「ディープシー チャレンジって何がすごいの?」
「ディープシー チャレンジ RLXチタンモデルの魅力について知りたい」
Watches & Wonders Geneve 2023の参画が決まった矢先、規格外の新作がロレックスから発表されました。
打ち出されたモデルは、ディープシー チャレンジ。
このディープシー チャレンジ、ロレックス愛好家の間では2012年のジェームズ・キャメロン氏によるディープシー・チャレンジャー号でのマリアナ海溝探査を想起させるかもしれませんが、その名称通りと言うべきか。
11,000mという、モンスター級の防水性能を備えたハイスペック・ダイバーズウォッチとなっております。
そんなディープシー チャレンジ RLXチタンモデルの魅力について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
ディープシー チャレンジは、11,000m防水、直径50mmケース、チタン素材と全てが規格外の新作です。
この記事ではディープシー チャレンジの魅力を、GINZA RASINスタッフ監修のもと紹介します。
価格についても紹介しますので、ロレックスの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
出典:https://www.rolex.com/ja
目次
ロレックス ディープシー チャレンジ RLXチタン Ref.126067 スペック
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径50mm |
素材: | RLXチタン |
文字盤: | ブラック |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.3230 |
パワーリザーブ: | 約70時間 |
機能
防水: | 11,000m |
定価: | 3,093,200円 |
ロレックス ディープシー チャレンジ RLXチタン Ref.126067 概要
出典:https://www.rolex.com/ja
上記のスペック表を見るにつけ、色々と驚かされるのではないでしょうか。
11,000m防水。直径50mmサイズの超肉厚ケース。そして、チタン素材・・・!
詳細を、ご紹介いたします。
①知っておきたい。ロレックスの深海への挑戦
冒頭でも言及しているように、ディープシー チャレンジは、2012年にロレックスが支援したディープシー・チャレンジャー号をイメージさせます。
余談とはなりますが、新作紹介の前に、ディープシー・チャレンジャー号を始めとしたロレックスの深海への挑戦史について解説したいと思います。
なぜなら、ディープシー チャレンジの出自について知ることは、今回の新作をより理解するために重要であるからです。
話は遡って、1950年代。
第二次世界大戦下、軍事用途として特殊機能が搭載された腕時計が発達したことは、戦後の時計市場にも大きな影響を与えました。
その一つが、防水ウォッチです。
日常防水は言うに及ばず。潜水に耐えうるような、今日のダイバーズウォッチと呼ばれる腕時計が、戦後、あまた登場することとなりました。
もともと1926年にオイスターケースで特許取得し、時計の防水性能で他社に先鞭をつけていたロレックスは、1953年という早い段階でサブマリーナーの開発に至ります(一般市場へのリリースは翌1954年)。ちなみにサブマリーナーは回転ベゼルに100m防水を備えた、当時としては画期的なスタイルを有しており、現代ダイバーズウォッチの原型などと称されることもあります。
このサブマリーナーの上位機種として誕生したのがシードゥエラーです。1967年、初代シードゥエラーとして知られるRef.1665が一般市場へ向けて打ち出されました。
※初代シードゥエラー Ref.1665。ちなみにこの個体は、モデルロゴが赤く彩られた、通称赤シード
シードゥエラーは、ロレックスとフランスの潜水調査会社「コメックス」が共同で、大深度潜水を行うプロダイバー向けに開発したダイバーズウォッチとして有名です。リリース当時から既に610mの防水性能を有し、第二世代Ref.16660からは現行品同様に1220m防水を備えていたというのは、ロレックスの防水技術の長い歴史を証明する一つのエピソードと言えます。
その後、2008年になるとさらに上位機種のシードゥエラー ディープシーによって、3600m防水を実現したことはご存じの通りです。
しかしながら、実はこのサブマリーナー・シードゥエラーが誕生していた1950年代から1960年代、実験用の超ハイスペック・ダイバーズウォッチをロレックスでは製造されていました。
それが、ディープシー・スペシャルです。
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ディープシー・スペシャルは水深10,000m防水仕様のウォッチでした。肉厚ケースに水圧でも割れない球体ガラスを有していることがディープシー スペシャルの大きな特徴です。
1960年、スイスの科学者オーギュスト・ピカール氏が設計したバチスカーフ・トリエステ号の船外にディープシー・スペシャルは実際に装着され、1万916mもの深さ―マリアナ海溝南部の最深域チャレンジャー海淵―に耐えたことが確認されています。
このディープシー・スペシャルはテストウォッチのため、めったに一般市場には出回りません。
しかしながら2021年、二つのオークションハウス―フィリップスとクリスティーズ―がディープシー・スペシャルを出品したことで、大きな話題となりました。
ロレックスの大深度潜水のための実験ウォッチの歴史には続きがあります。
それは、2012年のことです。
前述したトリエステ号の、有人深海探査での10,911m記録は長らく打ち破られていませんでした。しかしながら2012年、ディープシー・チャレンジャー号が10,908mでの有人かつ単独潜水によって、半世紀ぶりに記録を塗り替えるという快挙が達成されたのです。
このディープシー・チャレンジャー号でマリアナ海溝チャレンジャー海淵に挑んだのが、映画監督でもあり探検家でもある、ジェームズ・キャメロン氏です。
ジェームズ・キャメロン氏の潜水艇のロボットアームには、新しい試作モデル「ディープシー チャレンジ」が取り付けられていたと言います。
これらの試作機は、長らく市販化はなされませんでした。
シードゥエラー及びシードゥエラー ディープシーが存在していたこと。あるいは量産化にコストがかかったことなどが背景としてあるかもしれません。
しかしながら2022年、11,000m防水という超スペックを携えて、ディープシー チャレンジ Ref.126067がラインナップに加わったというわけです。
当新作は、腕時計サイズ―もっとも、直径50mmですが―に収められた、ロレックスの防水の歴史とも捉えられますね。
②新作概要
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それでは、新作Ref.126067をご紹介いたします!
「11,000m防水」「直径50mm(厚さは約23mmとのこと)」
この二つだけで絶大なインパクトのある新作ディープシー チャレンジですが、リファレンスが「126067」と、見慣れない末尾の数字を確認できます。
実は当新作、RLXチタン製―そう、チタン素材がケース・ブレスレットに採用されているのです。
チタンは今や、腕時計業界ではメジャーな素材かもしれませんが、ロレックスではこれまでなかなかお目にかかれませんでした。スタンダードモデルには高性能オイスタースティール(904L ステンレススティール)が用いられるのが、常となっております。
なお、スペック表にはチタンではなく「RLXチタン」と名付けられています。
2022年の春先にシードゥエラー ディープシーがRef.126660からRef.136660へとモデルチェンジした際、リングロックシステムの裏蓋がRLXチタンとして改められましたが、素材としてはグレード5チタンとのこと。
純チタンのグレード2とともに、よく耳にするグレード5チタンは、高級腕時計でチタンというとメジャーな種類となります。特徴としては、合金によってステンレススティールに近い色合いを有し、かつ仕上げが行いやすいという点。純チタンはグレーが濃く、また仕上げに適していない面がありますが、これを補った合金と言えますね。
2022年新作のディープシー チャレンジの写真を見ると、サテン仕上げをベースにエッジには面取り・ポリッシュ仕上げが施されているのがわかります。
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さらに付け加えるとチタンは金属アレルギーを誘発しづらく、また錆びづらいメリットに加えて、何より軽量です。
ロレックスが「ジェームズ・キャメロンのマリアナ海溝潜航に同行した試作モデルは(中略)904Lスチール製であったために重さの点で着用時の快適性に問題があった」と述べる通り、ディープシー チャレンジほどの肉厚ボリューミーなケースが重いとなると、装着時の腕への負荷はどうしても大きくなってしまうものです。
そこでロレックスはRLXチタンとすることで、試作時のモデルよりも30%の軽量化に成功している、とのこと!
後述しますがサファイアクリスタルガラスも薄型化が図られており、スリムになっているようです。
この究極のデカ厚ウォッチを11,000m防水たらしめるのが、ディープシーならではの防水技術です。
まず、リンクロックシステム。
シードゥエラー ディープシーでもおなじみのリングロックシステムとは、下記画像のような構造を採ります。
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「厚みのあるドーム型サファイアクリスタルガラス」「窒素合金スチール製耐圧リング」「RLXチタン製裏蓋」の三つの要素が、リンクロックシステムのポイント。ちなみにシードゥエラー ディープシーのサファイアクリスタルガラスは5.5mmですが、Ref.126067は9.5mmとなっております。
深海に近づくにつれて水圧が高まることとなりますが、リングロックシステムはこの圧力を利用します。外装に圧力がかかると、これらの構成要素が互いに締め付けあい、結果的に気密性を高めるのです。これは高い防水性を実現しつつも、常識的なケース厚に抑えることにも繋がっています。
さらに飽和潜水のためのヘリウムエスケープバルブ、三重構造できわめて高い気密性を有したトリプロックリューズによって、モンスター級のダイバーズウォッチに仕上がりました。
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「モンスター級」とは言え、デザインはオーセンティックなシードゥエラー ディープシーです。
ノンデイトなので、いっそうクラシカルな印象を有するのではないでしょうか。
ラグからリューズガードにかけてなだらかな曲線を有したケースに、テーパーの効いたラグ。そしてケースと同じようにツヤ消し仕上げが基調となったブレスレットが搭載されております。
傷や変色に強いセラクロムベゼルは、やはり従来品に同じくメモリにプラチナコーティングが施されており、風格ある光沢を放ちます。
なお、針・インデックスはホワイトゴールド製で、クロマライト夜光によって太陽光の届かない海中でも、時刻視認が可能です。
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ちなみに、ダイバーズウォッチには往々にしてエクステンションシステムが搭載されます。
エクステンションシステムは工具を用いることなく、ブレスレット内寸を延長・縮小できる機能です。エクステンションシステムによって、ウェットスーツの上からでも脱着が容易といった考えもあります。
シードゥエラー ディープシーおよびディープシーコレクションにも、エクステンションシステムが見受けられます。
一方で新しいディープシー チャレンジにはグライドロック・エクステンションシステムとフリップロック・エクステンションリンクが搭載されております。
前者がバックル部分でのブレスレット延長、後者がコマの先端に取り付けられた折り畳み式エクステンションパーツなのですが、シードゥエラーおよびシードゥエラー ディープシーでは、2022年に入ってフリップロック・エクステンションリンクが取り払われるマイナーチェンジがありました。
ディープシー チャレンジには搭載されているので、明確な棲み分けがなされているとも捉えられます。
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裏蓋の「MARIANA TRENCH」「23-01-1960」「2012-03-26」の印字が、またスペシャルなモデルであることを物語りますね!
搭載するムーブメントは、同じくノンデイトであるエクスプローラーIやサブマリーナー ノンデイト同様にCal.3230。
高い精度と信頼性、そして約70時間のパワーリザーブを誇る、ロレックスの最新機種となっております。
③価格と発売時期
新しいディープシー チャレンジ Ref.126067の国内定価は3,093,200円。
シードゥエラー ディープシー Ref.136660のブラック文字盤が定価1,646,700円ですので、なかなか強気の値付けであることが見て取れます。
もっとも、11,000m防水・そしてチタン製の最新機種となりますので、高価格帯も頷けます。
発売時期は2022年11月~。
とは言え、近年のロレックス人気の過熱を鑑みるに、すぐに購入できるかどうかは未知数。
さらに定価1,720,400円のステンレススティール製デイトナが400万、500万円超という時代です。出回り価格が一体いくらになるのか。そもそも出回り時期はいつになるのか・・・
今後の新作動向に、要注目です!
まとめ
突如として発表された、ロレックスの最新モデル・ディープシー チャレンジをご紹介いたしました!
11,000m防水、直径50mmケース、チタン素材・・・全てが規格外の新作となりますが、ロレックスの防水技術の伝統と最先端が詰まったハイスペックモデルであることは間違いありません。
近年はロレックスの市場価格の過熱が取り沙汰されることも多いですが、やはり製品そのものが面白く、魅力的。そんなことを改めて認識させてくれる新作であると思います。
当記事の監修者
池田裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年