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ロレックス2023年新作!ヨットマスター42 226627 RLXチタンモデルを徹底解説!
最終更新日:
ロレックスの2023年新作は、豊作だったと言わざるをえません。
新型デイトナやスカイドゥエラー、あるいは新コレクション「1908」の登場・・・驚かされた方も少なくなかったことでしょう。
そんな「驚き」の中でも、屈指だったのが新作ヨットマスター42ではないでしょうか。
ラグジュアリーな印象の強いヨットマスターから、これほどまでにツール感あるモデルが出るとは・・・しかも、RLXチタン製で!
この記事では、2023年にロレックスから発表された、新作ヨットマスター42 Ref.226627 RLXチタンモデルについて解説いたします!
出典:https://www.rolex.com/ja
目次
ロレックス2023年新作ヨットマスター42 226627 スペック
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径42mm |
素材: | RLXチタン |
文字盤: | ブラック |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.3235 |
パワーリザーブ: | 約70時間 |
機能
防水: | 100m |
定価: | 1,670,900円 |
ロレックス2023年新作ヨットマスター42 226627 特徴
ヨットマスターは1992年にロレックスがラインナップに追加したコレクションです。
視認性に優れた文字盤や回転ベゼルを搭載したプロフェッショナルモデルではあるものの、誕生当初はイエローゴールド製のラグジュアリーなライン。1997年にはステンレススティール×ゴールドのロレゾール(コンビ)を、1999年にステンレススティール×プラチナの「ロレジウム」を追加しますが、ラグジュアリーなイメージはそのままに、幅広いファン層を抱えていきます。
実際ヨットマスターはマリンウォッチの中でも、ヨットやクルーザーのオーナーをターゲットとしたコレクションと言われてきました。
しかしながら2023年、これまでのヨットマスターのイメージを覆すような、ツール感たっぷりの新作モデルが追加されます。
それが、本項でご紹介するヨットマスター42 Ref.226627です。
いったいRef.226627は、どのような新作なのでしょうか。その特徴をご紹介いたします!
①ヨットマスター42の新バリエーションとして登場
出典:https://www.rolex.com/ja
2023年、新作モデルがヨットマスター42に加わりました。
もっともヨットマスター42も、2019年に登場した、比較的新しいラインです。
前述の通り1992年に誕生したヨットマスターは、過去34mmや29mmのケースサイズもラインナップされてきましたが、2014年以降はレディースモデルが生産終了(ボーイズも2016年以降は37mmサイズへ)。40mmまたは37mmの二種展開が行われていました。
しかしながら2019年、ヨットマスター初となる42mmケースを携えた、ヨットマスター42が登場します。
※2019年に登場したヨットマスター42 Ref.226659
このモデルはヨットマスター初の42mmサイズに加えて、初のホワイトゴールド製モデルでした。さらにメタルベゼルが慣例であったにもかかわらず、ベゼルインサートはセラクロムに。堅牢な独自ラバー「オイスターフレックス」と相まって、モダンでスポーティーな印象が強いヨットマスターといったポジショニングを確立しました。なお、2022年にはヨットマスター42にイエローゴールドモデルが追加されます。
そう、ここまでのヨットマスターのバリエーションからもお察しの通り、同コレクションは基本的にプラチナまたはゴールドのプレシャスメタルが一部または全部に用いられてきました。
ところが2023年の新作Ref.226659は、オールRXLチタン製という全く新しい試みに!
また、これまではポリッシュ仕上げが基調であった外装はサテン仕上げに。ともすればロレックスのダイバーズウォッチラインとも見紛うツール感ですが、一方でヨットマスター由来のエンボス加工された特殊なベゼルは健在で、また丁寧な仕上げや面取り、そして立体感ある針・インデックスによって、高級感も忘れない仕様に完成されています。
なお、オイスターフレックスは基本的に金無垢モデルに搭載されてきたため、新作はブレスレットもオールチタンとなりました。
②RXLチタン製の外装
出典:https://www.rolex.com/ja
前項でヨットマスターはこれまでプレシャスメタルが一部または全部に使われてきたが、2023年新作でRXLチタンとなった、と申し上げました。
ヨットマスターでなくとも、ロレックスでチタンというのは非常に珍しい選択となります。ロレックスの基幹モデルと言うと、オイスタースティールと称される904L 高性能ステンレススティールが主流であったためです。
しかしながら2022年11月、突如としてRKLチタン製の新作モデル「ディープシー チャレンジ」がロレックスから発表されます(ちなみにこのモデルは、チタン製もさることながら、ケース直径50mm&11,000m防水というモンスター級のダイバーズウォッチとしても大きな話題となりました)。
RXLチタンとは、ロレックスのグレード5チタン合金です。
グレード5というのは合金をしたチタンのことで、純チタンはグレード2です。チタンそのものは加工がしづらく、とりわけ高級腕時計に欠かせない「仕上げ」の難易度が高くなります。そこで他の金属を含有させて合金とすることで、この弱点を克服するのがグレード5チタンなのです。
なお、「突如」とは言え、実は同年の3月に既存のシードゥエラー ディープシーがモデルチェンジした折、従来のグレード5チタンの裏蓋がRXLチタンと名称変更されていました。
この流れの中で「何らかのチタンモデルがロレックスから発表されるのでは?」といった噂はありましたが、よもやラグジュアリーなヨットマスターからローンチされるとは!
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もっとも2021年、イギリスのセーリングの名選手ベン・エインズリー氏のために、ロレックスはプロトタイプのチタン製ヨットマスターを製造しています。このチタンが既にRXLチタンと称されていたようです。このプロトタイプはストラップモデルであったりノンデイトであったりと、新作ヨットマスター42とは相違点もありますが、既にロレックスでは構想があったのかもしれませんね。
そんなRXLチタンの魅力は、軽量かつ堅牢。腐食にも強く、金属アレルギーを誘発しづらいといった特性もあります。
新作ヨットマスター42はオールメタルですが、チタン素材ゆえに軽量で快適な装着感を実現していることでしょう(ロレックスのモデルは重量級でも優れた装着感に定評がありますが)。
前述の通り、サテン仕上げが基調となった外装は、ロレックス随一のツール感を醸し出します。
実際新作ヨットマスター42は、ロレックスをして「セーリング競技における要件とプレッシャーに適しており、卓越した時計製造技術をスポーツにおけるパフォーマンスに取り入れている」と言わしめており、プロフェッショナルモデルとしての要素の強いバリエーションとして打ち出したのでしょう。
マットなセラクロムインサートも、チタンのツール感とよくマッチしていますね。
チタン製ブレスレットはイージーリンク搭載バックル付き。
出典:https://www.rolex.com/ja
コマを抜くことなく、バックル部分で5mmまでの微調整が可能となっているところも、プロフェッショナルモデルらしい心遣いですね。
防水性は既存のヨットマスター同様、100mです。
③ムーブメントCal.3235
新作ヨットマスター42 226627が搭載するムーブメントは、ヨットマスターやデイトジャスト、サブマリーナーなどにも搭載されてきた最新世代のCal.3235です。
ロレックスは1980年代後半からCal.3100系のムーブメントを搭載させてきました。このCal.3100系は本当に優秀なロレックスの基幹ムーブメントで、ロレックスの信頼性と確かな性能を下支えしてきたと言って過言ではありません。しかしながら2015年のデイデイトを皮切りに、ロレックスが「最新世代」と称するCal.3200系への載せ替えがメンズモデルを中心に行われていっています。
ヨットマスターも2019年、Cal.3235へのアップデートし、フルモデルチェンジとなりました。なお、前述の通り現行ヨットマスターは37mm・40mm・42mmがラインナップされていますが、40mmと42mmにこのCal.3235が搭載されています(37mmサイズには、小径サイズのオイスターパーペチュアルやデイトジャストに搭載されてきたCal.2236、こちらも優秀なムーブメントであることに変わりはありません)。
出典:https://www.rolex.com/ja
ではこのCal.3235がいったいどのようなムーブメントなのかと言うと、最大の特徴はパワーリザーブが約70時間へと延長されたことでしょう。
これまでCal.3100系は、約48時間パワーリザーブでした。このパワーリザーブというのはゼンマイの持続時間です。基本的に機械式時計はゼンマイがほどけるに従ってトルクが低減し、安定した精度を保ちづらくなります。そこでロングパワーリザーブにすることによって、安定したトルクを供給し、高い精度を維持するといった利点を獲得します。精度抜きにしても、土日に時計を外して、月曜日にまだ針が動いている・・・というのは便利ですよね。
新しい3200系では、LiGAなる微細加工技術によってパーツ軽量化などを行った、クロナジーエスケープメントを搭載しています。これはロレックスの特許技術による脱進機で、高効率な稼働を可能としており、パワーリザーブ延長に寄与しました。
なお、ブルーパラクロム・ヒゲゼンマイによって、耐磁性能と耐衝撃性にも考慮されています(こちらは2007年頃から搭載され始めていたパーツであり、ヨットマスターでは既に先代のRef.116622で採用されていましたが)。
https://www.rolex.com/ja/watches/rolex-watchmaking/new-calibre-3255.html
さらに、一部モデルへの搭載にとどまっていた、耐震装置パラフレックス・ショックアブソーバーを備えていること。また故障の原因として非常に多いカレンダー操作の禁止時間帯を一掃したこと。さらには高効率な巻き上げを実現したことなど、何かとアップデートを果たした、まさに最新機種なのです。
もちろん2015年頃から、これまた標準装備となりつつある高精度クロノメーターにも認定されています。
出典:https://www.rolex.com/ja/watches/rolex-watchmaking/movements.html
高精度クロノメーターというのはロレックス独自の精度規格で、同社の検査環境下(7つの静止姿勢と回転装置で実測!)において±2秒の超高精度を実現する厳格な認定です。時計業界で一つの指標となっている公的クロノメーターを凌駕する精度規格となっており、ロレックスの、さらなる高みへと上り詰めようとする姿勢を存分に感じられる称号とも言えます。なお、高精度クロノメーターの証として、グリーンのタグが付属することとなります。
搭載されるムーブメントからも、2023年新作ヨットマスター42は、内外ともにプロフェッショナル仕様となった高級スポーツウォッチであることがおわかり頂けるのではないでしょうか。
どうなる?今後のヨットマスター42 226627の入荷とロレックス相場
2023年新作ヨットマスター42 Ref.226627の国内定価は1,670,900円です。
国内入荷がいつになるかは断言はできませんが、例年新作ロレックスは5月頃から出回り始める傾向にあります。
もっとも正規店で新作ヨットマスター42を購入するのは、しばらくは難易度が高いと思わざるをえません。
近年ではロレックスの品薄と実勢相場の高騰がとみに話題になっていますね。
この話題の中心はステンレススティール製のプロフェッショナルモデルだったものですが、最近ではヨットマスターもまた価格高騰が著しく、ベゼルにプラチナが用いられたRef.126622等の現行モデルを中心に、二次流通市場では定価を超えるプレミア価格を記録し続けています。
RXLチタン製のヨットマスター42ともなれば、ご祝儀相場も加味されて、出回り始めは過去類を見ないような値付けが行われるのではないでしょうか。
とは言えロレックス渾身のチタンモデル。ロレックスファンとしては、一度は手にして、装着感を確かめてみたいものです!
当店でも入荷を頑張っていきたいと思います!
まとめ
2023年にロレックスから新作として発表された、RXLチタン製のヨットマスター42 Ref.226627についてご紹介いたしました!
非常にツール感溢れる逸品になっており、マットなセラクロムベゼルと相まって、ヨットマスターとしてはもちろん、ロレックスとしてもこれまでにない新境地を楽しめそうですね。
とは言え文中でも言及しているように、しばらくは二次流通市場でもなかなか手に入りづらいことでしょう。
今年もロレックスから目が離せませんね。
当記事の監修者
池田裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年