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速報!2023年グランドセイコー新作モデルを発表!by Watches & Wonders Geneve
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出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/
日本が誇る高級時計ブランド・グランドセイコー。匠の技術にわびとさび、そして確かな実用性を兼ね備えるグランドセイコーの腕時計は、今や世界的に名を馳せております。とりわけ日本の「美」をモチーフとした意匠は、唯一無二の存在感を放ちますね。
そんなグランドセイコー、2022年よりWatches & Wonders Geneveに参画し、新作発表を行っております!
2023年には、いったいどんな新作を打ち出してきたのでしょうか。
この記事では、グランドセイコーの最新モデルについてお届け致します!
目次
2023年グランドセイコー新作①エボリューション9 テンタグラフ Ref.SLGC001
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径43.2mm×厚さ15.3mm |
素材: | ブライトチタン |
文字盤: | ブルー |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.9SC5 |
パワーリザーブ: | 約72時間 |
機能
防水: | 10気圧 |
定価: | 1,815,000円 |
Watches & Wonders Geneveで、グランドセイコーは同社初となる機械式クロノグラフ「テンタグラフ」を発表しました。
グランドセイコーに機械式クロノグラフがなかったことをご存知でしたか?正直、私は思い至りませんでした。
とは言え、グランドセイコーのレガシーを紐解くと、確かにクロノグラフと言えばスプリングドライブでした。スプリングドライブはセイコーが1999年から独自技術として展開している機構です。簡単に解説すると機械式時計のようにゼンマイで駆動しつつも、精度をテンプではなく水晶振動子で採ることで、機械式時計の力強いトルクとクォーツ式時計の高精度を両立します。
グランドセイコーはこのスプリングドライブで多彩なバリエーション展開を行ってきましたが、2007年に同社初のクロノグラフCal.9R86搭載モデルをリリースしました。ちなみに2020年はグランドセイコー60周年だったのですが、その折に最新世代のスプリングドライブCal.9RA2をローンチし、業界を湧かせています。
一方でグランドセイコーが機械式時計に弱いかと言うと、全くそんなことはありません。
そもそもグランドセイコーは1960年、「スイスの高級時計を追い越す、高精度な腕時計」を志して創業しました。グランドセイコーはこの当時から精度を競うスイスでの天文台コンクールで上位をかっさらい続け、さらには独自の精度規格によって自社製品を追い込みます。この姿勢は現代でも変わっておらず、ハイビート36000ムーブメントを始め、「正確な時」において一家言持ち続けてきました。
そんなグランドセイコーが満を持して発表した初めての機械式クロノグラフは、テンタグラフと命名されています。
これは、Ten beats per second、Three days、Automatic chronographに由来しているとのこと。すなわち、10振動/秒、3日間パワーリザーブ、自動巻きクロノグラフです。
詳しく解説いたします。
テンタグラフ Cal.9SC5の実力
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グランドセイコー初の機械式クロノグラフ Cal.9SC5。ベースとなったムーブメントは、やはり2020年に発表されたCal.9SA5です。
これはグランドセイコーが「最新」と自負するムーブメントで、同社お得意の10振動/時(36,000振動/時)のハイビート機であるにもかかわらず、約72時間のパワーリザーブを獲得した代物です。グランドセイコーは1998年に「高性能機械式ムーブメント」という謳い文句とともに、28,800振動/時のハイビート機をリリースし、続いて2009年には36,000振動/時の超ハイビートムーブメント9S85を市場に投入しました。
このビートというのはテンプの振動数のことで、一般的にここが早ければ早いほど高精度が出しやすくなります。特にクロノグラフは精密な時間計測において、ハイビートが重宝される傾向にあります。一方でパーツ摩耗が激しかったり、エネルギー消費が激しくパワーリザーブが短くなるといったデメリットも抱えています。
しかしながらグランドセイコーはこのデメリットを克服し、2020年にCal.9SA5で、80時間のパワーリザーブを獲得することとなりました。
これを実現したのが―テクノロジーを挙げだすとキリがありませんが―、主に「デュアルインパルス脱進機」「グランドセイコーフリースプラング」「ツインバレル」です。
※デュアルインパルス脱進機
脱進機とは前述したテンプの振動数を一連の歯車(輪列)に伝えたりゼンマイのエネルギーによってテンプを往復させたりするパーツです。前述の通り振動数が高いほど精密ですが、パーツ摩耗によって寿命を縮めてしまう可能性があります。
そこでグランドセイコーではガンギ車からテンプへの動力伝達に「直接衝撃」「間接衝撃」を組み合わせたとのこと。これによって歯車が摩擦を受ける箇所が一方向どちらかとなり、摩擦によるエネルギー消費が低減。スムーズな伝達効率を獲得(また、パーツ摩耗の問題も同時に解消していますね)しました。
※グランドセイコーフリースプラング
フリースプラングというのは精度調整のための機構です。精度調整は緩急針で行われることもありますが、近年の高級スポーツウォッチでは、このフリースプランぐがじょじょに標準装備となってきました。
従来の緩急針はヒゲゼンマイの長さを制御することで精度調整を行いましたが、フリースプラングでは取り付けたネジの調整によってテンワ(テンプを含むパーツ)の慣性を制御することで精度を調整します。
フリースプラングを搭載するためにはムーブメント自体に優れた工作精度が求められたり、調整の難易度が高かったりします。一方で精密な調整が可能であること。ヒゲゼンマイに直接干渉しないため耐久性が向上し、ハイビートならではの安定した高精度を長期に渡って維持することに繋がります。
グランドセイコーは独自の巻き上げひげと、さらに独自の等時性の調整を可能にしたフリースプラングによって、これを成し遂げました。
※ツインバレル
ゼンマイを格納する香箱(バレル)を二つ搭載させる機構。パワーリザーブを延長させるのに割とポピュラーな手法ですが、グランドセイコーでは前述した高効率なデュアルインパルス脱進機とタッグを組ませることで、80時間ものロングパワーリザーブを実現しています。
2023年のテンタグラフでも、このCal.9SA5をベースにクロノグラフがモジュール的に追加されました。クロノグラフを搭載した分、パワーリザーブは約72時間となっていますが、三日間ということを鑑みれば十二分ですよね。
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Cal.9SC5の垂直クラッチは指針ズレや針飛びを抑え、コラムホイールによって精密な制御も可能としております。さらに独自の三叉ハンマーが組み込まれており、リセット時に心地よいクリック観とともにクロノグラフ針を瞬時にゼロリセットするとのことです。
なお、グランドセイコーはこのクロノグラフのために、新たに精度規格を用意したとのこと!
6方向の姿勢、3段階の温度で17日間の厳格な検査を行い、さらに3日間クロノグラフを作動させた状態で、3方向の姿勢での精度を検査するとのこと。
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シースルーバックからは美しい仕上げと装飾が施されたCal.9SC5がご鑑賞頂けます。
新しいグランドセイコーのスポーツウォッチ
2023年新作エボリューション9 テンタグラフ Ref.SLGC001は、グランドセイコーが「グランドセイコーの理想を追求した新スポーツウォッチ」と謡います。確かにグランドセイコーらしい美しく燦然と輝く外装を備えつつも、しっかりスポーティー!
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この外装は、エボリューション9に依るところが大きいでしょう。
エボリューション9は2021年に発表されたシリーズ9をアップデートしたグランドセイコーの一大コレクションです。大人気の白樺モデル等も、エボリューション9のバリエーションです。
エボリューション9は、グランドセイコーが長年掲げてきた「セイコースタイル」をもとに、日本の美意識を取り入れた新しいデザイン文法を採用していることを特徴とします。
セイコースタイルにも色々あるのですが、つまるところ「燦然と輝く」時計。
例えば平面を主体に二次曲面でデザインを構成すること。これら各面はザラツ研磨を用いて、歪みのない鏡面(ポリッシュ)仕上げを施すこと。針・インデックスには多面カットを採り入れること等々・・・こういったルールによって、グランドセイコーは長らく外装で高い評価を得てきました。
そしてエボリューション9はこのセイコースタイルに「光と陰が織りなす美」「光を美しく流す造形」といった、日本の美意識を採り入れていると言います。
改めて新作エボリューション9 テンタグラフ Ref.SLGC001に目をやると、美しい外装が目に入ってきます。
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素材はブライトチタンなのですが、しっかりと高級機らしくポリッシュ・サテン仕上げが両立しています。ちなみにブライトチタンとは、セイコーが腕時計のために開発したチタン合金で、純チタンより約1.5倍の硬度があるにもかかわらず、従来のチタンにはない美しい光沢を湛えます。実際グランドセイコーのブライトチタンモデルは軽量かつ堅牢であるにもかかわらず、高級機らしい風格が漂っているものです(チタンを使った腕時計は、ツール感が強まる傾向にあるにもかかわらず、です)。
切り立ったエッジはいかにも鋭く、日本刀のような凛とした美しさをも放ちますね。
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文字盤についても、特筆すべき点です。高級腕時計の文字盤意匠において、グランドセイコーは他の追随を許しません。
まず目に入るのが、力強い針と切り立ったインデックスでしょう。これもセイコースタイルで大切にされてきた「美」です。この鮮烈な針とインデックスによって高い視認性を有することは言わずもがな。燦然とした輝きが添えられて、スーツの袖口からもそれとわかる高級感を湛えるのです。
さらに新作モデルでは二枚の文字盤を重ねることで、メインダイアルとインダイアルにメリハリを利かせました。視認性の面でもナイスな手法ですが、さらに高級機に欠かせない「立体感」も存分に備わります。
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個人的に「これはすごい!」と思ったのが、分針とクロノグラフ秒針の針先が文字盤のメモリ先端まで伸びていること。そして熟達した職人の手作業によって、先が曲げられていることです。
この曲げ針は、オールドウォッチで見られる手法です。視認性を向上させることが目的でしたが、近年では文字盤や針・インデックスの質が向上したため、必ずしも重要な作業ではありません。そのため採用するブランドは少なくなってきているのですが、手作業由来の曲げ針にロマンと美を感じている方は少なくないでしょう。
グランドセイコーでは、手間をかけながらも曲げ針を採用してくれており、そんなところに同社の「匠」を垣間見る思いです。
さらにブルーの特徴的なパターンも、当新作モデルの魅力を押し上げます。
これは、岩手県雫石市に位置するグランドセイコースタジオから臨める岩手山の山肌をイメージしたパターンとのこと。2021年のグランドセイコー60周年モデル等でも、この山の名前が出てきましたね。
グランドセイコースタジオは、グランドセイコーのメカニカルムーブメントが手作業で組み立てられる特別な工房です。雫石を愛し、そして誇るグランドセイコーは、しばしば同地をモチーフにした意匠を取り入れます。
ちなみに新作でブルーになっているのは、星々がきらめく岩手山の夜をイメージしているとのことです。スポーティーなセラミック製のタキメーターベゼルとの相性も抜群ですね。
ケースサイズは直径43.2mm×厚さ15.3mmと大振りですが、エボリューション9は装着感にも配慮されているので、着け心地は快適なのでしょう。
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ブレスレットもチタンとなっており、プッシュボタン付きのフォールディングクラスプで固定されます。
国内定価は1,815,000円。
2023年6月9日より発売予定となっております。
2023年グランドセイコー新作②マスターピース 彫金 Ref.SBGZ009
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スペック
外装
ケースサイズ: | 直径38.5mm×厚さ9.8mm |
素材: | プラチナ |
文字盤: | シルバー |
ムーブメント
駆動方式: | スプリングドライブ手巻き |
ムーブメント: | Cal.9R02 |
パワーリザーブ: | 約84時間 |
機能
防水: | 3気圧 |
定価: | 9,515,000円 |
「白樺」文字盤人気は前述の通りですが、外装全体の彫金によってダイナミックに、しかし美しく表現した特別なマスターピースも、Watches & Wonders Geneveで発表されました。一目見ただけでわかる風格ですね!
プラチナで構成された歪みのない美しいケース、そしてメタリックな文字盤には、独特のテクスチャが彫り込まれています。これは厳冬期の、「信州 時の匠工房」近郊に広がる白樺林をイメージしているとのこと!
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前項でグランドセイコースタジオ 雫石についてご紹介いたしましたが、スプリングドライブが製造されているのは長野県塩尻市の「信州 時の匠工房」です。新作マスターピースでは、この信州の厳冬期、雪が降り積もる中の荘厳な白樺林をイメージしたとのこと。ちなみにグランドセイコーの「白樺」モデルはメカニカルとスプリングドライブ搭載モデルがあり、前者は雫石から臨む白樺を、後者は塩尻からの白樺を再現しているため、若干テクスチャや色味が異なります。
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しかもこの彫金、熟達した職人が一つひとつ手作業でやっているというのだから驚きを禁じえません。宣材写真だけ見ても、いかに緻密かがわかりますよね。まさに「匠」の技でしょう。
14Kホワイトゴールド製の時分針とインデックスはグランドセイコーらしく切り立ちます。ちなみに6時位置のSDマークはスペシャルダイアルを意味しており、ゴールド製インデックスを用いた特別な文字盤であることを表現しています。
秒針のグレーが調和を損なわず、しんしんと降り積もる雪の中の静寂さをも感じさせます。
なお、こちらも手作業によって曲げ針が行われています。
搭載するムーブメントは、スプリングドライブCal.9R02です。マイクロアーティスト工房で製造された特別な機械となっております。
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マイクロアーティスト工房は2000年に設立された、マスターピースコレクションを手掛ける専用工房。スプリングドライブ最薄となる4.02mm厚のキャリバーによって、まるで工芸品のような薄型ドレスウォッチが完成されました。
一方「デュアル・スプリングバレル(一つの香箱の中に薄く長い二本のゼンマイを並列していると!)」と「トルクリターンシステム」によって、約84時間のロングパワーリザーブを備えていることにも、畏敬の念を覚えます。
パーツ一つひとつが丁寧に仕上げられており、シースルーバックからこの名機を鑑賞できるというのも、オーナーの大きな特権です。
ちなみにイエローゴールドのプレートに「Micro Artist」のエングレービングがありますが、これは購入者が任意の文字にできるとのことです。
国内定価は9,515,000円です。
こちらも2023年6月9日からの販売予定ですが、世界限定50本(うち、国内は25本の割り当て)とのこと。
なかなか市場に出回らないレア個体ですが、一度実機で、その彫金とムーブメントの美しさを目の当たりにしたいものです。
2023年グランドセイコー新作③マスターピース ジュエリーウオッチ 8Days Ref.SBGD213
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径44.5mm×厚さ14.4mm |
素材: | プラチナ |
文字盤: | ジェムセット |
ムーブメント
駆動方式: | スプリングドライブ手巻き |
ムーブメント: | Cal.9R01 |
パワーリザーブ: | 約192時間 |
機能
防水: | 3気圧 |
定価: | 30,800,000円 |
「獅子」を表現した、2023年新作マスターピース ジュエリーウォッチです。
ブランドカラーでもあるブルーをサファイヤで取り入れ、かつハイグレードの輝きを放つダイヤモンドが、唯一無二の存在感を示します。
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ちなみに獅子は、グランドセイコーのシンボルです。グランドセイコー曰「最高峰の腕時計を目指す意志」が獅子には込められてきたとのこと。2022年にも「ホワイトライオン」として至極のジュエリーウォッチがリリースされましたが、このスタイルはそのままに、新たにブルーをデザインコードとして取り入れた新作となりました。
文字盤の中心も濃いブルーですが、こちらはシェルとのこと。実機だと、光の加減で様々なゆらめきと輝きを見せてくれることでしょう。
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搭載するムーブメントは、やはりマイクロアーティスト工房で製造された、特別な手巻きスプリングドライブCal.9R01です。
驚くべきことに約8日間ものパワーリザーブを備えており、実用性は十二分。一方でシースルーバックからの景観にはコンセプトがあり、受けの形状が富士山、ルビーが諏訪湖の街灯り、そしてパワーリザーブインジケーターで諏訪湖をイメージしているとのことです。
国内定価は30,800,000円、世界限定8本生産。グランドセイコーの中でも、瀟洒で贅沢で匠の一本となっております。
まとめ
グランドセイコーがWatches & Wonders Geneveで発表した、2023年新作モデルをご紹介いたしました!
今年の6月発売予定とのことで、楽しみですね!もっとも滅多に手に取れないマスターピースもリリースされておりますが、さらなる高みを目指すグランドセイコーの志をひしひしと感じる新作ではないでしょうか。
なお、グランドセイコーはWatches & Wondersのような総合見本市のみならず、年間を通して新作発表を行うことがあります。そのためまだまだ2023年も期待で胸が熱くなります!
今年も本サイトでは、グランドセイコーに注目していきたいと思います!
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当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年