「ランゲ&ゾーネの時計にはどんなモデルがあるの?」
「ランゲ&ゾーネのムーブメント作りについて詳しく知りたい」
ドイツ屈指の名門・ランゲ&ゾーネ。
ロレックスやオメガに比べると知名度は高くありませんが、時計愛好家たちの間ではパテックフィリップに追随できるブランドと言われている真の実力派です。
そんなランゲ&ゾーネの魅力的なモデルが知りたいという人は多いのではないでしょうか。
一目でランゲ&ゾーネとわかる端正な面持ちや上品さも素晴らしいですが、同社の真髄はムーブメント。
ドイツ時計製造の伝統技法を誠実に守り抜き、かつ「一つのモデルに一つのムーブメント」という哲学のもと開発に心血を注いできました。
この記事ではランゲ&ゾーネの魅力的なモデルを、GINZA RASINスタッフ監修のもと紹介します。
ムーブメントの特徴についても解説しますので、機械式時計の購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
ランゲ&ゾーネの魅力的なモデル~ランゲ1~
ランゲ&ゾーネ ランゲ1
1845年、ザクセン公国(現ドイツザクセン州)の王宮時計師に端を発するランゲ&ゾーネは、第二次世界大戦、そしてドイツ東西分裂の戦禍にまみえ、一時休眠を余儀なくされます。
しかし創業者アドルフ・ランゲのひ孫であるウォルター・ランゲによって見事時計産業に返り咲きました。
1994年、その新生ランゲの記念すべきファーストコレクションがランゲ1です。
出典:https://www.alange-soehne.com/en/#logo-top
2015年にブラッシュアップを経てリニューアルしたランゲ1。
まず目につく1時位置のアウトサイズデイトを始め、アシンメトリーなダイアルデザインは初代のままに、ムーブメントが一新され性能が大幅に向上しました。
この新世代にしてランゲ50機目となる手巻き式ムーブメントL121.1は、時計を裏返すとその差が一目瞭然なのです。
旧式L901.0
新式L121.1
(出典:https://www.alange-soehne.com/en/#logo-top)
まず、ムーブメントを大きく覆うプレート。
独特のストライプ模様(コートドジュネーブ)が美しいですね。
これは、3/4プレートと呼ばれ、アドルフ・ランゲによってドイツ時計製造に取り入れられた手法。
ムーブメントのほとんどを覆う受け板でいくつもの歯車を押さえつけることにより、歯車が動かず精度を安定させたりムーブメントへのゴミの侵入を防いだりすることができます。
一見すると単純な手法ですが、一枚岩でいくつものパーツを押さえつけなくてはならないため、高い技術力と根気が必要。
ランゲ&ゾーネではこの工程を伝統的に手作業によって行ってきました。
同社のアイデンティティとも言うべき3/4プレート、旧式のL901.0では2つのブリッジを含む3ピースで構成されていたプレートが、L121.1では一枚岩となったのです。
巻き上げ車を「魅せる」造りよりかはいくぶん見劣りのする3/4プレートですが、この変更により洋銀の美しさ、グラスヒュッテストライプがより際立ち、さらに裏蓋からのぞくことが楽しみなモデルとなりました。
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次の大きな変更点は、時計の心臓部。
どこか古めかしさを感じさせていたチラネジ付きのテンプが、調整用偏心錘を備えたテンプと自社製フリースプラング式ヒゲゼンマイ搭載脱進機となったこと。
この偏心錘搭載テンプというのは、偏心錘を回転させることによって調整を担うヒゲゼンマイへの負担を少なくし、かつテンプの片振をなくすため左右の振り角が均等になり、従って精度そのものも調整することができるのです。
ちなみにこのフリースプラング式ヒゲゼンマイは自社製。
一口にマニュファクチュールと言っても、ヒゲゼンマイを自社製できるのはロレックスやセイコーなどごくわずか。
非常に高難度の技術力となります。
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さらに、外装からはわかりませんが、瞬時日送り機能が追加されました。
L901.0では日付が変わるまでに30分かかっていたため、より使いやすく。
テンプなどの配置も新旧で反転し、全く新しいムーブメントとなりました。
L901.0は誕生から20年を経ても約72時間のロングパワーリザーブや精度面で圧倒的な名機であったことに間違いありません。
しかし、調和性や耐久性、そして日送りなど実用面ではどこか時代遅れであったことも確か。
ランゲ1のマイナーチェンジは華々しいものではありませんが、間違いなく一流が手掛ける一級品が備わったと言えるでしょう。
ランゲ1の裏蓋からは、そんなドラマが垣間見えるのです。
ランゲ&ゾーネ グランドランゲ1
ランゲ1を41mmケースにサイズアップし、2012年に登場したグランドランゲ1。
ランゲ&ゾーネのモデルの中で最大サイズのデイト窓となっており、視認性が高いことはもちろん存在感は抜群。
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こちらに搭載される手巻き式キャリバーL095.1はL901.0の特徴を受け継ぎながらも決して焼き直しではありません。
ランゲ&ゾーネの「一つのモデルに一つのムーブメント」という哲学のもと、新しく開発された新機種です。
ムーブメントも合わせて大型化されたことによりパワーリザーブ72時間を保ちながらもシングルバレルにまとめられました。その分厚みが抑えられ、すっきりとした印象に。
ランゲ1では従来からテンプが小さいと言われていましたが、グランドランゲ1も昔ながらのテンプを採用しています。
また、日付の切り替わりもまだ30分ほどかかるスローチェンジのまま。
しかし、逆にクラシカルな趣があること、また、「魅せるためのムーブメント」としての美しさをも兼ね備えていることに変わりはありません。
ランゲ&ゾーネ グランドランゲ1 ムーンフェイズ
こちらは、41mmサイズのグランドランゲ1に、コンプリケーションとしてムーンフェイズを搭載したモデル。
手巻き式キャリバーL095.03はやはりシングルバレルながら約72時間のパワーリザーブを備えています。
また、裏蓋から一見するとグランドランゲ1とあまり違いはありませんが、ダイアル側から全貌を見るとランゲ&ゾーネの「凄み」が込められているのです。
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このムーンフェイズ機構は、月そのものの公転に合わせてディスクが回転します。
そのため衛星軌道を忠実に表現することができ、一度正確に合わせかつ時計を動かし続ければ122年で誤差一日という驚くべき高精度を誇るのです。
この手法は。ディスクのギヤ比を緻密に、狂いなく計算する必要があります。
通常のムーンフェイズ周期が29.5日で計算され、2年半に一度の手修正が必要なことを鑑みるといかにこの技術が優れているかが分かりますね。
ランゲ&ゾーネの真骨頂はムーブメントであることを改めて感じさせられる傑作機と言えます。
ランゲ&ゾーネ ランゲ1 デイマティック
ランゲ1シリーズ初となる自動巻き式ムーブメントを携えた、2010年発表モデル。
ランゲ1の芸術的なアシンメトリーダイアルをそのまま左右反転させており、またパワーリザーブ表示がレトログラード式曜日表示へと変更に。従って裏蓋から覗くムーブメントも全く異なる様式となります。
シリーズ初の自動巻きキャリバーL021.1でまず目に入るものは、ムーブメントの直径ほぼいっぱいを覆う社名入りの巻き上げ用ローターではないでしょうか。
このゴールドとプラチナを使ったローターは、見目麗しいのはもちろん、摩擦を抑えた滑り軸受けを回転する機構となっており、最小限の動きで効率よい巻き上げを実現します。
振動吸収型サスペンション搭載のため、耐久力も向上。
ブリッジや受けにはランゲ1の伝統技法を継承しており、手作業によってあしらわれたエングレービングは圧巻なまま。
メイドインドイツでも自動巻き式が主流となりつつある昨今ですが、これほどまでに美しいムーブメントはランゲ&ゾーネが随一ではないでしょうか。
ランゲ&ゾーネ ランゲ1 タイムゾーン
ホームタイムと世界各地のタイムゾーンを同時に表示させる、人気のワールドタイム機構。
ボタンを押してダイヤル外周に取り付けられている24都市リングを回転させることにより、第二時間帯を容易に設定できます。
搭載される手巻き式キャリバーL031.1を裏蓋から見てみると、3/4プレートの上にゾーンタイム用の輪列が取り付けられています。
その下にその輪列と24都市リングを設定する機構と針位置合わせ装置が隠されていて、これによって普段は動いているタイムゾーンとデイナイト表示を固定。
時刻設定が可能となります。
この機構のため、目に見えない位置で多くの細かなパーツが必要となり、しかもそれは手作業によって行われています。
ワールドタイム機構は人気がある反面非常に高度な技術力が必要と言われます。
コンスタントに製造しているブランドで有名どころはワールドタイムに先鞭をつけたパテックフィリップやヴァシュロンコンスタンタンなど一流どころばかり。
ランゲ&ゾーネはその休眠期間からか世界三大雲上時計ブランドに名前はありませんが、全く遜色ない名門であることは時計を見れば一目瞭然ですね。
ランゲ&ゾーネ ランゲ1 トゥールビヨン パーペチュアルカレンダー
ランゲ1のダイアルデザインを維持しながら、超複雑機構・永久カレンダー、トゥールビヨンを搭載したランゲきってのコンプリケーションモデル。
月表示が外周リングに、同時に搭載されたムーンフェイズが7時位置のサブダイアルにあしらわれたため、各表示が重なることなく、複雑なのにすっきりした顔を持つと時計愛好家から絶大な支持を得ます。
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搭載される自動巻きキャリバーL082.1のローターの下部にトゥールビヨンが備わり、その美しい動きを裏から垣間見ることができます。
ちなみにこのトゥールビヨン用ストップセコンドはランゲ&ゾーネの特許技術。
リューズを引き出すとトゥールビヨンキャリッジ内のテンプを停止させ、時刻を秒単位で合わせることができるのです。
このキャリッジ上部はブラックポリッシュという手間暇かけた技法で仕上げがされており、ランゲ&ゾーネだけが輩出できる唯一無二のトゥールビヨンとなります。
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ダイアル側のムーブメントもまた、高次の技術がいかんなく発揮されます。
同じく特許出願中の月間日数トレース機構。これは、1年間に1回転し月を表示するリングそのものに日数情報が組み込まれており、専用のプログラム車が必要ないためすっきりとした、魅せるところだけ見せるムーブメントに仕上がるのです。
ランゲ&ゾーネの魅力的なモデル~サクソニア~
ランゲ&ゾーネ サクソニア オートマティック
ランゲ1とともに、1994年復興コレクションに名を連ねたロングセラー、サクソニア。ラテン語で、ザクセンという意味を持ちます。
一目見て調和のとれたシンプルダイアルに心を奪われるモデル。
無駄の一切を省いたそのシンプルでベーシックな外装は、細部までこだわりぬかれており、風格のようなものを漂わせますね。
サクソニアもまた、その裏蓋から精密精緻で美しいムーブメントがのぞきます。
とりわけサクソニア オートマティックモデルに搭載されたキャリバーL086.1はランゲの自動巻き式ムーブメントの中で最も薄く、ケース厚はわずか7.8mm!
また、ランゲ1の自動巻きはパワーリザーブ約50時間が基本なことに対し、サクソニアでは約72時間と大幅に延長。
シンプルモデルゆえの使い勝手の良さと言えます。
もちろんランゲ伝統の3/4プレートやエングレービング、そして完璧な仕上げを楽しむことも可能。
全てゴールドモデルのため、自動巻き・2針+スモールセコンドのみのモデルとしてはかなり高めの定価200万超え。
しかし、ランゲ&ゾーネが時計一本いっぽんにかける情熱を考えると、適正価格なのでしょう。
ランゲ&ゾーネ サクソニア フラッハ
デイト表示どころか秒針すら持たない、シンプルの極限を追求したサクソニアのモデルのうちの一つ。
直径40mmながらケース厚はわずか6.2mm。
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この薄さを実現しているのが、手巻き式キャリバーL093.1。
ムーブメント厚2.9mmを実現するため、あらゆるパーツを最小限に抑えてあります。
これだけ薄型にもかかわらず、3/4プレートやビス留めゴールドシャントン、エングレービングに仕上げは欠かしていません。
2018年には星空のようなミッドナイトブルーダイアルがリリースされました。
シンプルながら、どこのブランドとも違う唯一無二のモデル。
それがサクソニアであり、ランゲ&ゾーネの時計なのです。
ランゲ&ゾーネ サクソニア ダトグラフ
クロノグラフの最高傑作として名高いダトグラフ。
ダトとはドイツ語でデイト、デイト機能を備えたクロノグラフという意味を持ちます。
タキメーターやサブダイアルでごちゃごちゃしがちなクロノグラフを、端正にまとめ上げていることが最高傑作と言われる所以。
そしてダトグラフが最高峰であるもう一つの理由。
それこそがムーブメントです。
他モデルの一切をベースにせず、完全自社製造により生み出されたという異例のCal.L951系は、さらに驚くべきことに世界初のプレシジョン・ジャンピング・ミニッツカウンターアウトサイズデイトフライバック機能が付いたクロノグラフとして1999年の誕生と同時に世界中で話題をさらいました。
プレシジョン・ジャンピング・ミニッツカウンターとはクロノグラフにありがちな計測誤認を解消するための機構で、積算分針が60秒経過するごとに正確に目盛りのひとつ先に進む設計となっています。
そのため、たまたまクロノグラフ針が0の瞬間にタイム計測を停止した場合にも、積算分針は進むためラグが発生することがありません。
この技術は世界最高難度に分類されるものでありながら、高精度クロノグラフには欠かせません。
ちなみに同社の1815クロノグラフにはこの機構が搭載されていましたが、ダトグラフに至ってはアウトサイズデイト及びフライバック機能(計測中にリセットボタンを押すと、ただちに新しいタイム計測を行う機能)をも付されているというのだから驚きです。
現在、このダトグラフはブラッシュアップが施され続けているほか、永久カレンダーやトゥールビヨンなど、様々な超複雑機構が搭載されたモデルが発表されています。
一目で多岐にわたる精密なパーツが入り組んでいることが見てとれると思いますが、きちんと計算されたレイアウトであるため、ランゲ特有のテンプ受けのエングレービングや仕上を鑑賞することができます。
「完璧」でありよもや改良の余地なし、と思われたL951も、ランゲ&ゾーネにとってはただの通過点であったのだと驚かされます。
ランゲ&ゾーネの魅力的なモデル~1815~
ランゲ&ゾーネ 1815 アップ/ダウン
ランゲ&ゾーネの伝統を伝える時計として扱われる1815。
このモデルは、ドイツ・ザクセンの時計産業の父であり創業者でもあるアドルフ・ランゲ生誕の年にちなんで名付けられました。
ブルースチールの針やアラビア数字、そしてイメージは線路となっており、レイルウェイモチーフの分目盛りなどの伝統的な要素が特徴とされています。
1815はアドルフが活躍していた当時主流だった懐中時計の流れを多く取り入れています。
とりわけアップ/ダウンは、当時の懐中時計の他マリンクロノメーターにも搭載され、かつランゲのお家芸となっているパワーリザーブ表示AUF/ABにちなんでいるのです。
手巻き式キャリバーL051.2では、1815の持つ伝統性通りクラシカルな佇まいが特徴。
しかし一見すると、他モデルのそれと比べて輪列とビス留め式ゴールドシャトンが二つ増えていること、そして香箱のボリュームが大きくなっていることがわかります。
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これにより約72時間のパワーリザーブを獲得しながら、パワーリザーブインジケーター搭載。
そしてムーブメントの直径わずか30.6mm、厚4.6mm、ケースサイズ39mm、厚8.7mmを実現しました。
歴史的な意義深さだけでなく、決して時代遅れにならない技術力がランゲ&ゾーネの実力と言えます。
Column
ランゲ&ゾーネのムーブメントの特徴
冒頭でも述べたように、ランゲ&ゾーネはドイツきっての名門。
これまでお見せしてきた傑作ムーブメントからも、その実力をおわかりいただけたかと思います。
日本での知名度はそこまで高くはなく、ロレックスやオメガほどのマーケティング力もなければカルティエやハリーウィンストンのような華美さもありません。
しかし、ザクセン公国(現ドイツザクセン州)の王宮時計師「アドルフ・ランゲ」に端を発する同社は、ランゲとその息子たちというブランド名通りランゲ一族によって営まれてきました。
第二次世界大戦、東西分裂などで一度は休眠に陥るも、1990年、アドルフのひ孫「ウォルター・ランゲ」によって復興がなされます。
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現在はカルティエやIWC、パネライなどが傘下にあるリシュモングループに属してはいますが、宮廷時計師の一族としての誇り、そしてドイツ時計製造の伝統を連綿と守り抜くという歴史的に意義深いブランドとしても有名。
昔ながらの製造手法を守り、性能も見た目にもこだわりぬいた高級時計を製造しています。
とりわけムーブメントはドイツものづくりの歴史と伝統の象徴。
ランゲ&ゾーネのムーブメントへのこだわりをご紹介いたします。
3/4プレート
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シースルーバックはメカ好きにはたまらない機能ですが、同じ自動巻きでもスイス製とドイツ製で外観が大きく異なります。
その最たる所以は、ドイツ製に見られる3/4(4分の3)プレート。
これは、歯車を一枚の大きな受け板によって押さえるもので、耐久性や精度の安定性を大幅に向上させます。
歯車が動かず、またゴミなどの侵入を防げる非常に合理的な製造手法ですが、一枚板でいくつもの歯車を押さえなくてはならないため、組み付けに高い技術と根気が必要とされます。
同じく大きな受け板でパーツを支えるムーブメントはIWCやパネライなどが実践していますが、これは何枚かのプレートによって構成されているため、難易度はいくぶん容易になります。
IWC ポートフィノ ハンドワインド 8DAYS IW510106
しかしランゲ&ゾーネは一貫した3/4プレート。
大量生産が重視されがちな現代において、一つひとつ妥協のない手作業により製造しているのです。
エングレービング(彫刻)・仕上げ
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ランゲ&ゾーネのムーブメントに見られる装飾手法で、エングレービングは欠かせない存在です。
同社は全て職人の手作業によってあしらわれているため、どのムーブメントも同じものは一つとしてなく、とりわけテンプ受けはランゲを特徴づけるもので、例えそこが裏蓋から見えない仕様であっても欠かさないそう。
また、ムーブメント全てのパーツに仕上げが施されます。
面取り、磨き・・・
遠目にはわからないそのこだわりを、ランゲ&ゾーネはどんなに細かな部分であっても妥協せず施しているのです。
また、3/4プレートなど多くのパーツで洋銀(ジャーマンシルバー)が採用されていますが、この洋銀というのが仕上げが非常にわかりやすい素材で、携わった職人の手腕が出てしまうとのこと。
しかし洋銀は強度が高く酸化による褪色がしづらいため、同社のような技術力を持ったメーカーのみが採用しうる素材なのです。
一次組立に次ぐ二次組立
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繊細な手作業によって丁寧に組み立てられたムーブメント。なんと、出荷前に全てバラします。
最初の組立てでは「調整」をメインに組み立てが行われるため微小な傷―顕微鏡でなければ見えないような―が付いてしまうため、とのこと。
一度分解し、一点の曇りすらない状態で再度磨きやエングレービングといった仕上げ作業を行う。
そうした徹底的なこだわりにより、芸術品に匹敵するような美しいムーブメントが完成されているのです。
まとめ
1994年、ランゲ&ゾーネが復活を果たした時、アシンメトリーで独特。なのに耽美とも言える調和のとれたデザイン性が時計業界を沸かせました。
実はその内に秘められたムーブメントにこそ、かつてのランゲ&ゾーネがそのまま蘇ったと実感する最たるものだったのです。
ドイツで培ってきた伝統手法にどこまでもこだわり、熟達した職人たちの手作業によって連綿と製造されているランゲ&ゾーネの時計は、ともすれば現代の大量消費社会にはそぐわない面もあるかもしれません。
しかし、今後社会や人々がどのように変わったとしても、変わらず時を刻み続けていることもまた確かではないでしょうか。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年