3100番台ムーブメントは傑出した名機であることに間違いありません。
しかしながらロレックスは2015年にローンチしたデイデイトを皮切りに、3200番台ムーブメントへの移行を進めており、完遂は間近なように見受けられます。
ではこの3200番台ムーブメントとはいったいどのようなものなのか。
進化した点は多岐に渡りますが、最たる特徴はパワーリザーブが従来品の約48時間から約70時間へと、大幅延長された点です。
また、エクスプローラーIでは214270で既に搭載されていましたが、独自の耐衝撃構造パラフレックス ショック・アブソーバーや耐磁性に優れたブルーパラクロム ヒゲゼンマイを備えており、ロレックスが「最新世代」と自負する通りの完成されたムーブメントとなっています。
そんな現行エクスプローラーI 124270発表以降の、価格推移は下記の通りです。
現在では、だいたい130万円前後~。定価860,200円(2023年1月~)を大きく上回るものの、初出時は180万円台の値付けが行われていたため、ご祝儀相場は落ち着いてきたと言えますね。
ちなみに124270と同時に、イエローロレゾールモデルのRef.124273も発売されました。
エクスプローラーシリーズは基本的には歴代でステンレススティールが素材として採用されてきたため、大変珍しいですよね。
しかしながらエクスプローラーIのスタイリッシュなシンプルさとイエローゴールドの華やかさがマッチして、スポーツとエレガンスを両立しているのは、ご存知の通りですね。
こちらの実勢相場は170万円前後~。
124270と比べると流通量はまだ多くはなく、欲しい方は見つけた時が買い時です!
まとめ
今を時めくエクスプローラーIの、歴代モデルごとの価格推移についてご紹介致しました!
長らく価格の優等生として親しまれてきたエクスプローラーIですが、近年のロレックス相場の煽りを受けて、またエクスプローラーIそのものの人気から、高騰の只中にいることが価格推移を見るとわかりますね。
一方で高騰しているということは、その分資産価値も上昇しているということ。もともとエクスプローラーIは中古市場でもきわめて高い人気を誇ってきたため、買いやすく売りやすいモデルでもありました。世界的な需要増加に伴い、この傾向が加速しつつあります。
この現象は、エクスプローラーIが人々を惹きつける魅力と、二次流通市場でも信頼性を誇るロレックスならではの優秀な性能があってこそと言えますね。
今後もエクスプローラーIの価格動向には、注視していきたいと思います!
当記事の監修者
池田裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年