興味はあっても、なかなか手を出しづらいのがアンティーク時計(ヴィンテージ)。
モデルの違いや価格の差、扱う上での注意点など、分からないことが多くていまいち一歩を踏み出せない、と言う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、アンティーク時計とはどんなもので、どこを注意すればいいかを知る事で、もっと身近に感じられるようになります。そして理解を深めると、いっそうアンティーク時計の魅力にも近づけるものです。
そこでこの記事では、アンティーク時計の魅力についてご案内するとともに、初めてアンティーク時計をご購入になる方でも扱いやすいお勧めモデルを20選、ご紹介いたします。
目次
そもそも「アンティーク時計」とは?
一般的にアンティークの世界では100年以上経ったものを指しますが、腕時計の歴史自体が100年ちょっとしかありません。そうすると腕時計にはアンティークが存在せず、古いものとの区別がつかないため、便宜上1970年代以前に作られた時計をアンティークと呼ぶのが一般的です。
しかし最近では30年以上経った時計をアンティーク(またはヴィンテージ)と呼ぶ事が多くなってきました。そのため1980年代~1990年前後に製造された個体もアンティーク時計にカテゴライズしたり、ポストヴィンテージなどと称したりします。
※装飾品として時計を腕に巻くといったスタイルはもっと以前からありましたが、日用品として腕時計が普及したのは第一次世界大戦がきっかけと言われています。
アンティーク時計の魅力
では、具体的にアンティーク時計の魅力とはどんなものがあるでしょう。まずはアンティーク時計4つの魅力を語っていきます。
アンティーク時計の魅力① 価格と価値
アンティーク時計は高い、というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
確かに雑誌などで特集されるのは記事にしやすいプレミア品ばかりで、高価なイメージが常に付きまといます。しかし実際のところアンティーク時計の多くは古い中古品ということで、安く買えることが大前提となります。
ロレックスを例に挙げると、人気が集中するデイトナやエクスプローラーのようにプレミア価格で取引されるモデルも存在しますが、デイトジャストやエアキングなどの一般的なモデルは現行品よりもずっと安い値段で買えるものの方が圧倒的に多いです。
例えば現行デイトジャストを二次流通市場(中古店などの並行輸入店)で購入しようと思うと、100万円は必要になってきますよね。しかしアンティークと呼ばれる年代なら、デイトジャストが50万円台や60万円台で購入できます(もちろんアンティークの時代と現代では仕様や性能が大きく異なるので単純に比較はできないのですが、アンティーク時計も後述する取り扱いに気を付ければ十分普段使いできることを鑑みれば、限られた予算で高級時計を購入する時なんかにはアンティーク時計が良い選択肢になるのではないでしょうか)。
一方で、アンティーク時計には価値の楽しみもあります。
と言うのも、アンティーク時計は現在では生産が終了しており、現行品には存在しないモデルばかりです。
モデルチェンジを重ねていくうちに「前の方がカッコよかったよね」とか「あのモデルは作りが良かった」なんてことになるパターンもあります。
何かのきっかけで、あるモデルに注目が集まると時計の価格が上がっていきます。
ロレックス エクスプローラーII Ref. 1655
時計自体は生産が終了していてこれ以上数は増えないので、多少高くてもいいから物があるうちに手に入れたいという人が増えていくからです。
これがプレミア価格が生まれる原理です。
もっとも、ほとんどのアンティーク時計はそうなっていません。
これはアンティーク業界に携わる一個人としての肌感覚ですが、アンティーク時計の8割はプレミアが付かないお手頃な価格で取引されています。
「リーズナブルに高級時計を購入できる」「現行にはない面白い時計がたくさん選べる」というのがアンティーク時計の醍醐味の一つだと思いますので、そういった楽しみ方もあるんだと思っていただけると幸いです。
アンティーク時計の魅力② 他人と被らない
新しく買った高級時計が知人と被っていてガッカリしてしまった(あるいは気まずかった)。
自分が欲しい時計を上司や先輩が着けていて、本当は欲しいけどなんとなく買いづらい雰囲気になっている。
似たような出来事、今までに経験したことありませんか?
アンティーク時計は現在では生産が終了しており、現行品には存在しないモデルばかりです。
したがって、他人と被るという心配がほとんどありません。
せっかく買った時計が他人と同じという、ガッカリな事態はまず避けられます。
また一般的に男性が着けられるアクセサリーは限られており、自分という人間を表現したり、他人との差別化を図るアイテムとして腕時計は非常に重要なツールでもあります。
そこで、みんなが持っていないような珍しい時計(或いはかっこいい時計)を着けていたら、まわりから一目を置かれて自己満足も味わえるかもしれません。
ちょっとそこでアピールをしたいですよね。
どれくらい自己主張したいか、誰に分かってほしいかでも選ぶ時計は変わってきますが、何でも良いんだったら数千円の時計でも良いわけで、この記事を読んでる方にはあてはまらないかと思います。
前述したように、何十年と続く人気モデルは途中でデザインが変更されてることが多く、変更前のモデルの方が好みだったりすると、旧型のモデルを探して手に入れるしかないこともあります。
そんなこんなで、人と違った時計でアピールするには、アンティークが良い選択肢になってくるというわけです。
デザインの妙といった意味では、前項で言及した「価値」とも無関係ではありません。
なぜなら、時には「旧型モデルのデザイン」に、いつの間にか人気が集まり、そしていつの間にかプレミア価値が付いてくることがあるのも、アンティーク時計の面白さであるためです。
アンティーク時計は生産が終了しているのでそれ以上増えることはありません。繰り返しになりますが、つまり、何かのきっかけでそのモデルに人気が集中するとプレミアが付き、価値が上昇します。
デイトナやエクスプローラーIIが分かりやすい事例ですね。新旧で大きく意匠を変えことで、「旧型が良い」といった根強い人気(デイトナの場合は、価値への期待やコンセプトの違いも大きな影響を及ぼしていると言えますが)によって、旧型の相場が現行を超えるような勢いで上昇するといった現象を見せているのです。
また、デイトナやエクスプローラーIIほどファーストから大きく意匠を変えてはいないものの、ディテールの違いから旧型人気が顕著なモデルもあります。具体例としては、サブマリーナーやシードゥエラーが挙げられます。
こういった背景からか、最近では時計業界に「旧型デザインを復刻する」と言うトレンドが根付きつつあります。
例えばバーゼルワールド2017で赤シード126600が復刻しましたが、それによりオリジナルの1665赤シードの価値が、もともと高かったにもかかわらず更に高まりました。
※ロレックス デイトナ Ref.6263 現在と大きく意匠が異なることがわかる。
そしてアンティーク時計は現行品とは違い、欲しいと思ってもお金さえ出せば買えるわけではありません。
注文して入荷するようなものではないので、その時計と巡り合わなければ買えません。加えて、同じリファレンスであっても、「個体差」があります。
つまり、アンティーク時計の購入は、縁とタイミングも重要となります。
自分が選んだ好きなデザインの時計。ひょっとしたらプレミアが付くかも、なんて期待を抱きつつ、手に入れるまでの時間や苦労も加わって、思い入れが入ったり愛着も湧きやすく、所有欲を大いに満たしてくれるのです。
(余談ですが、復刻モデルが盛んな現在の時計業界を見ると、いかにアンティークに優れたデザインの時計が多かったか、ということを暗に示しているようで興味深いですね)
アンティーク時計の魅力③ サイズ感
最近の腕時計は40mmオーバーのケース径が主流ですが、アンティーク時計の時代は34mmが主流でした。現行品ばかり見られてる方には小さく感じるかもしれませんが、実は腕に程よく馴染むサイズ感です。
手首からはみ出ることなくジャストサイズを「着けこなしてる感」があり、最近に至っては一部のファッション通にも注目されているようです。
一般に大きい時計はカジュアル、小さい時計はフォーマルという印象を与えますが、34mmという大きさは大人っぽさも備えているので、年齢を重ねるごとに似合っていく、飽きのこない使いやすいサイズ感だったりします。
現行品は文字盤の保護(一般的にガラスと呼ばれている部分)にサファイアクリスタルという素材が使われているものがほとんどです。
]1960年代までのアンティーク時計のほとんどは、その部品がプラスチックで作られていて、風防という呼ばれ方をします。
それは安い作りとかそういうものではなく時計史の歩みのようなもので、ロレックスやパテックフィリップなどの高級時計もプラスチック風防を用いていました。
プラスチック製の風防は強度を増すために膨らみを持たせるのですが、その膨らみがアンティーク特有の柔らかなデザインを生み出す要因の一つでもあります。また、一般的に「ドーム風防」と呼ばれたりもします。
(プラスチックは傷が付きやすい素材ですが、簡単に磨けるというメリットもあります。また交換が必要な場合もサファイヤクリスタルに比べて安価なことがほとんどです。)
アンティーク時計の魅力④ 1点ものとしての味わい
よく「アンティークは1点もの」と言われますが、本当に一つしか作られていないものは「オーダーメイド品」であり、そんな時計はこの世の中にほとんど存在しません。少なくとも、一般市場にはほとんど出回らないと思って良いでしょう。
しかし同じモデルでも、その時計がどのような経緯を経てきたかで一つ一つ個体ごとに表情が変わり、それが1点ものとしての味わいを楽しめるといったニュアンスがアンティーク時計にはあります。
例えば50年前の時計だっとしても、ずっと棚にしまわれて全く使用されなかった個体は、貴重なデッドストック(未使用品)として扱われます。これは現行品では存在しないデザインが新品同様の美しさを楽しめるという価値が付きます。
一方で、まだGショックがない時代、ダイバーズウォッチなんかは実用品として使われてきたものが多いためか、ベゼルが傷が付いたり褪色したり独特な雰囲気を備えた個体が出回ります。こういったカッコよさを持ったアンティーク時計も、とっても魅力的。いわゆる「ヤレ感」とか「味」と言われるもので、古着やビンテージ好きな方はあえてこういう個体を選んでいく傾向があります。
ロレックス デイトナ ブラウンアイズ Ref.6240
また、ひとくちに経年変化と言っても様々です。
日常使いの中で大切に扱われてきた時計は、経年変化による変色がきれいなものが多くなります。シルバーがきれいなクリーム色に日焼けした文字盤や、夜光がほどよく焼けた個体は、アンティーク時計でしか味わえない美しさです(最近の復刻モデルには、焼けた風合いを模したデザインコードを採用するほどです)。
これは何十年という月日が生み出す「焼け」と呼ばれる現象です。レザーのエイジングを楽しむ感覚に似ているでしょうか。
また写真だけで見ると、使用感が強くダイヤルが変色して汚く見えるような時計でも、実際に装着してみると驚くほどかっこ良く腕に馴染んでくれるものもあったりするのも面白さの一つです。
このように長い時間を経てきたからこそ、それぞれの個体が持つオーラや価値が違ってきます。
まずはこういった魅力を知っていただくことが、アンティーク時計を楽しむ第一歩です。
アンティーク時計の扱い方
そうは言っても「結局アンティーク時計ってどう扱ったらいいの?」という声をよく耳にします。
また、実際にアンティーク時計は取り扱いに注意が必要な面が少なくありません。もっとも裏を返せば、この「注意」によってアンティーク時計を日常で楽しむことができる、ということ!
本項では、アンティークウォッチの取扱の注意点をお伝えします。
アンティーク時計の取扱方法① 水に濡らさない
まず一番気を付けるべきは、水に濡らさないということ。
これはダイバーズウォッチであっても言えることです。アンティーク・ヴィンテージと呼ばれるほど年式を経た個体は、既に当時の防水機能は保っていないと考える方が無難です。そもそも現行品であっても、防水に関してはメーカーで1~2年に1度チェックすることを推奨される場合があります。それを考えると、30年以上前の時計が防水機能を保っている方が奇跡に近いということが分かりますよね。
かと言ってそこまで神経質になる必要もありません。要は水に濡らさなければいい話なので、日常生活においては「雨」と「手洗い」に気をつけることで、ほぼ水入りに関しては防げるはずです。また、汗をたくさんかくような気候でも、使用は避けた方が良いですね。
お仕事で水をよく使う方は、お仕事中の着用は諦めていただき、通勤やお休みの日に使うものと割り切ってください。
それでも万が一、お水が入ってしまった時はすぐに購入店に行って相談しましょう。放っておくと錆が進行して、修理が大変なことになりますので、できるだけ早めの対処を心がけてください。なお、「風防が曇ったまま」というのは、内部に水が浸入しているサインです。
アンティーク時計の取扱方法② 衝撃を与えない
腕時計は精密機器ですので、衝撃には強くありません。ぶつけたり落としたりはもちろんですが、野球のバッティング・ゴルフのスイングなど、手首に強い衝撃が加わるような行為も避けましょう。
笑い話のようですが、コンサートに行って興奮してたくさん拍手をした結果、帰針が取れていたなんていう事例もあります。
また、スポーツバイクやオートバイなども意外と手首に衝撃が加わるので避けた方が無難です。
ちなみに大きな衝撃を加えてしまった場合、外装に変化がなくとも、内部機構に重大なダメージが及んでいる可能性があります。軽く振ってみて異音がしないか、精度が大きく狂っていないかを確認しましょう(精度は1週間程度の平均日差で確認するのが良いですね)。
アンティーク時計の取扱方法③ 強い磁気を当てない
現在は素材が進化したことにより、磁気に強いモデルも出てきましたが、特殊なモデルを除いて時計は強い磁気を当てないようにしましょう。なぜならヒゲゼンマイという精度を司る部品に大きな影響を及ぼすからです。これはアンティークのみならず、も現行品の腕時計にも言えることです。
日常的に気を付けるのは携帯電話・イヤホン・電子機器・バッグなどのマグネットなど強い磁気を発するものと一緒に時計を保管しないことです。また、エレベーターのボタンも意外と知られていない磁気発生源です。
磁気の影響は距離と反比例するため、磁気発生源から時計を5cm以上離すことが推奨されていますが、安全圏は30cm以上です。
急に時計の精度が狂った場合、結構な確率で磁気帯びしてることがあります。もっとも、万が一磁気が入ってしまったとしても「磁気抜き」という作業ができますので、まずは購入店に相談しましょう。
アンティーク時計の取扱方法④ 使っていなくてもたまには動かす
「夏の間はアンティーク時計を使わない」「何本も所有しており、普段は現行モデルをメインに使っている」
こういった方は少なくないでしょう。
基本的に機械は動かさないでおけば経年劣化が抑えられます。一方でことアンティーク時計はたまに動かさないと、内部やリューズ・プッシュボタン等が固着してしまう可能性があります。オーバーホールしたばかりであれば問題ないことも多いですが、昔の潤滑油は現在のそれと比べて固着しやすい傾向にあります。また、定期的に動作確認することは不具合の発見にも有効です。頻繁に行う必要はありませんが、たまにはリューズでゆっくりゼンマイを回して、動作を確認してみて下さいね。
アンティーク時計の取扱方法⑤ 定期的なオーバーホールを欠かさない
これまたアンティーク時計にも現行品にも言えることですが、定期的なオーバーホールを欠かさないようにしましょう。モデルや使い方にもよりますが、4~5年に一度のスパンでのオーバーホールをお勧めします。
オーバーホールはパーツを一度分解して洗浄し、新たに潤滑油をさすメンテナンスです。同時にこの時、大きく劣化したり損傷しているパーツがあれば、必要に応じて交換します。
オーバーホールを行わないと内部の不具合に気づかず症状を進行させてしまったり、パーツの劣化を促進することもあります。ずっとオーバーホールを行わないでいたら、修理に思わぬ高額費用がかかってしまったなんて事例も・・・!
末永く時計を愛用していくためにも、定期的なオーバーホールは必要不可欠です。
アンティーク時計の取扱方法⑥ 使用後のお手入れも欠かさない
こちらもアンティーク時計・現行品関係なく推奨したい取り扱いですが、使用後のお手入れを欠かさず行いたいところです。
特別なことをする必要はありません。柔らかいクロスのような布で、一日の使用の間に付着した汗や皮脂をふき取りましょう。また、定期的に先の柔らかい乾いた歯ブラシなどで隙間に入ったごみを掻き出してあげることもお勧めです。
皮脂や汚れは、時計のサビの原因となります。このサビはパーツの劣化・破損にも繋がることに、注意が必要です。
時計を清潔に保つことはお肌にとっても良いので、使用後は簡単にお手入れしておきたいですね。なお、オーバーホールの際に、一緒に外装洗浄を依頼することもお勧めです。ベゼル内部やプッシュボタンの隙間等、普段はお手入れできない箇所も綺麗にしてもらえます。
お勧めアンティーク時計20選
ここまでアンティーク時計の魅力や取り扱いについてご紹介いたしました。
では実際に初めてアンティーク時計を購入する時、どのモデルを選ぶのが良いのでしょうか。
もちろんデザインや雰囲気でお好きな一本をご選択頂くのが一番なのですが、アンティーク時計の選び方のポイントに「修理しやすいかどうか」があります。そして修理しやすい個体かどうかを見極めるポイントは、「よく流通しているムーブメントを搭載しているかどうか」です。
パーツ交換やオーバーホールの時、レアなムーブメントだとメーカーでも対応できなかったり高額になる可能性があります。スイス送りになって何年も時間がかかってしまったなんて話も耳にします。
一方で大量生産されていたムーブメントであれば修理ノウハウやパーツが出回っており、メーカー以外の民間修理工房でもメンテナンス・修理が対応可能なケースがほとんどです。
本項では「大量生産されていたムーブメント搭載アンティーク時計」で代表的なモデルを20選、ご紹介いたします。
ロレックス デイトジャスト Ref.1601
素材:ステンレススティール×ホワイトゴールド
ケースサイズ:直径 36.0mm
文字盤:シルバー他
ムーブメント:Cal.1570(1965年頃まではCal.1560)
製造年:1960年頃~1980年頃
ロレックスを代表する一大コレクション・デイトジャスト。1945年にロレックスが発表した、日付がカシャっと瞬時に切り替わる機構に名前を由来します。ちなみに3時位置にデイトの小窓を持つスタイルは、デイトジャストによって確立されたと言います。
ご紹介するRef.1601は、そんなデイトジャストの第3世代に当たります。
製造期間が1960年代~1980年頃と長く、流通量も多いことからアンティーク時計としてはメジャーな存在として知られます。
ダイアルには様々なバリエーションが存在しますが、外側が一段下がった立体感のある設計となっていることが特徴です。
風防には今となっては懐かしいプラスチック風防を備えており、オールドウォッチらしい雰囲気を漂わせています。
左:ブルーモザイクダイアル 右:ミラーダイアル
シルバーやブラックといった定番カラーの他にも現行品にはない独特な色合いのブルーモザイクダイアル、ミラーダイアルといったこの時代ならではの個体が存在するのも大きな魅力です。
搭載するムーブメントはCal.1570。このCal.1570は1960年代~1980年代にかけて様々なロレックスに搭載されました。よく流通していることはもちろんなのですが、加えて傑作との呼び声高く、耐久性・メンテナンス性・精度いずれをとっても非常に優れたムーブメントです。後述するロレックスの主要モデルにも載せられており、迷ったらこれを選んでおけば間違いないと言っても過言ではありません。
なお、Ref.1601は他のアンティークロレックスよりも大きく価格高騰しておらず、中古相場は50万〜60万円ほど。100万円出さなくてはロレックスが買えなくなったとも言われる時代、とても良心的ですよね。興味があればチェックしてみてください。
ロレックス サブマリーナー デイト Ref.1680
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径 40.0mm
文字盤:ブラック
ムーブメント:Cal.1570
製造年:1965年~1980年頃
ロレックスを代表するモデル サブマリーナー。その中でもデイト表示が付いた最初のモデルがこの「Ref.1680」です。
今から50年ほど前から製造された時計ですが、精度と耐久性のバランスのとれた使いやすいアンティークウォッチとして人気があります。
なお、Ref.1680は初期製造個体を除いてロレックス独自の機構トリプロックリューズ(リューズ・ケース合わせて三重のパッキンを搭載させ、より防水性を向上させた仕様)が標準装備となり、防水へのアップデートが図られていることも特徴です。前述の通り、基本的にはアンティーク時計に当時の防水性はないと思った方が良いでしょう。しかしながらサブマリーナーは堅牢な設計をしており、良質な個体がよく出回ります(多くのアンティークロレックスに言えることですが)。
傑作ムーブメントCal.1570を搭載しているのも素晴らしいですね。
実勢相場は150万円超で、良質な個体になるほど価格も高くなりますが、買い控えは見られず安定した人気を誇ります。
なお、Ref.1680には特筆すべき仕様があります。
ロレックス サブマリーナ デイト 1680 赤サブ
それは赤サブと呼ばれる、「SUBMARINER」の文字が赤で表記されているモデルです。通常の白い文字のモデルに比べ生産数が少ないことからレア個体として高い評価を得ています。
コレクターズアイテムとしても人気で、その価値は200万円~400万円が当たり前といった相場感です。
ロレックス サブマリーナー Ref.5513
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径 40.0mm
文字盤:ブラック
ムーブメント:Cal.1520
製造年:1963年~1990年
ノンデイトサブマリーナーも、アンティークロレックスを語るうえで欠かせません。
特にRef.5513は、約27年にも渡って販売された、ロレックス屈指のロングセラー。この長い製造期間の中でいくつかのマイナーチェンジが行われており、有名どころで「インデックスのフチあり・フチなし」、そしてミニッツサークルやミラーダイアル、メーターファーストなどとレア仕様も多くなっております。
とは言え流通量の豊富さから個体によっては150万円前後~180万円前後で出回るものもあります。スポーツロレックスのアンティークと考えると、かなりお得感が高いのではないでしょうか。
ノンデイトゆえにシンプルな設計となっており、扱いやすいアンティーク時計です。
ロレックス GMTマスター 赤青ベゼル Ref.1675
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径 40.0mm
文字盤:ブラック
ムーブメント:Cal.1575(初期はCal.1565)
製造年:1960年頃~1980年頃
ロレックス アンティークモデルの中でも非常に人気が高いRef.1675。
前項でご紹介したサブマリーナー Ref.5513同様、1960年〜80年頃まで製造されたロングセラーモデルで、抜群の知名度を誇ります。生産期間が長かった故に、比較的手に入り易く、アンテイークロレックスの入門機としても最適です。
ロレックス GMTマスター 1675 ブラックミラー
ちなみに現行に続くGMTマスターIIが登場したのは1983年です。GMTマスターIIは時針を単独稼働させる仕様によって第三時間帯までの表示が可能ですが、GMTマスターは時針とGMT針が連動しており、第二時間帯までの表示となります。
トリチウム夜光やアルミベゼル等、現行にはない個性を感じられる銘アンティーク時計です。
相場感は状態にもよりますが、170万円台~。
なお、トリチウム夜光が偏りなく均一に焼けた個体は高値で取引されています。特にミラーダイヤルと呼ばれる初期生産モデルは希少性が高く、レアロレックスとして扱われます。
ロレックス エクスプローラーI Ref.1016
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径 36.0mm
文字盤:ブラック
ムーブメント:Cal.1560またはCal.1570
製造年:1960年頃~1989年頃
現行のエクスプローラーRef.124270の四世代前のモデルであるアンティーク・エクスプローラーがRef.1016です。
これまた30年に渡ってロングセラーとなった人気モデルであり、機能のシンプルさも相まって、初めてのアンティーク時計としてもお勧めです。文字盤の雰囲気も現行とは異なり、エクスプローラーIは非常に普及している永世定番ながら、個性が楽しめる逸品ともなっています。
ムーブメントにはハック無しの自動巻きCal.1560が当初は搭載されていましたが、1970年代に入るとハック機能ありのCal.1570へと変遷していきました。ちなみにハック機能は時刻合わせの際に秒針が止まる機能です。戦場で標準時間を合わせる際に用いられた「ハック!」という掛け声が元になっています。
製造期間は長いものの、生産終了からじょじょに上質な個体が市場から減ってきていることもあり、相場は年々上がっているモデルでもあります。現在は状態にもよりますが、180万円前後~。高年式な個体ほど高値となり、200万円前後~となっております。
ロレックス エクスプローラーII Ref.1655
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径 40.0mm
文字盤:ブラック
ムーブメント:Cal.1575
製造年:1971年~1987年頃
前項でエクスプローラーについてご紹介しましたが、その上位機種として1971年に誕生したのがエクスプローラーIIであり、こちらのRef.1655はファーストモデルとなります。
1971年の登場から1987年頃にかけて販売されたモデルで、視認性を考慮した印象的な24時間針を備えています。
ムーブメントはGMTマスターIIにも搭載され、精度と耐久性に優れ名機と称された Cal.1575。普段使いの腕時計としても、ヴィンテージ時計としても価値ある一本と言えるでしょう。
左:アンティーク 1655 右: 216570
Ref.1655はGMTマスターやエクスプローラーI、サブマリーナとは異なり、現行モデルとかなり違うデザインになっています。そのため、ヴィンテージ感だけでなく、見た目の違いも楽しむことができます。
しかし、注目度が上がっていることから中古相場は200万円前後〜とかなりのプレミア価格。個体によっては400万円にものぼります。製造期間の短さも相まって、簡単に手に入るモデルではありませんが、こういったレア度が所有欲をくすぐるものです。
オメガ コンステレーション G-TOP 14381/11SC
素材:ゴールドプレート×ステンレススティール
ケースサイズ:直径 34.0mm
文字盤:シルバー
インデックス:バー
ムーブメント:Cal.551
オメガもまた、初めてのアンティーク時計として強くお勧めしたいブランドです。
ロレックス同様に早い段階から現代的な実用時計を製造しており、かつ潤沢な流通量を誇るためです。また、シーマスターやスピードマスターといった現代に続くロングセラーを抱えており、さらにその中でもバリエーションが豊富なことから、ご自身のお気に入りを見つけやすいというのもあるでしょう。一部モデルを除いて、お手頃価格で出回っているのも嬉しいポイントです。
こちらのアンティークオメガは、特に人気の高い初期のコンステレーションです。
ご存知コンステレーションは、1952年に誕生したオメガの不朽の名作です。オメガ史上初の自動巻き腕時計コレクションであり、全製品が公認クロノメーターという、当時としては非常に画期的な存在でした。なお、コレクション名は星座を意味しており、裏蓋に長らく時計の精度コンクールが行われていたジュネーブ天文台の観測ドームと8つの星がモチーフとして添えられています。
コンステレーションもまた多彩なバリエーションを抱えており、クラシカルで上品なデザインを特徴とします。
特にこちらのG-TOP 14381/11SCは、コンステレーションのそういった魅力をよく表現しているモデルでしょう。文字盤の色はアイボリーがかったシルバーで、アプライドのバーインデックスと共に12時下のΩマーク、OMEGA、☆マークもアプライドとなっています。
搭載するムーブメントは、オメガのアンティーク時代の自動巻きモデルによく搭載されたCal.550を多石化して、クロノメーター規格にしたCal.551です。自動巻ムーブメント全盛期の一つとも称されます。
相場は状態やモデルにもよりますが、10万円程度~購入できる個体もよく出回っており、気軽に楽しめるアンティーク時計と言えるのではないでしょうか。
オメガ コンステレーション Cライン Ref.168.017
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径 34.0mm
文字盤:グレー
インデックス:バー
ムーブメント:Cal.564
アンティークコンステレーションの話をした時、かの有名なジェラルド・ジェンタ氏がデザインしたCラインも絶対に欠かせません。
ジェラルド・ジェンタ氏は、現在時計業界を席捲しているラグジュアリー・スポーツウォッチの祖となるデザインの多くを手掛けた希代のデザイナーです。オーデマピゲのロイヤルオークやパテックフィリップのノーチラスが作品として有名ですが、コンステレーションからも1965年に氏のデザインで「Cライン」が打ち出されました。
優美なラインを描いたケースがブレスレットとシームレスになっており、他のコンステレーションとは一味違った面白さを感じさせますね。
搭載するムーブメントは、コンステレーションに搭載され、やはりアンティーク時計の自動巻きの名機と名高いCal.564です。
ステンレススティール製モデルであれば、10万円台から入手できる個体が多く出回ります。ロイヤルオークやノーチラスが類を見ないような価格高騰を続ける中で、このプライスレンジは驚きに値します。
オメガ シーマスター カレンダー Ref.2849
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径 33.0mm
文字盤:ブラック
インデックス:バー
ムーブメント:Cal.503
コンステレーションだけでなく、シーマスターもヴィンテージオメガとして注目されています。
シーマスターはオメガの現行コレクションの中でも、屈指の歴史を誇るロングセラーです。1948年に防水時計として誕生して以来、多彩なバリエーション展開を行うのみならず、他のモデルにも大きな影響を与えることとなりました。ちなみにスピードマスターやデ・ヴィルも、実はシーマスターの派生モデルだったことは意外と知られていませんよね。
シーマスターは1957年に誕生したオメガ初の本格ダイバーズウォッチ「シーマスター300」等、レア中のレアモデルも存在していますが、アンティーク時計市場に出回る個体は手が届きやすく、それでいて機能面で安心感の強いものが多くなります。
この Ref.2849もその一つです
Ref.2849は名機500番台ムーブメントを搭載したモデルで、センターセコンドの三針+カレンダーの実用的なアンティーク時計です。
ブラックミラーダイアルが採用されている個体もあり、アンティークロレックスと同様にこちらも人気があります。
オメガ スピードマスター スピードマスター プロフェッショナル マークII Ref.145.014
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径 42.0mm
文字盤:ブラック
インデックス:バー/タキメーター
ムーブメント:Cal.861
オメガなら、絶対スピードマスターが欲しい!そんな方は少なくないでしょう。
最も有名なムーンウォッチも名作ですが、一味違ったアンティークオメガとして、スピードマスター プロフェッショナル マークIIはいかがでしょうか?
スピードマスター プロフェッショナル マークIIは1969年にオメガから発表されました。
力強く張り出した肉厚の流線型ケースにレーシーな文字盤、そして細かなブレスレットは、レトロでフューチャーですよね。1969年はアポロ11号によって人類史上初の月面着陸が達成されましたが、その際NASAの公式装備品としてスピードマスター プロフェッショナルが携行され、ムーンウォッチの称号を獲得するに至りました。マークIIは、そんな人類の進化や未来への希望を象徴するかのような近未来的なデザインを有しています。
なお、マークIIは2014年にオメガからリバイバルされたことを機に、世界的に高い需要を獲得していくこととなります。とは言え30万円~50万円程度で出回っているのも、さすが私たちのオメガ!
ムーブメントは、1967年~1996年まで製造された、ムーンウォッチ第五世代にも搭載されたCal.861です。
レマニア社のCal.321がベースになった、手巻きクロノグラフの永遠の名作です。
IWC インヂュニア Ref.666
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径 36.0mm
文字盤:シルバー
インデックス:バー
ムーブメント:Cal.853
アンティーク時代のIWCは「オールドインター」などと称され、愛好家らに親しまれます。
オールドインターの雰囲気も素晴らしいのですが、何より傑出した技術遺産をIWCが有するがゆえの人気でしょう。自動巻きムーブメントの巻き上げ効率を大きく上昇させたぺらトン自動巻き(ローターがどちらの回転であってもゼンマイ巻き上げを行う双方向回転システム)や、複雑機構を身近にしたパーペチュアルカレンダー搭載ダヴィンチ等、現在の時計業界にも大きな影響を与えています。
耐磁時計「インジュニア」も、そんなIWCの偉大なる技術遺産の一つです。
インジュニアは1955年にIWCから発表された耐磁時計コレクションです。今ほど磁気の脅威が叫ばれていなかった時代において、ドイツ語のコレクション名が示す通り、技術者向けに開発された経緯があります。
一方でアンティーク時代のインジュニアはクラシカルでドレッシーなデザインも多く、ビジネスシーンにマッチしやすいといったお声もよく頂きます。
さらに特筆すべきは、ムーブメントです。
搭載される自動巻きのCal.853は前述したペラトン式によって高い巻き上げ効率を誇りますが、さらに細部にわたってペルラージュ等の丁寧な仕上げが施されているため、非常に耐久性があります。
専門家の中にはパテックフィリップと同等と評価するオールドインターです。
現行にはない筆記体のロゴが、良い味出してます。
初代インジュニア等はレア中のレアで、300万円超の値付けとなることも珍しくありませんが、通常モデルは50万円台~70万円台で出回ることが多いです。
IWC ヨットクラブ R811
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径 36.0mm
文字盤:ブルー
インデックス:バー
ムーブメント:Cal.854
ヨットクラブも非常に人気の高いオールドインターです。ちなみにこれまた、ジェラルド・ジェンタ氏によるデザインです。
ヨットクラブは高級スポーツラインであり、高い防水機能と頑丈な二重耐震装置を搭載した特殊コレクション。そのため通常の3針モデルと比べて肉厚なケースを有しますが、一方でジェンタらしい流れるようなフォルムを有するがゆえ、エレガンスも忘れていませんね。
搭載するムーブメントは、ペラトン式の自動巻きCal.854系。
ペラトン式は二つの爪を持つにもかかわらずコンパクトなサイズ感に収まっており、こういったところにIWCの技術力の凄まじさを感じます。
20万円台~30万円台で出回っており、種類も豊富ですので、気になる方はぜひ一度手に取ってみましょう!
IWC ラウンドセンターセコンド Cal.89搭載モデル
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径 34.0mm
文字盤:シルバー
インデックス:バー
ムーブメント:Cal.89
自動巻きのオールドインターをいくつかご紹介してきましたが、この時代のIWCを語れと言われたら、多くの愛好家が手巻きCal.89に言及するのではないでしょうか。
Cal.89は1946年~1970年代まで製造されたムーブメントです。ちなみにこの設計も、ペラトン自動巻きのアルバート・ペラトン氏です。ちなみにアンティーク時代の自動巻きムーブメントは手巻きの既存キャリバーがベースとなっていることが少なくなく、IWCの自動巻きの高い信頼性を担保したのがCal.89と言えるでしょう。
手巻きはローターがない分シンプルで、修理費用も比較的抑えられる傾向にあるので、アンティーク時計の扱いにご不安がある方は、ぜひCal.89搭載機を選択肢に入れて頂きたいなと思います。
相場は搭載モデルによっても変わってきますが、「100万円超えが当たり前!」などといった個体は多くなく、流通量の豊富さを鑑みても入手しやすいアンティーク時計となっております。
IWC クッションケース オールドインター Ref.1872
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:縦 40.0mm × 横 34.5mm
文字盤:ブルー
インデックス:バー
ムーブメント:Cal.8541B
Cal.8541Bを搭載した、アンティークらしいルックスのIWCウォッチ オールドインター Ref.1872も併せてご紹介いたします。
これまたIWC独自の巻上げ方式であるペラトン式の自動巻きCal.854系を搭載しており、安心感は強いです。
1970年頃に製造されたモデルで、年々希少になってきたことから評価が高まりつつあります。
セイコー キングセイコー 45KS 45-7001
素材:ステンレススティール×ゴールドプレート
ケースサイズ:直径 36.0mm
文字盤:シルバー
インデックス:バー
ムーブメント:Cal.4500A
気軽にアンティーク時計を楽しみたいなら、国産のセイコーもお勧めです。
一部を除いてリーズナブルな価格帯で国内市場に出回る個体が多く、時代ごとのバリエーションも豊富なためです。
そんなオールドセイコーの中でも、特別な存在感を放っているのがキングセイコーです。セイコー創業140周年記念として、2021年に復刻されたことで、オールドセイコーを知らない方でも身近な存在かもしれませんね。
キングセイコーは1961年に誕生した、セイコーの上位ブランドです。この前年に「国産高級時計」と名高いグランドセイコーがリリースされていますが、後者が長野県の諏訪精工舎製ムーブメントを搭載していたことに対し、キングセイコーは東京 亀戸の第二精工舎製でした。第二次世界大戦下でセイコーは製造拠点を東京から長野県に疎開させますが、戦後、この二つの拠点はそれぞれ独立した製品開発を行っていましたが、互いに切磋琢磨し、良きライバルとして発展していきました。ちなみに諏訪精工舎は現在のセイコーエプソン、第二精工舎はセイコーインスツルです。
戦後の復興もあり、諏訪精工舎にやや後塵を拝していた第二精工舎ですが、満を持してキングセイコーを発表し、以降セイコーを代表する高級機として人々に愛されていきます。
そんなキングセイコーは1970年代に生産終了するまで、いくつかの系譜を辿っていきますが、こちらの45KSはキングセイコーで初めてハイビートムーブメントを採用したモデルとなります。この「45」というのはキャリバーナンバーに由来しており、搭載するCal.4500は第二精工舎の手巻きムーブメント史上「最高精度」とも称されます。
現在は状態の良い個体を見つけるのが難しくなっており、もし綺麗な見かけたら即決することをお勧め致します。
初代グランドセイコー J14070
素材:ゴールドプレート
ケースサイズ:直径 35.0mm
文字盤:シルバー
インデックス:バー
ムーブメント:Cal.3180
前述したキングセイコー誕生の前年にあたる1960年、グランドセイコーが発売されました。
グランドセイコーは「スイスを超える高精度」を標榜した国産時計であり、かつ25,000円という高価格帯で販売された、国産高級時計の黎明的存在でした。ちなみに25,000円というのは、当時の大企業の課長クラスの月給ほどの金額です。
そのグランドセイコーのファーストモデルが、こちらのJ14070です。
グランドセイコーは第二世代によって、現在に続くデザイン文法「セイコースタイル」が確立するのですが、初代はまだそれがなかったため、現行とは大きく異なる顔立ちです。一方でオーセンティックで優美なラウンドフォルムに、現代のグランドセイコーのアイコンともなっている力強い針は健在。これぞ高級機といった風格を醸し出します。
搭載するCal.3180は「クラウン(1959年にセイコーが開発したCal.560)」を高精度化・高品質化した手巻きムーブメントで、ノンデイト×手巻きのシンプルさも相まって、扱いやすい個体の一つに数え挙げられるでしょう。
惜しむらくは、上質な個体が年々少なくなっていき、これに伴い相場も上昇していること。ロゴがアプライドになった後期型は流通量も多いですが、世界的な需要の高まりもあり、これまた早く入手しておきたいアンティーク時計となっております。
グランドセイコー 61GS VFA
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径 37.0mm
文字盤:シルバー
インデックス:バー
ムーブメント:Cal.6185A
こちらのグランドセイコー 61GS VFAは1969-1972年頃にかけて製造され、当時の最高水準の高精度を実現したオールドセイコーの逸品の一つです。
ちなみにV.F.A.とは「Very Fine Adjusted」の略で、精度を月差±1分以内という機械式腕時計にも拘わらず精度を追及した時計となっております。
ケースの形が独特な形状をしているため、現在のセイコーらしからぬ時計ではありますが、その個性が人気の秘訣とも言えるでしょう。
なお、グランドセイコーは1970年代に入り、一時休眠状態となります。
1988年に年差クォーツを伴って復活を果たしますが、1970年代以前の個体は年々稀少性が高まってか、相場もジワジワ高騰しています。
欲しい個体に出会ったら、チャンスを逃さずぜひ手にしておいてほしいなと思います。
パテックフィリップカラトラバ Ref.570
素材:イエローゴールド
ケースサイズ:直径 35.5mm
全重量:48g
文字盤:アイボリー
インデックス:バー
ムーブメント:Cal.27-SC
パテックフィリップも、オールドパテックなどとして親しまれておりますね。
世界最高峰の呼び声高い同ブランドの至高のアンティーク時計で、本項を締めくくりたいと思います。
オールドパテックの代表格と言えば、カラトラバではないでしょうか。
カラトラバは「丸形時計の規範」「ドレスウォッチのお手本」などと名高いパテックフィリップの代表的なコレクションです。1932年に発表されたRef.96から系譜を引くカラトラバは、長い歴史の中で様々な系譜を辿っていくこととなりました。ちなみに「カラトラバ」の名前が浸透していったのは1980年代以降と結構最近のようですが、今では高級ドレスウォッチの代名詞的存在と言っても過言ではありません。
そんなカラトラバの中でも、1938年~1968年頃まで製造されたRef.570を最初にご紹介いたします。当時としては非常に大きいサイズ感であったことから、ビッグカラトラバなどとも称されます。
1930年代に完成した手巻きCal.12系がベースとなったCal.27系ムーブメントを搭載しており、オールドパテックの信頼性を支えています。
パテックフィリップ カラトラバ Ref.3579-1
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:縦 35.0mm × 横 33.0mm
全重量:38g
文字盤:ブルー
インデックス:バー
ムーブメント:Cal.23-300PM
落ち着いた色のブルーダイアルにバーハンド&バーインデックスを組み合わせた、レトロな雰囲気のカラトラバ Ref.3579-1。
1970年代〜に製造されたモデルで、めずらしいケースの形が現行カラトラバにはない個性を引き立てます。
製造数があまり多くなかったことから今では希少価値の高まっており、レア個体として人気に。
幅をとり傾斜が付けられたシルバーポリッシュのインサイドベゼルが全体の印象を引き締めます。
パテックフィリップ カラトラバ Ref.3525G
素材:ホワイトゴールド
ケースサイズ:直径 32.0mm
全重量:50g
文字盤:ブルー
インデックス:ローマン
ムーブメント:Cal.27-460
珍しいクッションケースが特徴的なRef.3525G。
3525Gは1970年頃に製造されたモデルで、搭載しているCal.27-460はパテックフィリップ社初の自動巻きキャリバー12-600ATの後継機です。基本性能を犠牲にすることなく、薄型化に成功しています。
カラトラバ=ラウンド型というイメージを覆す名作として、今なおお衰えない需要があります。
まとめ アンティーク時計を楽しむための「考え方」
最後にアンティーク時計を楽しむには考え方も重要だと思っています。古いものは古いものなりの付き合い方というものがあります。
最低でも30年以上たっている精密機器ですので、完璧なものは存在しないということを前提に時計と付き合うことが重要です。例えば古いクラシックカーで高速道路をぶっとばして、エンジンが焼け付いてトラブルになったとしてもそれは仕方のないことで、「メーターが150kmまであるんだから、そこまで出して何が悪いんだ」という世界ではありません。150km出せたのは発売当初であって、それから数十年経っているんだからもう、そこまでも性能は発揮できないのが現実です。
時計も同じです。
もちろん個体差や年式によって差はありますが、例えば日差に関しては、1960-70年代なら1分、1950年代以前のものなら2~3分、1930年代以前なら4~5分くらい見ておいた方が現実的だと思いますし、選べる時計はグッと増えてきます。
そんなにずれたらまずいだろうと言われることもありますが、実際日常生活において数分のずれで困ることってほとんどないはずです。(電車に乗るときはケータイの時間を見ますし。)
でも着けてるかっこ良さだったり、所有している満足感だったり。要はアンティーク時計は精度を云々言う時計ではなく、それを超越した部分に魅力を感じ取れるかどうかなんです。