スパイダーダイヤルは、アンティークロレックスに見られる特徴の一つで、まるで蜘蛛の巣のような形状をしたヒビが入ったダイヤルを指します。
経年変化によって自然に生まれるもので、より綺麗で芸術的な模様の個体は、高値で取引されます。
今回は、スパイダーダイヤルが生まれる原因やその魅力について、詳しく解説します。
目次
スパイダーダイヤルとは
時計は、経年劣化により文字盤(=ダイヤル)表面の塗装にクラック(=ヒビ)が入ることがあります。
このヒビが張り巡らされた蜘蛛の巣のような形状をしている個体を、スパイダーダイヤルと呼ぶのです。
スパイダーダイヤルは、1980年代後半に製造されたサブマリーナやエクスプローラーなどのモデルによくみられます。
経年変化によってのみ現れる特徴で、全く同じ模様の個体はこの世に二つと存在しないことから、あえてコンディションの良い個体よりもスパイダーダイヤルを選ぶコレクターもいるのです。
スパイダーダイヤルになる原因
スパイダーダイヤルは、ミラーダイヤルのラッカー加工にヒビが生じたことによって生まれるものです。
ちなみに、ミラーダイヤルとは鏡のような輝きを持った艶のある文字盤のことで、1967年頃までに製造されたモデルに使用されていました。
また、ラッカー加工とは塗料を何層にも塗り重ねる塗装技法のことを指します。
このラッカー加工には経年によるヒビが生じることがあり、そのヒビがスパイダーダイヤルの原因となっているのです。
スパイダーダイヤルの魅力
ロレックス正規店の見解としては、スパイダーダイヤルは時計の経年劣化という扱いなのです。
実際に、ダイヤルに生じたヒビからダイヤル自体が腐食してしまう恐れもありますので、修理の必要があるという判断になります。
にもかかわらず、スパイダーダイヤルが多くのコレクターや愛用者から高い人気を得ており、場合によっては同じモデルのコンディションの良い個体より高値で取引されるのは、それだけの魅力があるからです。
ここからは、そんなスパイダーダイヤルの魅力について詳しく解説していきます。
個性的で誰とも被らない
前述したように、スパイダーダイヤルは経年変化によって生まれるものなので、個体ごとにその模様は異なります。
そのため、一口にスパイダーダイヤルといっても、それぞれが唯一無二の個性を持っているのです。
そんな世界で一つだけの時計を所有したいという熱心なコレクターたちの間で、スパイダーダイヤルは高い人気を誇ります。
場合によっては、同じモデルでコンディションの良い個体よりも高値で取引されることもあるのです。
角度や光の加減で表情を変える
スパイダーダイヤルの模様は、角度によって部分的に見えたり見えなかったりします。
また、光の加減によっては、蜘蛛の巣のような模様に光が反射して、キラキラと浮き上がって見えることもあるのです。
そんな刻一刻と変わる表情の変化を楽しむのも、スパイダーダイヤルを所有する醍醐味といえます。
とくに、飽きっぽい性分の人にとっては、いつまでも飽きずに楽しませてくれる長年のパートナーになるかもしれませんよ。
ヴィンテージならではの渋さがある
スパイダーダイヤルの個体は、トリチウム夜光が飴色に変色した、いわゆる焼けた状態のものも多く、アンティークロレックスのなかでもとくにヴィンテージ感を強く感じられます。
そのため、スパイダーダイヤルを好んで購入する人は、ヴィンテージならではの雰囲気に魅力を感じている場合が多いです。
とくに、40代以上の男性が着用すれば、渋さや色気といった大人の魅力を身に纏うことができるでしょう。
資産価値が上がる可能性が高い
前述したように、スパイダーダイヤルは経年変化によって偶然生まれるものであり、狙って量産することができません。そのため、そもそもの個体数が少なく、とても貴重な存在といえます。
しかも、いわゆるアンティークロレックスであるため、コンディションの良い状態で保存するのが難しく、年々状態の良い個体は減る傾向にあります。
こういった事情から、スパイダーダイヤルの価格は時を経るごとに高騰しており、今後もその値段は上がっていくと考えられます。
スパイダーダイヤルはどのくらい価値がある?
前述したように、スパイダーダイヤルは資産としても非常に価値があるといえます。
多くの個体は150〜200万円ほどで取引されており、中には200万円を超える値がついているものもあります。
しかも、今後状態の良い個体が減っていくと考えると、その値段はさらに上がっていくことが予想できるでしょう。
資産としてロレックスの所有を検討する人は多いですが、購入当時より価格の上がる個体をお探しなら、スパイダーダイヤルは検討の価値がある商品といえるでしょう。
ロレックス GMTマスター 赤青ベゼル 16750 ブラック スパイダーダイアル
型番:16750
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径 40mm
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
まとめ
スパイダーダイヤルはアンティークロレックスの中でも人気の高い商品です。
人気の秘密は、誰とも被らない個性や、角度によって変わる表情、資産としての価値などにあります。
唯一無二の自分だけの時計をお探しの方は、ぜひ購入を検討してみてください。
当記事の監修者
池田裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年