WEBマガジン, 田所孝允, ロレックス, パテックフィリップ, アンティーク時計, レディースウォッチ, その他
伝説のデイトナ ポールニューマンモデルとは?20億円で落札されたロレックスの実力
最終更新日:
出典:https://www.phillips.com/detail/ROLEX/NY080117/8
「デイトナ・ポールニューマンモデルって何がすごいの?」
「デイトナ・ポールニューマンの魅力について知りたい」
セラミックベゼルが艶やかに煌く現行モデル116500LN。
ステンレスベゼルを備え、未だに根強い人気を誇る116520。
名機エルプリメロが使用された16520。
多くのモデルがプレミア価格で相場が推移する「ロレックス デイトナ」ですが、デイトナは現行のみならずアンティークにも超レアモデルが存在します。
その象徴として存在するのが「デイトナ・ポールニューマン」。
2017年10月のオークションで”史上最高額の腕時計”となったデイトナ・ポールニューマン個体もあるほどで、伝説の腕時計として語り継がれてきた逸品と言えるでしょう。
そんなデイトナ・ポールニューマンモデルの魅力について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
デイトナ・ポールニューマンはエキゾチックダイヤルという唯一無二の特徴を持ち、アンティークロレックス屈指の人気です。
この記事ではデイトナ・ポールニューマンの魅力について、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
腕時計史上最高額で落札されたデイトナ・ポールニューマンについても紹介しますので、ロレックスに興味がある人はぜひ参考にしてください。
目次
ロレックス デイトナ ポールニューマンとは
デイトナ ポールニューマンはロレックスの人気モデルとして知られるデイトナのアンティークウォッチです。
歴史あるデイトナには幾つものアンティークモデルが存在しますが、その中でもポールニューマンはコレクターの中で圧倒的な人気を誇ります。
数百万円を超える資産価値を持つ個体が多いアンティークデイトナですが、ポールニューマンはまさに別格。
その価格は今や1000万円を軽く超えています。
なぜこれ程までにデイトナ ポールニューマンは評価されるのか?
ここではポールニューマンモデルの魅力を詳しく解説していきます。
①デイトナ ポールニューマンモデルとは?
デイトナ ポールニューマンモデルは1960年代〜70年代に製造された手巻き式デイトナに見受けられるモデルです。
3世代に渡って製造された手巻き式デイトナには素材や文字盤デザインまで様々な仕様がありますが、ポールニューマンモデルはその中でも特に存在感のあるデザインを持ちます。
出典:https://www.phillips.com/article/17646996/paul-newman-s-legendary-paul-newman
そもそもデイトナは1963年にレース用クロノグラフとして開発されたモデルです。
ファーストモデルはRef.6239とRef.6241(ただしプレデイトナとしてRef.6238/6234が存在する)。
Ref.6239はスチールベゼルを備え、Ref.6241は黒のアルミベゼルを備えます。いずれも名機バルジュー Cal.72をベースとしてチューンアップしたCal.727を搭載。また主張の強いタキメーターを採用したスポーティーな雰囲気から一躍注目を浴びるようになりました。
Ref.6239は65年ごろ、Ref.6241は60年代後半まで製造されますが、その短い製造期間の間には同じリファレンスでありながらも大きく特徴が異なるモデルが展開されます。
例えばベゼルのメーターが300mの個体もあれば200mまでの個体があったり、あるいは文字盤にDAYTONA表記がある個体もあればない個体もあったり。
どの個体もオークションにおいては常に高値でとり引きされていますが、その中でも俳優ポールニューマンモデルが身につけていた「エキゾチックダイヤル」を備えるRef.6239は格段に市場価値の高い超レアモデルとして愛されています。
出典:https://www.phillips.com/article/17646996/paul-newman-s-legendary-paul-newman
こちらが通称ポールニューマンと呼ばれる個体 Ref.6239。通常モデルはバーインデックスが採用されていますが、一部の個体には「エキゾチックダイヤル」と呼ばれるホワイトカラーの文字盤が使用されています。
エキゾチックダイヤルはシンプルなデザインもさることながら、印象的なインダイヤルを備えることが特徴です。
スクエアインデックスと呼ばれる四角型のインデックスを配し、更にデイトナらしからぬ丸みを帯びたフォントが採用されています。バーインデックス仕様の文字盤よりも生産量の少なく、今となっては圧倒的な資産価値を持つレアモデルとしてロレックスファンの憧れの的として君臨しています。
また、タキメーターベゼルのスケールの目盛りも個体によって異なります。
スチールベゼル Ref.6239は前期型が300mまで、後期型は200mまでとなっており、黒アルミベゼルのRef.6241は全て200mまでの仕様です。
なお、なぜこの個体がポールニューマンと呼ばれるのかというと、前述した通り、俳優のポールニューマンがこの「エキゾチックダイヤル」を持つデイトナを愛用していたからです。大俳優が身につけたというステータス性に加え、他のデイトナにはない圧倒的な個性。
アンティークロレックスの評価される現代において、人気が出ないわけがありません。
ちなみにポール・ニューマンという人物については、下記の通りです。
俳優ポールニューマンの本名はポール・レナード・ニューマン。
1925年アメリカ・オハイオ州クリーブランドに生まれ、7歳の時から児童演劇団で演技活動を開始した実力派俳優です。
第二次世界大戦後にはニューヨークに移り住み、数々の舞台やテレビドラマに出演。
1954年『銀の盃』、1969年『明日に向かって撃て!』、1973年『スィング』など多くのヒット作に携わり、3度のアカデミー賞を受賞しました。
晩年には監督としても指揮を取り、映画界に与えた影響の大きさは計り知れません。
また、1969年からはカーレースに傾倒し、世界規模のレースに本格参戦。俳優としてだけでなく、レーサーとしても結果を残します。
有名人が経済力にものをいわせてレースに参加するケースはしばしば見受けられますが、殆ど結果を出せないのが通例です。
しかし、ポールニューマンはレースをこよなく愛し、デイトナ24時間レースにおいては5位、ル・マン24時間レースでは2位に輝きました。
その後もレースとの関係は生涯に渡って続き、レーシング・チーム「ニューマン・ハース・レーシング」を立ち上げるなど、レーシング界の大御所として活躍を続けました。
出典:https://www.rolexmagazine.com/2017/06/the-paul-newman-daytona-grail-of-grails.html
俳優として、レーサーとして、社会に大きな影響を与え続けたポールニューマン。
そんな彼が身につけていた時計こそが Ref.6263(エキゾチックダイヤル) です。
自らレースに参戦したデイトナ24時間レースから名称を得た「ロレックス デイトナ」は、彼が活躍した舞台のコンセプトを忠実に表現したモデルといえ、本人の人気に加え、時計自体の品質も優れていたことから、このモデルはしだいに神格化されていくことになります。
②ポールニューマンダイアルのバリエーション
ポールニューマンが身につけていたRef.6263は、インダイヤルにスクエアインデックがあしらわれたエキゾチックダイヤルが採用されていました。
この文字盤はレース中の視認性に特化させた文字盤で、外周部の秒目盛り部分に段差が設けられているのが特徴です。
インダイヤルと同じ反転色を採用し、形状的にも色彩的にも豊かなコントラストが加えられています。
過酷なレース中においても瞬時に時刻の把握ができることから、実用的なレーシングウォッチとして愛されました。
出典:https://www.phillips.com/detail/ROLEX/NY080117/8
このダイヤルは当初は不人気で、通常のバータイプのモデルの方が遥かに人気でした。
しかし、ポールニューマンが身につけたことで人気は跳ね上がり、今ではヴィンテージ市場屈指の価値を誇るモデルとして崇められるようになりました。
ちなみにロレックス デイトナ ポールニューマンは厳密にはエキゾチックダイヤルのRef.6263のことを指しますが、当該文字盤だけを指してポールニューマンダイヤルと呼ぶこともあります。
エキゾチックダイヤルは黒アルミベゼルを備える初期モデル Ref.6241にも存在し、後続機として誕生した「」など、一部個体にも見受けられます。
これらの個体もロレックス デイトナ ポールニューマンと呼ばれるので、覚えておきましょう。
なお、エキゾチックダイヤル(ポールニューマンダイヤル)が存在するのは第3世代までのデイトナです。
大きく分けると第1世代に採用された赤巻きホワイト、第2世代用に製造されたホワイト、第1、第2世代に存在が確認されているブラックの3種類があります。
出典:https://www.phillips.com/article/17646996/paul-newman-s-legendary-paul-newman
こちらは赤巻きホワイトと呼ばれる文字盤。
ポールニューマンが身につけていたのも、この文字盤です。
外周部の目盛りが赤くなっておりで、第1世代でしか見受けられないレアな特徴となっています。
エキゾチックダイヤルといえば、このデザインという印象は非常に強いです。
ポールニューマンダイヤルにはもう一つホワイトが存在します。
それが第2世代に採用されたホワイト、通称パンダダイヤルです。
外周部の目盛りが赤い「赤巻き」に対し、パンダダイヤルは目盛りが白くなっています。
DAYTONA表記がある個体とない個体が存在し、特に表記のない個体のレアリティは高いです。
第1、第2世代のデイトナに見受けられるブラックは秒目盛りは赤、文字盤は黒で作られたレア個体です。
ホワイトと比較すると流通量が少なく、相場もホワイトよりも高く設定されています。
ポールニューマンダイヤルにはこれだけでなく、上記3つのデザインの派生系も存在します。
Ref.6265にはアップライドインデックスが通常よりも短いモデルがあったり、Ref.6264/8においてはインダイヤルや各種針、インデックスがゴールドとなったポールニューマンダイヤルも見受けられます。
どのモデルも製造数が非常に少ないため、ロレックス屈指のコレクターズアイテムとして高い評価を得ています。
腕時計史上最高額「20億円」で落札されたデイトナ ポールニューマンとは?
ポールニューマンダイヤルを持つデイトナは、今でもごく稀に見かけることがあります。
Ref.6239は1963年に登場し、ほんのわずかな期間のみ生産された希少性の高いモデルです。世界約2000本ほどしか出回っておらず、現代ではこのモデルを見かけることは殆どありません。
その中でもエキゾチックダイヤルを備えるモデルは更に少なく、今となっては幻のモデルだと言えるでしょう。
現在においてはアンティークウォッチでありならがらも現行デイトナを遥かに上回る相場となっており、オークションなどでは1000万円以上の高値で取引されています。
出典:https://www.phillips.com/article/17646996/paul-newman-s-legendary-paul-newman
圧倒的な資産価値を持つポールニューマンモデルですが、最も価値のある個体は本人が身に付けていたRef.6239であることは言うまでもありません。
このモデルは2017年にオークションに出品され、大きな話題を生みました。
ただでさえ超レアモデルなのに”ポールニューマン本人が身に着けていた”というステータス性も加わるとなれば、その価値は計り知れません。
ポールニューマン本人が身につけていた Ref.6239
ポールニューマンが愛用したRef.6239は、1969年に公開された映画『レーサー』の撮影中に妻である”女優ジョアン・ウッドワード”からプレゼントされた時計です。
レーサーとして活躍するポールニューマンを心配し、ティファニーで購入された時計だと言われています。
プロのレーサーでもあったポール・ニューマンはこの時計を非常に気に入っており、その後もデイトナ Ref.6239をオンオフ問わず身に着けているシーンがしばしば目撃されるようになりました。
出典:https://www.wsj.com/asia
ポールニューマンは時計好きとして有名で、デイトナも幾つかのモデルを所持していましたが、このモデルは特に大切にしていたようです。
妻からのプレゼントであったことは勿論のこと、裏蓋に「安全運転を」を意味する「DRIVE CAREFULLY ME」の文字が刻印されていたことが、より愛着を沸かせたのでしょう。
ケース直径37mm、「エキゾチック・ダイアル」と呼ばれるオフホワイトの文字盤、200までの数字が刻まれたタキメーターベゼル。これらのデイトナ初期のデザイン性に加え、妻からの愛情が込められた刻印。
時計愛好家ならポール・ニューマンがこの時計を愛してやまなかった理由がわかるのではないでしょうか。
ただ、ポール・ニューマンは1984年を境にデイトナ Ref.6239を身に着けなくなります。彼のファンや時計愛好家はその変化にすぐに気づき、デイトナ Ref.6239を紛失もしくは壊してしまったのではないかと推測されました。
結局その後もデイトナ Ref.6239を装着している姿は見ることは出来ず、ポール・ニューマンは2008年にガンで亡くなってしまいます。
このことからニューマンが身に着けていたデイトナ Ref.6239は「消えた伝説のロレックス」と言われるようになり、幻の一品として崇められるようになりました。
左:ポール・ニューマン 右:娘のネル
しかし、幻の一品「デイトナ ポールニューマン」はポール・ニューマンの娘である「ネル・ニューマン」のボーイフレンド(当時)であったジェームズ・コックスへ譲っていたことが判明します。
譲渡されたのは1984年のこと。
デイトナのゼンマイを巻き忘れたポールニューマンがジェームズに時間を尋ねたところ、ジェームズは腕時計を持っていないと答えたそうです。
そこでポールニューマンはデイトナをジェームズに手渡し、「毎日巻き上げるのを覚えておけば、きちんと時間を教えてくれるよ」と言ったとされています。
その後ジェームズ・コックスはポール・ニューマンから譲り受けた”デイトナ Ref.6239″を現在に至るまで所有・保管していましたが、ニューマンの娘ネルが「ネル・ニューマン財団」を立ち上げることをキッカケに、この時計をオークションに競売にかけることを決めました。
ジェームズは現在ネル・ニューマン財団の会計士としても働いており、腕時計を売却して得られた金額を財団に寄付することを明言しています。このことからジェームズは今尚ニューマン一家との繋がりを大切にしていることが伺えます。
出典:https://www.phillips.com/article/17646996/paul-newman-s-legendary-paul-newman
ポール・ニューマンによって長らく愛用されていた「デイトナ ポールニューマン」は競売会社であるフィリップ社を通し、2017年10月26日にニューヨークで競売にかけられました。
その結果は当初の予想を遥かに超える超高額入札となり、最終的に腕時計史上最高額となる約20.3億円(1,775万2,500ドル)で落札されました。
このオークションには世界各国の資産家が参加しましたが、最終的には電話で参加していた匿名の人物が開始僅か12分後に落札したとフィリップ社から発表されています。
この20.3億という価格はそれまでロレックスの最高金額だった約5億8000万円を遥かに上回り、デイトナ ポールニューマンが伝説の一本であることを証明しました。
ロレックス デイトナ ポールニューマンモデルを探している方に気をつけてほしい「コピー品」
デイトナ ポールニューマンモデルはロレックスの中でもトップクラスの市場価値を持つモデルです。
その為、コピー品が数多く存在します。
しかしながら、よく見ると明確な違いがありますので、ここではその真贋方法の一部を紹介します。
出典:https://www.phillips.com/detail/ROLEX/NY080117/8
オリジナルのポールニューマンダイヤルはインダイヤルの針が通常よりも太くなっており、存在感のあるデザインとなっています。
また、ダイヤルの一番外側のサークルが一段下がっており、黒地に赤いラインが引いてある部分が白いダイヤル面よりも低くなっているのもポイントです。
インダイヤル自体も文字盤から若干窪んでおり、立体感があります。
なお、文字盤裏面には「シンガー社」の刻印が施されています。
手巻きデイトナの文字盤は文字盤製造メーカー「シンガー社」によって製造されていたため、オリジナルモデルは文字盤裏面に刻印が刻まれています。
ポールニューマンモデルは非常に偽物が多く、ネットショッピングやフリマアプリなどにもよくコピー品が出回っています。
プロの目にかかれば真贋を見極めることができますが、如何せん相当古いモデルなので、個体によってはオリジナルの状態を留めていないこともあります。
また、昨今ではコピー品製造技術も上がっている為、素人が違いを正確に見極めることは殆どできません。
その為、購入する際は口コミ評価の高い本当に信頼できる時計店で購入するのがベストです。
実績のある時計店であれば鑑定士の目も確かであるため、偽物を掴まされる可能性はありません。
安心して時計を購入することができるでしょう。
しかし、ポールニューマンモデルの価値は現在どんどん上がっており、当たり前のように1000万円を超える相場となっています。
入荷自体も少ないため、手に入れるのは非常に難しいです。
即決できるほど安い買い物ではありませんが、購入をご希望される方はは市場に出回った際にはいち早く問い合わせすることをお勧め致します。
最後に
デイトナRef.6239 ポールニューマンモデル。
エキゾチックダイヤルという唯一無二の特徴を持ち、アンティークロレックス屈指の人気を誇ります。
年式によって文字盤の種類が異なるため、コレクターズアイテムとしての要素も強いです。
また、ポールニューマン本人が身につけていたオリジナルモデルは正真正銘の伝説の腕時計へと昇華しました。
約20.3億という衝撃価格は後の時代へと語り継がれていくことでしょう。
デイトナRef.6239はまさにデイトナが築き上げてきた歴史の原点とも言えるモデルです。
簡単に手に入るモデルではありませんが、時計ファンであれば一度は腕に巻いてみたいと思うことでしょう。
当記事の監修者
田所 孝允(たどころ たかまさ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 営業物流部長/p>
1979年生まれ 神奈川県出身
ヒコみづのジュエリーカレッジ ウォッチメーカーコース卒業後、かねてより興味のあったアンティークウォッチの世界へ進む。 接客販売や広報などを経験した後に店長を務める。GINZA RASIN入社後は仕入れ・買取・商品管理などの業務に従事する。 未だにアンティークウォッチの査定が来るとついついときめいてしまうのは、アンティーク好きの性分か。
時計業界歴18年。