腕時計のこだわりポイントの1つでもあるベルト。このベルトには主に2種類のタイプがあります。
1つは「革製」の革ベルト、もう1つは「金属製」のブレスレットです。
革ベルトはその名の通り革で作られてベルトで、シックな印象を与えます。対して金属製ブレスレットは防水性や堅牢性に優れているのが特徴です。
革と金属では色や質感がまるで違い、どちらを選ぶかによって時計の印象は大きく変化します。
そこで今回は「革ベルト」と「金属ベルト」の種類やメリット・デメリットを解説致します。
時計を購入する際の参考になれば幸いです。
目次
金属ベルトの腕時計を選ぶメリット・デメリット
金属ベルトは「コマ」と呼ばれる金属板を繋げて構成されるブレスレットです。コマの数により、装着感に大きな違いがあります。
一般的にコマ数が多いほど柔らかい装着感になり、コマ数が少なければガッチリとした装着感になります。
まず金属ベルトの特性と種類を知ろう
金属ベルトの主な特性は以下の通りです。
- ビジネスで使いやすく、シーンを選ばず使うことができる。
- 汗や水、サビに強く、劣化しにくい
- 耐久性が高く、衝撃を与えても破損しにくい
金属ベルトはなんといっても堅牢性や防水性といった性能の高さが魅力的です。素材によって異なる特徴を持ち合わせますが、どれも非常に使いやすい設計となっています。
なお、ブレスレットの種類によってデザインや特徴が異なり、それに合わせて装着感にも大きな違いがあります。
■単連タイプ
単連タイプのブレスレットはシンプルな見た目が魅力の古典的なデザインとなっています。
バネ棒やネジなどを用いてコマ同士を繋げるのが一般的です。
特徴的なこのデザインは「オメガ コンステレーション」で主に採用されています。
■3連タイプ
ロレックス、オメガ、セイコー、タグホイヤーといったほとんどの時計メーカーで採用されている金属ブレスがこの3連タイプ。
金属ブレスしては一番オーソドックスなタイプです。
横3列になったコマを縦に繋ぎ合わせたブレスレットで、高い堅牢性を誇ることが特徴。コマ外しも容易なため、扱いやすいベルトでもあります。
■5連タイプ
金属ブレスレットには横5列になったコマを縦に繋ぎ合わせた5連タイプも存在します。
3連タイプに比べ、腕に対して滑らかなラインを描くのが5連タイプの特徴で、心地よい装着感が魅力です。
こちらもロレックスやオメガ、フランクミュラー、ブライトリングなど多くのメーカーで採用されています。
■7連タイプ
7連タイプのベルトは5連タイプよりも更にフィット感が増した、着け心地に優れたベルトです。
通気性が良いことも特徴で、夏場の使用に向いているベルトタイプともいえます。
ブライトリング ナビタイマーやオメガ デ・ヴィルなどに採用されることが多いです。
■9連タイプ
フランクミュラーの豊富なコレクションの中でも、高い人気を誇るレクタンギュラーケースのロングアイランド。
このモデルには非常に細かい9連タイプのブレスレットが採用されています。
丸みを帯びたケースシェイプと装着感の優れた9連タイプのブレスレットの組み合わせは、手首のカーブに沿う「抜群のフィット感」を生み出しています。
■ミラネーゼ
長さ調整が簡単に行える金属ブレスとして人気があるミラネーゼ。金属の粒をメッシュ状に編み込んで作られた1950年代に流行したスタイルです。
薄く滑らかに変形するので、革ベルトに近いフィット感が得られます。
主に「ユンハンス マックスビル」や「ブライトリング スーパーオーシャン」などに採用されています。
ここまで金属ベルトの形状の種類を解説致しましたが、素材についても軽く触れます。
金属ベルトの素材として最も多く使われているのは「ステンレススティール」です。
ステンレススティールは鉄やクロム、ニッケルといった金属や元素で構成されおり、「錆びない」という特徴をもちます。
用途やコスト、またはデザインによって無数のステンレス素材が使われており、「SUS316L」と呼ばれるステンレス素材が最も多く高級時計に使われています。
また、ステンレススティールが最もメジャーな金属ベルトの素材として知られていますが、高級時計はさらにチタン・ゴールド系・プラチナ・メーカー独自素材・航空素材といった多種多様の素材が使われます。
特にチタンは耐アレルギー性能が高く、価格も手頃であることから近年人気を集めています。
時計を選ぶ際、多くの方は見た目で購入モデルを決定されると思いますが、ベルトの形状だけでなく素材もぜひ時計選びのポイントに加えてみてください。
金属ベルトのメリット
金属ベルトのメリットはなんといっても「耐久性」です。他ベルトに比べ、衝撃などで壊れにくいため、数十年といった長い単位で使用することができます。
水や汗にも強いため、水仕事の方や営業の方など、運動量の多い方にもおすすめです。
また、金属ベルトはビジネスシーンやフォーマルシーンなど、シーンを選ばずに着用できるのが大きなポイントです。
他のベルトはカラーや素材によって着用シーンが限定されますが、金属ベルトであれば一本だけで幅広く活躍してくれることでしょう。
金属ベルトのメリットはまだまだあります。
例えば、選べるモデルの幅が広いこと。
一昔前は時計=革ベルトというイメージがあった時代もありましたが、現代はスポーツウォッチが人気を集めているため、金属ベルトを装備したモデルが非常に多いです。
どのモデルを買っていいか分からなくなるほど選択肢に溢れています。
また、金属ベルトは季節問わず使用できます。
革ベルトは汗を吸ってしまう性質から夏に着用するのは避けるべきですが、金属ベルトであれば夏であっても安心して身につけることが可能です。
さらにはピンバックル(尾錠)よりも着脱がしやすく、日々のお手入れも比較的容易であることも金属ベルトの魅力だといえるでしょう。
金属ベルトのデメリット
デメリットとしては金属であるが故の「重さ」。革ベルトと比べてしまうとどうしても重量があるため、常に装着していると疲れるという方も多く見受けられます。
ただ、近年は重量の軽い「チタン」素材の時計やベルトも増えているため、どうしても重さが気になる方はチタン素材で作られた時計を選ぶことをオススメします。
もう一つのデメリットは金属アレルギー。
当たり前のことではありますが、金属アレルギーをもっている方は金属ベルトのモデルは装着することができません。
もっとも、こちらもチタン素材のものを選ぶことで解決できる場合があります。
また、金属ベルトは経年劣化により、ブレスレットに伸びが生じてしまうことがあります。伸びてしまった金属ベルトは正常のブレスよりも曲がりやすく、酷くなってしまった場合は修理が必要です。
写真の状態まで伸びてしまうのは稀ですが、状態によっては交換が必要になる場合もあります。
なお、ステンレススティールであれ、チタンであれ、使用を続けることでスレやキズが生じてしまうことは避けられません。
汚れやキズが深くなりすぎてしまった場合、修理やメンテナンスが必要です。
革ベルトの腕時計を選ぶメリット・デメリット
牛革やワニ革といった「天然皮革」によって作られる革ベルト。金属ブレスレットと同じく、時計ベルトの定番中の定番です。
革ベルトの魅力はなんといっても豊富なラインナップにあります。
革の素材だけでも、牛革、ワニ革など様々な素材があり、中には珍しい革から作られて高価な革ベルトも存在します。
カラーリングも豊富なことから、自分好みの個性を表現できることもポイントです。
まず革ベルトの特性と種類を知ろう
革ベルトはデザイン性に優れるベルトです。
金属ブレスレットに比べ価格が安く、革ベルトを交換して楽しめることが最大の魅力です。
カラーバリエーションだけでなく素材も多種多様なラインナップがあり、シーンによって時計をドレスチェンジさせることができます。
時計のファッション性を大きく向上させることができるので、お洒落好きな方に好まれるベルトだといえるでしょう。
■クロコダイル
腕時計の革ストラップの中では最高品質の位置づけであるクロコダイルレザー。クロコダイルレザーでしか味わえないウロコ模様は高級感に溢れます。また、使用する部位によって模様が異なり、「腹部は四角」「脇腹は丸みの帯びた見た目」をしています。
高級腕時計の革ベルトは大半がクロコダイルレザーが使われています。時計を購入する際、ベルト素材の欄に目立った記載がなく”レザーベルト”と書かれているだけの場合は、クロコダイルレザーが使われている事が多いです。
■コードバン
「革の王様」とも称される馬のお尻の革「コードバン」を使用した革ベルト。繊維が細かい為傷がつきにくく、長く使い込むほどに独特の風合いを楽しめます。クラシックな時計・アンティークウォッチなどにオススメの素材です。
■カーフ
カーフレザーとは生後6ヶ月以内の仔牛の革のこと。カーフは成牛革に比べ非常にキメが滑らかで美しく、キズも少ないのが特徴です。クロコダイルよりも控えめで上品な存在感はカジュアルシーンにピッタリ合います。
■シャーク
サメの皮です。少し凹凸があるのが特徴で、耐水性に優れています。
■オーストリッチ
ダチョウの革です。クイルマークと呼ばれる毛穴の凹凸が特徴で、耐久性が高いです。
■リザード
トカゲの革です。艶やかな発色で、小さく細かな丸い斑が特徴です。
■ピッグスキン
豚の革です。若干の凹凸があります。柔軟性を持ち耐久性が高い革です。
■バッファロー
バッファローの革です。カーフに似ていますが、表面にシボ(皺)があり、柔らかいのが特徴です。
■ガルーシャ
エイの革です。細かく硬いキャビア状の凹凸が特徴で、表面が非常に硬いです。そのまま凹凸を活かしたタイプと、凹凸をやすりで削ったタイプの2種類があります。
ここに挙げた以外にもナイロン・ラバー(ゴム)など様々な素材で展開されています。
革ベルトのメリット
革ベルトは素材や色のバリエーションがとても豊富です。ビジネス用としてもプライベート用としても幅広い使い分けができることは、革ベルトならでは魅力ではないでしょうか。
また、革ベルトは天然素材の革を使用していることから「軽い」ことも大きなメリットです。金属ベルトに比べフィット感にも優れ、疲れにくいベルトとされています。
金属アレルギーリスクが低いこともポイントで、誰でも使いやすい素材であることも見逃せません。
なお、最近はベルトを簡単に取り替えられる「インターチェンジャブルストラップ」を搭載した時計の人気が高まっています。
これまでベルトを交換するためには特別な工具が必要でしたが、このシステムにより、誰でも簡単にベルトの交換が可能となりました。
気軽にファッションと時計のコーディネートを楽しむことができるため、男性だけでなく女性からの支持も厚いです。
革製品はどれも大人な魅力を演出することができるので、時計に高級感を持たせたい方にうってつけのベルトだと思います。
革ベルトのデメリット
革ベルトのデメリットは定期的なベルト交換が必要になることです。使用頻度によって劣化の程度は異なりますが、基本的には数年単位のスパンで交換が必要になります。
また、革ベルトは手入れに関しても手間がかかります。
汚れや腐食に強い金属ベルトに対し、革ベルトはこまめに手入れをしないとすぐに傷んでしまいます。
手入れを怠った革ベルトはひび割れや汚れはもちろん、強い臭いまで発生してしまうことになるので、扱いには注意が必要です。
しかし、その手間も含めた繊細さも革ベルトの魅力!毎日のケアが苦にならない人には是非革ベルトの時計を手に取ってほしいです。
なお、革ベルトは「革」という性質上、水に弱いという弱点もあります。
雨の日は勿論のこと、汗をかく夏場や運動時の使用も控えた方が無難です。
何本も揃えてコーディネートを楽しめることは革ベルトの魅力ですが、耐久性に関してはあまり期待できません。
革ベルトと金属ベルトを実機で比較
左:ブレゲ アエロナバル 3800ST/92/SW9 [金属ベルト] 右:ブレゲ アエロナバル 3800ST/92/SW9 [革ベルト]
革ベルトと金属ベルトの両方がラインナップされているブレゲのアエロナバル。
両方のベルトタイプがラインナップされている時計は数多く存在しますが、どちらにも素晴らしくピッタリ合う時計はアエロナバルならではの特徴といえます。
今回はこのアエロナバルを例に、革ベルトと金属ベルトの印象の違いを比較してみましょう。
金属ベルトのアエロナバル
金属ベルトのアエロナバルは、ケースとブレスレットのバランスがとても整っているのが特徴です。ドーム型にデザインされたクラッシックな風防はベゼルの曲線と見事に一体化しており、その美しい曲線はブレスレット部分まで繋がっています。
金属ベルトを取り付けたアエロナバルはミリタリーウォッチでありながら、人を魅了する「流線美」を表現します。
ブレゲらしいクラシックなデザインと高い視認性、そして上品なディテールを備えたこのモデルはオン・オフを問わず、オールマイティーに活躍してくれることでしょう。
革ベルトのアエロナバル
革ベルトを取り付けたアエロナバルは金属ベルトを取り付けたアエロナバルにはない魅力があります。その特徴的な魅力は「ミリタリー調」な美しさ。「ミリタリー調」と「上品さ」を美しく表現したのが革ベルトのアエロナバルです。
海軍航空隊という意味をもつ”アエロナバル”はフランス海軍航空部隊のために1950年代に設計された「タイプXX」がルーツの軍用時計。
金属ベルトではなく革ベルトを装着したアエロナバルは、このモデル本来の特徴である「ミリタリー調」の魅力を強く感じることができるようになります。
革ベルトを装着することでミリタリー調の渋く、落ち着いた雰囲気に変貌を遂げます。
さらにはブレゲ特有の美しいコインエッジ仕上げが際立つこともポイント。そのコインエッジの終わりから美しく流れるラグはカーフレザー素材を使用した革バンドへと繋がっていきます。
クロコダイルレザーではなく、カーフレザー使用されていることも「ミリタリー調」を感じることの出来る要因。革ベルトは素材や色によって大きく印象を変えるため、気分によって時計をドレスチェンジできるという特徴があります。
また、アエロナバルの純正ベルトはブラウン・ダークブラウン・ネイビー・ブラックなど複数の色がラインナップされているため、好きなカラーに変更するのもオススメです。
まとめ
時計は素材やカラーしだいでイメージがガラリと変わるため、自分好みにコーディネートする楽しみがあります。耐久性のある金属ベルトを選ぶか、それとも個性を演出しやすい革ベルトを選ぶかは「時計選び」の大きなポイントです。
近年では金属ベルト・革ベルトの他にラバー素材、ナイロン素材が使用されたベルトも増えてきており、ますます選べる素材の幅は広がっています。
基本的に時計店では試着することも可能ですので、「重さ」「装着感」「雰囲気」などをチェックし、是非自分のお気に入りのベルトを探してみてください。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年