文字盤の周りにある数字って何に使用するのだろう?
クロノグラフをお使いの方でそんな疑問を抱いた方は多いのではないでしょうか。
文字盤の周り(ベゼル)に刻まれている数字は正式には『タキ・プロダクトメーター』といい、ベゼルに刻まれた目盛り(数字とドット)とクロノグラフ針を用いて平均速度を割り出したり、1時間あたりの作業量を1分以内の計測で算出することができます。
ファンの間では「タキメーター」という名で親しまれ、クロノグラフに欠かせない機能として様々な名機に搭載されてきました。
今回はそんなタキメーターの機能や使い方、タキメーターを備えたおすすめモデルをご紹介します。
クロノグラフがお好きな方に是非ご一読いただきたい内容です。
目次
タキメーターとは?
タキメーターは、1kmを何秒(測定可能範囲60秒以内)で走行したかによって、その区間のおおよその平均時速を求めることができる機能です。時計においてはクロノグラフとベゼルに刻まれた数字を使って時速や平均速度を計測します。
ちなみにタキメーターという言葉は、速いという意味を持つ「タキ(Tachy)」と計算尺の意味を持つ「メーター(Meter)」が語源となっています。
シビアに時間と争うレーサーやパイロットなどに親しまれた歴史をもつタキメーターは、クロノグラフを搭載した時計の多くに備えられています。
大半のモデルは2時位置に400、6時位置に120、12時位置に60 の数字が刻まれていますが、メーターに関する厳密な規格がないため、モデルによってデザインは異なります。
タキメーターの使い方~平均速度の算出方法~
タキメーターがどのような機能かわかったところで、実際に使ってみましょう。
例えば、自動車の走りはじめと同時にクロノグラフをスタートさせ、1km走行した地点でストップボタンを押します。その時にクロノグラフ針が指しているタキメーターの目盛りが平均時速になります。
1km走行に30秒かかったとするとクロノグラフ針が指すタキメーターの目盛りは「120」を指すので、平均速度は120Km/hとなります。
距離を1kmとして測定するのが基本ですが、それ以外の距離にも応用することができます。
もう一つ例を見てみましょう。
車のスタートと同時にクロノグラフのスタートボタンを押して計測をはじめます。
500m地点を通過したところでボタンを押して針を止めたところ、下の写真のようになったとします。
1km地点を通過した時クロノグラフ秒針が指し示しているタキメーターの数字(ここでは70)が車の平均時速なので、500mを走行した場合の平均時速は目盛りの数字の2分の1になります。
つまり平均速度は35km/hです。
2kmを走行した場合に70をさしていれば、平均時速は目盛りの数字の2倍(140km/h)になります。
タキメーターの使い方~1時間あたりの作業量の計測方法~
次に作業量の算出ですが、ある作業の開始時にクロノグラフをスタートし、作業終了時にストップさせます。
作業に30秒かかった場合、クロノグラフ針が指すタキメーターの目盛りは120ですので、その作業は1時間に120回行うことができるということが判ります。
例えば、作業開始と同時にクロノグラフのスタートボタンを押して計測をはじめ、作業が終了したところでボタンを押して針を止めたところ、下の写真のようになったとします。
クロノグラフ針はタキメーターの300を指していますので、その作業は1時間に300回行うことが出来るというわけです。
1時間を基本として考えますが、先程説明した平均速度と同じように応用すれば様々な時間で作業量を求めることができます。
上記を踏まえ、タキメーターの操作を簡潔にまとめると以下の通りになります。
- クロノグラフのストップウォッチをスタートさせる。
- 1kmを走行・歩行・飛行した時点でストップを押す。
- クロノグラフの針が指している先に、1kmの平均速度(時速)が記されている
正直なところ日常生活の中で、タキメーターを使うシーンは少ないかもしれません。
しかし、タキメーターにはクロノグラフをより美しく、よりスポーティーに見せる唯一無二のデザイン性があります。
時計を単に時間を計るモノで終わらせず、「計測器」としての実用性を与える。
それもタキメーターの魅力だといえるでしょう。
タキメーター機能搭載のおすすめモデル
レーシングクロノグラフやパイロットウォッチ。タキメーターはクロノグラフ機能の一部として備わっていることが多いです。
そのため、タキメーターを最大限に楽しみたいのであれば、クロノグラフの名機を探すのが良いでしょう。
ロレックス コスモグラフデイトナ116500LN
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径40mm×厚さ12.5mm
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.4130
パワーリザーブ:約72時間
防水性:100m
定価:1,387,100円
現行デイトナ 116500LNは、2016年のバーゼルワールドでリリースされたスポーツロレックスの最上位モデルとなります。
1963年にモーターレース「デイトナ・インターナショナルスピードウェイ」にちなんで生み出され、タキメーターベゼル(時速を測るベゼル)を持つこと、視認性・防水性といった外装仕様が実用的であったことからこと、そしてデザイン性の高さから大きな人気を博しました。
ムーブメントには完全自社製ムーブメントCal.4130を搭載。ロレックスの象徴として、時計ファンであれば誰もが一度は手にしたいモデルと称される存在となっています。
過度な装飾を施さず、レーシングウォッチとしての本質を極めたデザインをもつこと。
タキメーターのデザインも評価が高く、デイトナ人気の大きな要因となっています。
スピードマスター プロフェッショナル ムーンウォッチ クロノグラフ 311.30.42.30.01.005
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径42mm×厚さ14mm
駆動方式:手巻き
ムーブメント:Cal.1861
パワーリザーブ:約48時間
防水性:50m
定価:594,000円
「ムーンウォッチ」の称号でも知られているオメガの代表モデル「スピードマスター」。
NASAの公式装備品として採用された歴史から圧倒的な知名度をもつこのモデルもタキメーターを備えるクロノグラフです。
同シリーズには多岐にわたるラインナップが用意されていますが、その中でも基幹モデルに当たるのが、プロフェッショナル 311.30.42.30.01.005です。
オメガの定番中の定番であり、ファーストモデルから同じデザインで作られ続ける普遍性のある時計として知られます。
タグホイヤー カレラ ホイヤー02 CBG2A90.FT6173
素材:セラミック
ケースサイズ:直径45mm×厚さ13mm
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:ホイヤー02
パワーリザーブ:約80時間
防水性:100m
定価:734,400円
タキメーターを持つクロノグラフといえば、タグホイヤーの存在は欠かせません。
特にこの「CBG2A90.FT6173」は自社製ムーブメント ホイヤー02搭載モデルとして注目を集めています。
力強いデザインのタキメーターとカレラ特有のスケルトン文字盤の相性は抜群で、よりレーシングウォッチとしての印象が強まっています。
男らしく、そして何よりもスポーティ。
他のブランドとは一味も二味も違った魅力を秘めています。
ゼニス クロノマスター 1969 51.2080.4061/69.C494
素材:ステンレススティール×ピンクゴールド
ケースサイズ:直径42mm×厚さ14.05mm
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:エルプリメロ4061
パワーリザーブ:約50時間
防水性:100m
定価:1,210,000円
名機エルプリメロを搭載したゼニスの人気モデルクロノマスター1969。ローズゴールドを随所に使用した華やかな一本です。
ベゼル、インデックスや針などがローズゴールドで作られており、ラグジュアリーな仕上がりです。
デイトナやスピードマスターはベゼルにタキメーターが刻まれていますが、クロノマスターはインナーベゼルにタキメーターが配されています。
最後に
区間のおおよその平均時速を求めることができる機能「タキメーター」。実用的な機能として使われることは稀ですが、クロノグラフのデザイン性を決定付ける時計の重要なパーツであるのは確かです。
現代における人気クロノグラフは文字盤とタキメーターのバランスに優れるモノが多く、タキメーターの好みでクロノグラフを選ぶことも珍しくありません。
これまでタキメーターをなんとなく眺めていた方も、ぜひこの機会に距離を計測したり、細部まで調べてみてはいかがでしょうか?
これまで見えなかった新しい発見があるかもしれません。
当記事の監修者
池田裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年
タグ:取扱方法