パソコンやスマートフォンの普及、価値観の変化、スマートウォッチの誕生。
高級時計の代名詞である機械式時計は今や必需品とはいえず、趣味性の強いモノとなりました。
一般的に趣味性の強いモノは不景気になると売れなくなりますが、実は高級時計は不景気でも売れ続けています。
今回はその理由について解説致します。
目次
何故不景気でも高級時計は売れるのか?
今から40年程前の時計は機械式が殆どを占め、生活必需品として存在していました。しかしパソコンやスマートフォンが普及し、現在では腕時計がなくとも正確な時間は知ることができます。
このことから「時計の重要性」は低いと思われがちですが、実は機械式時計を中心とする高級時計は景気の良い悪いに関係なく、常に売れ続けています。
高級時計が売れ続ける理由は様々な要因がありますが、最も大きな理由としては「資産価値が高い」ということ。
単なる時計としてだけでなく、資産価値の高さがあるからこそ、どんな景気においても高級時計は売れ続けるのです。
時計の資産価値とは?
高級時計における資産価値とは中古市場での評価、つまり「換金率」が高い事を指します。
モデルによって価値の高い低いはありますが、高級時計はバッグやジュエリーとは異なり、高く売れます。
一般的な消費物は製造から時間が経てば経つほどその価値が失われていきます。
しかし、高級時計は購入してから時間が経過しても価値が失われず、中古であっても高い価値を持ちます。
勿論ブランドやモデルにもよりますが、場合によっては購入金額よりも高い金額で売れることもあり、その性質から「金」のように固形資産として扱われることもあります。
なぜこれ程までに高い価値を持つのか?
高級時計が高い資産性を持つ理由はいくつかあります。
- ケースに金やプラチナといった高級素材が使われている。
- 熟練の職人がハンドメイド製法によって作った芸術作品である。
- メンテナンスを怠らなければ100年経っても使える。
どの理由も資産価値を構築する重要なポイントですが、特に注目してほしいのは「100年経過しても使い続けることが出来る」という点。
クォーツ時計もパソコンもスマホも、そして流行りのスマートウォッチも全て電子機器です。どれも非常に便利なモノですが、一度回路が壊れてしまったら使い物になりません。
ましてや100年も使い続けることなんて不可能です。
しかし、精密な歯車の集合体で作られる機械式時計はメンテナンスによってパーツを交換したり、修理を施すことで、何十年経っても問題なく使用することができます。
これこそが高級時計が如何なる時でも売れる人気の秘訣であり、愛され続ける理由なのです。
高級時計の普遍性
高い資産価値を持つ時計には、どの時計にも「普遍性」があります。
例えばロレックスのサブマリーナやオメガのシーマスター。
サブマリーナもシーマスターも50年以上の歴史をもつモデルですが、現在においてもデザインがほとんど変わっていません。
半世紀以上も前に作られたデザインが今尚現役で評価されているということは、それだけそのデザインが洗礼されていて、普遍的なものであるからです。
時計に限らずどんな物も流行があるため、数年も経てば時代遅れとなってしまいます。
時代遅れとなってしまう時計であれば、いくら高級時計であっても高い資産価値をキープすることはできません。
近年は新興ブランドの時計が数多く市場に出回っていますが、いずれも資産価値は老舗ブランドの人気モデルに遠く及ばないのが現状です。
高級時計ならではのステータス性
高級時計の魅力は何も資産価値だけではありません。
男性が唯一身に着けることができるアクセサリーという側面から、自身の個性とステータス性を演出する非常に重要なアイテムとしても需要があります。
高級時計は今や必需品とはいえないモノであり、時計を単に「時間を確認するモノ」とするのであれば、幾らでもコストを抑えることができます。
しかし、だからこそ時計にお金をかけることが出来る人には注目が集まるのです。
時計にお金を回すことが出来る人にはそれだけの余裕があります。
実際に高級時計を身に着けている人は、財布や靴といった小物にも気を遣っている人が殆どです。
「高級時計=ステータス」という価値観がある限り、例え景気が悪くなったとしても高級時計は売れ続けるでしょう。
最後に
不景気でも高級時計が売れ続ける理由。それは100年以上も使い続けることができる一生モノであること、そしてどんなに時が経っても色褪せない普遍性があるからです。
資産価値が高いことが売れ続ける最大の要因ではありますが、裏を返せば高級時計が職人によって作られる唯一無二の芸術作品であるからに他なりません。
最近はスマートウォッチの普及が著しいですが、機械式時計の市場成長率は上がり続けています。
高級時計とスマートウォッチは、顧客の住みわけがなされているのでしょう。
幾ら文明が発達し、優れた電子機器が世に現れようとも、数百年続いてきた機械式時計産業が廃れるとは考えずらいです。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年