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速報!2022年ランゲ&ゾーネ新作モデルを発表!by Watches & Wonders Geneve
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出典:https://www.alange-soehne.com/ja/home
ドイツの至宝ランゲ&ゾーネ。美しく工芸品のような同社の腕時計は、世界の愛好家の憧憬を一身に集めます。
また「一つのモデルにつき、一つのムーブメント」を自社製造する大変稀有なブランドでもあり、高い時計製造技術と設計力,熟達した職人魂を強みに、時計業界で特別なポジションを獲得してきました。
そんなランゲ&ゾーネの新作、例年楽しみにしているファンは少なくありません。決して新作を大量リリースするようなブランドではありませんが、確実に美しく、革新的で、それでいて熟成された至極の新作を発表し続けてきたためです。
2022年、ランゲ&ゾーネが放った、至高の腕時計とは?
目次
2022年ランゲ&ゾーネ新作①オデュッセウス チタン Ref.363.117
出典:https://www.alange-soehne.com/ja/home
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径40.5mm×厚さ約11.1mm |
素材: | チタン |
文字盤: | アイスブルー |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.L155.1 |
パワーリザーブ: | 約50時間 |
機能
防水: | 12気圧 |
定価: | 要問合せ |
2019年10月、突如としてランゲ&ゾーネから放たれたスポーツウォッチ「オデュッセウス」。
同社初のステンレススティール製、同社初のスポーツウォッチ、そして同社初のねじ込み式リューズによる12気圧防水モデルということで、時計業界ではかなり驚きを以て報じられたものです。
もっともステンレススティール製とは言え、ランゲ&ゾーネの極上の仕上げや加工はオデュッセウスでも健在。複雑な形状をしているにもかかわらず細部に至るまでしっかりと作り込まれており、まさにラグジュアリー・スポーツウォッチとはかくあるべし。
ハイメゾンとしては珍しく12気圧防水を堅持している傍ら、ケース直径40.5mm×厚さ11.1mmと薄型設計となっているため、装着感にも優れていることでも話題となりました。
オデュッセウスはその後ホワイトゴールド製モデルがリリースされましたが、2022年、なんとチタン製の新作モデルとして登場しているのです。もちろんチタンも、ランゲ&ゾーネにとっては初めての採用です。
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基本デザインや設計は既存のオデュッセウスと大きく変わりません。
複雑かつ美しい造形を宿したケース,丸みとエッジが両立したフォルム,しなやかな5連リンクがまず見て取れます。美しい針やステップの付いたダイアル,ランゲ&ゾーネを象徴するアウトサイズデイト(および曜日窓)もお楽しみ頂けることでしょう。ケース厚11.1mmという上品さも変わりません。
オデュッセウスのフォールディングバックルはロゴをプッシュすることで微調整可能な独自エクステンション機構が搭載されていましたが、2022年新作チタンモデルでも引き継がれているようです。この微調整は、重量が出がちなスポーツウォッチの装着感を高めるうえで重要なシステムですが、その点にぬかりがないのもさすがランゲ&ゾーネですね。
この優れた装着感は、軽量なチタンとなったことでいっそうの高まりを見せたことでしょう。
とは言えもちろん、チタン製以外に変更点も見られます。モデルに合わせた変化を与えるところも、同社の強みであり魅力です。
まず文字盤カラーにはアイスブルーが用いられることとなりました。
ステンレススティールでは濃いブルー,ホワイトゴールドではグレー文字盤が採用されており、チタン製オデュッセウスはこれらとはまた異なるエレガンスが醸し出されています。さらに文字盤の仕上げも変更が加えられており、リング外周に弧を描くようにして広げられた丁寧なギョーシェ彫りが見受けられます。スモールセコンドはスネイル仕上げと、仕上げの種類を変えているところにも、ランゲ&ゾーネの時計製造技術へのこだわりが見て取れます。
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外装の仕上げにも変更が加えられているようで、ツヤ消し・ポリッシュのコンビネーションによって立体感を出しているところは変わりませんが、チタン製になったことでつや消しはサンドブラストとなり、落ち着いた印象を醸し出します。
ムーブメントは変わらず自動巻きキャリバーL155.1 Datomatic(ダトマティック。ドイツ語で日付を意味するデイト+オートマティックを組み合わせた造語)。パワーリザーブ約50時間を備えたこのオデュッセウス専用ムーブメントは、プラチナ製の肉抜きされたセンターローター,グラスヒュッテストライプが施された洋銀製3/4プレート,テンプ受けの見事なエングレービング等、雲上らしい魅力を備えており、シースルーバックからご鑑賞頂けます。
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惜しむらくは、世界限定250本生産ということ。
もっともステンレススティール製・ホワイトゴールド製オデュッセウスともにきわめて稀少なモデルとなっているため、なかなか市場に出回りませんね。大量生産とは無縁のランゲ&ゾーネであるがゆえ、新作オデュッセウスもまた憧憬の的となっていくことでしょう。
2022年ランゲ&ゾーネ新作②グランド・ランゲ1 Ref.137.038/137.033
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スペック
外装
ケースサイズ: | 直径41mm×厚さ約8.2mm |
素材: | ホワイトゴールド/ピンクゴールド |
文字盤: | グレー |
ムーブメント
駆動方式: | 手巻き |
ムーブメント: | Cal.L095.1 |
パワーリザーブ: | 約72時間 |
機能
防水: | – |
定価: | 5,896,000円 |
ランゲ&ゾーネのフラグシップとも言えるランゲ1。
1994年、ランゲ&ゾーネの復興にあたって第一陣として打ち出されて以来、同社にとっても時計業界にとってもアイコニックな一本として君臨しています。
※ランゲ&ゾーネの創業は1845年、ドイツ グラスヒュッテにフェルディナント・アドルフ・ランゲ氏が構えた工房に端を発しますが、第二次世界大戦およびその後の冷戦によるドイツ混乱で、一時市場から同社の名前は消えました。
ドイツ東西統一後、四代目ウォルター・ランゲ氏がブランドを復活させ、同時に「ランゲ1」「サクソニア」「アーケード」「トゥールビヨン“プール・ル・メリット”」の4モデルを公開したことで、新生ランゲ&ゾーネはまたその歩みを初めていくこととなった経緯があります。
ランゲ1は、ブランド創業者アドルフ・ランゲ氏が師匠のグートケスとともに作ったドイツ ドレスデンのオペラハウスに設置されている、5分時計がモチーフになっていると言われています。
そして、その最たる特徴と言えば、アシンメトリー(非対称)の文字盤でしょう。
ベーシックなセンター2針+スモールセコンドではなく、文字盤にオフセットした時分針のインダイアルとスモールセコンドのインダイアルおよび1時位置のアウトサイズデイト・3時位置のパワーリザーブインジケーターが非常に大胆。黄金比を用いて緻密にレイアウトされているため、端正な顔立ちと唯一無二の存在感が両立していますね。
※上記画像はランゲ1。ちなみに通常の時計は10時10分を指した状態で撮影するのが美しいとされていますが、ランゲ&ゾーネでは反対の1時51分となっており、これが自社製品を最も美しくパランスよく見せるカットなのだと言います。
そんなランゲ1は2003年、アップサイジングしたグランド ランゲ1をそのコレクションに加えます。
さらに2012年に、グランド ランゲ1をフルモデルチェンジ。これを機にグランド ランゲ1専用のムーブメントが搭載されるようになり、また既存のグランド ランゲ1は41.9mmケースであったことに対し、第二世代のグランド ランゲ1は直径40.9mm×厚さ8.8mmへと変更(ちなみにランゲ1は直径38.5mm×厚さ9.8mmケース)が加えられます。これによってスーツの袖口に収まりの良い、モダンなランゲ1としてコレクションに息づいていくこととなりました。
そして2022年、グランド ランゲ1は最新世代への突入を果たします。
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ランゲ&ゾーネらしいと言うべきか。ぱっと見たデザインに、既存のモデルとの大きな変更点は見受けられません。
しかしながらベーシックなランゲ1ではこれまで採用されてこなかったグレー文字盤を採用。さらにケース厚が従来の8.8mmから8.2mmへと、薄型化が図られました。
新生グランド ランゲ1はモダンなサイズ感でありながらも、同社らしいエレガンスと上品さがさらに深まったことを示唆しています。
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なお、文字盤にはベースを梨地に、インダイアル部分をスネイル仕上げにとコンビネーションすることで、ランゲ&ゾーネらしいこだわりを感じさせています。グランド ランゲ1は薄く収められたドーム型ガラスを備えているため、クラシック・テイストも楽しめるのがまた味わい深いですね。
ムーブメントは変わらず、グランド ランゲ1専用の手巻きCal.L095.1が搭載されました。
約72時かのロングパワーリザーブを誇る一方できわめて薄型に設計されており、またランゲ&ゾーネ特有の美しい意匠をシースルーバックから楽しむことが可能です。
バリエーションは計2種で、ホワイトゴールドとピンクゴールドがリリース。針やインデックスも、それぞれの素材に合わせた意匠となっております。
いずれもグレー文字盤が採用されており、国内定価は5,896,000円です。
2022年ランゲ&ゾーネ新作③リヒャルト・ランゲ ミニッツリピーター Ref.606.079
出典:https://www.alange-soehne.com/ja/home
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径39mm×厚さ約9.7mm |
素材: | プラチナ |
文字盤: | ホワイト |
ムーブメント
駆動方式: | 手巻き |
ムーブメント: | Cal.122.1 |
パワーリザーブ: | 約72時間 |
機能
防水: | 2気圧 |
定価: | 要問合せ |
コンプリケーション(複雑機構)の担い手としても一家言持つランゲ&ゾーネ。
2022年はリヒャルト ランゲから、新しいミニッツリピーターモデルが登場しました。
リヒャルト ランゲは、かつて同社が得意としていた科学観測用時計の伝統を受け継ぐモデルです。アドルフ・ランゲ氏の長男であり、時計技術の研究に大きく貢献した天才時計師でもあったリヒャルト・ランゲ氏に捧げられたモデルでもあります。
そのためランゲ&ゾーネ最高水準の精度と、同社曰く「望みうる最善の視認性」を最優先させた造りになっていることも特徴で、コンプリケーション搭載モデルも多い一方で端正な顔立ちとシンプルな美しさを有する一大コレクションです。
そんなリヒャルト ランゲからリリースされた2022年新作、ホワイトエナメルの文字盤と青針の美しいコントラストもさることながら、やはりハイライトは新しいミニッツリピーターでしょう。
出典:https://www.alange-soehne.com/ja/home
ミニッツリピーターは世界三大複雑時計に数え上げられる中でも、さらに製造難易度の高い機構として知られています。
ミニッツリピーターは付属のレバーやスイッチによって現在時刻を奏でてくれる機構を指します。「時間・15分・分」などといった各単位をゴングによって低高音で打ち鳴らすというのが基本設計であるため、気密性が求められる機械式時計内部では音がこもってしまったり、そもそも腕時計サイズにすることが困難な面があります。また1分単位を制御しなくてはならず、製造の難しさは筆舌に尽くしがたいものがあります。
こういった経緯からミニッツリピーターは時計愛好家からは崇高の対象にもなっている機構なのですが、ランゲ&ゾーネは永久カレンダーやラトラパンテ・クロノグラフと組み合わせたグランドコンプリケーションや、デジマル式ミニッツリピーターを開発し、他社とは一線を画すコンプリケーションの世界を繰り広げてきました。
もっとも2022年新作は、リヒャルト ランゲらしくシンプルな文字盤となっており、搭載されるミニッツリピーターも一つです。
※グランドコンプリケーションの際は、ソヌリ機構も併せて搭載されていました。ソヌリとは、レバーやプッシャーで所望の時刻に音を奏でるミニッツリピーターに対し、オン時には人為的な操作なしに一定の間隔で音を鳴らす機構です。なお、毎正時と15分・30分・45分に音を鳴らしてくれる機構をグランソヌリ、毎正時と30分ごとに音を鳴らしてくれる機構をプチソヌリと呼び分けたりします。
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9時位置に取り付けられたスライダーを操作すると、低音で時を、高音・低音のリピートで正15分を、高音で分をその時刻の回数分打ち鳴らし、伝統的なミニッツリピーターを当新作のオーナーは味わうことができます。
一方で性能面で進化を遂げており、その最たるものが一時休止省略機能です。
従来のミニッツリピーターでは、正時をゴングが奏でた後、正15分を打つ必要のない14分間は、分を奏でるまでに少しのタイムラグを持ちました。しかしながら一時休止省略機能によってこのタイムラグがなくなり、シームレスにミニッツリピーターの音色を楽しむことができる仕様になったというわけです。
またミニッツリピーター作動時にリューズを引きだしてしまい、当該機構を破損するのを防ぐため、リピーター作動時にはリューズが引き出せないような仕様も採られています。
さらにランゲ&ゾーネ特許技術のハンマーブロッカーも、特筆すべき新ポイントです。ゴングを叩くハンマーが、打ち鳴らした反動でゴングに当たってしまわないために、ゴングを叩くたびに初期位置にハンマーを留めるといった工夫をこらしています。こういった機構によって、いっそう美しい音色を安定して供給されるこだわりが一本のミニッツリピーターに込められることとなりました。
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シースルーバックからは、上記のような機構を詰め込んで堂々リリースされた手巻きCal.L122.1をご鑑賞頂くことができ、グラスヒュッテ・ストライプに代表される美しい仕上げや装飾を楽しめることはもちろん、ゴングとハンマーが奏でるチャイムのメカニズムをつぶさに観察頂けるでしょう。
なお、このチャイム・メカニズムは、ランゲ&ゾーネ曰く「高価な楽器と同じように手作業で調律」したとのことです。50本限定生産なのも、こういった手作業を鑑みればやむなしか。
複雑機構を搭載しているにもかかわらず美しきプラチナ製ケースは直径39mm×厚さ約9.7mmと、きわめて薄型で上品。
ランゲ&ゾーネの特別な世界観に誘ってくれる、傑出した2022年新作モデルです。
まとめ
2022年、ランゲ&ゾーネの新作モデルをご紹介いたしました!
伝統的でありながらも、新しい機構によってより美しい音色が訴求されたリヒャルト ランゲ ミニッツリピーターを始め、至極の逸品ばかりだったのは例年通り。
もっともランゲ&ゾーネは大量生産とは無縁のハイメゾンゆえ、なかなか市場に出回ってこないのが惜しいところ。なかなか気軽に手にできる新作モデルではありませんが、時計好きなら一度は手にしたいものですね!
当記事の監修者
南 幸太朗(みなみ こうたろう)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン プロスタッフ
学生時代に腕時計の魅力に惹かれ、大学を卒業後にGINZA RASINへ入社。店舗での販売、仕入れの経験を経て2016年3月より銀座本店 店長へ就任。その後、銀座ナイン店 店長を兼務。現在は営業企画部 MD課 プロスタッフとして、バイヤー、プライシングを務める。得意なブランドはパテックフィリップやオーデマピゲ。時計業界歴13年。