「パネライのラジオミールはどうして人気なの?」
「ラジオミールの種類や魅力について詳しく知りたい」
男らしく、それでいて上品。
パネライラジオミールは時計としてだけでなく、ファッションアイテムとしても絶大な人気を誇るモデルです。
一目みてパネライとわかるアイコニックなデザインに、どんなシーンでも身につけられる万能な使用感。
全てにおいてハイレベルにまとまっており、時計業界からも高い評価を獲得しています。
そんなラジオミールの種類や魅力が知りたいという人は多いのではないでしょうか。
ラジオミールの大きな魅力はデザインで、パネライらしい力強さを備えながらも、どこか上品さも持ち合わせています。
この記事ではラジオミールの種類や魅力を、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
中古相場や選び方の紹介もしますので、ラジオミールの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
パネライラジオミールの魅力
パネライラジオミールはパネライが積み上げてきた歴史の象徴ともいえるモデルです。
軍用時計として生まれ、その視認性の高さやタフな設計は現代においても受け継がれています。
概要
出典:https://www.panerai.com/ja/about-panerai/history.html
1860年にジョバンニ・パネライによってイタリア フィレンツェに創設されたパネライ。
パネライは時計以外にも温度計や気圧計といった精密機器の製造にも取り組んでおり、精密機器メーカーとしても高い評価を得ていました。
やがてその「精密機器メーカーとしての高い技術」がイタリア海軍の耳に入り、パネライは潜水特殊部隊用の軍用ダイバーズウォッチの製造を依頼される事となります。これが時計製造ブランドとしての始まりです。
ラジオミールは1938年にイタリア海軍からの要請を受けて誕生したダイバーズウォッチです。戦前より軍用として使われたという歴史を持つことからミリタリーウォッチとしても知られます。
ちなみに名前の由来は、同名の蛍光物質です。
1898年にキュリー夫妻によって発見された「ラジウム」を用いたこの蛍光物質は、きわめて強い自発光が可能でした。そのため時計の文字盤や計器盤の夜光塗料として1900年に入ると重宝され始め、パネライでもラジオミールで採用することとなりました。
ちなみにパネライのラジオミールは、当該夜光を使用した初のダイバーズウォッチでもあります。
※ラジウムが夜光塗料に使用されていたのは1960年頃までです。なぜならラジウムは放射性物質であり、製造時の健康被害が大きな問題となったためです。なお、ラジウムから放出する放射線は紙一枚で防げるα線なので、時計の使用自体はあまり問題視されていません。
当時のパネライ時計は暗闇での作戦を基本とする特殊潜水部隊の任務で主に使用していた為、暗所でも明るく発光する蓄光塗料が不可欠でした。そこでラジオミールを夜光塗料として使用することで強い発光性のある文字盤を作ることに成功し、特殊ミッションをサポートすることとなったのです。
出典:https://www.panerai.com/
そんなラジオミールを使用した文字盤に、高い耐久性を誇るケースを組み合わせた理想的な軍事時計「元祖ラジオミール」。視認性はもちろん、驚異的なタフさを誇ったラジオミールは戦時中に大活躍を収めました。
しかし、前述の通りラジオミールは放射性物質を含む物質であることが発覚し、文字盤への使用が見送られることになります。代わりに新たに開発されたのが夜光塗料ルミノール。このルミノール夜光がラジオミールに変わり、パネライ時計の新たなるスタンダードとなっていきました。
出典:https://www.richemont.com/
パネライは長らくイタリアやエジプトなどの軍に納入する軍需製品を取り扱ってきましたが、第二次世界大戦の終結により次第に軍事需要がなくなっていきます。
そこでパネライは経営を立て直すため、1993年頃より一般市場へ向けた時計の製造や販売を開始。
1997年には数々の高級時計ブランドを傘下にしている巨大資本「リシュモングループ」へと加入しました。
一般市場向けに時計製造を開始したことを切っ掛けに、パネライは創世期の意匠を受け継いだデザインの時計「ラジオミール」を復活させます。
軍事時計としてルミノールよりも早く作られたラジオミールは、歴史的観点から見てもクラシックな時計。その「控えめでクラシカル」なシルエットは世界中で大人気となりました。
軍用時計をルーツとする精悍で視認性豊かな設計であることも評価され、今ではビジネスにもアウトドアにも重宝される高級時計の定番として君臨しています。
ラジオミールとルミノールの違い
左:ラジオミール 右:ルミノール
パネライには大きく分けてルミノールとラジオミールの2つのモデルが存在しますが、軍用時計としての歴史を強く受け継いでいるのはラジオミールです。
リューズプロテクターがついているルミノールに対し、ラジオミールはシンプルな玉ねぎ型のリューズが採用されています。
視認性の高さやスッキリとしたデザイン、そして軍用時計として採用されるほどの精悍さ。
デカ厚が多いパネライの時計の中でも、古くから薄型モデルが多くラインナップされており、多くの方に使いやすい設計となっていることも魅力です。
なお、ラジオミールは伝統的に革製ベルトを採用してきました。
ルミノールにはメタルブレスレットを装備したモデルが多数展開されていますが、ラジオミールは革製ベルトにとことん拘っています(現行はラバーストラップモデルもあり)。
可変式ワイヤーループベルトアタッチメントにより、簡単に交換・カスタマイズできることも注目したいポイントです。
クラシカルなデザイン
ラジオミールの特徴はなんといってもクラシカルなデザインです。
クッションフォルムのケース、オニオンシェイプのリューズ、そしてシンプルなラグ。
前項でも解説した通り、ラジオミールはリューズガードのない設計となっており、ルミノールにはないクラシカルな味わいがあります。
パネライらしい力強さを備えながらも、どこか上品さも持ち合わせることがラジオミール最大の特徴と言えるでしょう。
左から ゴールド / ブラックセラミック / コンポジット
また、ラジオミールは一目でパネライとわかるデザインをしていますが、ラインナップによってケースに使われる素材は様々です(ちなみに誕生当初は高級路線であったため、金無垢のみでした)。
定番のステンレススチールの他に高級感あるゴールド、傷つきづらく精悍なブラックセラミック、そしてパネライが開発したコンポジット(アルミをベースにした複合材料)があります。
豊富なバリエーションの中から自分好みの一本を選べることも、ラジオミールの魅力です。
パネライラジオミールの選び方
長い歴史を持つパネライ ラジオミールのラインナップは多岐にわたります。
ケースの形状においてはオリジナルと1940シリーズ。サイズも豊富に展開されており、また入門機として「ブラックシール」と呼ばれる個体も存在します。
予算や見た目の好みによって購入すべきモデルは異なると言えるでしょう。ここではラジオミールの種類について解説致します。
オリジナルと1940シリーズの違い
現在のラジオミールには大きく分けてオリジナルデザインの個体と1940シリーズの個体が存在します。
この2つは文字盤のデザインには大きな違いが見受けられませんが、ケースの形状が若干異なります。
左: オリジナル ラジオミール 右:ラジオミール 1940
左の写真はオリジナルのラジオミール。シンプルな形状のラグとオニオンシェイプのリューズが特徴的です。
対して右の1940はオニオンシェイプのリューズはなくなり、ラグがケースからしっかり突き出した強度のある設計となっています。
ラジオミール1940はラジオミールからルミノールへと変遷を遂げた1940年代に着想を得て、2012年より展開しているモデルです。
その過渡期を表すような、ラジオミールとルミノールが融合したケースデザインが特徴となっています。
オリジナルと比較するとラジオミールが持つ独創性は弱まっていますが、その分汎用性が高く、パネライファンからもパネライ初心者からも絶大な支持を集めています。
なお、ラジオミール1940は新作ケースが採用されていることからオリジナルよりも比較的値段は高めです。
ラジオミールのサイズ展開
ラジオミールのケース径は45、47、48mmとボリューミなモデルが多いです。
2000年代のデカ厚時計の流行もあり、大半のモデルが力強さを全面に押し出した設計となっています。
ただ、近年は42mmと万人受けするサイズも多く展開されるようになり、体格の小さい方であっても選べるモデルが増えています。
薄型設計のモデルも着々と開発されており、自分にあったサイズを選べばフォーマルシーンでも活躍できるでしょう。
ブラックシールの由来とその違い
ブラックシールは2000年代に展開されたパネライの初期モデルの一部です。
当時高級路線だったラジオミールにブラックシールという名を付けて廉価版として販売されていた個体のことを指します。
ただブラックシールは、あくまでもペットネームなので、見た目は普通のパネライと殆ど変わりありません。
フランクミュラー カサブランカのような、エントリーモデルのパネライと思っていただければ結構です。
ちなみにブラックシールは「黒アザラシ」の意味をもち、パネライでいうところの「ブラックシール」はイタリア海軍特殊部隊 低速魚雷部隊の愛称として知られます。
パネライ ラジオミール ブラックシール PAM00380
2011年以降はブラックシールの復刻モデルが増え始め、ラインナップの中には文字盤に「OP」のロゴが施されているモデルも存在します。
OPロゴを持つモデル=ブラックシールと認識されている方が多くいらっしゃるのですが、先ほどお伝えした通り、「ブラックシール」はただのペットネームなので、「OPロゴ」がついているモデルをブラックシールと呼ぶわけではありません。
※OPロゴは1997年にヴァンドームグループ(現リシュモングループ)に加入したパネライがリシュモン加入前に使っていたロゴ
また、現在では特別感を演出するためにブラックシールという名を使った高級モデルも展開されはじめており、「ブラックシール=エントリーモデル」という図式すらも崩れてきています。
少々ややこしいのですが、型の古いブラックシールは廉価モデルとして開発されたもの、新しいモデルは高級機となっているのが現状です。
機能・特徴から選ぶラジオミール
ラジオミールはどのモデルもシンプルで上品なデザイン性をもちますが、機能は搭載するムーブメントによって大きく異なります。
価格も高性能になるほど高くなりますので、どれを選ぶかは予算に合わせて決めるとよいでしょう。
スタンダードモデル
ラジオミールの基本機能は2針もしくは3針スモールセコンドとなります。
大きく分けると、汎用ムーブメントをカスタマイズした Cal.OPX などを搭載した旧シリーズと、3日間のパワーリザーブを搭載する新シリーズ「アッチャイオ」に分類されますが、いずれも見た目は殆ど同じです。
ラジオミールは手巻きが多いため、パワーリザーブに利があるアッチャイオシリーズの方がどちらかというと人気があります。
ただ、旧シリーズの方がお手軽に買えるため、どのモデルを選ぶかは好みの問題です。
パネライ ラジオミール ブラックシール 3DAYS P番 PAM00388
なお、ラジオミールには数こそ多くはありませんが、自動巻きモデルもラインナップされており、実用性重視の方から絶大な支持を集めています。
代表的なモデルは「PAM00388」や「PAM00572」など。
使いやすいパネライをお求めの方にはこちらもオススメです。
クロノグラフ
パネライ ラジオミール クロノグラフ PAM00288
パネライはあまりクロノグラフの製造を重視していませんが、製造終了モデルの中には名機と名高いモデルがいくつか存在します。
例えば、このPAM00288。
パネライ クロノグラフといえばルミノールシリーズが有名ですが、PAM00288は希少価値の高いラジオミールのクロノグラフとして、年々人気が高まっています。
パネライ ラジオミール クロノグラフ PAM00369
また、よりシンプルなクロノグラフとして人気のあるPAM00369も見逃せないモデルです。
こちらは42mmとラジオミールには珍しい小ぶりのケースが採用された2カウンタークロノグラフです。
プッシュピースはポンプタイプを採用。ねじ込み式リューズにはパネライのロゴがあしらわれています。
程よいサイズ感が日本人に合うことから需要がつきません。
GMT
パネライ ラジオミール 10DAYS GMT PAM00323
自分が住んでいるホームタイムとは別の時間帯を文字盤上で確認できるGMT機能。ラジオミールにも僅かながら搭載モデルが存在します。
このPAM00323はGMT針によって第二時間帯を表す、スタンダードなモデルとして人気があり、パネライファンの間からは絶大な支持を集めています。
ステンレススティールだけでなくレッドゴールドを配したモデルやアラーム機能をもつモデルもラインナップされており、パネライのGMT機能搭載モデルはまた一風変わった雰囲気を楽しめます。
8days
パネライ ラジオミール 8デイズ アッチャイオ PAM00610
パネライ8DAYSはその名の通り8日間にも及ぶ超ロングパワーリザーブを誇るモデルです。
代表的なムーブメントはツインバレル構造を採用した自社製手巻きキャリバーP.5000など。一度フルに巻けば1週間以上もゼンマイが解けないため、実用性抜群です!
8DAYS仕様のモデルは文字盤に8DAYSの刻印が刻まれているため、特別感を味わうこともできます。
価格も3daysとそこまで開きがないため、お得なモデルだといえるでしょう。
薄型キャリバー
パネライといえば、とにかくデカくて厚い。
多くのモデルがケース径44mm以上の大きさとなっており、厚みに至っては15mmを超えるものもあります。
しかし、2016年に開発された「キャリバーP.1000」を搭載したモデルはその常識を覆す驚異の薄型設計となっており、パネライファンや時計愛好家に衝撃を与えました。
https://www.panerai.com/ja/in-house-movements/hand-wound-movement/p1000-calibre.html
キャリバーP.1000は2016年に発表された「3日間パワーリザーブ(72時間)」を備える新しい自社製手巻きキャリバーです。
3針に9時位置のスモールセコンドというシンプルな設計で作られており、厚さが3.85mmとパネライのムーブメントとしては驚異の薄型設計で作られました。
P.1000は152個の部品と21石によって構成され、薄型設計でありながらも非常に頑丈であることが特徴。しかしながら薄いからといってパネライならではの耐久性は失われていません。
パネライ ラジオミール 1940 3DAYSアッチャイオ PAM00574
ラジオミールにおけるP.1000搭載モデルとしては「PAM00574」などが人気です。ツインバレル構造により3日間(72時間)のパワーリザーブに対応しています。
ケース径42mm、厚み10.5mmの設計となっており、リューズガードがない分、さらにシャープに見えます。
最新技術が組み込まれているため、相場は他のラインナップよりも高くなりますが、薄型のラジオミールをお探しの方にはうってつけのモデルです。
なお、余談ですが、ラジオミールの歴史的ムーブメントの一つにP.999があり、こちらも通にはたまらない名機です。これは金無垢モデルにのみ搭載されていたキャリバーで、スワンネック緩急針が搭載されています。
スワンネックとは白鳥の首の形に似ている緩急針で、微調整装置が付属していることが特徴です。バネとネジで緩急針のレバーを抑えており、ネジを回すことで微調整が出来る仕組みになります。美しい形状から装飾的な意味合いもあり高級時計に採用されることが多い緩急針です。
現在P.999は現行に搭載されておりませんが、中古から探してみるのも面白いかもしれませんね!
ラジオミールの中古相場
パネライ ラジオミールは古今を通して、デザインに大きな違いはありません。そのため、中古での需要が高く、中古市場の動きも活発です。
大きな値崩れも爆発的な高騰も見受けられないため、予算に合わせてお好みのモデルを選べるのも魅力の一つといえます。
パネライ ラジオミール PAM00210
例えばシンプルな2針手巻きモデル「PAM00210」なら、中古で30万円台後半〜40万円台で購入することができます。
機能は必要最低限に抑えていますが、パネライらしさは存分に感じることができるでしょう。
この価格でパネライが手に入るのは非常にお得なので、生産終了モデルを狙うのも十分アリです。
パネライ ラジオミール 1940 3デイズ アッチャイオ PAM00574
また、中古であれば、薄型のラジオミールもお得に購入することができます。
例えばパネライらしからぬ薄型設計が話題を生んだ、この「PAM00574」。最新ムーブメントであるP.1000を搭載しているにも関わらず、中古なら50万円〜60万円台で購入することも可能です。
PAM00574の定価は924,000(税込)なので、中古で買えば30万円以上得をすることになります。
ラジオミールは中古での購入に大きなメリットがあるモデルなので、欲しいモデルがあれば是非中古でも探してみてください。
ただ、ラジオミールに限らず、中古で時計を買う際には店舗選びも重要です。
状態にあまり差がない新品と比べ、中古の時計は店舗によって品質にバラツキがあります。
ラジオミールを購入する際には口コミを見るなどして、本当に信頼のできる店舗であるか確認してから購入するようにしましょう。
特にラジオミールはシンプルな見ため故に、状態の良し悪しが重要となります。
そのため、少しでも良い個体を選ぶことが何よりも大切です。
まとめ
ラジオミールはパネライ初の軍用ダイバーズウォッチとしての歴史を持つ、パネライの定番です。
力強さとクラシカルな印象を両立させた他のモデルでは味わえない魅力を秘めており、世界中から高い評価を得ています。
バリエーションが豊富にあるため、どれを買って良いのか迷うこともありますが、選択肢の豊富さもラジオミールの楽しさともいえるでしょう。
中古であれば40万円台〜購入することができるので、メイン機としてはもちろん、サブ機としてもオススメです。
ぜひこの機会に一度パネライ ラジオミールをご検討ください。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年