「GMTマスターにはどんな種類があるの?」
「GMTマスターについて詳しく知りたい」
GMTマスターはベゼル・24時間針を駆使することで、異なるエリアの時刻を一目で把握することのできる高機能モデルです。
その優れた機能性から、グローバルに活躍するビジネスマンの相棒として常に人気を博してきました。
また、GMTマスターはロレックスの中でも非常に豊かな個性を持つモデルとしても知られています。
そんなGMTマスターの種類や特長について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
GMTマスターの赤青ベゼルを代表とするツートンカラーベゼルは、他のコレクションにはない魅力を秘めており、世界中に愛用者がいます。
この記事ではGMTマスターの種類や基礎知識を、GINZA RASINスタッフ監修のもと紹介します。
GMTマスターIとIIの違いについても解説しますので、GMTマスターの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
ロレックス GMTマスターの歴史
GMTマスターが考案されたのは1950年頃の事。
当時のロレックスはサブマリーナやエクスプローラーが好評を博し、「実用性に優れた時計」を製造するブランドとして評価を高めている真っ最中でした。しかし、陸のエクスプローラー、海のサブマリーナに続く次回作の考案に難航しており、新たなるアイデアを渇望していた時期でもあります。
そんな折、ロレックスは世界一の航空会社と呼ばれていたパンアメリカン航空(PAN AM/パンナム)にパイロットウォッチの製作を打診されます。
彼らが求めたパイロットウォッチは以下のとおり。
【出発地と目的地の2つの時間を、一度に確認できる時計】
ロレックスはその依頼に応え、1955年に画期的な時計を作り上げます。
それこそがGMTマスターです。
GMTマスターは24時間で一周するGMT針に両方向回転式ベゼルを持つ「空」の時計であり、この2つの機能を駆使することで、パイロットたちは出発地と目的地の2つの時間を正確に判断できるようになりました。
期待以上の時計の誕生にパンアメリカン航空は感服し、同社はGMTマスターを公式時計に正式に採用します。その結果、GMTマスターは世界中のパイロットから熱烈な支持を集めるパイロットウォッチとして人気を集めるようになったのです。
ロレックス GMTマスターの歴代モデル(年代別)
「陸」のエクスプローラー、「海」のサブマリーナときて次に登場したのが「空」のGMTマスターです。GMTマスターの誕生は1955年のことですが、実際にファーストモデルが登場したのは1957年です。
【1954年-1959年】 GMTマスターRef.6542
画像は初代GMTマスターであるRef.6542。38mmステンレスケースに青赤ベゼルを配した個性的なモデルとして発表されます。
このモデルは耐久性に問題があり割れやすいベークライト仕様であったため、2年後にアルミベゼルに仕様変更が施されました。
しかしながら、既にこの頃から現在のGMTマスターのデザインは確立されています。
【1959年-1980年】GMTマスター Ref.1675
第2世代のGMTマスターとして誕生したのがこのRef.1675。40mmにケースサイズがアップし、ブレスレットにジュビリーブレスとオイスターブレスの2種類がラインナップされました。
約20年間に渡って製造されたロングセラーモデルであるため、年式によって仕様が違うことが特徴です。
搭載ムーブメントは初期の方はCal.1566、1965年以降はスペックアップしたCal.1575が採用されています。
【1981年-1988年】GMTマスター Ref.16750
3世代目のGMTマスターRef.16750。見た目こそ1675と大差ありませんが、防水性が50mから100mにアップし、ムーブメントも28,800振動と日付早送り機能を備えたCal.3075が搭載されるようになりました。インデックスがフチありとフチなしの2タイプ存在しますが、製造年が古い個体に見受けられるフチなしタイプの方が価値が高いです。
【1983年-1988年】GMTマスターII Ref.16760
Ref.16750の2年後に発表されたGMTマスターIIは短針を単独で動かすことを可能としたGMTシリーズの上位モデルです。24時間回転ベゼルと組み合わせることで3ヶ国の時間を表示することができるようになっています。
尚、このモデルはGMTマスターIと区別を付けるために、ステンレスケースに黒と赤の通称コークベゼルのみがラインナップされました。他のGMTマスターよりもケース厚が太いことからファットレディとも呼ばれています。
【1989年-1999年】GMTマスター Ref.16700
GMTマスターI Ref.16750の次世代モデルでありGMTマスターIの最終モデルであるRef.16700。16750との大きな違いは風防がプラスチック風防からサファイアクリスタルガラスに変更されたことです。
搭載されているCal.3175はメンテンナンス性が高いことから現在でもロレックスの傑作ムーブメントとして扱われています。
【1989年-2007年】GMTマスター II Ref.16710
GMTマスターIIの第二世代モデル16710。1990年~2007年まで発売されたファットレディの後続機として発売されたモデルです。16710はファットレディよりも薄い設計となっているため、見た目は似ていても明確な違いがあります。
ムーブメントに関しては初期型は、Cal.3185が搭載されていますが、2007年製のモデルに関してはパラクロムヒゲゼンマイが使われたCal.3186へと変更されています。
【2007年~】GMTマスターII Ref.116710
左:青黒ベゼル 116710BLNR 右:黒ベゼル 116710LN
GMTマスターIIの第3世代モデル116710。Cal.3186搭載、100m防水性能、サファイアクリスタル風防、トリチウム夜光といった基本的な特徴は旧作の16710とほぼ同一ですが、トリプロックリューズやセラミックベゼルの採用など、細かな箇所が進化を遂げています。
ラインナップはブラックベゼルの116710LN、青黒ベゼルの116710BLNRの2種類が発表され、2014年にはホワイトゴールドケースを採用した青赤ベゼルの116719BLROが追加されました。
ただ、2018年9月現在では116719BLROが既に廃盤。2019年度版の紙カタログに116710LNと116710BLNRが掲載されていないことから、おそらく2018年で第3世代モデルはひと段落しそうです。
【2018年~】GMTマスターII Ref.126710
現行GMTマスターIIはバーゼルワールド2018にて話題騒然となったファン待望の新作モデル126710BLRO。人気の赤青ベゼルにジュビリーブレスを搭載した注目作です。
ムーブメントには今作の為に作られた新ムーブCal.3285を搭載。香箱の構造が一新されたことによりパワーリザーブが70時間に延長されています。
今後のGMTマスターの定番モデルとなることでしょう。
GMTマスターIとIIの違い
GMTマスター「Ⅰ」と「Ⅱ」は見た目がほぼ一緒であるため、違いが分からないという方が多いです。確かにどちらも両方向回転ベゼルとGMT針が備えられている非常に似たモデルですが、実はGMT針の仕様が「I」と「II」で異なります。
「I」は長針、短針と連動して動くという特徴を持ち合わせ、単独で動かすことはできません。そのため、ベゼルとGMT針の位置から2カ国の時間を判断します。
逆に「II」は短針のみを単独で動かすことが可能です。細かな調整が可能となるため、3カ国の時間が判別できるようになっています。
詳しい操作方法
また、GMTマスター「I」は日付クイックチェンジあり「II」は日付クイックチェンジなしという違いもあります。
「II」の方が全てにおいて上のように感じますが、実は日付調整は「I」の方が楽です。
ロレックス GMTマスターの魅力
GMTマスターは街でも着けている方をよく目にするロレックス定番モデルです。GMT機能が便利であることも人気の理由ですが、このモデルが支持されている理由はそれだけではありません。ここでは多くの時計ファンに支持されるGMTマスターの魅力を紹介します。
100m防水という十分すぎる防水性
GMTマスターはダイバーズウォッチではありませんが、現行モデルであれば100m防水という非常に高い「防水性」を誇ります。この防水性能は時計の機能として大変優秀です。
営業職の方、水仕事が多い方はもちろん、天候に左右されやすい屋外での仕事をしている方であっても問題なく使用できる防水性能を持っているといえます。
ただ、型式の古いモデルの場合は防水性能が損なわれている場合がありますのでご注意ください。
個性的なツートンカラー
GMTマスターには豊富なベゼルカラーが用意されています。
シンプルなブラックベゼルは勿論のこと、赤青ベゼル・青黒ベゼル・赤黒ベゼルといったカラーリングが存在します。
特に人気があるカラーは通称ペプシと呼ばれる赤青ベゼルです。GMTの人気はこのペプシーカラーに支えられているといっても過言ではなく、世界中で愛用されている定番カラーとして高い認知度を誇ります。
両方向回転ベゼル
GMTマスターにとって欠かせない機能「両方向回転ベゼル」。このベゼルは24時間計として機能し、第2時間帯を示します。116710からは素材にセラミックベゼルが採用されており、艶やかな質感を楽しめるようになりました。
高品質なムーブメント
サブマリーナ デイトの現行モデル”126710BLRO″に搭載されているムーブメントは”Cal.3285″です。これまで長らく採用され続けてきたCal.3186とのスペック差は僅かですが、Cal.3285は香箱の構造が一新されたことによりパワーリザーブが70時間に延長されています。
Cal.3186もCal.3285もスイス公認クロノメーター検査協会(COSC)のテストに合格した高精度の時計にのみ与えられる高品質ムーブメントです。これらのムーブメントにはヒゲゼンマイと呼ばれる「パラクロム」という特殊な素材から作られていて、「温度変化に強い・磁力に耐性がある」といった特徴があります。
出典:https://www.rolex.com
アフターケアが手厚い
高級時計メーカーの中でも、ロレックスの正規オーバーホールはコストパフォーマンスに優れています。GMTマスターのオーバーホール基本料金は45,000円~。他社の比較しても安価な価格設定となっています。驚くべき部分は通常別料金となる仕上げをロレックスは基本料金に含んでくれていること。末永くGMTマスターを使うための維持費が安く済むのはとても魅力です。ちなみに製品保証期間は”5年間”(2015年7月以降のモデル)であり、こちらも他社と比較して長めの設定となっています。
レアリティの高いGMTマスター
GMTマスターには極一部の個体だけに見受けらるレアリティの高いロレックスが多数存在します。
デイトナ、サブマリーナ、エクスプローラーといった他の定番モデルにもレア個体は存在していますが、GMTマスターはその中でもレア個体の種類が豊富です。
GMTマスターIIのレア個体① Ref.16710 スティック文字盤
ステックダイヤルはプリントされている“GMT-MASTER II”の「II」に上下の横棒が無い珍しいモデルです。16710のシリアルの一部「D(2005年)、Z(2006年)、M(2007-08年)」に存在していますが、肉眼だと見づらいため、気が付かない方も多いです。
通常のフォントとスティックダイヤルのフォントを比べてみると、スティックダイヤルは確かに「Ⅱ」の上下の棒がありません。微細な差ですが、これだけでスティック文字盤は通常モデルより数十万も価値が高くなるので驚きです。
GMTマスターのレア個体② Ref.1675ミラーダイヤル
アンティークモデルであるRef.1675の中にはミラーダイヤルと呼ばれる超レアモデルが存在します。
独特な艶のある文字盤は非常に美しく、文字がゴールドレターと呼ばれる金字となっていることが特徴です。
ミラーダイヤルは初期に生産されたRef.1675のみに使用されており、同じ型番であっても年式が新しいモデルには存在しません。
尚、ミラーダイヤルはベゼルが褪色しやすく、年代によってはGMT針の先端が小さい個体も存在します。
これらの特徴を兼ね備えた個体の価値は400万円以上にもなることもあります。
今後個体数が減っていくことを考えると、更にレアリティが上がることは間違いないでしょう。
GMTマスターのレア個体③ Ref.1675ロングE
左:通常E 右:ロングE
Ref.1675にはもう一つのレア個体が存在します。その名も「ロングE」。
ロングEはロレックスロゴの「E」真ん中の横棒が通常より長いのが特徴です。Ref.1675のマットダイヤルの初期(1970年代前半)に存在すると言われ、当然その生産数も少ないものとなります。非常に細かな違いではありますが、個性的であるため需要が尽きません。
まとめ
サブマリーナやシードゥエラーが海のロレックスだとすると、GMTマスターは空のロレックスです。即座に第2時間帯をチェックできる実用性に加え、他のロレックスにはない個性的なカラーリングを持つことが人気の理由といえます。
ロレックスが欲しいけど、どうせなら個性的なモデルを選びたい。
そのような方は是非一度GMTマスターをお手にとってみてはいかがでしょうか。
当記事の監修者
池田裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年