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池田裕之, ロレックス

コスモグラフデイトナの魅力について徹底解説!キングオブロレックスの風格を知る

最終更新日:

コスモグラフデイトナ

デイトナは1963年に誕生したロレックススポーツコレクションの旗艦モデルで、現在まで高い人気を集めています。

正式名称は「オイスターパーペチュアル コスモグラフ デイトナ」。

デイトナは持っているだけでステータスになると言われ、価格が上がっても買い控えをされることなく需要は増え続け資産価値も高いです。

この記事では、ロレックスデイトナの魅力を「特徴・機能・製作経緯」と共にご紹介していきます。

今更きけない デイトナとは?どんな時計?

デイトナ
デイトナはロレックスの中で一番人気と言えるスポーツウォッチです。ひと目でデイトナとわかるスポーティーでエレガントなデザインと、完全な機能美が特徴となっています。
普遍的に業界をリードするデイトナは、価格においても相場の行方を左右するモデルとなっています。

日本での人気はもちろんのこと、アメリカやヨーロッパなど海外においても、デイトナ人気は絶大で現行モデルよりもむしろ生産が終了した60年代〜70年代のヴィンテージモデルの市場価格の高騰が激しいものとなっています。

デイトナの特徴

人気のデイトナの特徴についてご紹介します。

世界で初めて防水機能をつけたレース用のクロノグラフ

デイトナ
実はデイトナが発売される前の1950年代にNASA(アメリカ航空宇宙局)のアポロ計画で人類が宇宙へ接近する計画が実行されていました。デイトナは当初アポロ計画に採用されることを目的として作られたといわれていますが、現在ムーンウォッチとして名高いオメガのスピードマスターがその勝負を勝ち抜きました。

デイトナはこのアポロ計画に向けたコスモグラフの名を冠して1963年に登場しました。プロのカーレーシング向けに作られたシリーズで、ロレックスで唯一速度計測に便利なタキメーターと時間計測に必要なクロノグラフ機能を搭載しています。
“クロノグラフ”とは複数のインダイアルとプッシュボタンが付いた、ストップウォッチ機能を備えた時計のことです。

通常のクロノグラフはプッシュボタンを装備しているため浸水リスクが高く、防水性能を高めるのは難しいと言われていますが、デイトナはプッシュボタンやリューズを改良して防水性を向上しています。
デイトナリューズ
リューズは3重構造のパッキンが施されており、ねじ込み式の構造となっているため気密性が高く浸水を防ぐことができます。プッシュボタンもネジ解放式となっているためネジを締め込むことで、水が入りにくい構造になっています。こうした改良により、デイトナは1970年代には50m防水、1980年代には100m防水が可能となりました。高機能なだけではなく、防水性にも大変優れている時計といえます。

クロノグラフ機能があれば時間の計測も可能で、スポーツをしている方からの需要も多く、全世界からの需要がある時計となっています。(実用性を追求してきたロレックスへ敬意を払い、パスタを図るときにデイトナのクロノグラフを使用する人もいるようです)

デイトナの歴史についてもっと詳しく知りたいという方はこちらの記事もご覧ください。

3つの丸い積算計がデイトナを象徴するデザイン

デイトナアイスブルーダイヤル
デイトナはドレスウォッチ+プロフェッショナルウォッチという完璧な時計を目指したモデルです。機能性や実用性はもちろんのこと、優れたデザイン性も魅力的な時計です。

デイトナは文字盤の中に小さな時計が3つ配置されていますが、3時側にあるのが30分・9時側にあるのが12時間の積算計で、6時にあるものは秒針となり、モデルを象徴するデザインとなっていますが実はこの配置にはもう1種類の存在があります。

ムーブメントに手巻きのCal.72B、722、722-1を搭載しているRef.6238・6239・6240・6241、Cal.727を搭載しているRef.6262・6263・6265、エル・プリメロを一部改良したCal.4030を搭載しているRef.16518・16519・16520・16523・16528に関しては「3時位置が30分・9時位置が秒針・6時位置が12時間」となっています。ご自分でお好みの配置のデイトナを選ぶこともできます。

ベゼルに刻まれたタキメーターや、3つのインダイアルなど、デイトナならではのベースデザインは発売当時から確立されていましたが、デザインの細かいバリエーションも豊富です。
スポーツウォッチでありながら、スーツにもカジュアルにも合わせやすいルックスも特徴で、まさにいつか欲しい一生ものの腕時計といえるでしょう。

ムーブメントの性能が良い

技術力の高さで常に時計業界を牽引しているロレックス。
ムーブメントは時計の心臓部とも言われますが、ロレックスは数あるモデルの中でも特にデイトナに採用するムーブメントの開発に力を入れています。現行モデルでは「Cal.4130」が搭載されていますが、「Cal.72B」「Cal.722-1」「Cal.727」「Cal.4030」「Cal.4130」と、これまでに計5回もの改良・変更を行ってきました。
どのムーブメントも開発した当時は業界でも最高レベルのムーブメントとして注目され、耐久性・精度・実用性を向上させてきました。ロレックスの技術力を結集し開発されたこのムーブメント。その時代別に簡単に特徴をご紹介します。

1960年前半~1960年中頃

デイトナの初期モデルRef.6238に搭載されているCal.72B。
バルジュ―社のCal.72をベースにロレックスが独自改良を行い、調整機構にマイクロステラスクリュー、テンプ耐震装置にキフショックを搭載。
(この時代においてCal.72は世界屈指の品質を持つムーブメント。このCal.72の構造を基盤として後に多くの革新的ムーブメントが開発されました。)

1963年 ~ 1970年

Cal.72Bにさらなる機能を備えたCal.722-1。
ロレックスはさらなる品質の向上を図るために、Cal.72Bに12時間計を稼働させるパーツの動力源となるバネのコンベアースプリングを新たに採用したCal.722-1を開発します。デイトナの歴史において非常に価値の高いムーブメントです。

1960年代中頃~1980年代後半

 cal.727ムーブメント
約20年の間採用され続けた傑作クロノグラフムーブメントCal.727。
Cal.72B・Cal.722-1を基盤に、テンプ耐震装置に当時としては最新のキフ・ウルトラフレックスを採用し、テンプを小型化することで従来の5振動(18000 /h)から、6振動(21600/h)へと振動数が増え精度が格段にアップしました。

1980年代後半~2000年頃

cal.4030ムーブメント
ゼニス社の最高傑作エル・プリメロを改良したCal.4030。
Cal.727を超えるクロノグラフムーブメントとして高い評価を受けていた、ゼニス社の最高傑作エル・プリメロをさらに改良して作られたCal.4030は自動巻きに刷新されました。
エル・プリメロからの改良点は振動数で、36000/hから28800/hに落とすことで高い耐久性を獲得し、テンプを大型化、マイクロステラスクリューからマイクロステラナットに変更することでさらなる精度を獲得しています。

2000年~

cal.4130ムーブメント
独自開発を果たした自動巻きムーブメントCal.4130。
ロレックスは、念願の完全自社製クロノグラフムーブメントの開発に成功しました。前ムーブメントCal.4030は精度・耐久性・堅牢性に優れていましたが大きさが課題でした。
そのサイズを改良すべく、クロノグラフ機構の部品数を60%削減し、クロノグラフ針や30分積算計、12時間積算計の稼働に影響するパーツを裏蓋側に収め小型化を図り、さらに駆動配列を簡素化し伝達の効率化を図り、メンテナンス性を格段に向上させました。

このようにロレックスは時代の最先端の技術をデイトナのムーブメント刷新に注ぎこんできました。デイトナが世界の時計ファンの心をつかんで離さないのはクロノグラフムーブメントの品質やそれを実現する技術力によるところが大きいのです。

資産価値も高い

資産価値の高いデイトナ
近年の時計価格の高騰は中古市場の相場にも大きな影響を与えました。
特に1980年代の後半ぐらいから機械式時計の市場は見事な回復を見せました。もともと需要に対して生産が追いついていない状況だったため、発売間もないモデルでもプレミア価格で取引されている状況でした。
数年前は特にコロナ禍の影響により、緊急事態宣言に伴う工場の閉鎖など供給が追い付いていない状況が続きました。その上輸出制限などもかかっていたために国内に来るロレックスの数はさらに減少していました。

デイトナが人気の理由として希少性もあげられます。デイトナは徹底的な品質管理と複雑機構のため、生産数が限られ市場に出回る数が少ないためなかなか手に入らない時計として認知されています。
実際に正規販売店に行っても現物を見られることはあまりなく、何度も店舗に足を運ぶ「ロレックスマラソン」はロレックスファンにとっては有名な話ですが、実は「デイトナマラソン」がその発端でもありました。「昨今の高級腕時計業界の高騰はデイトナから始まった」と言っても過言ではないでしょう。
デイトナヴィンテージ
そんな中ヴィンテージと分類されるデイトナも非常に人気が高いものとなっています。
コロナ禍以降に高級腕時計の需要が増し、希少モデルやレア個体が非常に高額で取引されるようになったのです。なかでも人気が高くコンディションの良い物は希少となり、エキゾチックダイアルRef.6263は1200万円近い金額で取引されるほどの価値があります。その希少性から需要が高まることで価格が上がりやすく、特にデイトナはモデル自体の人気も総じて高いので時計業界全体をリードする存在なのです。

デイトナの機能

プロのカーレーシング向けとして開発されたデイトナは、モータースポーツに不可欠な「クロノグラフ」と「タキメーター」という機能を持っています。

その機能と扱い方についてご紹介します。
デイトナ説明

①30分積算計

最も長いクロノグラフ秒針が一周する事に一目盛り針が進み、30分までの経過時間を積算記録出来るカウンター。

②スタート/ストップボタン

ストップウォッチ機能を作動させるプッシュボタン。
デイトナは防水性を高めるためネジ解放式となっているので時計と反対回りにボタンを回し、ネジを解放してからでないと押せないようになっている。1回押すとクロノグラフ秒針が作動して計測を開始し、再度押すと針を止めることが出来る。

③リセットボタン

②のスタート/ストップボタンでクロノグラフ秒針を止めて計測を終えた後に、クロノグラフ秒針を12時位置に戻すためのボタン。このボタンもネジ解放式になっている。

④スモールセコンド

クロノグラフについてはこの小さな“秒表示”を6時方向にインダイアルとして装備している。1分間に一周して分針を進める。

⑤タキメーターベゼル

タキメーターはスピードを計測する機能。例えばカーレース時に計測開始と同時にクロノグラフ秒針をスタートさせ1km地点に到達した時点で停止させると、その時クロノグラフ秒針が指している目盛りが車の速度となる。

⑥12時間積算計

計測カウンターの1つ。クロノグラフ秒針が60周するごとに一目盛り針が進んで経過時間を12時間まで積算記録出来る。例えば8時間耐久レースなどの長時間のレースを計測するのに必要な機能。

デイトナはもともとスポーツのために開発された時計なので、レースやジョギング、ウォーキングなど時間を測りながらスポーツするのに適しています。

また生産率の計算など応用して使用することもでき、ロレックスのモデルの中でも実用性の高いモデルとなっています。

ポールニューマンモデルとは

ポールニューマン
画像引用:ロレックス公式サイト

デイトナで1965年から1970年代初期の数年間にのみ生産された「ポールニューマンモデル」をご存知でしょうか?
通常モデルと異なる15分刻みの60分積算計の目盛りを配したインダイアルが搭載されたこのモデル。
俳優でありレーサーでもある故ポール・ニューマンが愛用していたことから「ポールニューマンモデル」と称されました(エキゾチックダイアルとも呼ばれる)。
1968年に、妻であり女優のジョアン・ウッドワードがティファニーで、ポール・ニューマンへのプレゼントとして購入したという逸話も存在します。
カーレースで活躍するポール・ニューマンを心配して「DRIVE CAREFULLY ME(運転気、付けて)」という愛情溢れるメッセージを裏蓋に刻印して贈ったと言われています。
ポールニューマン ダイヤル
画像引用:phillips

約15年間ポール・ニューマンはこの時計を愛用していましたが、1984年の夏にポール・ニューマンの長女、エリノア・ネル・ニューマンのボーイフレンド、ジェームズ・コックスに譲ったとされています。ネル ジェームズとジェームズがニューマン家のツリーハウスを訪れた際、腕時計のゼンマイを巻き忘れていたポール・ニューマンが、ジェームズに時間をたずねました。

しかし、ジェームズは「腕時計を持っていないのでわからない。」と答えました。
するとポール・ニューマンは自分のロレックスを手渡して「毎日巻き上げることを覚えていればきちんと時間を知らせてくれるよ。」と言ったとされています。
その後ネルが事前財団を立ち上げ、会計士として備わっていたジェームズはネルと相談してそのデイトナをフィリップ社のオークションに出しました。

感動的なストーリーが価値を押し上げ、1775万2500ドル(約203億円)という腕時計史上最高額で落札されました。
その売り上げの一部は「ネル・ニューマン財団」に寄付され、ネルが取り組んでいたオーガニック食品と持続可能農業の為にも活用されました。
また、ポール・ニューマンの「ニューマン・オウン財団」にも寄付されたといいます。
デイトナ ポールニューマン 6239
1960年代初頭から1970年代中頃まで流通していた手巻きデイトナ用のダイアルに同モデルが含まれるとされています。
ダイアルの特徴として、インダイアルのアラビア数字と四角形のポイントのデザインがあります。また、文字盤外周のセコンドトラックとインダイアルに文字盤の反転カラーが採用され、その外周のセコンドトラックとインダイアルが一段下がっていて立体的に見えます。近年では書体などで分けられ(マークⅠ〜マークIII)希少価値が高いものとされています。
このモデルは生産数が非常に少ない為ほとんど世に流通していなく、市場ではプレミアム価格として数千万円、パーツやコンディションによっては1億円を超える価格がつけられ、時計好きの間では伝説のモデルとして認知されています。

最後に

デイトナアイスブルー
「キング・オブ・ロレックス」の名をほしいままにしているデイトナ。
ロレックスの中では比較的新しいモデルと言われていますが、その歴史とストーリー性については突出した注目度があります。ロレックス唯一のクロノグラフモデルということも大きな魅力の一つでしょう。

機能とデザイン性を兼ね備え世界中にファンがいることから、資産価値としても魅力的な時計と捉えられるモデルです。あまりの人気ぶりに手に入れにくい現状ですから、購入できた際の感動はより高いものとなりますね。

当記事の監修者

池田裕之(いけだ ひろゆき)

(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長

39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年

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