「ロレックス GMTマスターIIって人気なの?」
「GMTマスターIIの価値について知りたい」
ロレックスの数あるプロフェッショナルモデルの中でも、異色の存在を放つエクスプローラーII。
エクスプローラーIの上位機種として誕生するものの、鮮烈なオレンジの24時間針や直接メモリが印字されたメタル製ベゼルはエクスプローラーIとはまた異なり、The ワイルドといった様相です。
2021年には10年ぶりのモデルチェンジとして大きな話題となりましたが、この野趣に富んだデザインは変わらず踏襲されており、喜んだファンも多いのではないでしょうか。
一方でエクスプローラーIIの唯一無二のデザインはかつて「知る人ぞ知る」といった側面がありました。
しかしながら話題性の高さ、そして近年のロレックス市場のさらなる拡大から、人気もいっそう急上昇。
これに伴い、実勢相場に対するお問合せが格段に増えている昨今です。
そんなGMTマスターIIの価値について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
GMTマスターIIは、現在ロレックスの中で注目のコレクションです。
この記事では2017年~2022年12月までのエクスプローラーIIの価格推移を、GINZA RASINでの売上データをもとに紹介します。
エクスプローラーIIの特長についても解説しますので、ロレックスの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください
※掲載している定価・相場は2023年1月現在のものとなります。
※当店に入荷した中古個体をもとに平均相場を採っております。状態・仕様によっては価格は上下します。
目次
エクスプローラーIIとは?
エクスプローラーIIは、エクスプローラーIの上位機種として1971年に誕生しました。
時分針の他に24時間で一周するビビットなオレンジ針を有しており、ベゼルのスケールと合わせて24時間表示ができる、といった多機能機であったことが特徴です。そのため同じ探検家であっても、洞窟や鍾乳洞などといった太陽光の届かない環境下での使用を想定しているなどと言われることもあります。
初代モデルから既に100m防水を有していたことも、探検家としてのアイデンティティをより強調していると言えますね。
なお、1984年頃に第二世代へと突入し、この24時間針が単独稼働する仕様に。そのためGMTマスター同様、第二時間帯表示の機能をも兼ね備えることとなりました。
※初代エクスプローラーII Ref.1655
もっとも上位機種とは言え、日付表示すら持たないシンプルなエクスプローラーIと比べると、かなりインパクトのあるデザインとなっていますね。
ロレックスのスポーツモデルとして採用されることはそう多くないオレンジカラーの24時間針に、直接24時間スケールが印字されたメタルベゼル,大小の角型インデックスが並ぶ雰囲気は、レトロでフューチャー!1970年代は宇宙開発市場やコンピューター市場が大きく開花していた時代でもあり、近未来像も盛んに描かれることとなりました。そんな世相を反映して時計ブランドからもレトロ・フューチャーデザインのモデルが続々発表されていましたが、ロレックスもまたそんな夢ある時代をデザインコードに落とし込んだのかもしれませんね。
ちなみに現代スポーツロレックスの多くがセラクロム製ベゼル(セラミック製ベゼル)を搭載する中でエクスプローラーIIはメタル製ベゼルを堅持しています。このメタル製ベゼルは精悍な印象もさることながら丁寧にヘアライン仕上げがかけられており、ロレックスの美観に対する高い意識も感じられる一本だと個人的には思っています。
初代エクスプローラーIIはブラック文字盤のみでしたが、二代目よりホワイト文字盤がラインナップに追加されました。ちなみに詳細は後述しますが、二代目にはアイボリー文字盤の存在も確認されています。
三代目以降から今に至るまでは、黒・白の二色を変わらず展開してきました。
そんなエクスプローラーIIの歴代モデルは下記の通りです。
初代 Ref.1655:1971年~1987年頃
二代目 Ref.16550:1984年~1898年頃
三代目 Ref.16570:1991年~2011年
四代目 Ref.216570:2011年~2021年
五代目 Ref.226570:2021年~
それでは次項より、エクスプローラーI・エクスプローラーIIともに、歴代モデルの2017年~2022年の、価格推移をご紹介致します!
歴代ロレックス エクスプローラーIIの価格推移と価値
エクスプローラーIIは2021年で誕生50周年を迎える、ロングセラーです。
探検家としてのコンセプトを体現したようなワイルドなデザイン、そしてそのコンセプト通りの堅牢性や信頼性から、根強いファンを獲得してきました。
一方で「定番外し」「毛色の違った」といった立ち位置から品薄モデル・プレミア価格といった様相は薄く、比較的お得に入手できるスポーツロレックスでもありました。
2016年頃からロレックス相場がジワジワと上昇・2018年に入ると定価超えのプレミア価格となるモデルが増えてきましたが、そんな中にあってもエクスプローラーIIは新品並行相場が80万円台といったプライスレンジを維持していたものです。
確かに新品が60万円~70万円以内であった時代と比べると高いと言えますが、それでも「100万円出さなくてはロレックスは買えなくなった」と言われる昨今においては、お得感はきわめて強いですよね。
とは言え前述の通り、2021年のモデルチェンジに伴う話題性の高まりによって、歴代エクスプローラーIIもプレミア価格が進行中!
過去の価格推移を調査すると、その人気のほどが伺えます。また、今後ロレックス相場がどのように変遷していくかは誰にもわかりませんが、過去の上昇率から今後の価値について、ある程度の予測を立てることは可能です。
本項で、歴代エクスプローラーIIの価格推移と価値についてご紹介致します。
※初代エクスプローラーII Ref.1655および二代目Ref.16550は仕様やコンディションによって大きく実勢相場を変えるため、記事執筆次点での参考相場を掲載致します。
※各年の価格推移表は当店に入荷した中古個体をもとに、一年ごとの平均相場を採っております。こちらも状態や仕様、年式によって実際の販売価格は異なることをご留意下さい。
①エクスプローラーII 1655
ケースサイズ:40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:自動巻きCal.1575
防水性:100m(当時)
製造年:1971年~1984年
初代エクスプローラーIIとして1971年に誕生したRef.1655。
現行モデルにも踏襲されているオレンジの24時間針に視認性高いストレート針、また12時・6時・9時が強調されたアワーマーカー等がレトロ・フューチャーですね。近年では1970年代~80年代に流行したスぺ―シーな雰囲気が再びトレンドになっているため、2021年の新型エクスプローラーII発表前夜などは「初代デザインが復刻するのでは」などと囁かれたものです。
こういった背景から、デザイン的な評価もまた高いRef.1655。
アンティークに分類されるものの比較的製造期間が長く、また他のスポーツロレックスと比べればまだ相場が上がり切っていないことなどから、評価の高さが人気に直結しているモデルでもあります。
さらにこの「人気」の理由は、搭載されるムーブメントCal.1575に拠るところも大きいです。
エクスプローラーIIに限った話ではありませんが、アンティークと呼ばれる年代の時計を購入する時、「どういったムーブメントが搭載されているか」はきわめて重要です。
すなわち、製造から年数を経てなお実用に耐えうる堅牢性や信頼性を備えていること。オーバーホールや修理が必要になった時、対応してくれる工房があること。ここが危ういと、デイリーユースとしてアンティークウォッチを維持していくのに、思わぬコストや労力がかかってしまうことになりかねません。
この点、ロレックスであればオススメです。
ロレックスは早い段階から時計の実用性を確立してきたため、今なお普段使いに問題のない個体が非常によく出回っています。出回りが多い分(なんせ、世界一知名度の高い時計ブランドと言って過言ではありませんから)、修理ノウハウもポピュラーとなっており、民間の修理工房や並行輸入店の提携工房でメンテナンスできるケースが非常に多いです。
そんなアンティークロレックスの中でもCal.1575(およびノンデイトのCal.1570)は「超優秀」。数ある銘ムーブメントの中でも傑出していると太鼓判を押す時計技師は少なくありません。
※Cal.1575は上の画像のCal.1570のデイト版
Cal.1575はGMTマスターIにも搭載されました。なお、このノンデイト版のCal.1570もエクスプローラーIやサブマリーナといった堅牢なスポーツウォッチに搭載されてます。ちなみに現行エクスプローラーIIは24時間針が単独稼働するためGMTウォッチとしてもご利用頂けますが、Cal.1575にこの機能はありません。そのため時針と24時間針は連動しており、後者によって昼夜判別をつけるといったコンセプトになります(GMTマスターIは回転ベゼルによって第二時間帯視認が可能)。
ではこのCal.1575とはどのようなムーブメントなのかを簡単に解説すると、1970年代~1980年代にロレックスの3針+デイトモデルに搭載された自動巻きです。同年代にCal.1520も活躍していましたが、こちらがノンクロノメーター仕様であったことに対しCal.1575はクロノメーター仕様。ちなみにもともとはCal.1570が1960年代に完成していましたが、デイト付きのCal.1575が、そして両機ともにハック機能(時刻合わせの際に、秒針が停止する機能)を搭載するといった時系列を経ています。
また、マイクロステラスクリュー方式と呼ばれる、フリースプラングテンプを精度調整機構として採用しているのもミソ。これによって長期にわたって安定した高精度をユーザーに提供することとなりました。
※精度調整はオーバーホールのような分解洗浄をせず、精度を安定させるために技術者が行うメンテナンスの一環です。従来はテンプに取り付けられた緩急針によってヒゲゼンマイの長さ調節をすることでこれを担っていましたが、フリースプラングテンプはテンプの慣性モーメントに影響を与えることで調整します。
フリースプラングテンプは製造コストが高く調整難易度が高い一方で、ヒゲゼンマイに負荷をかけないため長年に渡って安定的な高精度維持が可能に。また耐久性にも優れます。そのため近年では高級時計を中心に装備されつつありますが、いち早く採用したのがロレックスというわけです。
パーツの耐久性やメンテナンス性にも考慮されており、いっそう実用性に富んだ傑作機がCal.1575となります。
すなわち、エクスプローラーII Ref.1655は製造から半世紀以上が経つ今なお実用されているのは、Cal.1575に拠るところが少なくありません。
このように高い実用性と現行にはないデザインに下支えされるRef.1655の実勢相場は、180万円台~、個体によっては400万円にのぼることも。状態や付属品の有無によって大きく変動致します。
またこういったアンティーク品は生産終了から年数を経るに従って上質な個体の出回りが少なくなります。アンティーク市場のニーズが高まっている近年の情勢を鑑みれば、今後流通は少なくなっているにもかかわらずそれを大きく上回る需要によって、実勢相場が上がっていくであろうことは想像に難くありませんね。
なお、アンティークロレックスらしく、エクスプローラーII Ref.1655には仕様による評価の違いが如実に見受けられます。その仕様とは「文字盤」です。
Ref.1655の文字盤はいくつかの系譜に分類することができるのですが、最初期のマークIダイアルは秒針にドットが無いストレート針が使われていることが特徴で、また12時位置の王冠マークやロゴ表記が小さめ。
1655のマークIダイアル(画像出典:https://www.revolution.watch/tooled-rolex-explorer-ii-reference-1655/)
この最初期はレア仕様ということも相まって、300~400万円超の値付けが行われることもあります。
さらに状態によっては最初期型を上回るようなレア度を誇るのが後期型の文字盤で、1974年以降に製造された個体に見受けられるセンタースプリット仕様はさらに大きな値付けが付くことも!
画像出典:https://www.revolution.watch/tooled-rolex-explorer-ii-reference-1655/
こちらが1655のマークIII、センタースプリットです。6時位置のロゴのスペースが揃っていることがおわかり頂けるでしょう。
とは言え、レア文字盤はなかなか一般市場には流通しておらず、その高相場もさもありなん。
加えて、オレンジの24時間針が経年で白っぽくなったアルビノ針と呼ばれる個体も、レア仕様の代表格となっております。
なお、近年ではロレックス愛好家の尽力もあり、さらに仕様が細かく分けられてもいます。
そのため今はまだ通常個体でも今後レア仕様に位置付けられるかも・・・!?そんなロマンを感じられるのも、アンティークロレックスの醍醐味ではないでしょうか(もっとも既に全体的に価格高騰してもおりますが・・・)。
②エクスプローラーII 16550
ケースサイズ:40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:自動巻きCal.3085
防水性:100m(当時)
製造年:1984年頃~1988年頃
第二世代のRef.16550は1984年頃~1988年頃までと、わずか4年間のみ製造されたエクスプローラーIIです。
ちなみにこの「4年」というのも諸説ある中の一つで、「1984年~1988年の間で二年しか製造されていない」とか「1988年に販売開始された」とか囁かれている、何かとミステリアスな世代です。
そんなRef.16550は堅牢なケースやメタルベゼルはそのままに、インデックスやベンツ針がぐっと現行に近いデザインコードとなっています。ちなみにこのデザインコードは、現行Ref.226570まで連綿と続いていくこととなります。24時間針も赤く彩られることとなり、モダン・テイストが強まっていますね。
なお、この世代から黒文字盤オンリーだったエクスプローラーIIのバリエーションに白文字盤が加わります。白文字盤はインデックスや針のフチをブラックで彩る工夫が凝らされており、黒文字盤同様に高い視認性を誇ります。現行のラッカーダイアルとは一風異なりポーセリン調になっているのも、特別感があってなんとも味わい深いです。
実用面でも、大きなチューンアップが図られました。
風防はプラスティックからサファイアクリスタルガラスに。またCal.3085へと移行することで24時間針の単独稼働が可能となり、現行エクスプローラーIIのように第二時間帯を表示させる高機能性をも獲得しました。
ちなみにこの製造期間の短さの「理由」も諸説あるのですが、次世代Ref.16570でCal.3185になったことが大きいでしょう。Cal.3185(Cal.3100系)は1980年代後半から現代にかけて、ロレックスの信頼性を下支えしてきた傑作機です。前項のRef.1655の項でもご紹介したように、ムーブメントが「何か」ということは中古市場ではきわめて重要です。ムーブメントが優れていれば、メンテナンスを施して末永く愛用することができるためです。
2015年からはCal.3200系へと順次載せ替えされていっていますが、今なお3100系が現役で活躍していることは言うまでもありません。
そんなCal.3185への載せ替えとともに、リファレンスチェンジが図られ、Ref.16550は生産終了となったのでしょう。
製造期間の短さゆえに流通量はきわめて少ないものの、通常個体の実勢相場は120万円台~180万円台ほどと、同年代(5桁リファレンスはポストヴィンテージなどと呼んだりする)のスポーツロレックスと比べると超高騰している・・・といったほどではありません。
しかしながら、この稀少性に目を付けたユーザーが、買いを集中させているのも事実です。実際、ほんの数年前は70万円程度で購入できる個体が出回っていましたがその面影はなく、ジワジワと相場を上げて行っている現状を見て取れます。
なお、これほどまでに短い製造期間ながら、Ref.16550はレア仕様の多い世代ともなります。
代表的なのはアイボリー文字盤ではないでしょうか。
※左が通常モデル、中央と右側がアイボリーダイアル。特に右の個体はアイボリー調が強く美しい
これまた謎めいた存在のアイボリー文字盤。
ホワイト文字盤の塗料が経年変化したのだとか、もともと黒・白と並んでバリエーションとして追加されたのだとか言われていますが。定かではありません。ただしアイボリー文字盤はインデックス・針のフチ取りがシルバーとなっております。
このアイボリー文字盤はもはや200万円超が当たり前といった相場感!ちなみにこのアイボリー文字盤にセンタースプリット(前述の通り、6時のロゴのスペースが揃っている仕様)も加わるとさらに高値に・・・!!
黒文字盤の代表的なレア仕様としては、スパイダーダイアルが挙げられます。これは16550だけに見られる仕様ではなく、同年代の黒文字盤で確認できます。
ダイアルがひび割れを起こしているのですが、その様が蜘蛛の巣のようになっている個体をスパイダーダイアルと呼び、通常コンディションの個体よりも高値で売買されることとなります。
②エクスプローラーII 16570
ケースサイズ:40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:自動巻きCal.3185(末期はCal.3186)
防水性:100m(当時)
製造年:1991年~2011年
いよいよCal.3185を搭載した、エクスプローラーII第三世代のRef.16570が発売に至ります。
Ref.16570は、1991年~2011年と20年にも渡って製造されたロングセラー。流通量の豊富さゆえに希望に副った個体が見つけやすく、実際の購入候補となっている方も多いのではないでしょうか。
もっともデザインコードは第二世代Ref.16550と大きく変わっていません。
赤い24時間針にベンツ針や丸型インデックスが現代的です。ベゼルのフォントが若干変わってはいるものの、エクスプローラーIIを代表する顔立ちが継承されていますね。
大きく変わったのはスペックです。
夜光は初期は引き続きトリチウムですが1998年頃からルミノバに。またバックルも前期はシングルロックが採用されていましたが1995年あたりからダブルロックに。2000年頃からはフラッシュフィットが一体型となるなど、堅牢性がいや増します。
※フラッシュフィット・・・ケースとブレスレットのつなぎ目
加えて、何度か言及しているように、長年ロレックスの信頼性の要となってきたCal.3185が、Ref.16570より搭載されることに。ちなみに2007年頃からはこのCal.3185にブルーパラクロムヒゲゼンマイを採用し、優れた耐磁性能・耐衝撃性能を備えたCal.3186へと載せ替えられています。
なお、Ref.16570は年代的に仕様変更の多い世代で、2004年頃~王冠透かしマークがガラスに、2007年頃~ルーレット刻印(文字盤外周にROLEXのロゴとシリアルナンバーが印字されている仕様)が採用されています。これはどちらも偽造防止策です。
そんなエクスプローラーII 16570の価格推移は下記の通りです。
2017年と2021年の平均相場を比較すると200%以上も相場上昇していることとなりますが、ポストヴィンテージロレックスの中ではまだ手に入れやすい価格帯です。
ちなみに2023年1月現在の実勢相場は100万円前後~150万円台程度です。
耐久性の高い3100系ムーブメントを搭載し、かつ外装面でもスペックアップされていること。前述の通り流通量も豊富であることから、買いやすく売りやすいロレックスの一つです。
今のところは目立ったレア仕様はありませんが、基本的には高年式ほど価格は高くなる傾向にあります。なお、文字盤の色による価格差は、この世代は大きくありません。
しかしながら高年式とは別に、実勢相場として注目すべき個体は「オールトリチウム」「シングルバックル」です!まだ超高騰といったほどではありませんがジワジワ価格を上げており、愛好家の耳目を集めるところです。
前述の通り、エクスプローラーII Ref.16570は夜光とバックル仕様に変遷がありました。これはエクスプローラーIIに限った話ではなく、エクスプローラーI Ref.14270やGMTマスターRef.16700等同年代のスポーツロレックスで見られるマイナーチェンジです。
時計は精密機器ですので、新しい個体ほど需要や価値は高くなる傾向にあることは前述の通り。
しかしながらロレックスは往々にして、過去の仕様が再評価されることがあり、その一例が「オールトリチウム」「シングルバックル」なのです。
左:シングルバックル 右:ダブルバックル
ルミノバ夜光・ダブルロックバックルの方が実用性は高くなるものの、現在にはない初期仕様がマニア心をくすぐってか、需要がこの初期の方に集中し、相場が逆転現象を見せつつある状況です。
とりわけトリチウム夜光を残した個体は「針や文字盤が交換されていない」ことを示唆し、オリジナリティの証左となります。
こういった背景から初期型にこだわる方は多く、また経年でどんどん上質な個体が市場から消えていっていることから、今後も相場動向から目が離せないロレックスと言って良いでしょう。
気になる方は、相場が上がり切ってしまう前に!早めに入手しておきましょう!
③エクスプローラーII 216570
ケースサイズ:42mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:自動巻きCal.3187
防水性:100m
製造年:2011年~2021年
エクスプローラーIIの生誕40周年を記念して、20年ぶりにモデルチェンジを果たしたのがRef.216570です。昨年(2021年)まで製造されていたため、非常になじみ深い一本と言えますね。
40周年という節目の年であったためか、初代モデルの意匠の特徴であったオレンジの24時間針を復刻。ちなみに黒文字盤の方はファントム効果と呼ばれる、時分針および24時間針の針の根本を黒くすることで、まるで文字盤から浮かび上がっているかのような意匠をも初代から踏襲させることとなりました。12時位置のEXPLORER IIのロゴがオレンジの差し色になっているのも、オシャレですよね。
また、ケース直径は従来の40mmから42mmへとアップサイジング。これに伴いインデックス・針が大型化され、ベゼルの印字も若干太く。ラグに厚みが増すなど、堅牢感とインパクトがいや増す設計となりました。
実用面もまた、40周年らしく大幅スペックアップしていることも特筆すべき点です。
とりわけブレスレットの耐久性アップは見ものです。
従来は中空だったセンターリンクに無垢パーツを採用。また5mmの微調整可能なイージーリンク付きダブルロックバックルは、いっそうの堅牢性を高めています。ちなみに全体が大型化したことで重量も上がっていますが、微調整機能がついているため腕にフィットさせやすく、ロレックスの装着感へのこだわりが見て取れる仕様変更と言えます。
夜光もルミノバからロレックス独自技術のクロマライトへと変更。2007年誕生のミルガウスから採用され始めた夜光塗料で、従来品の二倍となる約8時間の発光持続を可能にしたと言われています。
さらにムーブメントはエクスプローラーIIのためと言って良い、Cal.3187を搭載しています。
これは前述したブルーパラクロムヒゲゼンマイに加えて、ロレックス独自の耐衝撃装置パラフレックス ショック・アブソーバを備え、より探検家向けの仕様にしたムーブメントです。Cal.3200系からは標準装備となるものの、エクスプローラーではいち早く採用されており、機械の大敵である衝撃・振動への最適な処方箋と言えます。
このように内外ともにエクスプローラーIIの40周年を彩るにふさわしいRef.21657の、過去の価格推移は下記の通りです。
■黒文字盤価格推移
■白文字盤価格推移
なお、かつては黒・白文字盤で大きな人気・価格差はありませんでしたが、現在は白文字盤の方が僅かに相場で先行しています。スポーツロレックスは白文字盤が少なく、またデイトナ 116500LNなどで人気カラーとなっているため、Ref.216570でも人気がジワジワと上がってきているのでしょう。
エクスプローラーII 216570も決して製造期間は短くないため、流通量は豊富です。そのため長らく価格面ではお得感の強いモデルでしたが、2018年末頃から定価を超えるプレミア相場に。
当時はロレックス相場の高騰が顕著になっていた時期でもあり、スポーツロレックス全体で価格が上がったものでした。
エクスプローラーIIはそんな中でもまだお得感が強かったのですが、ちょうど2018年頃から生産終了の噂があったことも影響して、相場はその後確実に上昇していくこととなります。
ちなみにこの生産終了の噂はムーブメントに起因します。
何度か言及しているように、ロレックスは2015年からムーブメントを3100番台から3200番台キャリバーへと移行を進めていました。
そしてバーゼルワールド2018で新型GMTマスターIIが発売された時、ムーブメントがCal.3285へと変更になったことで、216570生産終了説は濃厚に。
なぜなら単独稼働する針によってGMTとして扱えるエクスプローラーIIはGMTマスターIIとベースムーブメントを同じくしており(216570はパラフレックス・ショック・アブソーバーが搭載されたCal.3187だが、ベースはGMTマスターIIと同様にCal.3186)、GMTマスターIIのモデルチェンジはすなわちエクスプローラーIIの新型登場を示唆していると考えられたのです。
実際に新型ムーブメントが載せられたRef.226570が登場し、Ref.216570の生産終了となったのはエクスプローラーIIの生誕50周年にあたる2021年でした。
しかしながら噂の段階からジワジワと実勢相場は加速しており、2020年下半期の実勢相場では100万円を下回ることはほとんどなくなったといった状況に。
2021年のモデルチェンジについては後述しますが、216570の2023年1月時点での実勢相場は130万円前後~150万円台と依然として高値。
とは言えまだ生産終了したばかりと言うこともあり新しい個体も出回っているので、買いやすいスポーツロレックスであることは間違いありません。
③エクスプローラーII 226570
ケースサイズ:42mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:自動巻きCal.3285
防水性:100m
製造年:2021年~
最後にご紹介するのは、エクスプローラーIIの最新世代にあたるRef.226570です!エクスプローラーII生誕50周年の節目にあたる2021年、満を持して登場しました。
発表前夜は「セラクロムベゼルになるのでは」「初代意匠にさらに忠実になるのでは」などと予想されていたものでしたが、蓋を開けてみればデザイン面での大きな変化はそこまでありませんでした。
しかしながら近年のロレックスに共通する、細くシャープなラグ仕様へと変更。これに伴いブレスレットが幅広となり、時計全体のバランスがいっそう向上することとなりました。
また黒文字盤の特徴であったファントム効果がなくなり、根本の部分も表示されるように。白文字盤の方は針の光沢が抑えられ、よりマット調が強調されています。
このようにロレックスらしく、実用面への飽くなき追求がマイナーチェンジからも見て取れますが、本丸はムーブメント!
ついにエクスプローラーIIも、最新世代にあたるCal.3285が搭載されることとなりました。ちなみにGMTマスターII 126710系と同一キャリバーです。エクスプローラーII Ref.216570では専用機のCal.3187が搭載されていましたが、これに備わっていたブルーパラクロムヒゲゼンマイおよびパラフレックス・ショック・アブソーバーは3200系では標準装備となったため、特に住み分けの必要がなくなったのでしょう。
この最新世代のムーブメントは―他の3200系にも言えることですが―、14件もの新たなる特許を取得したうえで生み出された傑作機です。
とりわけ新開発の脱進機クロナジー・エスケープメントによってエネルギー効率が15%も改善され、ロレックスらしい高精度を保ちながらも約70時間のロングパワーリザーブを獲得しました。3100系までは48時間であったことを鑑みると、約一日分の延長ということを意味します。
そんな最新のエクスプローラーII Ref.226570の、新作発表以降の価格推移は下記の通りです。
また、2023年1月現在の実勢相場は160万円台~170万円台です。
まだ流通しきっていないということもあり、定価1,147,300円(2023年1月~)のほぼ倍程度のプレミア相場!
新作発表当初はご祝儀相場によって高値売買されるものですが、普通は一年も経てば落ち着くものです。しかしながら新型エクスプローラーIIは落ち着く気配を見せないどころか、さらに相場を上げている状況に。
これは新型コロナウイルス禍において、海外からの仕入れがかつてより限定的になったことも背景として挙げられます。一方でコロナ禍で消費がレジャー・飲食から高級時計・宝飾品への購入にシフトした結果、かつてないほど高級時計への需要が高まっており、供給を大きく上回るようなニーズが市場を席捲しています。こういった中でロレックス相場もみるみる上昇の一途を辿っており、業者ではロレックスの人気モデル争奪戦が起きている状況です。
こと2021年新作モデルはエクスプローラーIIに限らず流通量がまだ少ないため、この争奪戦は熾烈なものに。加えて2023年の新作発表次第では、さらにロレックス相場が過熱する可能性も否めません。
こういった状況下においてロレックスの買い時とは、「欲しい時」に他ならず、早めのご決断をお勧め致します。
まとめ
ロレックスの中でも、現在とても注目度の高い、エクスプローラーIIの価格推移についてご紹介致しました!
かつてはどの世代も70万円程度で購入できたエクスプローラーIIですが、世代ごとに進化する度ファンをつけていること。またロレックス相場がかつてないほど高騰していることから、多くの個体で高値となっていることが見て取れたのではないでしょうか。
本稿でも何度か言及している通り、なかなか落ち着きを見せないロレックス相場。新作発表後は全体的にまた価格が上昇するため、気になるモデルがあるなら早めに買っておきましょう!
当記事の監修者
池田裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年