みんな大好きオメガ。アポロ計画とともに月面着陸を果たしたスピードマスターや映画『007』でもおなじみのダイバーズウォッチ・シーマスター。あるいは高精度の象徴でもあるコンステレーションにオメガきってのドレッシーモデル・コンステレーションなど、数々の有名モデルを抱えていますね。
さらにその中でもデザインや機能にバリエーションがあり、どれを購入しようか迷ってしまう、なんてお悩みを聞くこともあります。
そんな銘品の多いオメガウォッチの中でも、特に人気を集める一本とはどのモデルなのでしょうか。
この記事では、東京銀座にある腕時計専門店GINZA RASINの売上データを基に、オメガの中で一番人気が高かったモデルをご紹介します。
目次
オメガの中で一番人気があるモデル スピードマスター プロフェッショナル 310.30.42.50.01.001
売上ナンバーワンのオメガ。
それは、マスタークロノメーター化を果たした2021年発表スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル 「Ref.310.30.42.50.01.001」です!
スピードマスター プロフェッショナル 310.30.42.50.01.001
ケースサイズ:直径42mm
駆動方式:手巻き
ムーブメント:Cal.3861(マスタークロノメーター)
パワーリザーブ:約50時間
防水性:50m
定価:880,000円
シーマスターと並んでオメガを代表するコレクションがスピードマスターです。
1957年に登場し、シーマスター同様に長い歴史の中で多彩なバリエーション展開を行ってきた一大コレクションですが、最もアイコニックであり伝説的なモデルと言えば、スピードマスター プロフェッショナルではないでしょうか。
「ムーンウォッチ」の称号を持つ当モデルですが、スピードマスターの名の通り、もともとはモータースポーツを視野に入れた腕時計であったことがわかります。事実、1957年の発売当初から、スピードマスターはパワフルなエンジンの下でも信頼性を維持する耐衝撃性や優れた視認性が高い評価を得ておりました。
しかしながら1960年代以降、スピードマスターは宇宙開発というメッセージとともに語られるようになります。なぜなら1965年にNASA(アメリカ航空宇宙局)の公式装備品となり―もっとも1962年のマーキュリー計画でウォルター・シラー宇宙飛行士が着用していたことでも知られていますが―、アポロ11号やアポロ13号などといったミッションに携行されることとなったためです。
モーターレースでも宇宙でも重宝されるスピードマスター。当時からオメガがいかに技術的に秀でていたのかがわかるエピソードですね。
とりわけアポロ13号が酸素タンク爆発事故に見舞われた折、電気や酸素が非常に制限されている中で、大気圏突入への困難な軌道修正に寄与したのがスピードマスターと言われています。
「ムーンウォッチ」の称号は、こういった偉大な歴史が背景となっております。
このスピードマスター、基本デザインは変えずに何世代かのアップデートが繰り返されています。
2021年に発表されたこちらのRef.310.30.42.50.01.001は、第八世代に当たります。
スピードマスター プロフェッショナルは、代々手巻きクロノグラフが搭載されてきました。この手巻きクロノグラフは1946年に発表された、ヌーベル・レマニア社製Cal.321以来、大きく基本設計を変えていないという傑出したムーブメントです。
ヌーベル・レマニア社は美しさと高精度を兼ね備えたムーブメントのベンダーであり、ブライトリングやブレゲなどにも名機の数々を供給しました(現在はブレゲが吸収)。
1950年代後半というスピードマスターの黎明期からレマニアの名は知られており、現在に続く同モデルの基幹ムーブメントを担った立役者的存在です。スピードマスター=高精度クロノグラフという図式を作った功労者とも言っていいでしょう。今なおレマニア社製だから、という理由でスピードマスターが時計ファンたちの話題に上ることはしばしばありますね。
ちなみに余談ですが、2019年、スピードマスター プロフェッショナルの初代から第四世代(~1960年代後半)モデルに搭載されていたレマニア製Cal.321が、当時の金型をもとに忠実な復刻を果たします。時計業界は騒然となり、スピードマスター プロフェッショナルへの注目度は、いや増しました。
こういったエピソードが、スピードマスター プロフェッショナルをいっそう魅力的に押し上げますね。
しかしながら2021年、スピードマスター プロフェッショナルもついにコーアクシャル×マスタークロノメーター化。新しい手巻きクロノグラフCal.3861を搭載することとなりました。
出典:https://www.omegawatches.jp/ja/watches/speedmaster/moonwatch-professional/product
これによって高い耐磁性能を備え、またパワーリザーブも2時間延長されたことで、現代的なスペックに進化を果たしたことを示唆します。
一方でドット・オーバー90およびドット・ダイアゴナル・トゥ70など、往年のスピードマスターの細部を復刻していることも、大きな特徴となります。
ドット・オーバー90は、タキメーター90のドット印字が、従来は数字のすぐ横であったことに対し、最新作のスピードマスター プロフェッショナルでは、90の斜め上にドットが描かれています。また、ドット・ダイアゴナル・トゥ70では70位置も変更され、数字に対して斜め位置にドットが打たれました。
さらにクロノグラフ針の根本は第三世代,第四世代に見られる菱形となり、また先端がかなり大胆に曲げられました。ステップダイアルと併せて、スペックは最新となりつつ、どこか懐かしさを感じるデザインに仕上がっているのです。
ケースサイズはやや大きめの42.0mm。とは言え手巻きのため余分な厚みはなく、上品な薄型に仕上がっております。ラグから優美にカーブを描いており、スーツスタイルにマッチする高級時計としても定評があります。
2021年発表と、比較的新しい個体であるにもかかわらず、ナンバーツーの売れ筋となったのも納得の魅力溢れる一本と言えますね。
新品並行相場は80万円程度~となっております。
ちなみに、同時リリースされたRef.310.30.42.50.01.002は第7位でした。
スピードマスター プロフェッショナル 310.30.42.50.01.002
ケースサイズ:直径42mm
駆動方式:手巻き
ムーブメント:Cal.3861(マスタークロノメーター)
パワーリザーブ:約50時間
防水性:50m
定価:990,000円
Ref.310.30.42.50.01.001とRef.310.30.42.50.01.002の代表的な違いは、前者がシーホースが描かれたソリッドバックを有し、かつヘサライトクリスタルガラス(プラスティックの一種)を採用しています。対して後者は、シースルーバックにサファイアクリスタルガラスを採用しております。
こちらはRef.310.30.42.50.01.001より定価が高く、新品並行相場もまた90万円台前半~と高め設定です。
とは言え、傑出した手巻きクロノグラフを存分に鑑賞できるのは、シースルーバック仕様ならではです。
オメガの中で人気があるモデルは?
オメガの中で2番目に人気があるオメガはダイバーズウォッチのお手本ともいうべき「シーマスター ダイバー300M 210.30.42.20.01.001」です!
スピードマスターと共に今年も非常によく売れました。
なお、210.30.42.20.01.001は売上本数では堂々のN0.1であり、実力のほどを感じます。2019年でも2位、2020年・2021年は3位、2022年は1位と例年安定した売上を残しています。
シーマスター ダイバー300M 210.30.42.20.01.001
ケースサイズ:直径42mm
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.8800(マスタークロノメーター)
パワーリザーブ:約55時間
防水性:300m
定価:748,000円
1948年から歴史を紡ぎ続けてきた、オメガの大人気コレクション「シーマスター」。現在ではコンセプトに合わせた豊富なバリエーション展開が行われていますが、中でも特に人気が高いのがシーマスター ダイバー300Mです。
例年、こういった売上ランキングを行うと、必ずと言って良いほど上位5番には入ります。
シーマスター ダイバー300Mは1993年に誕生したコレクションで、300mという高い防水性×逆回転防止ベゼル×ヘリウムエスケープバルブ×夜光塗料が施された丸形インデックスなどを有した、本格派ダイバーズラインとなります。ちなみにリリース当初は「シーマスター プロフェッショナル」、後に「プロダイバーズ300」などの名前を経てきました。
誕生25周年にあたる2018年、大幅にモデルチェンジが行われ、よりオシャレで、それでいてハイスペックをも両立する、唯一無二の存在へとなっていきました。
出典:https://www.omegawatches.jp/ja/
このモデルチェンジの要はムーブメントにあります。
と言うのも、コーアクシャル×マスタークロノメーター ムーブメント Cal.8800を搭載しているのです。このムーブメントで以て、シーマスター ダイバー300Mは内外で死角のないハイスペックウォッチへと昇華されたと言って良いでしょう。
コーアクシャルはオメガ独自の脱進機(エスケープメント。時計の精度を担保する調速機と、各歯車の連結にあたる)で、簡単に言うとパーツ摩耗を抑え、従来品よりもオーバーホールのスパンを延ばした画期的な機構です。
また、マスタークロノメーターは、スイス連邦軽量・認定局(METAS)とオメガが共同開発した規格です。COSC(スイス公式クロノメーター検査協会。ムーブメントの精度に関する規格)認定機を対象に8つの厳格なテストを課し、これをクリアした腕時計にのみ与えられる称号となります。
マスタークロノメーターは様々な基準がありますが、中でも15,000ガウスもの高磁場下でのテストが非常に高名です。磁気は、アナログ時計にとって大きな脅威となります。金属で構成されるムーブメントのパーツが磁化してしまうと、正常な動作を妨げてしまうためです。そのため近年、各社が様々な磁気帯び対策を採っていますが、15,000ガウスもの耐磁性というのは、業界トップクラスとなっております。ちなみにJIS(日本産業規格)では、1種耐磁時計を4,800A/m、2種耐磁時計を16,000A/m以上と規定しています。1,200,000A/m(15,000ガウス)が、いかに突出しているかおわかり頂けるのではないでしょうか。
こういったオメガらしい高い性能に加えて、美しいフォルムやポリッシュ仕上げ・ツヤ消し仕上げのコンビネーションによって醸し出される高級感、そしてセラミック製のベゼル・文字盤が放つ得も言われぬ光沢・・・高級ダイバーズウォッチとして完成されているのも、大いなる人気の秘訣ですね。
そんなシーマスター ダイバー300M Ref.210.30.42.20.01.001、現在の新品並行相場は70万円前後~。
ハイスペックダイバーズウォッチと考えれば、非常にお買い得感のある逸品と言えるでしょう。
2018年発表と比較的製造年数が長く、流通量も豊富ですので、ご予算がある方は中古からお探し頂くのも良いですね。
こちらもコーアクシャルマスタークロノメーターを搭載したハイスペックであり、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』でジェームスボンドが着用する時計と同じ007エディションとなります。
ヴィンテージテイストなデザインが幅広い層から支持を集め、再びランキング上位に返り咲きました。
シーマスターダイバー300M コーアクシャル マスタークロノメーター007 210.90.42.20.01.001
Ref.210.90.42.20.01.001は『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』スペシャルエディションとして2020年にリリースされた最新モデルです。実際に作中でダニエル・クレイグ氏扮するジェームズ・ボンドが着用するとあって、発売直後から非常に話題性の高かった逸品です。
アルミベゼルと合わせて非常にヴィンテージな雰囲気仕上げられており、チタン製ケース・ブレスレットは非常に軽やかで、装着感にも優れます。
ダイバー300Mは例年ブラック、ブルーが売れ筋ですが、今年は007エディションが売上を大きく伸ばしました。
並行新品相場は、状態や年式にもよりますが、120万円台~。他のモデルよりも高めの価格設定ではありますが、それでも良く売れました。
ただ、気を付けたいのは、新旧問わずシーマスターの実勢相場が近年、上昇を続けているということ!
高級時計市場が成長し、世界的に需要が高まっている今、人気モデルを中心に値上がりが断続的に行われています。
購入をご検討中の方は、さらに値上がりしてしまう前に!ご決断されることをお勧めいたします。
4番目に人気のオメガはシーマスター300 Ref.233.30.41.21.01.001です!
2021年4月に新作シーマスター300がリリースされたことにより生産終了モデルとなりましたが、今もなお高い需要を博しています。
シーマスター300 233.30.41.21.01.001
ケースサイズ:直径41mm
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.8400(マスターコーアクシャル)
パワーリザーブ:約60時間
防水性:300m
定価:748,000円
シーマスター300は、2014年に「初期シーマスターをリバイバル」というコンセプトのもと、リリースされました。
1957年、オメガはシーマスター・スピードマスター・レイルマスターをその歴史に登場させます。
もっともダイバー300Mの項でもご説明した通り、シーマスター自体はそれ以前、既に開発されていました。
実際に第二次世界大戦下のイギリス海軍に供給していた軍用時計「マリーン」を基に、1948年、民生用に改良した防水時計「シーマスター」を発売。しかしながら1948年当時はまだダイバーに向けたようなスポーツウォッチではありませんでした。
その後1957年、さらにプロフェッショナルユースに特化したシリーズとして改めて「シーマスター」が生み出された、という背景を持つのです。
そんな初期シーマスターのリバイバルだけあり、1950年代当時のヴィンテージな意匠―黒ベゼル×黒文字盤というシンプルなデザイン、視認性を優先したインデックスや太めのアロー針、日付すらないシンプル機構・・・本当にかっこいいですよね。
シーマスター自体は、派生モデルがスピードマスター以上に多く、アクアテラ,プラネットオーシャン,ダイバー300M,プロプロフ等…本当に多岐に渡ります。にもかかわらず、こちらの233.30.41.21.01.001の圧倒的人気と言ったら!
かつてはアクアテラなどがナンバーワンにくることもありましたが、直近では233.30.41.21.01.001が4年連続シーマスターの売り上げNo.1を獲得し続けてきました。スピードマスター プロフェッショナル同様、2021年に新型が発表されたことで人気が分散され、2023年は売上ランキング第4位となっておりますが、相変わらずオメガ人気を牽引する存在です。
なぜここまで233.30.41.21.01.001の人気があるのか?普通、派生モデルが多いと人気は分散しがちなのですが、なぜここまで圧倒的なのか?
もちろんもともと完成度の高い時計、と言うこともあったでしょう。
加えて2017年、前述のマスターシリーズ3兄弟が60周年を迎えたことで、オメガから特別なリバイバルモデルがリリースされたことで爆発的人気を誘発したことも影響しています。
このリバイバルモデルは「トリロジー」と称してシーマスター・スピードマスター・レイルマスターから各一種ずつ限定品をリリースしたもの。それぞれは限定生産だったため現在は入手しづらいのですが、そのリバイバルと大きくデザインが変わらない233.30.41.21.01.001の認知度が高まるきっかけになったのでしょう。
233.30.41.21.01.001の現在の中古相場は55万円前後~。コストパフォーマンスにおいても非常に優秀な一本です。
オメガの5番人気モデルは、新型シーマスター300の基幹モデルRef.234.30.41.21.01.001です!
4位にランクインした233.30.41.21.01.001の後継機であり、こちらも人気があります。
シーマスター300 234.30.41.21.01.001
ケースサイズ:直径41mm
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.8912(マスタークロノメーター)
パワーリザーブ:約60時間
防水性:300m
定価:1,089,000円
新型シーマスター300もまたマスタークロノメーター化を果たしたことが大きな特徴です。
これに加えて、よりファーストウォッチに近いデザインを意識したデザインとなっており、ヴィンテージ感が更に増しています。
出典:https://www.omegawatches.jp/ja/
特徴的なアラビアインデックスは初期型を再現しており、針も初期に近づけるため「ロリポップ針」を採用しています。サンドイッチ文字盤も良い風合いですよね。
ロゴもモデル名とブランド名だけの表記となり、非常にシンプルなデザインとなりました。
ムーブメントにはコーアクシャル マスタークロノメーター キャリバー 8912を搭載。更なる進化を遂げています。
新品並行相場は70万円台前半~です。中古であれば60万円台で購入することもできます。
新型シーマスター300はヴィンテージに趣を置いているモデルであるため、旧型233.30.41.21.01.001とはうまく差別化が図られています。ムーブメントの性能は新型に分がありますが、上位互換モデルとは言い切れません。
むしろ旧型233.30.41.21.01.001のデザインが好きという方も少なくなく、製造終了が決まった後、233.30.41.21.01.001の相場が徐々に上がっていることは特筆すべき点です。すなわち、新旧問わず「価格が上がる前に買っておきたい」というのは、オメガの人気モデルの多くで適用できる考え方でしょう。
もっとも、オメガはもともと相場が安定して高値傾向にありました。
ロレックスのように定価超えで取引されている・・・と言うわけではありませんが、当店の買取部門でも積極的に高額買取させて頂いているブランドで、「値崩れしづい」「資産価値が高い」と言った魅力を持ちます。
こういった資産価値の高さが、当モデルの人気をひときわ押し上げていると言っていいでしょう。そのためイニシャルコストは高くなっても、手放す時に購入時から大きく損をせず、お得感もまた高いですね。
シーマスターの高い防水性に伴う堅牢性が、経年劣化のしづらさに繋がっており、中古市場での売買も盛んです。
まさに買ってよし・売ってよしの一本であり、2024年もオメガの人気を牽引してくれることでしょう!
以上が当店オメガでの人気モデルです。
オメガはロレックスやタグホイヤーなどと並んで高級時計ブランドの「定番」です。
コストパフォーマンスにも優れており、外装・ムーブメントともに長年愛用するに足るスペックを抱えながらも平均価格は50万円台~(モデルにもより、また近年では上昇傾向にありますが)!
初めて高級時計を購入する方にとっても、良い選択肢となるのではないでしょうか。
また、近年では「コーアクシャル」「マスタークロノメーター」などに代表されるムーブメント開発にとても意欲的で、ますます使いやすく・長持ちしやすい性能を有するようになりました。
実際、オメガの精巧さと性能の良さはF1ドライバーの多くがオメガを愛用している事からも伺えます。
そのため「毎日ガンガン使いたい」と言う方にも、ぜひオメガを一度お手にとってほしいと思います。
詳しく商品情報が知りたい方は是非こちらご覧ください。
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年