「IWC アクアタイマーって何がすごいの?」
「IWC アクアタイマーのおすすめモデルについて知りたい」
IWCを、そして現行ダイバーズウォッチを代表する名作「アクアタイマー」。
近年はポルトギーゼやパイロットウォッチの影に隠れがちでしたが、アクアタイマーもまたIWCの傑作コレクションに名を連ねます。
2014年には現行モデルが誕生し、IWCの技術遺産が活きた最新機種へとリニューアル。
さらに2022年、パワーリザーブ約120時間を備えた最新世代のムーブメント搭載によってアップデートを図るなど、アクアタイマーへの進化の手は緩みません。
そんなアクアタイマーの魅力が知りたいという人は多いのではないでしょうか。
アクアタイマーはビジネスシーンでも活躍する本格ダイバーズウォッチです。
この記事ではアクアタイマーの魅力や系譜を、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
おすすめモデルの紹介もしますので、IWCの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
アクアタイマーとは?特徴とIWCのダイバーズウォッチの系譜
アクアタイマーは、IWCのダイバーズウォッチコレクションです。
アクアタイマーはクラシカルな印象の強いIWCコレクションの中では、モダンかつスポーティーなデザインを有します。また、ダイバーズウォッチというとケースアウターに搭載された逆回転防止ベゼルがイメージされるものですが、現行アクアタイマーではアウター/インナーベゼルなる、独自機構を有していることも特筆すべき点です。
そんなIWC アクアタイマーの初出は1967年になります。
1950年代~1960年代にかけては、現代にも続く様々なダイバーズウォッチが登場しました。ブランパンのフィフティファゾムスやロレックスのサブマリーナー、オメガのシーマスター300などが挙げられますね。二つの大戦を経て、潜水機材やウェットスーツの開発が進み、ダイビングが広く普及し始めたこと。こういったダイビングを始め、サーフィンなどのマリンスポーツがレジャーとして親しまれていったことが一つの背景としてあるのでしょう。
出典:https://www.iwc.com/jp/ja/watch-collections/aquatimer.html
IWCもまた、同社初となる本格ダイバーズウォッチRef.812を開発しました。
発表当初から200m防水を実現しており、またダイビングタイムを計測するためのスケールはインナーベゼルとして搭載されていたことが大きな特徴です。
その後もIWCは着々と技術改良を重ね、ダイバーズウォッチを製造し続けていきます。
いくつかの特筆すべきモデルが存在しますが、その代表格は1982年に登場した「オーシャン2000」でしょう。
オーシャン2000は、IWCとポルシェデザインが共同開発したモデルの一つです。
ポルシェデザインは1972年、ポルシェ社のフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ氏が立ち上げたデザインブランド。1978年から1998年にかけて、この二社はコラボしていくこととなりましたが、中でもオーシャン2000は現在も高い人気を誇る名作中の名作となります。
旧西ドイツ軍の要請で開発された軍用モデルをベースに、1982年から一般販売されたオーシャン2000は、その名の通り2000m防水という超ハイスペックダイバーズウォッチとして打ち出されました(廉価版のオーシャン500も存在)。
インパクト抜群のデザイン、そして1980年代という早い段階からチタンを素材として用いたオーシャン2000は、後のアクアタイマーにも大きな影響を与えていきました。
1990年代に入るとIWCは、アウターベゼルを備えたスポーティーなGSTアクアタイマー、GSTディープワンなどといった傑作をリリースしていきます。
※GST・・・ゴールド、ステンレススティール、チタンの頭文字をとったコレクション。高機能モデルをラインナップしていたことが特徴です。
GSTコレクションは2000年代に入って生産終了するものの、アクアタイマー自体は後継機が出て存続し、再びインナーベゼルを採用するに至ります。
しかしながら2009年、今度はアウターベゼルを備えたアクアタイマー オートマティック2000やアクアタイマー クロノグラフをリリース。
底面に6層ものスーパールミノバを施したアウターベゼルは暗所での視認性も確保しつつ、表面にサファイアクリスタル製リングをあしらうことで、耐傷性と独特の質感を獲得しました。
これでデザインコードは確立したかと思いきや、2014年、さらにIWCはアクアタイマーをリニューアルします。
文字盤デザインや針などは大きく変えてはいません。しかしながら今度はインナー/アウターベゼルを搭載し、これまでこの双方のベゼルを採用し続けてきたIWCならではの機構を携えて、市場に躍り出ました。
現行はこの2014年以降のアクアタイマー オートマティック及びアクアタイマー クロノグラフを基幹モデルに、「チャールズ・ダーウィン」や「ガラパゴス・アイランド」、「ローレウス スポーツ フォーグッド」などといったオマージュモデルまでを多彩に展開します。
なお、冒頭でもご紹介したように、2022年には約120時間のロングパワーリザーブを搭載したCal.32111によってアップデートが図られました。
既存コレクションを大きく変えず、しかしながら確実なアップデートを図るのは、質実剛健と名高いIWCならでは。
今後も高級ダイバーズウォッチ市場において、特別な存在感を放ってくれることでしょう。
機能から見るIWC アクアタイマーの魅力
現行アクアタイマーの魅力は、デザインの素晴らしさもさることながら、何と言っても「機能」から見ることができるでしょう。
とりわけ「ダイビングベゼル」に関しては、アウター・インナーベゼルともに採用してきたIWCならではの創意と工夫を感じられる機構です。
詳細を解説いたします。
セーフダイブ・システム
IWCが現行アクアタイマーに搭載させるセーブダイブ・システムは、IWCがダイバーズウォッチのベゼル装備に対して、出した一つの結論と言えるかもしれません。
前項でIWCのダイバーズウォッチの系譜をご紹介いたしましたが、「インナーベゼル」と「アウターベゼル」が相互に出てきたかと思います。
一般的にダイバーズウォッチには、ダイビングタイムを計測するためのスケールを有した、ベゼルが配されます。
とは言え実際のダイビングの際、アウターベゼル・インナーベゼルで一長一短あります。
アウターベゼルの良いところは、操作がしやすく、またデザインコードとしても大きな魅力に溢れている点です。特にダイビングはせずとも、このデザインコードゆえにダイバーズウォッチを愛する方も少なくないでしょう。
一方でどこかにアウターベゼルをぶつけると動いてしまい、正確な計測がしづらくなるといった側面もあります。出っ張っている分、ぶつけやすい・傷つきやすいといった声も耳にしますね。
対してインナーベゼルの良いところは針とスケールの距離が近いため、ダイビングタイムの計測時の視認性に優れること。また時計を触ってしまった場合でも、ズレてしまったり破損してしまったりといったリスクは低減されます。しかしながら操作時にリューズを引きだすなどの手間がかかり、また水中でこれを行うと内部に浸水してしまうといったリスクが生じてきます。
そこで、セーフダイブ・システムの出番です。
アクアタイマーはこのセーフダイブ・システムによって、「アウターベゼルの操作でインナーベゼルを回転させて、ダイビングタイムをセットする」という機構を実現しています。
例えばこちらの画像では、アウターベゼルを反時計回りに動かすとインナーケースが連動し、12時位置にあった三角マーカーが35分の位置にきているのがおわかり頂けるでしょう。
これだけだと通常のアウターベゼルと何ら変わらないのですが、セーフダイブ・システムではアウターベゼルを時計回りにしても、インナーケースは連動しないような仕組みになっているのです。つまり、通常の逆回転防止システムをインナーベゼルと連動させている、というわけです。
こうすることで誤作動を防ぎ、正確なダイビングタイムを実現することに繋がります。
アクアタイマーのセーフダイブシステム。「じゃあアウターベゼル自体を逆回転防止にすれば良いのでは・・・」と思うかもしれません。
この問いへの答えは、セーブダイブ・システムは高効率かつスムーズな回転を実現するため、9時位置にカプセル化されたスライディング・クラッチシステムによって構成されていることから見出せます。
工具をイメージしてみて下さい。
ナット(ネジ等)を回す際に、下図のようなメガネレンチ(逆回転防止ベゼル)を使用しますと、小刻みな動きが出来ずグルグルと回さなくてはいけません。
ここでメガネレンチではなく、下図のようなラチェットレンチ(両回転ベゼル)を採用することにより、小刻みな回転が可能に。
アクアタイマーのベゼルはこのラチェット構造を採っており、両方向に回転させることで高効率かつスムーズな動作を可能にしている、というわけです。
そしてラチェットレンチの制御(時計回り・反時計回りで固定・切り離しを行う)にクラッチ機構が必要となってきますが、このクラッチ機構を収める9時位置のカプセルもまた、IWCならではの気遣いが隠されます。
カプセルに、小さな穴が開いているのが見て取れるでしょう。
実はこの穴、真水を流し込むことでクラッチの接触部分であったり、インナーケースを洗浄できるといった役割を果たしているのです。既存のダイバーズウォッチ、ケースの外側は洗えても、内部機構の洗浄は個人ではなかなか難しいところでした。
この穴によって、そんな悩みが解消されることを示唆しています。
もちろんムーブメントには水が行き渡らない様、設計されています。
もっとも真水で洗った後は、きちんと水気を取り除き、乾燥させることは忘れないようにしたいですね。
ダイバーズウォッチとしての機能も十二分
出典:https://www.iwc.com/ja/collection/aquatimer/
セーフダイブ・システムのみならず、ダイバーズウォッチとしてもアクアタイマーの機能性は十二分と言えます。
アクアタイマーは過去、2000m防水や120m防水など多彩なスペックで展開されてきましたが、現行は基本的には300m防水となります。ダイバーズウォッチとしても水仕事が多い方がデイリーユースで使うにしても、安心できる防水性と言えますね。
また、針やインデックス、ダイビングスケールの三角マーカーから15まではたっぷりのスーパールミノバが塗布されており、太陽光の届かない暗所における視認性も確保されています。
電気が発達した今、夜光塗料は必要ないという声も聞こえますが、ダイビングだけでなく暗所ですぐに時間を確認できることは本当に便利ですよね。
ちなみにアクアタイマーでは、判読性をより高めるために、二色の夜光塗料が使い分けられています。
さらにストラップのクイック交換システムが搭載されているのも、嬉しいところ。
近年パイロットウォッチでも「EasX-CHANGE」としてクイックチェンジシステムが搭載されていますが、アクアタイマーではいち早く容易なストラップ交換が実現していました。
様々なストラップを気分に合わせて楽しめるのみならず、お手入れにも便利なシステムと言えるでしょう。
IWC アクアタイマー おすすめモデル
最後に、アクアタイマーのおすすめモデルをご紹介いたします。
現行モデルはステンレススティール製ケースが直径42mmのオートマティックか、ケース直径44mmのクロノグラフが基幹モデルとなります。
しかしながらアクアタイマーは長い歴史の中で、非常にバリエーション豊かに展開されております。
製造期間の長さゆえか新品・中古ともに比較的流通量が安定しており、手に入れやすいダイバーズウォッチ。ぜひお気に入りを探してみてくださいね。
アクアタイマー オートマティック IW329001
ケースサイズ:直径42mm×厚さ約14.1mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.30120/パワーリザーブ424時間
防水性:30気圧
定価:638,000円(税込)
オーソドックスな現行アクアタイマーです。
ブラックが基調となったデザインに、計器然としたフォルムが映えますね。
ステンレススティールブレスモデルのIW329002(定価753,500円)とともに、アクアタイマーの二大人気モデルとなっております。
冒頭でも述べたように、約120時間のロングパワーリザーブを備えたCal.32111搭載モデルが2022年8月にリリースしておりますが、まだカタログには掲載されており、併売されている形となります。
現行では黒がブラック文字盤がラインナップされていますが(新作からはブルーサンレイも登場)、ホワイト文字盤のアクアタイマーが爽やかで根強い人気を誇ります。
アクアタイマー クロノグラフ チャールズ・ダーウィン IW379503
ケースサイズ:直径44mm×厚さ約16.9mm
素材:ブロンズ
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.89365/パワーリザーブ68時間
防水性:30気圧
定価:1,320,000円(税込)
IWC初となるブロンズケースを採用したアクアタイマーです。
モデル名の通り『進化論』で高名なチャールズ・ダーウィン氏へのオマージュモデルですが、氏がガラパゴス諸島へと向かった調査船「HMS ビーグル号」の随所にブロンズ素材が使われていたことにちなむとか。
ダイナミックなアクアタイマーとブロンズの暖かみのある色合いが、よくマッチした一本に仕上がります。
出典:https://www.iwc.com/ja/collection/aquatimer/
なお、フライバッククロノグラフを搭載していることも特別感溢れる理由の一つです。
アクアタイマー クロノグラフ ガラパゴスアイランド IW379502
ケースサイズ:直径45mm×厚さ約16.9mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.89365/パワーリザーブ68時間
防水性:30気圧
定価:1,320,000円(税込)
同じくオマージュモデルとなるアクアタイマーです。
ガラパゴス諸島で環境保全研究を行うチャールズ・ダーウィン財団とIWCのパートナーシップを記念して製作されたモデル。
ガラパゴス諸島の溶岩のような黒、そして島を覆う霧のような白を配したデザインが特徴的です。 裏蓋にはダーウィンが研究に心血を注いだゾウガメのレリーフと「チャールズ・ダーウィン財団に捧ぐ-ガラパゴス諸島」の刻印が入ります。
アクアタイマー オートマチック2000 IW356801
ケースサイズ:直径44mm×厚さ約14mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.30110/パワーリザーブ40時間
防水性:200気圧
定価:-円(生産終了)
2000mものハイスペックを備えたアクアタイマー。
こちらはセーフダイブシステム搭載回転ベゼルではない、旧型タイプとなりますが、中古市場では根強い人気を誇ります。
イエローとブラックで彩られたベゼルにはサファイアガラスがコーティングされており、傷や衝撃に強いだけでなく高級感や独特の質感を獲得しました。
アクアタイマーのデザインアイデンティティとも言える秒針のイエローアクセントが、カジュアルでファッショナブルなイメージを強くしますね。
アクアタイマー クロノグラフ IW376801
ケースサイズ:直径44mm×厚さ約17mm
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバー
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.79320/パワーリザーブ44時間
防水性:30気圧
定価:-円(生産終了)
ダイナミックなステンレススティール製44mmケースに、クロノグラフを搭載した人気モデルです。
セーフダイブ・システム付き回転ベゼルや3時位置にデイデイトカレンダー、そして縦目インダイアルを備えますが、視認性の邪魔はせず、むしろ調和のとれた端正な面持ちを携えます。
44mmとタフネスなケースの多いダイバーズラインの中でもかなりガッシリとしており、おおきめサイズがお好きな方にもおすすめできるデザイン性です。
まとめ
ビジネスでも使用できる本格ダイバーズウォッチ、これからの季節に検討してみてはいかがでしょうか?
東京 銀座にあるGINZA RASINでは、アクアタイマーの他にもIWC商品を多数取り揃えております。
ご来店、お待ちしております!
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年