「ロレックスのムーブメントを見てみたい」
「ロレックスの裏蓋を開けたらどうなっているの?」
機械好きの方には、ロレックスのムーブメントを覗いてみたいという人は多いのではないでしょうか。
普段目にすることはありませんが、高い技術で作られたロレックスのムーブメントは精巧な造りになっています。
この記事ではロレックスウォッチの裏蓋を開けた中身(ムーブメント)について、GINZA RASINスタッフ監修のもとレビューします。
ムーブメントごとに特長を紹介しますので、ロレックスの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
ロレックスのムーブメント①クロノグラフ ~デイトナ~
Cal.4130
【搭載モデル】
コスモグラフ デイトナ 116500LN
コスモグラフ デイトナ 116520
コスモグラフ デイトナ 116506
など、2000年以降に製造されたデイトナ
時分秒、クロノグラフ、ハック機能
クロノメーター認定
パワーリザーブ約72時間
28,800振動/時
製造年:2000年~
ロレックス悲願の完全自社製クロノグラフムーブメント。
Cal.4130が誕生するまでは、ロレックスはクロノグラフのみゼニス社製をベースにしていました。
先代のCal.4030よりも部品数が格段に少なくなったうえ高品質パーツを積極的に採用、伝達効率始めムーブメント本来の価値・信頼性が向上しています。
また、パワーリザーブが約72時間、リューズを引くと秒針が止まるハック機能等も搭載され実用性アップ。
2007年には耐磁・耐衝撃性に富んだブルーパラクロムヒゲゼンマイを搭載するなど、ロレックスの顔・デイトナにふさわしい高機能ムーブメントとなっております。
Cal.4030
【搭載モデル】
コスモグラフ デイトナ 16520
コスモグラフ デイトナ 8Pダイヤ 16523G
など
時分秒、クロノグラフ
クロノメーター認定
パワーリザーブ約52時間
28,800振動/時
製造年:1988年~2000年
完全自社製ではないもののデイトナ史上初の自動巻き式として名高いCal.4030。
エルプリメロ400がベースですが、独自改良を加えより実用性が追及されました。
エルプリメロはハイビートで有名ですが、ロレックスはあえて28,800振動/時にチューンを落とし、精度や耐久性をあげることに成功。
後継機のCal.4130が発表されてからも、いまだファンの間で根強い人気を誇ります。
ロレックスのムーブメント②3針+デイト
~サブマリーナデイト,ディープシー,ヨットマスターなど~
Cal.3135
【搭載モデル】
シードゥエラー4000 116600
ディープシー 116660
シードゥエラー 16600
サブマリーナ デイト 116610LV/116610LN
サブマリーナ デイト 116613LN/116613LB/116613GLN
サブマリーナ デイト 16610
ヨットマスター40 116621
ヨットマスター ロレジウム 116622
デイトジャスト36 116231
など
時分秒、デイトジャスト、クイックチェンジ、ハック機能
クロノメーター認定
パワーリザーブ約48時間
28,800振動/時
製造年:1989年~
3針+デイトモデルを下支えしてきたCal.3135。
マイナーチェンジは加えられてきましたが、20年以上に渡って使用され続け、高い精度と耐久性を併せ持つまさに名機と言うべき存在です。
Cal.3135が搭載された時計は全て人気モデルですが、かっこよさだけでなく実用性にも優れる秘訣はCal.3135に依るところが大きいでしょう。
Cal.3035
【搭載モデル】
ロレックス サブマリーナ デイト トリプルゼロ 168000
サブマリーナ デイト 16800
シードゥエラー トリプルシックス 16660
オイスターパーペチュアル デイト 15000
など
時分秒、デイトジャスト、クイックチェンジ、ハック機能
クロノメーター認定
パワーリザーブ約48時間
28,800振動/時
製造年:1977年~1988年
今では当たり前の28,800振動/時ですが、こちらのCal.3035がロレックスメンズモデル初のハイビートとなります。
ハイビートは高精度なもののどうしてもパーツが短期間で摩耗しがちで、それが顕著だったこちらのムーブメントの使用期間はあまり長くありませんが、以降の3針+デイトムーブメントの原型となった功績は小さくありません。
ロレックスのムーブメント③3針
~エクスプローラー,サブマリーナノンデイトなど~
Cal.3132
【搭載モデル】
エクスプローラーI 214270
オイスターパーペチュアル39 114300
など
時分秒、ハック機能
クロノメーター認定
パワーリザーブ約48時間
28,800振動/時
製造年:2010年~
3針にブラックダイアルというシンプルさで、長年愛され続けてきたエクスプローラーI。2010年のモデルチェンジと同時に発表されたのがこちらのCal.3132です。
特徴はゼンマイに使用されたブルーパラクロムヘアスプリングと、テンプのパラフレックス ショック・アブソーバ。
この耐磁・耐震装置は随時ロレックスムーブに搭載されつつありますが、非常に画期的なロレックス独自の発明です。
エクスプローラーが持つ「どんな環境下でも時刻を告げる」というコンセプトをさらに強調することとなった名機と言えます。
Cal.3130
【搭載モデル】
エクスプローラーI 114270
サブマリーナ ノンデイト 114060/14060M/14060
オイスターパーペチュアル 114200
オイスターパーペチュアル エアキング 14000/14010M
など
時分秒、ハック機能
クロノメーター認定(2000年~2007年までのモデル除く)
パワーリザーブ約48時間
28,800振動/時
製造年:2000年~
デビュー時はノンクロノメーターだったものの、2007年以降はクロノメーター化が図られ、他の自動巻きムーブと遜色ない精度・信頼性・耐久性を有する息の長いムーブメントです。
ちなみにこの機を最後にロレックスのノンクロノメーターは姿を消しました。
2012年にはCal.3132同様ブルーパラクロム・ヘアスプリングが搭載され、さらに耐磁性・耐衝撃性がアップしています。
Cal.3000
【搭載モデル】
エクスプローラーI 14270
サブマリーナ ノンデイト 14060(前期)
オイスターパーペチュアル 14203
など
時分秒、ハック機能
ノンクロノメーター(14270,14203は除く)
パワーリザーブ約48時間
28,800振動/時
製造年:1990年~2001年
1977年に誕生した3針+デイト機能搭載のCal.3035をベースにしたハイビートムーブメント。
使用期間は後継機Cal.3130が出るまでの10年ほどと長期に渡っては使用されていないものの、キムタクも着けた大ヒット作エクスプローラーI 14270に搭載されたことで、中古市場では根強い人気を誇ります。
これまでどこか武骨だったロレックスムーブメントですが、Cal.3000はうろこ状のペルラージュ模様があしらわれ、美しい装飾を楽しめることも魅力です。
ロレックスのムーブメント④GMT ~エクスプローラーII,GMTマスター~
Cal.3187
【搭載モデル】
エクスプローラーII 216570
など
時分秒、24時間表示、デイトジャスト、24時間針単独稼働、ハック機能
クロノメーター認定
パワーリザーブ約48時間
28,800振動/時
製造年:2011年~
2011年、新型エクスプローラーIIの誕生と同時に発表されたCal.3187。
おしゃれな色味の24時間針でホームタイムと第二時間帯を表示できるロレックスきっての多機能モデルです。
GMTマスターIIも同機能となりますが、Cal.3187は耐震装置となるパラフレックス ショック・アブソーバを搭載しており、日常の衝撃やアクティブな動きをカバー。
もちろんブルーパラクロムヒゲゼンマイも搭載します。
より実用度の高い新ムーブメントとなりました。
Cal.3186
【搭載モデル】
エクスプローラーII 16570
GMTマスターII 116710LN
GMTマスターII 116710BLNR
GMTマスターII 16713
GMTマスターII 116718LN
など
時分秒、24時間表示、デイトジャスト、24時間針単独稼働、ハック機能
クロノメーター認定
パワーリザーブ約48時間
28,800振動/時
製造年:2005年~
GMTマスターのように針が単独稼働する機能は針ズレや動作等の不具合を起しやすいですが、前キャリバー3185よりパーツ数を増やし、そういった支障が解消されたのがCal.3186です。
また、2007年以降順次搭載されているブルーパラクロムヒゲゼンマイが先駆けて使用されていることも特徴。
ちなみにCal.3186は数々のモデルに搭載されることとなりましたが、GMTマスターII 16710は搭載期間が2年ほどのため、プレミアム価格で取引されています。
Cal.3185
【搭載モデル】
エクスプローラーII 16570(前期)
GMTマスターII 16710(前期)
GMTマスターII 16713(前期)
など
時分秒、24時間表示、デイトジャスト、24時間針単独稼働、ハック機能
クロノメーター認定
パワーリザーブ約48時間
28,800振動/時
製造年:1990年~2007年頃
Cal.3085の後継機として登場し、24時間針の単独稼働の操作性や精度面で改良が加えられたCal.3185。
3000系での誤作動や不具合などを一掃し、テンプのツインブリッジやマイクロステラナット調整機構など、ロレックスの技術が余すことなく発揮された90年代を代表する傑作機です。
なお、GMTマスターII 16710やエクスプローラーII 16570に搭載されていた期間は非常に少なく、レアモデルの一つとしても有名です。
Cal.3175
【搭載モデル】
GMTマスターI 16700
など
時分秒、24時間表示、デイトジャスト、ハック機能
クロノメーター認定
パワーリザーブ約48時間
28,800振動/時
製造年:1990年~1999年頃
生産終了してなお中古市場では人気を博す、GMTマスターIの最終モデルに搭載されていたCal.3175。
Cal.3185と同じくCal.3085がベースとなっていますが、こちらはGMTマスターIにのみ9年間だけ搭載されていたムーブメントです。
短針を単独で稼働させることはできませんが、テンプのダブルブリッジ採用でメンテナンス性は大幅に向上。
その他ブラッシュアップが加えられており、今でも実用機としてGMTマスターIの人気が高いことが頷けます。
Cal.3075
【搭載モデル】
GMTマスターI 16750
GMTマスターI 16753
GMTマスターI 16758
など
時分秒、24時間表示、デイトジャスト、クイックチェンジ、ハック機能
クロノメーター認定
パワーリザーブ約48時間
28,800振動/時
製造年:1980年~1988年頃
GMTマスターIのサードモデルから搭載され、精度等、その実用性向上に大きく貢献したCal.3075。
約8年と短命であるものの、初代GMT機能ムーブであるCal.1570と比較して各段に実用性をアップさせました。
テンプがシングルブリッジであったため、既にツインブリッジGMTムーブを開発していたことが短命の理由であると考えられます。
ロレックスのムーブメント⑤高耐磁性 ~ミルガウス~
Cal.3131
【搭載モデル】
ミルガウス 116400GV
時分秒、ハック機能
クロノメーター認定
パワーリザーブ約48時間
28,800振動/時
製造年:2007年~
ロレックス唯一の耐磁時計・ミルガウスに搭載されたCal.3131。
通常耐磁時計というとケースにその機能を備えムーブメントに届かないようにするものですが、ロレックスはムーブメント自体に対策を施しました。
これには非常に高い技術を要します。
Cal.3131は、磁気の影響を受けやすいパーツに常磁性素材を使うことにより実現。
例えばニッケル・リン合金によるパーツ製造や、ブルーパラクロムヒゲゼンマイを採用したのです。
ちなみに高性能磁気遮断ケース、そしてデイト窓を作らないことで磁気の侵入自体をシャットアウト。1000ガウス(フランス語でミルガウス)の磁気に耐えうる仕様となりました。
ロレックスのムーブメント⑥デイデイト
Cal.3155
【搭載モデル】
時分秒、日付・曜日、デイトジャスト、クイックチェンジ、ハック機能
クロノメーター認定
パワーリザーブ約48時間
28,800振動/時
製造年:1980年代後半~
ロレックスの最上位機種・デイデイトに搭載されているCal.3155は、日付・曜日が搭載され、さらに曜日にもクイックチェンジ機能が備わります。
デイデイトというとそのゴージャスさが話題になりがちですが、時計としての実力もさすがロレックス。
精度、メンテナンス性など他ムーブメントと遜色ありません。
順次ブルーパラクロムヒゲゼンマイに採用されつつあり、より日常使いに適したものとなるでしょう。
ロレックスのムーブメント⑦リファレンス4桁時代のムーブメント
Cal.1520
【搭載モデル】
サブマリーナ 5513
オイスターパーペチュアル エアキング 5500
など
時分秒、ハック機能(ハック機能は1970年代以降)
ノンクロノメーター
パワーリザーブ約48時間
19,800振動/時
製造年:1963年~1980年代後半
20年以上にも渡り採用されかつ多くのムーブメントの基礎となり、まさに「一時代」を築いたCal.1520。
ノンクロノメーターではありますが、サブマリーナやエクスプローラー等人気モデルに搭載、今なおアンティーク市場で定評があります。
ハイビート化、テンプや香箱の大型化などにより精度向上。
Cal.1500系のベースとも言われる名機です。
Cal.1560
【搭載モデル】
エクスプローラーI 1016
デイトジャスト 1601
サブマリーナ 5512
など
時分秒
クロノメーター認定
パワーリザーブ約44時間
18,000振動/時
製造年:1965年~1970年代
ダイバーズモデルのために製造されたCal.1530をクロノメーター化したCal.1560。
エクスプローラー1016の前期、サブマリーナ5512などに搭載されました。
バタフライローターから、現役ムーブメントに使用される扇形ローターが使われつつあったことも特徴的。
また、ロレックス独自のマイクロステラスクリューによるフリースプラング方式を初採用したムーブでもあります。
これを、テンワのネジにし、ムーブメントをケースから取り出すことなく調整できる優れもの。Cal.3000系でもお馴染みとなりました。
ロレックスの高い技術が遺憾なく発揮されています。
Cal.1570
【搭載モデル】
エクスプローラーI 1016
オイスターパーペチュアル デイト 1500
など
時分秒、ハック機能(ハック機能は1970年代以降)
クロノメーター認定
パワーリザーブ約48時間
19,800振動/時
製造年:1965年~1980年代後半
アンティーク市場の中でも、実用面からおすすめされるCal.1500系。
中でもこちらのCal.1570はクロノメーター認定機であり、約20年にわたって採用された傑作機です。
精度、耐久性ともに優れており、先代のCal.1520と比べると大幅に実用性が向上。
3針のみならず、ここからGMTやデイトジャスト等、様々な派生機が生まれることとなりました。
ちなみにサブマリーナ5512はわずか4年の製造期間の間にCal.1530→1520→1560→1570と4世代キャリバーが搭載されています。
手巻きCal.1225
【搭載モデル】
オイスターデイト プレシジョン 6694
オイスターデイト プレシジョン 6426
など
パーペチュアル機構に先鞭をつけたロレックスは、現行モデルでも自動巻き式がメイン。
そんなロレックスのレアな手巻きムーブメントCal.1225。
1960~1970年代に製造されていたオイスタープレシジョンに搭載されました。
ちなみにプレシジョンとは、「正確な」という意味の英語。
手巻きムーブはデイトナ6264/6263などに搭載されていたCal.727等もありますが、Cal.1225は信頼性に定評があります。
現行の人気モデルもいいですが、他人とかぶらない、味わい深い手巻き式ロレックスウォッチもいいかもしれませんね。
まとめ
ダイアルや裏蓋をシースルーにして、「魅せるためのムーブメント」を製造するメーカーは少なくありません。
ムーブメントの装飾にこだわりを持つところも。
一方ロレックスのムーブメントは、普段オーナーの目に留まることは滅多にありません。
しかし、そのムーブメントの実力は、普段身につけているオーナー自身が感じられるもの。
ロレックスの裏蓋を開けてみたら、ロレックスの高い技術と信念がそこにはありました。
当記事の監修者
池田裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年