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2022年のWatches & Wonders Geneve、初参加となるグランドセイコーは、新モデルを多数打ち出してきました。
2020年にはグランドセイコー生誕60周年、2021年にはSEIKOが140周年を迎えたことで特別モデルがローンチされましたが、実は2022年もいくつかの周年を迎えます。
グランドセイコーの歴史、そして時計業界のこれからを寿ぐような多彩な新作には、同社の時計製造への意気込みをも感じられます。
この記事では、Watches & Wonders Geneve 2022で堂々公開された、グランドセイコー新作モデルをご紹介いたします。
目次
2022年新作①グランドセイコー エボリューション9 コレクション
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「エボリューション9スタイル」は、44GSに端を発する「セイコースタイル」を時代の流れに乗せて進化させた、グランドセイコーが掲げる新たなデザイン文法です。この新たなるグランドセイコー・スタンダードに「瞬時の判読性、直感的に分かる操作性、頼れる堅牢性」を訴求した新作が5モデル同時リリースされました。
なお2022年は44GS誕生55周年ということもあり、2021年12月にも前座として44GS記念モデルがリリース。2022年1月にも、「44GS」55周年記念モデル第二弾として、特別限定品が追加されるに至っています。
こういった流れの中で、44GSが確立した「セイコースタイル」の進化版を出してくるとは、さすが私たちのグランドセイコーです!
※44GSは、1967年にグランドセイコーがローンチした手巻きモデルです。
ちなみに今でこそSBGJ~とかSBGA~といったリファレンスが一般的になっていますが、当時はムーブメントのキャリバーナンバーが各モデルの名称にも用いられていました。そのため44GSもCal.4420系が搭載されていたことに由来します。
44GS自体の製造期間は約2年ほどなのですが、現在にも続く「セイコースタイル」を築き上げたのが、この44GSとなります。
ちなみにセイコースタイルが何かと言うと、デザインに関するセイコー独自の文法であり様式。燦然と輝くウォッチを生み出すために、デザインに関する9つのルールを取り決めており、この独自スタイルによってグランドセイコーは派手さはないのに美しく燦然と輝く外装デザインを獲得しているのです。
そんなセイコースタイルをどのようにグランドセイコーは進化させてきたのか?
それではエボリューション9の新たなるスタイルが実現した、5つの2022年新作モデルを見ていきましょう!
スプリングドライブ GMT「朝霧」SBGE285
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エボリューション9スタイルシリーズからリリースされたスプリングドライブGMTは、ホワイトとブラックの2色です!まず最初にご紹介するホワイトの方は、特別な文字盤にまず目を奪われるのではないでしょうか。
「朝霧」の名は、スプリングドライブを生むグランドセイコーの「信州 時の匠工房」から見える、冬山をヴェールのように覆う「朝霧」から着想を得た、美しい文字盤からつけられました。
雪白にはじまり、白樺や御神渡り、シュカブラなどを生み出してきた冬のホワイトシリーズの中でも、ダイヤモンドポリッシュで一層輝きをまとうインデックスや針と溶け合うような白が特徴です。
厳冬の朝に山々を幾重にも包んで覆い隠す朝霧は、晴れの予兆と言われています。陽光が差せばはかなく消えてしまう朝霧の神秘的な白が、見事に描き出されました。
文字盤の見事さもさることながら、エボリューション9となったことによって、従来のセイコースタイルをいっそう美しく輝かせていることも特筆すべき点です。
先だってローンチされていた白樺 SLGH005/SLGA009(詳細は後述)においてエボリューション9は、セイコースタイル特有の燦然と輝くウォッチであることは前提に、グランドセイコー曰く、日本が古来より大切にしてきた「光と陰によって創出される美」「光を美しく流す造形」を取り入れた新しい様式である、と解説されていました。ちなみに2021年時点では「Series 9」としてこのセイコースタイルが再解釈されましたが、今年さらに「エボリューション 9」としてアップデートを果たしています。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/news/pressrelease/20220330-2
確かにグランドセイコーの時計はエボリューション9でなくとも、光の表情によって美しく輝き、存在感を放つことが魅力の一つとして挙げられます。この輝きは、影があってこそ。
グランドセイコーではこの魅力を活かしつつも、「審美性の進化」「視認性の進化」「装着性の進化」を三本柱に、セイコースタイルをさらに再定義。これに加えてグランドセイコーならではのスポーツウォッチとして「瞬時の判読性、直感的に分かる操作性、頼れる堅牢性」を訴求。既存のセイコースタイルをさらに昇華させた新文法「エボリューション 9」を打ち出しているとのことです。
まだ宣材写真の段階ですが外装を見ると、なるほどアップデートという言葉がしっくりくるものです。
このアップデートは多岐に渡ります。
一例を挙げると、まずは「審美性の進化」。日本の美意識を具現化するべく、丁寧なヘアラインを主体としつつ歪みのない鏡面を連ねた多面ケースによって、「闇の黒」と「光の白」が端的に描かれていると言います。まだ当新作の実機を目にしたことはありません。しかしながら、確かにエボリューション 9の方のケースフォルムを見ると、ヘアライン・鏡面で巧みな稜線(りょうせん)が描かれており、只者ではない風格を感じさせます。
また、「視認性の進化」では、多面カットの針や深い溝が入れられたインデックスによって、いっそうの輝きを放ちつつも視認性の邪魔をしていません。
さらに「装着性の進化」としてグランドセイコーはケースの重心を下げる(リューズが裏蓋側に近い),ラグ幅を広くするといった、腕にフィットする仕様を盛り込むことに成功しました。グランドセイコーの高性能金属ブライトチタンを用いているため、軽量かつ耐久性に富むのも嬉しいところですね。
グランドセイコーでは比較的珍しい、しっかりとしたリューズガードの優美なラインは、エレガンスと堅牢性を両立します。
なお、このエボリューション 9は、ヘリテージラインやスポーツラインなどと同様、今後コレクションとして展開されていくようです。
さら搭載されたムーブメント「9R66」は、2021年に発表された二十四節気シリーズのスプリングドライブGMT、「寒露」と「冬至」に使用されているものです。
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径41mm×48.3mm×厚さ13.9mm |
素材: | ブライトチタン |
文字盤: | ホワイト |
ムーブメント
駆動方式: | スプリングドライブ |
ムーブメント: | Cal.9R66 |
パワーリザーブ: | 約72時間(約3日間) |
機能
防水: | 100m |
定価: | 968,000円(税込)発売予定:2022年6月10日(金) |
備考: | オプションストラップ:舛花色(ますはないろ)・柳茶色(やなぎちゃいろ)・煉瓦色・絹鼠色(きぬねずいろ)・黒・茶・紺クロコダイル / グランドセイコーブティックオンライン先行発売 |
スプリングドライブ GMT SBGE283
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SBGE283は、「朝霧」と同じエボリューション9スタイルにはめ込まれた、新たなGMTです。
ブラックのシンプルな文字盤が、一層エボリューション9スタイルの計算され尽くし、磨き抜かれた輝きを際立たせます。
前述の通りエボリューション9スタイルに登場した新たなGMTには、頼れる堅牢性というコンセプトがあります。そこで採用されたのが、ブライトチタンという新素材です。今回エボリューション 9として発表された5モデルは、全てこのブライトチタン製となっております。ステンレススティールより30%近く軽く、従来のチタンよりも明るい色で、キズも付きにくい優れた素材です。
ケースの重心を低くし、ラグ幅を広げることで大きめのフェイスが手首にしっかりフィットし、軽さも加え安定的な装着感が得られる工夫もされています。
ザラツ研磨とヘアライン仕上げが織りなす、水面のような鏡面と絹地のような柔らかな光のせめぎあいも、セイコースタイルからエボリューション9スタイルに引き継がれる美のひとつ。
ヘアライン仕上げを施す前に、一度ザラツ研磨ですべてを磨き抜くことで、静謐な光の綾は一層艶やかさを増します。
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径41mm×48.3mm×厚さ13.9mm |
素材: | ブライトチタン |
文字盤: | ブラック |
ムーブメント
駆動方式: | スプリングドライブ |
ムーブメント: | Cal.9R66 |
パワーリザーブ: | 約72時間(約3日間) |
機能
防水: | 100m |
定価: | 968,000円(税込)発売予定:2022年6月10日(金) |
備考: | グランドセイコーブティックオンライン先行発売 |
スプリングドライブ クロノグラフGMT クロノグラフ15周年記念限定モデル SBGC249
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/collections/sbgc249
2022年はグランドセイコークロノグラフ誕生から、15年目の節目の年です。
すでにスプリングドライブクロノグラフからは15周年記念の新作「シュカブラ」がローンチされていますが、新たにGMTをコレクションに加えました。
まずは世界限定700本となる、深いブルーの文字盤とベゼル、差し色のオレンジが目覚ましいSBGC249をご紹介します。
搭載ムーブメントは、後述するシュカブラと同じ9R96。
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2007年から続くクロノグラフ×GMTのムーブメントCal.9R86を特別調整した名機となり、スプリングドライブ20周年記念モデル(2019年)などでも搭載されました。
通常の9R86が平均月差±15秒であることに対し、9R96では平均月差±10秒の超高精度を誇ります。
特別調整ムーブメントらしくローターには18Kイエローゴールド製「獅子の紋章」があしらわれており、オーナーはシースルーバックから鑑賞できる仕様となっております。
クロノグラフGMTムーブメントとして名高いCal.9R86を特別調整したムーブメントで、平均月差はなんと±10秒という超高精度クロノグラフGMTです。
記念限定モデルの特徴は、ブルーが美しい文字盤とベゼルですね。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/collections/sbgc249
グランドセイコーでは、グランドセイコーブルーと呼ばれる紺青がブランドカラーになっていますが、SBGC249のブルーはまた違った想いがこめられています。
「時をつかさどる宇宙の瞬き」が、今回の限定モデルに採用された深いブルーのイメージです。
クロノグラフ針の留まることなきスイープ運針もまた、宇宙をも支配する時の流れの可視化。
インダイアルのインデックスが星々なら、オレンジのGMT針は彗星でしょうか。
ブルーのベゼルにもサファイアガラスをはめこみ、ザラツ研磨とヘアライン仕上げの組み合わせとともに、光の加減で彩りも変わります。
スポーティでありながらエレガンス、文字盤いっぱいに針とインデックスを配置しながら、うるささを感じさせない絶妙な配置とデザインの美しいクロノグラフGMTです。
日本での販売数は300本。2022年6月販売の予定です。
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径45.3mm×52.6mm×厚さ15.8mm |
素材: | ブライトチタン |
文字盤: | 宇宙の青 |
ムーブメント
駆動方式: | スプリングドライブ |
ムーブメント: | Cal.9R66 |
パワーリザーブ: | 約72時間(約3日間) |
機能
防水: | 100m |
定価: | 1,430,000円(税込)発売予定:2022年6月10日(金) |
備考: | 世界限定700 本(うち国内300 本) |
スプリングドライブ クロノグラフGMT SBGC251
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/collections/sbgc251
サファイアクリスタルをまとった24時間ベゼルが美しい、スプリングドライブクロノグラフGMTです。
こちらは量産型で、ブラックの文字盤が全体を引き締めるスポーティなイメージとなりました。
文字盤のカラーとともに、限定モデルと異なる点がもうひとつあります。
ムーブメントです。
限定モデルにはスプリングドライブムーブメント Cal.9R96を搭載していましたが、SBGC251はCal.9R86を搭載しています。
2007年からクロノグラフGMTムーブメントとして使用され続けている名機のひとつで、パワーリザーブ約72時間、平均月差±15秒の性能を誇ります。
パワーリザーブインジケーターも文字盤に入っていますが、三つ目のインダイアルと合わせても全くうるささを感じさせません。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/collections/sbgc251
エボリューション9スタイルの見事な具現、ブラックに差し色として使用されているスカイブルーの爽やかさに合わせて特筆したいのがプッシャーです。
SBGCシリーズでは堂々たるプッシャーが特徴のひとつでしたが、Watches & Wonders Geneve 2022発表の2機では、驚くほど上品なサイズとなりました。
同じく2022年ローンチのクロノグラフGMTであるシュカブラと比較しても、そのサイズ感の違いは歴然としています。
プッシャーが控えめになったことで、サファイアガラスをはめ込んだつややかなベゼルが細身ながらも存在感を放っているのも、緻密に計算されたデザインの賜物でしょう。
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径45.3mm×52.6mm×厚さ15.8mm |
素材: | ブライトチタン |
文字盤: | ブラック |
ムーブメント
駆動方式: | スプリングドライブ |
ムーブメント: | Cal.9R86 |
パワーリザーブ: | 約72時間(約3日間) |
機能
防水: | 100m |
定価: | 1,320,000円(税込)発売予定:2022年9月 |
備考: | オプションストラップ:シリコン(ブラック)、クロコダイル黒・こげ茶 |
スプリングドライブ 5 Days Diver’s 200m「黒潮」SLGA015
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/collections/slga015
2022年グランドセイコーの新作、エボリューション9コレクション5機のトリを務めるのは、スプリングドライブ 5 Days Diver’s 200m「黒潮」です。
日本を取り巻く4つの海流のなかでも、豊穣をもたらす黒潮からインスパイアされた波型のブラックパターンを文字盤に採用しました。
ベゼルは視認性を高めるため、ブラック地とインデックスのコントラストをアップしました。
搭載するムーブメントは、グランドセイコー渾身のスプリングドライブ最新世代Cal.9RA5です。
なお、グランドセイコー誕生20周年にあたる2020年、やはり同じくダイバーズモデルで同機を搭載したSLGA001が世間を賑わせたことは、記憶に新しい方も少なくないでしょう。
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この最新世代スプリングドライブの見事さは、洗練された薄型設計にあります。
高効率なセイコーの自動巻き機構マジックレバーを採用していますが、これを中心からオフセットすることで厚みを軽減。またブリッジを削減するなどといった手法で、12mmと上品な薄さのケースに至りました。
さらに、パワーリザーブ延長のためにデュアルインパルス・バレル(香箱)を搭載していることが特徴です。
これは香箱(ゼンマイを収める歯車)を二つセッティングするいう、近年ではブランドがよく採用している手法です。しかしながらグランドセイコーは他社とは一風変わって、大小二つの香箱をセッティング。メインエネルギーの大きい香箱のトルクが下がった時に小さいほうでサポートすることで、限られたスペース内での十分なゼンマイ搭載を実現しているというわけです。
ちなみに新しい9RA5のパワーリザーブは、約5日間!精度・性能ともに申し分のない最新機種です。
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径43.8mm×51.5mm×厚さ13.8mm |
素材: | ブライトチタン |
文字盤: | 黒潮を思わせる波のパターン |
ムーブメント
駆動方式: | スプリングドライブ |
ムーブメント: | Cal.9RA5 |
パワーリザーブ: | 約120時間(約5日間) |
機能
防水: | 200m潜水用防水 |
定価: | 1,320,000円(税込)発売予定:2022年7月 |
2022年新作②グランドセイコー Kodo(鼓動) コンスタントフォース・トゥールビヨン
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/collections/slgt003
Watches & Wonders Geneveグランドセイコー新作第2弾は、グランドセイコーが放つ初のメカニカルコンプリケーションウォッチです。
Kodo(鼓動)と名付けられたメカニカルコンプリケーションは、スケルトンになっており、美しい機構を惜しげもなく私たちに見せてくれます。
Kodo(鼓動)に搭載されたコンプリケーションは、トゥールビヨンとコンスタントフォースです。
トゥールビヨン
希代の天才時計師、ブレゲが発明した超複雑機構のひとつで、ムーブメントの規則性を保つためのシステムです。
ムーブメントの規則性最大の敵は、重力です。 重力は時計の置き方や向きで変化するため、姿勢差による誤差を分散・平均化し、規則性を保つ機構です。
もっとも近年では実用面と言うよりも、文字通り「渦」のような美しさを味わえる機構として、時計好事家らに愛されています。
コンスタントフォース
トルクを一定にするための複雑機構です。
ゼンマイが生み出すトルクは、ゼンマイの残量によって変化し、ゼンマイが少なくなるほどトルクも小さくなってしまいます。
トルクの強弱は腕時計の精度にも関わるため、トルクを一定にするべく主ゼンマイの力を定力ばねという小さなばねに分散して蓄え、一定量ずつ使うための機構が考え出されました。
それがコンスタントフォースです。
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その名のごとく力を一定にして小出しできるコンスタントフォースは、コンパクトで部品数が少ないのに、設計・製造がとても難しいというデメリットのある機構です。
グランドセイコーは、2020年にトゥールビヨンとコンスタントフォースを組み合わせて搭載した、コンセプトモデル「T0(ティー・ゼロ) コンスタントフォース・トゥールビヨン」を発表しました。
コンスタントフォースは設置する位置が非常に大切ですが、同時にとても難しい機構です。
そこで、グランドセイコーでは、トゥールビヨンが乗ったユニット(キャリッジ)とコンスタントフォースを同軸上で一体化させるという、奇想天外な設計を生み出しました。
そして今回、Kodo(鼓動)は世界初のコンスタントフォースとトゥールビヨンを同軸上に一体化させたコンプリケーションモデルとして、堂々リリースされたのです。
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搭載されたコンプリケーションムーブメントは、Cal.9ST1。 細かな歯車に囲まれたトゥールビヨン機構は、コンスタントフォースと一体化しています。
トゥールビヨンの目にも止まらない回転を追いかける、規則正しいコンスタントフォースの回転は、スケルトン文字盤から眺めることができます。
なによりも感じていただきたいのは、Kodo(鼓動)が生み出す「音」です。
コンスタントフォースを搭載したムーブメントとしては、史上最も高い振動数(※グランドセイコー調べ・2022年3月)、1秒間に8回のチチチチチという音。
コンスタントフォースが生み出す規則正しい音と、脱進機の音が重なることでそれは16ビートを奏で、まさに時の「鼓動」となって琴線を揺るがします。
歯車を詰め込んだレトロな鳥かごのようにも見える、デカダンス薫るスケルトン機構に妖しく灯る、石(ルビー)の彩り。
ルビーはコンスタントフォースキャリッジのアームの1本にも施され、秒針の代わりとなっています。
無限の奥行きを感じさせる、歯車のせめぎあいや複雑機構の折り重なりは、ザラツ研磨による鏡面仕上げとヘアライン仕上げを組み合わせて生まれる光と影の芸術です。
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ブリリアントハードチタンとプラチナ950の素材が持つ天然の美しさを最大限に発揮する、スタイリングの妙と研磨の技は、グランドセイコーならではのものでしょう。
一度目で見、音を聴いたら虜にならずにいられない、全てをさらけ出してなお闇のような深淵を持つKodo(鼓動)は、わずか12.9mmの厚みにすべての機構を収めています。
世界限定20本の世にも稀なるコンプリケーションを創り出した時計職人や設計者・デザイナーたちは、信州にも雫石にも属しません。
グランドセイコー第三の工房として生まれ変わった銀座和光のアトリエ銀座に所属し、グランドセイコーの未来を紡ぎ続けます。
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径50.6 mm×43.8 mm×厚さ12.9 mm |
素材: | プラチナ950 / ブリリアントハードチタン |
文字盤: | スケルトン |
ムーブメント
駆動方式: | スプリングドライブ |
ムーブメント: | Cal.9ST1 |
パワーリザーブ: | 約72時間(コンスタントフォース機構の作動約 50時間) |
機能
防水: | 100m |
定価: | 44,000,000円(税込)発売予定:2022年10月21日(金) |
備考: | オプションストラップ舛花色(ますはないろ)・柳茶色(やなぎちゃいろ)・煉瓦色・絹鼠色(きぬねずいろ)・黒・茶・紺クロコダイル |
2022年新作③グランドセイコー エレガンスコレクション SBGW283/SBGW285
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グランドセイコーの順前たる手巻きウォッチが、美しき文字盤を伴ってラインナップに登場しました!どこまでもエレガントな装いに、爽やかな風が吹き抜けていく思いですね。
テーマは「季節の移ろいをダイヤルに宿す」。
グランドセイコーならではの高度な技術力で以て繰り広げられる文字盤意匠の数々は、世界的にも高い評価を獲得していますが、2022年新作でもその実力のほどを垣間見ることができました。
アイスブルーが美しいSBGW283は「季春 (きしゅん)」を、深みのあるグリーンのSBGW285は「杪夏(びょうか)」を表していると言います。
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ちなみに前者は春から夏にかけてを、後者は夏から秋にかけてを表現する用語とのことです。
デイト窓すら持たない薄型手巻きCal.9S64を搭載しているところが、きわめて上品。
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現在、機械式時計のシェアは圧倒的に自動巻きが多くなりますが、ドレッシーな装いを可能にする手巻きにこそ惹かれる時計好事家は少なくないでしょう。
セイコースタイルを存分に感じられる美しい外装や、輝きを放つ力強い針・インデックスも健在です。
定価はいずれも550,000円。
なお、文字盤に合わせたクロコ製ストラップが搭載されていますが、近年グランドセイコーは各種ストラップも同時販売しているため、気分によって付け替えるのも楽しそうですね。
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径37.3mm×厚さ11.7mm |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | ブルー/グリーン |
ムーブメント
駆動方式: | 手巻き |
ムーブメント: | Cal.9S64 |
パワーリザーブ: | 約72時間(約3日間) |
機能
防水: | 日常生活用防水 |
定価: | 550,000円(税込) |
2022年新作④グランドセイコー 44GS 55周年記念 SLGH009 / SLGA013
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja
Watches & Wonders Geneve 2022、開催前にグランドセイコーから独自発表されていた新作モデルも、併せてご紹介いたします!
冒頭でも少し触れていますが2022年、グランドセイコーにとってこの年は「44GS」誕生55周年の節目の年でした。
2021年12月にも前座として44GS記念モデルがリリース。そして2022年1月、「44GS」55周年記念モデル第二弾として、特別限定品が追加されるに至りました。
それが、ダークブルーとダークグレー美しいこちらの二本です。
44GSについては既に解説しておりましたが、セイコースタイルを確立した歴史的名作です。もっともこの44GSは第二精工舎初のグランドセイコーとか、「GS」と「Grand Seiko」のロゴが併記されていたとか、セイコースタイル以外にも何かと語る点も多いものです。
※第二精工舎は東京都江東区亀戸に位置していたセイコー製造部門。1937年設立。現在はセイコーインスツル株式会社。
第二次世界大戦の影響で戦後も第二精工舎は復興途上にあり、戦中に疎開させていた長野県の諏訪精工舎(現在セイコーエプソン)からグランドセイコーが生み出されたという経緯があります。もっとも後年、第二精工舎でも時計事業が再開し、「キングセイコー」を手掛けます。
44GS以降は第二精工舎・諏訪精工舎ともに切磋琢磨しあう関係となり、それぞれが傑出した銘品を製造していきました。
44GS自体の製造期間は約2年ほどなのですが、現在にも続く「セイコースタイル」を築き上げたのが、この44GSとなります。
※1967年発表 グランドセイコー 44GS(画像出典:https://www.seikowatches.com/jp-ja)
44GSに系譜を引くセイコースタイルでは、燦然と輝くウォッチを生み出すために、デザインに関する9つのルールを取り決めています。
このルールは外装やインデックスなど時計の全範囲に及ぶのですが、端的に言うと「光」と「影」を上手に取り込むことで、輝きを放った美を実現しています。
例えば平面を主体に二次曲面でデザインを構成すること。ここでは柔らかい三次曲面は用いないため、シャープさを持ち合わせることとなります。
また、各面にはザラツ研磨で歪みのない鏡面(ポリッシュ)仕上げを施すこと。針・インデックスにはカットを採り入れることなどが挙げられます。
このようなセイコースタイルを実現することで、繰り返しになりますがグランドセイコーは派手さはないのに美しく燦然と輝く外装デザインを獲得しているのです。
では、今なお現役で定義されるセイコースタイル、そしてこの原点となった44GSを寿ぐ記念モデルの実力とは?
①特別素材「エバーブリリアントスチール」
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja
言うまでもなく、セイコースタイルに則った2022年新作SLGH009とSLGA013の外装ですが、特別な素材がケース・ブレスレットに使われています。それは、「エバーブリリアントスチール」です。これは、セイコー独自の高性能スティールです。
近年、高性能スティールを採用するブランドは増えています。例えばロレックスのオイスタースティールやショパールのルーセントスティール等が有名ですね。
耐蝕性や堅牢性に優れたステンレススティールは、腕時計で非常にポピュラーな素材の一つです。一方堅牢とは言え、金属である以上傷つきやすかったり、扱いによっては錆びてしまうことも事実です。そこで高度な技術力やこだわりを持つ各社は独自合金のステンレススティールを採用することで、より堅牢に、そしてより美しい質感をユーザーに提供しているのです。
エバーブリリアントスティールもまた、そんな高性能スティールを代表する一つです。セイコーのオリジナルスティールで、国産初のダイバーズウォッチ誕生55周年にあたる2020年、プロスペックス 復刻デザインで用いられることとなりました。グランドセイコーでの採用は、2022年の今作が初めてとなります。
このエバーブリリアントスティールの耐蝕性は、世界トップレベルとのこと!
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なんでも海洋構造物や化学プラントに使われるような高性能スティールとのことで、一般的な高級時計に使用されるステンレススティールと比較して1.7倍のPREN(Pitting Resistance Equivalent Number:孔食指数。SSの腐食のしづらさを表す)を実現しています。
ただ堅牢なだけでなく、エバーブリリアントスティールは美しく白い輝きを有していることもミソ。さらにここにセイコースタイル的仕上げを施しているのだから、驚嘆を禁じえません。平面が主体となりつつも、鏡面仕上げ・つや消し仕上げのコンビネーションによってエバーブリリアントスティールがいっそう光の輝きを美として落とし込んでいるのでしょう。
多くの場合で高性能スティールは加工や仕上げが難しいものです。セイコースタイルを堅持していることからもわかるように、実用性とエレガンスの両立にかけてはグランドセイコーは頭一つ抜きんでていますね。
そんなエバーブリリアントスティールが採用されたケースサイズは直径40mm×厚さ11.7mm(メカニカルのSLGH009)および直径40mm×厚さ12.1mm(スプリングドライブのSLGA013)。
ちなみにどちらも往年のセイコーを思わせるボックス型風防を搭載しているにもかかわらず、厚さが12mm前後に収まっているのは、後述する新世代ムーブメントで薄型化に成功したからに他なりません。ビジネスユースにぴったりのサイズ感と言えるでしょう。
なお、どちらも10気圧防水という十二分なスペックも備えております。
②セイコー曰く「悠久の時の流れを感じさせるダイヤル」
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何度か言及しているように、近年のグランドセイコー人気を下支えしていると思われるのが「文字盤」のデザインです。
グランドセイコーはTHE NATURE OF TIMEをブランド理念として掲げており、「時の本質は森羅万象とともにある」の精神のもと、日本の自然美を感じさせるような文字盤装飾を豊富にラインナップしています。
レギュラーモデルで有名なのが「雪白」ではないでしょうか。正式名称はヘリテージコレクション SBGA211ですが、独特の型押しパターンが文字盤上に装飾されており、まるで雪の質感!
※SBGA211
事実、SBGA211に搭載されるスプリングドライブムーブメントを製造している信州 時の匠工房から臨める、保高連峰の雪面をイメージしているのだとか。
最近のモデルだと「白樺」「御神渡り(おみわたり)」等も大きな話題となりましたが、自然の美を落とし込んだかのような装飾をグランドセイコーは得意としており、唯一無二の存在感を示します。
文字盤に装飾されるパターンは幾何学的な模様であることが多いものです。しかしながらグランドセイコーのような複雑なテクスチャやパターンを落とし込めるというのは、それだけ高い技術力やデザイン力を有している証拠に他なりません。
55周年記念の二本にも、木の年輪のような型打ちパターンがあしらわれました。実機を見ると、いっそう素晴らしいのでしょうね。
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さらに前述したセイコースタイルが、針やインデックスからも垣間見えます。
深い多面カットを施したインデックスや太く鋭い時分針は、光を受けて輝き、高級機としての風格を思う存分感じられます。
また、複雑なパターンがあしらわれた文字盤は視認性を損ねると言われることもあるのですが、この美しいインデックス・針によって、見やすさという点でも一役買っていますね。
セイコー曰く、この文字盤は「悠久の時の流れを感じさせる」と。
確かに何世代にも渡って受け継がれてきた時計製造の歴史、グランドセイコーの歴史、そしてこれから続いていくであろう腕時計やセイコースタイルの未来を思わせるような、そんな傑出した文字盤となっております。
③新世代ムーブメント「9SA5/9RA2」の美技
44GSの55周年記念モデルでは、二つのグランドセイコー渾身の新世代ムーブメントが搭載されています!グランドセイコーはスイス勢を超える高精度ウォッチを志して誕生し、そして現代に至るまでその精神性は引き継がれています。
そんなグランドセイコーが60周年を迎えた2020年、同社を象徴するハイビートムーブメントに最新機種9SA5がローンチされました。44GSを寿ぐ記念モデルにふさわしく、SLGH009にこの9SA5が堂々、搭載されております。
このムーブメントはグランドセイコーが満を持して発表したと言って過言ではありません。グランドセイコーが誇るハイビート36,000振動/時を維持しつつ、約72時間のロングパワーリザーブを実現した、傑作機であるためです。
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ビートはテンプの振動数を指します。ハイビートほど高精度を叩き出す一方でパーツが摩耗しやすかったり、エネルギー消費が激しくパワーリザーブが短くなったりする傾向にあります。もともとグランドセイコーの9Sハイビート機は独自の製造技術によって堅牢なパーツを使用し、かつ約50時間と十分なパワーリザーブを備えていました。
しかしながら2020年に、さらなるアップデートが図られて登場したのが9SA5というわけです。
グランドセイコー式フリースプラングテンプを採用することで、安定的な高精度を維持しているのも特筆すべき点ですね。
さらに同年、スプリングドライブでも最新世代機種が登場しました。9RA5です。こちらは前述の通りですね。
そして翌2021年、この年はセイコー140周年でしたが、9RA5をリファインした9RA2を発表。44GS記念モデルのSLGA013に搭載されるのが、この9RA2です。
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9RA5および9RA2は、デュアルインパルス・バレル等によって約3日間ものロングパワーリザーブを実現しつつも、設計が見直されることで薄型化を実現した、次世代スプリングドライブとなり、今後グランドセイコーの基幹キャリバーになるであろう傑作機です。
なお、9RA2と9RA5の違いはパワーリザーブインジケーターです。9RA2は裏側にインジケーターが搭載されており、文字盤意匠がより楽しめる仕様となります(もっともスプリングドライブであることの象徴の一つであったパワーリザーブインジケーターを好む方は結構いらっしゃいますし、自分もそのうちの一人です)。
さらに針の取り付け位置を下げることで、いっそうの薄型化が図られています。
SLGH009・SLGA013ともにシースルーバックになっているため、丁寧かつ美しいムーブメントの仕上げが楽しめるのも、時計愛好家の心に刺さりますね。
なお、メカニカルの9SA5は岩手県雫石川のなだからな水面をイメージした「雫石川仕上げ」が、スプリングドライブ9RA2には信州地方で見受けられる霧氷(むひょう)をイメージした「信州霧氷仕上げ」が施されています。
④価格
「44GS」55周年記念モデル、メカニカル SLGH009の国内定価は1,155,000円、スプリングドライブ SLGA013の濃くん歳定価は1,045,000円です。
発売開始は2022年2月24日から。
いずれも世界限定生産550本となり、うち国内の割り当ては200本ずつです。
見事な記念モデルであるがゆえに稀少性の高さもまた随一ですが、エバーブリリアントスティールの質感や文字盤の美しさと併せて、一度実機を拝みたい2020年新作です!
スペック
外装
型番: | SLGH009 / SLGA013 |
ケースサイズ: | 直径40mm×厚さ11.7mm/直径40mm×厚さ12.1mm |
素材: | エバーブリリアントスチール |
文字盤: | ダークブルー/ダークグレー |
ムーブメント
ムーブメント: | 9SA5/9RA2 |
駆動方式: | 自動巻き/スプリングドライブ |
パワーリザーブ: | 約80時間/約120時間(約5日間) |
機能
防水: | 日常生活用強化防水(10気圧) |
予価: | 1,155,000円/1,045,000円(いずれも税込) |
2022年新作⑤グランドセイコー スポーツコレクション 「シュカブラ」クロノグラフ×GMT SBGC247
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冒頭でも述べたように、何かと周年が多い2022年のグランドセイコー。こちらは、同社の初クロノグラフから15周年という節目を祝う、限定モデルです!
グランドセイコーは1960年の創業です。
当時はセイコーの中の上位ブランドであり、国産最高峰の高級時計として、そしてスイスをも凌ぐ高精度時計として、その名を馳せていくこととなりました。
もっともクォーツショック(1969年にセイコーが「アストロン」として世界で初めてクォーツ式腕時計を市販化したことを契機に、高精度かつ大量生産可能なクォーツ式腕時計が機械式時計のシェアを大きく奪うことになった一連の時代)に伴い、1970年代~1980年代の多くの時間、グランドセイコーは眠れる獅子となりました。
しかしながら1988年、同社初の年差クォーツ式腕時計の発表を皮切りに、高級時計市場へと返り咲きます。
1998年には約26年ぶりに高性能機械式時計を復活させ、1999年にはスプリングドライブを生み出していくこととなりました。
そうして2007年、グランドセイコーはブランド初となるクロノグラフモデルを、スプリングドライブコレクションからローンチします。ちなみに上記の画像のRef.SBGC001(同時にブラック文字盤のSBGC003とピンクゴールド製SBGC004も誕生)が初号機となります。
スプリングドライブの他、時分針とともに搭載された単独稼働が可能な24時間針によって、GMTとしての機能も備えているのだからさすがグランドセイコーですね!
当時はグランドセイコーのコレクションとしては珍しくとてもスポーティーで、以降、同社のクロノグラフの定番コードとして親しまれております。
前置きが長くなりましたが、ますます成熟していくグランドセイコーの2022年新作クロノグラフモデルは、初号機と同様にスプリングドライブ機構が採用されることとなりました。
ちなみに前項の記念モデルにも登場していますが、スプリングドライブとはグランドセイコー独自機構です。
機械式時計のようにゼンマイを駆動力としながらも、クォーツ式時計のように水晶振動子(クォーツ)で精度を取ることによって、それぞれの良いとこどりを果たした銘ハイブリッド機となります。簡単に言うと、機械式時計のような力強さと、クォーツ式時計のような正確性を併せ持ちます。
この機構は1999年に生み出されましたが、その構想は1977年に生まれたと言います。グランドセイコーの技術陣は安定的な駆動のために72時間のパワーリザーブを求めましたが、なかなかどうしてこの実現に苦心したようで、構想から約20年の時を経ての製品化となりました。
現在ではグランドセイコーの看板ムーブメントとなり、「どうせ買うならスプリングドライブ!」といった方は少なくありません。
さらにこの2022年新作モデルSBGC247特筆すべきは、文字盤のテクスチャではないでしょうか。
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グランドセイコーは日本の四季をコンセプトに、近年多種多彩な文字盤バリエーションを世に輩出しています。幾何学的な文字盤装飾の多い海外ブランドとは一線を画した、繊細かつ独特のテクスチャです。
美しい文字盤は現在のグランドセイコー人気の一つの背景となっていますが、このような売り出しができるのも類まれな製造技術を同社が有するからに他なりませんね。
なお、テクスチャのある文字盤は、一般的には視認性を損ねると言われています。
しかしながらグランドセイコーは力強い針や、多角的にカッティングを施した鮮烈なインデックスによって、エレガンスと視認性を両立しています(後述する、グランドセイコーの美への哲学ともかかわってきます)。
そしてSBGC247の文字盤では、グランドセイコーの二大工房の一つ「信州 時の匠工房」から臨める、シュカブラを再現しているとのこと!
※グランドセイコーは、代表的な工房として岩手の雫石高級時計工房と、信州 時の匠工房の二つを有しております。長野県塩尻市に位置する信州 時の匠工房では、高精度クォーツ「9Fキャリバー」とともに、スプリングドライブを製造しています。
シュカブラは登山用語で、雪面にできる波目模様を指します。雪紋や風雪紋などとも称されます。強い風が吹くことで雪面が削り取られ、残った硬い層がこのような模様を現わしているとのこと。
信州 時の匠工房からは北アルプスの山肌が望めますが、冬から春先にかけて作られるこのシュカブラを文字盤デザインに落とし込みました。独特なテクスチャは美しく、それでいてザラツ研磨された針・インデックスが備わっているため、優れた視認性であることも垣間見えます。
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繰り返しになりますが、昨今のグランドセイコーの文字盤装飾には驚かされるばかりです。
なお、SBGCシリーズの基幹モデルは「赤」が差し色として使われることが多いものですが、各種針や7時位置のパワーリザーブインジケーター等に「青」を用いることで、いっそう雪山の静謐な印象が強くなります。
搭載するムーブメントはCal.9R96。
さらにSBGCコレクションはボリューミーなケース・プッシャーが特徴の一つですが、今作ではブライトチタン(セイコーが腕時計のために開発したチタン)を素材としているため、126gと比較的軽量なことも嬉しいですね(SSモデルだと180g前後)。
国内定価は税込1,276,000円、世界限定700本生産。うち、国内の割り当ては300本のようです。
発売は2022年2月18日(金)~が予定されています。
スペック
外装
型番: | SBGC247 |
ケースサイズ: | 直径43.5mm×厚さ16.1mm |
素材: | ブライトチタン |
文字盤: | シュカブラ |
ムーブメント
ムーブメント: | 9R96 |
駆動方式: | スプリングドライブ |
パワーリザーブ: | 最大72時間 |
機能
防水: | 日常生活用強化防水(10気圧) |
予価: | 1,276,000円(税込) |
2022年新作⑥グランドセイコー スポーツコレクション 「シュカブラ」GMT SBGE275
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もう一本、「シュカブラ」の特別モデルが発表されています。それは、グランドセイコーGMT 20周年記念を祝して製造された、こちらの一本です。
グランドセイコー初のGMTモデルはメカニカル(機械式時計)となり、Cal.9S56が搭載されていました。
今でこそ36000ハイビートメカニカルムーブメントCal.9S86搭載モデルや年差クォーツCal.9F86搭載モデルなど、グランドセイコーのGMTは多岐に渡ります。しかしながらその礎が作られたのは、2002年のこの9S56からと言って良いでしょう。
なお、20周年記念モデルでは、メカニカルではなくスプリングドライブ機構が採用されました。また、外装もよりスポーティーにアップデートされることとなります。
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この外装は、2020年から販売されているSBGJ237にお馴染みですね。当店でも、発売から間もないにもかかわらず、グランドセイコー人気ランキングを取ると必ず上位に食い込んでくるモデルです。
20気圧防水の堅牢なステンレススティール製ケースは直径44mmというダイナミックなサイズ感!加えてブルー・ホワイトのツートンで仕上げられたベゼルはサファイアクリスタルでカバーリングされており、実機を手に取るとデザインのみならず独特の質感にも魅了されます。
もっともSBGJ237はメカニカルムーブメントでしたが、2022年新作モデルのこちらSBGE275はスプリングドライブ。そのためシュカブラ文字盤上には8~9時位置にパワーリザーブインジケーターが搭載され、前者とはまた違った印象となっていますね。
また、インナーベゼルにもブルー・ホワイトのツートンサークルがあしらわれており、デザインとしての妙も感じられます。
ちなみにベゼル・針・インデックスには夜光塗料がたっぷりと施されているため、暗闇での視認性にも優れていますね。
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ムーブメントはやはり特別調整されたCal.9R16を搭載。ベースとなったCal.9R66が平均月差±15秒であることに対し、平均月差±10秒にまで突き詰められました。
やはりシースルーバックから18Kイエローゴールド製獅子の紋章があしらわれたローターを臨むことができるでしょう。
こちらは国内定価が税込847,000円、世界限定1,500本生産。うち国内では500本が販売されます。
2022年3月11日(金)から発売が予定されています。早く実機を手にしてみたいですね!
スペック
外装
型番: | SBGE275 |
ケースサイズ: | 直径44.0mm×厚さ14.9mm |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | シュカブラ |
ムーブメント
ムーブメント: | 9R16 |
駆動方式: | スプリングドライブ |
パワーリザーブ: | 最大72時間 |
機能
防水: | 日常生活用強化防水(20気圧) |
予価: | 847,000円(税込) |
2022年新作⑦グランドセイコー エボリューション9 「白樺」 SLGA009
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次にご紹介するモデルは、周年モデルや限定モデルではありません。しかしながら、レギュラーモデルであることが特別な一本。そう表現することができるでしょう。
加えて、この文字盤に見覚えのある方は少なくないでしょう。そう、2021年に発表されたSLGH005です。
2021年発表モデルでも、「白樺」の愛称で親しまれました。
このSLGH005は、2020年に発表された最新世代のメカニカルムーブメントCal.9SA5を搭載させていたことが大きな特徴です。Cal.9SA5はグランドセイコーの象徴でもあるハイビート36,000振動/時を実現しつつも、約80時間のロングパワーリザーブ化を成功させた、同社渾身の名機となっております。
※一般的にハイビートムーブメントはエネルギー消費も大きいためパワーリザーブは短くなる傾向にある。ビートとはテンプの振動数で、速ければ速いほど高精度を取りやすい。
また、グランドセイコーの高級機械式時計を生産している特別な工房「雫石高級時計工房(グランドセイコースタジオ)」が位置する岩手県雫石市の、近隣の白樺林を文字盤に落とし込んでいることも特筆すべき点です。
さらに「シリーズ9」と呼ばれる、新たなデザイン文法を伴ったことでも大きな話題を集めました。
すなわちSLGH005とは、グランドセイコーの伝統的なスピリットを踏襲しながらも最新鋭という、傑出したメカニカルウォッチであったことを意味します。
そして2022年に発表された「白樺」は、そのスプリングドライブヴァージョンでした。もちろん、最新世代機を伴って。
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しかしながら、この白樺を模したテクスチャ。2021年発表のSLGH005とは若干異なるようです。
なぜなら新作SLGA009は、「信州 時の匠工房」から臨める白樺林がモチーフになっているのです。
※こちらが、昨年発表のSLGH005
前述の通りグランドセイコーは二大製造拠点を有します。
一方が雫石高級時計工房。そしてもう一方がシュカブラモデルでもご紹介した、信州 時の匠工房です。そして信州 時の匠工房では、9Fクォーツとスプリングドライブを製造しています。
つまり、2022年新作の白樺は、スプリングドライブが生み出される地の原風景そのものである、と。
恐らくどちらの白樺も同じくグランドセイコーの高度なプレス技術によって製造されています。
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プレスで模様を型打ちし、切削した後丁寧にメッキ処理・塗装を行っているため、繊細かつ美しい装飾をお楽しみ頂けます。ちなみにこの銀白色は塗装だけではなく、銀めっきを用いているため、鮮烈な凹凸を可能としています。仕上げの分厚いクリアラッカーも、この文字盤が経年に強く、末永い美しさを保つことを示唆しています。
前述の通り、もはやグランドセイコーのアイデンティティと言っても良い優れた文字盤は、日本の自然美をも時計の美しさとして落とし込んでいると言えますね。
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また文字盤のみならず、グランドセイコーは昔からその外装の出来栄えで、きわめて高い評価を獲得してきた歴史があります。
グランドセイコーについて調べていると、しばしば「ザラツ研磨」という用語に行き当たりませんか?
このザラツ研磨とは表面研磨の工法の一つです。ザラツ研磨は今は無いスイス工作機械メーカーに由来する用語で、これを行った時計は歪みのない鏡面を有することとなります。
この歪みない鏡面というのは、実は安価なプロダクトには見られないものです。なぜなら高度な工作技術を要するため。実際ザラツ研磨も、熟達した研磨職人によって生み出される代物です。さらに丁寧なヘアライン(つや消し)仕上げとのコンビネーションによって、高級機らしい立体感を獲得するに至ります。
ザラツ研磨を量産機に施すことは、グランドセイコーの外装へのこだわりと高度な職人集団としての矜持を象徴する一つのトピックであると言えます。
こういったザラツ研磨に代表されるグランドセイコーの外装デザインの文法は、同社によって「セイコースタイル」と名付けられています。
セイコースタイルは「燦然と輝くウォッチ」を志向して採用される数々のデザインに関するルールで、1967年に発表された二代目グランドセイコー「44GS」から継承されています。
そして2021年発表の白樺では、このセイコースタイルを正統進化させた「Series 9」が外装のコンセプトとして発表されました。
さらに2022年、当新作によって、「エボリューション 9」としてアップデートを果たしています。冒頭でもご紹介しましたね。
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燦然と輝くウォッチであることは前提に、グランドセイコー曰く、日本が古来より大切にしてきた「光と陰によって創出される美」「光を美しく流す造形」を取り入れた新しい様式である、と。
新たに打ち出されたデザイン文法・ルールによって、グランドセイコーの名作はさらなる実用性を兼ね備えたと言えるでしょう。
なお、白樺版のエボリューション9は、薄型化している点にも着目しなくてはなりません。なぜならグランドセイコーはかつて、分厚いケースが比較的多いものでした。「実用時計の最高峰」「最高の普通」といった精神性のもと、堅牢性や安定性を重要視してきたためでしょう。しかしながら当新作のSLGA009のケースサイズは直径40mm×厚さ11.8mm(ちなみにSLGH005の方も同程度)。10気圧防水ある腕時計としては、非常に洗練された薄さですよね。
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そしてオオトリとして言及しなくてはならないのが、次世代スプリングドライブ 9RA2についてです。繰り返しになりますが、本当に傑出した機械なんです。
スプリングドライブは1999年に誕生した、と前述しました。しかしながらその構想自体は1970年代に遡ります。
このスプリングドライブ構想の誕生から数えると、間もなく半世紀にあたる2020年、約120時間(約5日間!)もの超ロングパワーリザーブを獲得した、9RA5がローンチされるに至りました(ちなみに2016年に手巻きスプリングドライブで8日間もの超ロングパワーリザーブ搭載モデルが生み出されましたが、こちらはマイクロアーティスト工房によるもので量産品ではありません)。
ゼンマイを収める香箱(バレル)を大小二つ備えることで長時間駆動を可能にした「デュアルサイズバレル」に、このロングパワーリザーブの秘訣があります。
ツインバレルは近年採用するブランドは結構ありますが、グランドセイコーは「大小二つ」というところがミソ。メイン駆動を大きい方で担い、こちらのトルクが下がった際に小さいバレルがその役割を担うといった仕組みとなり、すなわち限られたスペースの中で高効率なエネルギー供給が行える、というわけです。
ゼンマイが増えるとケースが大きくなりがちですが、「オフセットマジックレバー」と称される、中心からオフセットされたローター巻き上げ方式によって薄型化も両立されたことは前述の通りです。もちろん従来の高精度はそのままに、堅牢性も高まっているというのだからグランドセイコーの進化のほどには舌を巻く思いですね。ちなみに輪列を支えるブリッジが通常の3枚から一枚岩となり、薄型化・さらなる堅牢性の向上はもちろん、伝達効率のアップにも一役買っております。
そして9RA5と設計を変えず、スプリングドライブのアイデンティティでもあったパワーリザーブインジケーターを裏蓋側に持ってきたのが今作に搭載される9RA2となります。これによって白樺のような、文字盤に大胆なテクスチャを施す仕様が、いっそうの輝きを放つこととなりましたね。
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ただしこの9RA5および9RA2は2021年時点では、まだ限定生産品にのみ搭載されていました。2022年新作SLGA009「白樺」によって、レギュラー化を果たしたことを示唆しています。
なお、美しい白樺林と遜色のないようにか、シースルーバックから臨めるこちらの9RA2にも、情緒あふれる仕上げが施されています。
これはわが国の初冬に見られる、霧氷の木々やその隙間から覗く星空をイメージしているとのことです。確かに丁寧な梨地と、ダイヤカットが施されてシャープにきらめくパーツは、静謐な冬の夜をイメージさせますね。
2022年新作グランドセイコーSLGA009 価格
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グランドセイコー2022年新作 SLGA009の国内定価は税込1,045,000円となっております。
グランドセイコーの中では高価格帯となりますが、スプリングドライブがハイエンドラインとなること。またメカニカル白樺 SLGH005の方も1,045,000円であることを鑑みると、高すぎるといったことはないでしょう。
まだ2022年新作の方の実機を手にしてはおりませんが、SLGA009の完成度の高さを鑑みるに、新作もお値段以上であることが予想できます。
また昨今のグランドセイコーでは別売りストラップも推奨されており、ストラップ・Dバックルともに別途購入する必要があるものの、色々な顔立ちがさらに楽しめそうですね。
早く実機を手にしてみたい限りです!
スペック
外装
型番: | SLGA009 |
ケースサイズ: | 直径40mm×厚さ11.8mm |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | 白樺 |
ムーブメント
ムーブメント: | 9RA2 |
駆動方式: | スプリングドライブ |
パワーリザーブ: | 最大120時間(約5日間) |
機能
防水: | 日常生活用強化防水(10気圧) |
予価: | 1,045,000円(税込) |
2022年新作⑧グランドセイコー 44GS 55周年記念 SBGJ255
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厳密には2021年12月に発表され、既に2022年1月より発売スタートしていますが、同じく特別な周年モデルがリリースされておりますので併せてご紹介致します。
それは、「44GS」55周年記念モデルです!冒頭でもご紹介していますね。
もっともどの55周年モデルでも、オリジナルの44GSが再現されたわけではありません。
こちらのSBJG255は、2014年、44GSとセイコースタイルの名を広めた、SBGJ005から範を取っています。
※2014年に発表されたSBGJ005
SBGJ005は同年ローンチされたメカニカルハイビート36000 GMT搭載Cal.9S86を伴って発売された、600本限定生産モデルです。
ちなみにGMT20周年についてご紹介致しましたが、2002年当時はまだ28,800振動/時でした(十分ハイビートですが)。
このハイビートムーブメントCal.9S86の高精度の凄まじさもさることながら、44GSから続くセイコースタイルの基本概念を踏襲した外装デザインでも、SBGJ005は高い評価を獲得しました。なお、時計界のアカデミー賞としても名高ジュネーブ時計グランプリで小さな針(プティット・エギュィーユ)部門賞を獲得しています。
ただし、「復刻」だけで終わらないのがグランドセイコー。
2022年新作モデルSBGJ255では、ブライトチタンが採用されているのです。
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ブライトチタンも既出ですが、セイコーが独自に開発した合金チタンです。軽量かつ硬度が高い一方で加工性に富んでおり、現在ではグランドセイコーの定番素材の一つとなってきました。
チタンは一般的には仕上げが難しいとされています。
しかしながらセイコースタイルとして欠かせない「歪みのない美しさ」には仕上げは不可欠。SBGJ255だけの話ではありませんが、しっかりと美しくグランドセイコーらしい研磨が施されます。また、チタンはくすんだ色味を持つことも多いですが、グランドセイコーのブライトチタンはメタル特有の美しさを楽しめるのも嬉しいところですね。
文字盤にはホワイトカラーが採用されており、よりベーシックな印象です。
とは言え丁寧な筋目仕上げやセイコースタイルらしい針・インデックスによって、地味な印象は一切ありません。ブルースティール針も美しくかつ爽やかですね。
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ムーブメントは2014年モデルと同様に、36,000振動/時のハイビートメカニカルムーブメントCal.9S86を搭載しています。この日差+5秒~-3秒という高精度ムーブメントは、約55時間のパワーリザーブを備えており、実用面にも非常に優れています。
なお、2014年発表モデルと同様、陽極酸化処理によってゴールドカラーに輝いたローターを持つことも特筆すべき点です。
国内定価は税込946,000円、世界限定1,500本生産。うち国内では500本が販売されています。
44GSという特別なモデル、そして特別なスタイルを祝うのに、大変ふさわしい一本となっております。
スペック
外装
型番: | SBGJ255 |
ケースサイズ: | 直径40mm×厚さ14mm |
素材: | ブライトチタン |
文字盤: | ホワイト |
ムーブメント
ムーブメント: | 9S86 |
駆動方式: | 自動巻き |
パワーリザーブ: | 最大55時間 |
機能
防水: | 日常生活用防水(10気圧) |
予価: | 946,000 円(税込) |
まとめ
グランドセイコーの多彩な2022年新作モデルについてご紹介いたしました!
コンスタントフォース・トゥールビヨンの発売や次世代スプリングドライブ等、何から何まで驚かされる顔触れでしたね。
今後のグランドセイコーの動向に要注目です!
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年