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よくわかるパイロットウォッチ。その魅力や歴史、人気モデルを解説
最終更新日:
航空計器として、そして時には宇宙での使用を見据えて、日々進化を続けるパイロットウォッチ。 優れた性能に加えて、機能美を存分に感じられる「カッコイイ」外観が魅力的な腕時計です。
とは言えパイロットウォッチ、広く普及している定義のようなものはなく、「カッコいい」ということ以外わからない、なんてことも?
パイロットウォッチとは、人類の空への挑戦の歴史そのものであり、今なお我々の人生―日常も、冒険も―をナビゲートしてくれる相棒のような存在です。
この記事ではパイロットウォッチの歴史や性質について解説するとともに、東京 銀座の高級時計専門店でよく売れるパイロットウォッチ12選をご紹介いたします!
目次
パイロットウォッチとは?
パイロットウォッチとは、文字通り「パイロットが使うことを想定した腕時計」を指しますが、冒頭でも述べているように、特に定義などはありません。
近年、ドイツ国内では後述するジンが音頭を取って標準化に乗り出しており、2016年にはパイロットウォッチの新規格となるDIN8330が発表されましたが、まだ一般的ではないと言っていいでしょう。
しかしながらパイロットウォッチと言った時、飛行機のコックピットという特異な空間においても機能を損ねないこと。窓からの強い太陽光にも、逆に暗闇でも、また操縦桿から手が離せない緊急時でも高い視認性を確保することなどが条件として挙げられます。
詳しく解説致します。
パイロットウォッチってどんな時計?
「パイロットウォッチとして特化させた機能」としてよく挙げられるのは、下記のような機能です。
- 視認性(どんな状況でもすぐに時刻を確認できる。暗所にも対応できるよう、針・インデックスには夜光塗料が、一方で太陽光下でも光の反射を抑えるよう、風防には無反射コーティングが施される)
- 堅牢性(気圧の変化や温度変化に耐えられる)
- 操作性(操縦を損ねないまま、あるいはパイロット・グローブをつけたままでもリューズや回転ベゼルを操作できる)
- 耐磁性(コックピットの機器から放たれる高磁気に耐えられる)
これらは日常生活においても、あるととても便利ですよね。毎日の仕事で、ガンガン使っても安心して末永く使うことができるためです。
こういった基本の機能の他、フライトコンピュータやクロノグラフ、あるいは回転ベゼルが搭載されたワンランク上のパイロットウォッチもブランドによってはラインナップされております。
もっとも「パイロットウォッチ」と言った時、その歴史的背景にこそアイデンティティがあるように感じます。
歴史を紐解くと、パイロットウォッチのパイロットウォッチたる所以が見えてきます。
パイロットウォッチの歴史
1903年、ライト兄弟が世界で初めての有人飛行に成功(厳密には、動力付き航空機で、パイロット搭乗のもと継続的に行われた初の飛行)して以降、人類は「空」という未知の領域へと踏み出していくこととなりました。
ライト兄弟は「ライトフライヤー号」によって、最大約1分間、200メートル以上の飛行を実現。以降、人々は「より長く、より高く」飛ぶことへの憧憬を現実のものとしていきました。
パイロットウォッチは、この空への歴史とともに歩みを進めていきます。
1904年、貴族であり飛行家でもあったアルベルト・サントス・デュモン。彼がカルティエに「飛行中でも容易に時刻を確認できる時計が欲しい」という依頼をしたことから「サントス」が誕生した逸話は有名ですが、この「サントス」はしっかりとラグを備えてケース・ベルトを固定した、本格的な男性用腕時計の黎明でもありました。
出典:https://www.cartier.jp/
と言うのも、当時は懐中時計が主流であり、腕に巻くとしても懐中時計にそのままストラップをつける、といった体が多かったこと。またジュエリーアクセサリーとして腕に時計を巻くのはもっぱら女性であったことが背景として存在します。
ちなみにカルティエの現行サントスはドレッシーな印象をも持ち合わせますが、高い耐磁性能を備えます。
もっとも航空史を、そしてパイロットウォッチ史を大きく進化させたのは戦争です。
とりわけ第一次世界大戦は、人類初の総力戦であり、これまでになかった新兵器が実践に投入されました。
偵察機や戦闘機として航空機器が用いられるようになり、「より長く、より高く」から「より長く、より速く」といった性能面の進化が顕著となっていきます。
また、第一次世界大戦は標準時間の重要性の普及にも一役買い、腕時計が一般市場にも浸透していくこととなりました。
そんな中、パイロットらも時計を装備するようになりますが、コックピットにクロックやポケットウォッチを置くことでまかなうことも珍しくなく、あまり利便性が高いとは言えない状況でした。
こういった時代の要請もあり、各時計ブランドはパイロットウォッチの製造に着手します。
この時代の特筆すべきパイロットウォッチと言えば、ロンジンのアワーアングルウォッチです。
出典:https://www.longines.jp/
1927年、大西洋単独無着陸飛行という偉業を成し遂げたチャールズ・リンドバーグ。この偉業に際し、ナビゲーションウォッチの必要性を強く感じたのでしょう。1928年にロンジンがフィリップ・ヴァン・ホーン・ウィームス米海軍大佐と協力して開発したウィームス・セコンドセッティングウォッチを見たことをきっかけに、彼はロンジンに冒険をいっそうサポートするナビゲーションウォッチの作成を依頼しました。
※ウィームス・セコンドセッティングウォッチ・・・超高速の飛行にも対応できる、秒単位計測を可能としたパイロットウォッチ。針ではなく、中央の回転ディスクに備わった秒目盛りを動かすというのがこのウォッチの特徴。これによって時計の動きを止めることなく秒針を合わせられるため精密な計測が可能となりました。
ロンジンはウィームス・セコンドセッティングウォッチをもとに、リンドバーグウォッチとも称されるアワーアングルウォッチを開発します。
アワーアング(時角)は天体の位置を示す値で、文字盤・ベゼルの目盛り等によって経緯度を割り出すことで現在位置を把握できる機能を備えた時計ということです。まさに航空に特化した、正真正銘のパイロットウォッチと言うことができますね。
なお、ウィームス・セコンドセッティングウォッチもアワーアングルウォッチも近年、ともにロンジンからリバイバルされており、今なお伝説的な存在であることが垣間見えます。
さらに1936年にはIWCが、後にマーク9として親しまれるスペシャル・パイロット・ウォッチ(当初は民間航空会社向け)を。1941年にチュチマが、後にドイツ空軍に制式採用されたフリーガークロノグラフを。1942年にはブライトリングが回転式計算尺を搭載させたクロノマットを発表する等、現代にも続く銘パイロットウォッチが生み出されることとなります。
出典:https://www.iwc.com/jp/ja/company/history.html
第二次世界大戦の終結後も、航空史の進化は止まりません。
大戦時に発明されたジェット機により、「より速く、より遠く」を可能とした飛行が一般化。これによって戦後は旅客機の改良が急速に進み、大型化もまた促進。「よりたくさんの人々を運べる」画期的な航空機として進化していき、1970年代にはジャンボジェットが登場したことなども相まって、わが国でも海外旅行が一大ブームとなりました。
そのような中でパイロットウォッチ市場も堅調で、1948年にはIWCからマーク11が登場。また1952年には回転計算尺搭載ウォッチを進化させたナビタイマーがブライトリングから。さらに大陸を超えるような移動が一般化していったため、第二時間帯表示を可能としたGMTマスターが1955年にロレックスから発表される等といった系譜をたどりました。
こういった歴史を鑑みるに、すなわちパイロットウォッチとは、人類の空への挑戦をサポートするために進化してきた究極のツールウォッチと言えるのではないでしょうか。
なお、現在、この1930年代~1950年代に生まれた銘パイロットウォッチが、各メーカーからリバイバルされています。
この時代から大きくデザインを変えていないモデルもラインナップされており、パイロットユースに特化させた時計が、結果として「武骨」「男らしい」イメージを確立するに至り、結果としてデザイン面でも支持を得るようになっているのでしょう。
この時代ならではの小さめケースやヴィンテージな風合いも素晴らしいですね。
そのような銘パイロットウォッチの数々を次項ではご紹介いたします。
おすすめパイロットウォッチ①IWC マークシリーズ
パイロットウォッチと言えばIWCの名前がまず挙がるのではないでしょうか。
前述の通り、1936年にスペシャル・パイロット・ウォッチを世に送り出したIWC。
1930年代という早い段階からこのパイロットウォッチは耐磁性脱進機を備えており、さらに高い気密性や温度特性を有する等、コックピット事情に特化した造りをしていたことが大きな特徴です。IWCはしばしば質実剛健なものづくりで賞賛されますが、その歴史的名作からも、その職人魂は明白ですね。
このスペシャル・パイロット・ウォッチの後継機にあたるW.W.W(Watch、Wrist、Water proof)を経て、1948年にマーク11がIWC史に誕生しました。
出典:https://www.iwc.com/jp/ja/company/history.html
このマーク11こそがIWCの現行マークシリーズおよび現行パイロットウォッチの原型的存在となります。
英国空軍の飛行監視要員向けのパイロットウォッチとして、30年以上に渡って制式採用されました。名称の「マーク」とは英国空軍が自軍の機器に用いていたナンバリングと言われています。ちなみにスペシャル・パイロット・ウォッチをマーク9と称することもありますが、これは後年に使われるようになった通称です。
IWCは1994年、このマーク11をリバイバルし、民生市場に向けてリリースします。それが、マーク12です。
往年のIWCの名作を彷彿とさせるシンプルで視認性の高い文字盤、耐磁性や気密性を維持した堅牢なケース、そしてIWCらしく気品のある作り込みの高さが、パイロットウォッチの中でも絶大な人気を誇る一大コレクションとなっております。
現行はマーク18ですが、生産終了したマーク17やマーク16も比較的よく流通しており、中古価格も落ち着いています。
またスピットファイアやプティプランスなどといった特別モデルも人気です。
売れ筋商品をご紹介致します。
IIWC パイロットウォッチ マーク18 IW327001
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] Cal.35111
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 6気圧防水
[ケースサイズ] 直径40mm
[定価] 572,000円
マークシリーズの現行モデルとして2016年に発表されたのがマーク18です。 IWCウォッチ全体でクラシカル回帰が進んでいますが、こちらも初代モデルを尊重した、IWCファンにもパイロットウォッチファンにもたまらないモデルです。
マーク17で採用されていた3日分の日付表示を1日分に変更し、ケース径は1mm小さい40mmと、よりベーシックな実用時計へと進化しました。
裏蓋のドイツのユンカース社のJu52航空機のエングレーヴィングからは、パイロットウォッチに対するIWCの矜持が伝わってきます
ちなみにメタルブレスレットバージョンや、色違いのマーク18もラインナップされています。
好みにあった一本を選びたいですね。
IWC パイロットウォッチ マーク18 プティプランス IW327016
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] Cal.35111
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 6気圧防水
[ケースサイズ] 直径40mm
[定価] 693,000円
IWCのパイロットウォッチの中でも、特に人気の高いプティプランスシリーズ。
プティ・プランス(Le Petit Prince)は、『星の王子様』の原題です。『星の王子様』『夜間飛行』などを手掛けた作家であり、パイロットでもあったアントワーヌ・ド・サンテグジュペリ氏に敬意を表して、IWCはプティ・プランスシリーズを展開してきました。
プティ・プランスシリーズの特徴は、夜空を思わせるミッドナイトブルー文字盤。そして裏蓋にエングレービングされた星の王子様です。
IWC マーク15 マークXV IW325307(3253-07)
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] Cal.37524
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 6気圧防水
[ケースサイズ] 直径38mm
[定価] –
歴代マークシリーズそれぞれの大きな違いは「サイズ」ですが、こちらは直径38mmがオシャレなマーク15です。1998年~2000年頃まで製造されました。
マーク12まではジャガールクルト製Cal.889がベースムーブメントとして用いられてきたものの、マーク15ではにETA製Cal.2892A2をベースに。いっそう実用的なパイロットウォッチとして進化しました。
ちなみに2000年に発表されたマーク16で直径39mmに、2012年に発表されたマーク17で直径41mmにケースがアップサイジングされております。
いずれも前述の通り流通しておりますので、好みや腕周りに合わせて選びたいですね。
おすすめパイロットウォッチ②IWC パイロットウォッチ クロノグラフ
もう一つIWCからご紹介したいのが、パイロットウォッチ クロノグラフです。
その名の通りクロノグラフが搭載されたシリーズで、IWCの高級パイロットウォッチにメカニカルな印象が備わった逸品となります。
41mmケースと43mmケースの2サイズを基幹モデルとしつつ、素材や文字盤デザインが豊富にラインナップされているコレクションの一つでもあります。
さらにマークシリーズが黒・白・青といったオーセンティックな文字盤カラーであることに対し、パイロットウォッチ クロノグラフでは近年のラインナップで明るい緑やブラウンといった遊び心溢れるデザインが楽しめるため、「渋いパイロットウォッチも良いけど、オシャレな印象も演出したい」といった方にお勧めです。
このようにIWCは「パイロットウォッチ」をシリーズ化し、しかも例年数多くの機能・デザインのモデルを世に送り出していることからも、力の入れようは他社とは一線を画すことがわかりますね。
とりわけクロノグラフが搭載したこのシリーズは、シンプルな外観ながらも抜群の耐磁性を誇る軟鉄性インナーケースや、正確性の高いクロノグラフ・ムーブメントなどIWCの技術を込めたロングセラー。 機械式時計の大敵である磁力に満ちた現代社会にも、IWCの技術は注目されています。
IWC パイロットウォッチ クロノグラフ IW377710
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] Cal.79320
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 6気圧防水
[ケースサイズ] 直径43mm
[定価] 836,000円
オーソドックスでクラシカルなクロノグラフ搭載のパイロットウォッチです。
43mmはやや大型なようにも思いますが、IWCらしいスタイリッシュさが全面に押し出されているため、言うほど重さは感じません。
なお、ブレスレットのクラスプ中央部の「IWC」のロゴ部分を押すと簡単に長さの微調整ができるのも嬉しいポイントです。
出典:https://www.iwc.com/ja/collection/pilots/IW3777-2016/
裏蓋にエングレービングされるユンカース社の「Ju52航空機」もまたIWCのパイロットウォッチ クロノグラフならでは。
搭載するムーブメントCal.79320は最大12時間までの総合タイム計測を可能と、非常にハイスペックとなっております。
IWC パイロットウォッチクロノグラフ41 IW388102
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] Cal.69385
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 10気圧防水
[ケースサイズ] 41mm
[定価] 913,000円
2021年に発表された、41mmサイズのパイロットウォッチ クロノグラフです。
SIHH2019でも「スピットファイア」の特別モデルとして当該サイズがリリースされましたが、2021年にレギュラーモデルとしてもラインナップされることに。43mmだとちょっと大きい、と思っていた方にとっては朗報でしたね。
さらに防水性は10気圧へ、搭載ムーブメントを自社製のCal.69380へとアップデートしたことで、いっそうの高性能を備えることとなりました。
さらにパイロットウォッチ クロノグラフ41ではストラップのクイックチェンジシステムも新たに搭載され、タウンユースにも楽しめる一本に仕上がっております。
おすすめパイロットウォッチ③ロンジン ヘリテージ アヴィゲーション
出典:https://www.longines.com/jp/watches/sport/avigation/heritage-avigation
パイロットウォッチに欠かせない存在である、ロンジン。
翼と砂時計で構成されたロゴは、革新と伝統を表していると言います。事実ロンジンは先進技術を追求しつつも、過去の自社の遺産を存分に活かしたコレクション展開によって、ファンを大いに増やしているブランドでもあります。
とりわけ「ヘリテージ」シリーズは、過去ロンジンが手掛けてきた名作を現代技術で復刻した人気コレクション。往年のヴィンテージらしい風合いを楽しめるヘリテージのようなコレクションは、歴史あるロンジンだからこそできるラインナップと言えるでしょう。
そんなヘリテージ、当然パイロットウォッチからも復刻が果たされています。その名もヘリテージ アヴィゲーション。
アヴィゲーションとは「ナビゲーション」と航空を意味する「アヴィエーション」を組み合わせた造語で、前述したセコンドセッティング・ウォッチやアワーアングルウォッチを始め、ロンジンの過去の名作を現代スペックでお楽しみ頂けます。
ロンジン アヴィゲーション タイプA-7 L2.812.4.23.2
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] Cal.L788
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 3気圧防水
[ケースサイズ] 41mm
[定価] 453,200円
1935年にロンジンから製造されたパイロットウォッチを復刻したのが、こちらのタイプA-7です。40度に傾いた文字盤が非常に特徴的ですね。
これは、コックピットでパイロットが手首の内側に装着することを想定した設計になっているとのこと。これによってコックピット内でパイロットが操縦桿を握りながらも、腕を大きく動かすことなく現在時間が確認できると言うわけです。
クロノグラフが搭載されながらもシングルプッシュ式であるため、フォルムを邪魔しないのも素晴らしいですね。
レトロな雰囲気満載の、特別なパイロットウォッチとなっております。
ロンジン アヴィゲーション ビッグアイ L2.816.4.53.2
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] Cal.L688
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 3気圧防水
[ケースサイズ] 41mm
[定価] 371,800円
もう一つ、ヘリテージ アヴィゲーションからご紹介したいのは、こちらのビッグアイです。2021年に発表されました。
前述したタイプA-7とは一風異なり、オーセンティックなパイロットウォッチといった印象ですね。
もっとも、3時位置の、文字盤の大きい部分を占める30分積算計に目を奪われるかもしれません。「ビッグアイ」の名も、このレイアウトに由来しています。
なお、ビッグアイも1930年代にロンジンが製造していたパイロットウォッチをリバイバルした逸品となります。
夜光塗料がたっぷり施された力強く視認性高い文字盤・針は、パイロットウォッチかくあるべし、といった様相です。
おすすめパイロットウォッチ④ロレックス GMTマスターII
ロレックス唯一のパイロットウォッチでありながら非常に高い人気を誇るGMTマスター。
GMTとは、Greenwich Mean Time(グリニッジ標準時)の略であり、かつての国際的な基準時刻および世界各地域の標準時の基準でした。 転じて時計産業では、24時間針(GMT針)と24時間目盛によって、ホームタイムを始めいくつかのエリアの時間帯を同時に表示できる機能を指します。
パイロットのみならず今や世界中を飛び回ることの多い現代のメンズには非常におすすめできる機能。 また、ロレックスのGMTマスターの人気は、何といっても外観のカッコよさにあると言えます。
とりわけ2007年から搭載され始めたセラクロムベゼルが、武骨一辺倒なことも多いパイロットウォッチに、現代的な高級感を加えることとなりました。
GMTマスターにはIとIIの系譜が存在し、GMTマスターIは異なる2つの時刻を同時に確認できるモデルで1999年に生産終了しています。現在は3か所の時刻表示を可能にするGMTマスターⅡのみのラインナップです。
ちなみにロレックスのパイロットウォッチ・GMTマスターIIならではの現象・・・それは、近年世界的な需要が高まりすぎて、定価を超えるプレミア価格が続いているということ。例えば現行モデルの126710BLROおよび126710BLNRの定価は1,189,100円(ジュビリーブレス)ですが、新品並行相場は前者が300万円超、後者が260万円超を記録しています。
この相場の勢いはとどまるところを知らず・・・これほどまでに価値を持つのは、ロレックス人気の高まりはもちろんのこと、パイロットウォッチらしい堅牢性や高スペックなど、多くの顧客のニーズを満たすことに成功しているからに他なりません。
ただ、需要が集中しすぎて並行店でもなかなか出回らない状態・・・そのため、本当に欲しい方は出会ったらすぐにご決断されることをお勧めいたします。
ロレックス GMTマスターII 126710BLRO
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] Cal.3285
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 100M防水
[ケースサイズ] 直径40mm
[定価] 1,189,100円(ジュビリーブレス)/1,166,000円(オイスターブレス)
2018年にリリースされ、以来需要が集中し続けている126710BLRO。GMTマスターの頃にあった赤青ベゼル―通称ペプシ―をリバイバルしたことで話題になりました。
ロレックスの最新ムーブメントCal.3285を搭載していることもミソです。構造が一新されたことによりパワーリザーブが70時間に延長されました。
ちなみに翌年にローンチされた青黒ベゼル―通称バッドマン―も大変高い人気です。
どちらも発売当初はジュビリーブレスのみだったものの、2021年にはよりスポーティーなオイスターブレスも登場。
いずれも人気が高く、ロレックスを代表するモデルとなっております。
ロレックス GMTマスターII 116710LN
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] Cal.3186
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 100M防水
[ケースサイズ] 直径40mm
[定価] 864,000円(116710BLNRは918,000円)
前世代のGMTマスターIIです。こちらは2019年に126710BLNRが出たことで廃盤した、現行にはない黒ベゼルタイプ。
ロレックスは生産終了するとファンから買いが集中し、相場を大きく上げるものですが、こちらは2007年以来10年以上製造されていたため比較的流通量が多く、長らく相場を上げきっていませんでした。
しかしながらジワジワと確実に値上がりを続け、現在では中古であっても200万円前後のプライスレンジに。
パイロットウォッチらしいスペックは十分ですので、かなりねらい目の一本と言えるでしょう。
おすすめパイロットウォッチ⑤ブライトリング クロノマット
前項でもご紹介したように、1942年に回転計算尺を搭載した、画期的なパイロットウォッチ「クロノマット」。しかしながら現行クロノマットに回転計算尺は受け継がれず、代わってナビタイマーが存在しています。
実はクロノマットの名前が再びブライトリング史に登場するのは1984年のこと。
そしてこのクロノマットは、当時クォーツ時計が発売されて苦境にあえいでいたブライトリングを救った立役者でもあります。
当初はイタリア空軍のアクロバット飛行チーム「フレッチェトリコローリ」の公式クロノグラフへの応募の一環として開発されたのですが、「クォーツショックを巻き返すために」、当時ブライトリングで経営に携わっていたアーネスト・シュナイダー氏が、「全く新しい機械式クロノグラフ」というコンセプトをも盛り込み、それが見事市場で大受けした、という経緯があるのです。
大受けしたポイントは、何よりもそのタフな造りでしょう。
ベゼルの上下左右に設置された取り外し可能なライダータブ(初期モデル。現行では搭載されていないものもあり)、大きなグローブを着けたままでも操作できる回転ベゼル、飛行の際に上空での太陽光の反射を防ぐ為に施された両面無反射コーティング、服に引っかからないフォルムのラグなど、あくまでパイロットの実用性を考えたプロユースを意識して造られています。
また、堅牢性を確保するためにもとてもボリューミーで、存在感は抜群。重厚かつ精悍、男らしい印象を持ちます。
外観のインパクトに加えて、プロスペックを有することは、「こだわり」あるメンズに着けてほしくなるパイロットウォッチです。
ブライトリング クロノマット44 A011B56PA(AB0110)
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] 自社製Cal.B01
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 500M防水
[重さ] 217g
[ケースサイズ] 直径44mm×厚さ17.1mm
クロノマットにはいくつかの系譜がありますが、2009年の誕生以来、クロノマットの顔を張ってきたのが、デカ厚の真骨頂・クロノマット44です。さらにこちらのモデルは自社製ムーブメントCal.B01を搭載した、同社のフラグシップにもあたる一本です。 約70時間のパワーリザーブ、24時間早送りを可能にしたカレンダー機構などさらなる進化を遂げていますが、特筆すべきはその防水性能です。なんと、500m!!
この数値はパイロットウォッチとしては驚異的。 ダイバーズウォッチの分野でも頭角を現わしているブライトリングならではですね。
ケース径44mm、200g以上のずっしりとした重量を持ちますが、Cal.B01は従来のものより薄型のため、威厳あるデカ顔とはうらはらにスリムでスタイリッシュな一本であることも人気の秘訣です。
ブライトリング クロノマット41 A014G11KBA(AB0140)
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] 自社製Cal.B01
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 300M防水
[重さ] 148g
[ケースサイズ] 直径41mm
「44mmだとちょっと大きいかも・・・」そんな方は、41mmにダウンサイジングされたこちらがお勧めです。
小さくなったとは言え自社製ムーブメントを搭載していますので、スペック面で大きく劣るということもありません。ちなみにこちらはラバーベルトが採用されており、実用性がいや増しています。
水仕事が多い、という方にもお勧めの一本です。
おすすめパイロットウォッチ⑥ブライトリング ナビタイマー
前項でも述べたように、やはりブライトリングのパイロットウォッチと言えばナビタイマーを思い浮かべる方が少なくないでしょう。ナビタイマーは1952年、もともと登場していた回転計算尺付きパイロットウォッチ「クロノマット」を進化させて登場。世界パイロット協会AOPAの公式時計に認定されました。
実は第二次世界大戦下で登場したクロノマットは、現行ナビタイマーに近いようなデザインをしていました。なぜかと言うと、フライトコンピュータが搭載されていたためです。
フライトコンピュータとは航空用計算尺とも呼ばれ、上記画像の文字盤上に記載された細かな数字に象徴されます。実生活で使うことはほとんどありませんが、飛行機乗りたちにとっては必ず使いこなせなくてはならない機器。もしコックピットの電気系統が全滅してしまった場合でも、ナビタイマーの航空計算尺さえあれば飛行距離や速度を測って帰還することが可能です。また、メカニカルな印象が強まり、ブライトリングが大切にする「時計ではない、計器である」といったコンセプトを上手に表現されている、ということでも話題です。
ナビタイマーもまた長い歴史の中で様々な派生モデルが登場していますが、近年ではクロノグラフを取り払い、価格帯を抑えたオートマティックモデルを登場させたり、小径ケースを採用したりとスタイリッシュさを基調としています。
そのため、ファッション性重視のメンズに是非選んでいただきたい一本です。
ブライトリング ナビタイマー01 A022B02NP(AB0120)
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] 自社製Cal.B01
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 30M防水
[重さ] 157g
[ケースサイズ] 直径43mm×厚さ14mm
クロノマットの項でもご紹介しましたが、ブライトリング渾身の自社ムーブメントB01搭載機が基幹モデルとなります。
当店でも様々なナビタイマーの新作が出る中、常にトップクラスの売れ筋に入っており、ブライトリングと言えばこのモデルを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。
マットブラックのベースにフライトコンピュータがとてもメカニカルで、計器然としたハンサム顔。43mmとやや大きめのサイズが、むしろ男らしさに拍車をかけます。
ただ、生産終了していおり、決して流通量が少ないモデルではありませんが、本当に欲しい方は出会った時に迷わず買ってしまうことをお勧めいたします。
ブライトリング ナビタイマー オートマティック38 A165C-1WBA(A17325)
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] ブライトリング17
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 30M防水
[重さ] 60g
[ケースサイズ] 直径38mm×厚さ10mm
2018年に「新しいナビタイマー」として登場した最新世代がこちら。モデル名に「1」がついていますが、こちらは自社製ムーブメントB01ではありません。最新世代がリリースされた時、フライトコンピュータがついていない「ナビタイマー8(現在はアビエーター8)」も同時リリースされ、それと区別するために1が着けられました。
クロノグラフはナビタイマーの象徴でもありましたが、それがなくなってスッキリ&スタイリッシュになったモデルも、これはこれでステキです。38mmと最近流行りの小径ケースですので、スーツスタイルにビシっと着けこなしたいという方はこちらをぜひ選んでいただきたいな、と思います。
また、クロノグラフが付いていない分、新品30万円程度~とブライトリングにしてはリーズナブル。初めてブライトリングに挑戦する20代・30代男性にも自信を持ってお勧めできます。
おすすめパイロットウォッチ⑦ブレゲ タイプXX アエロナバル
時計界の雲上ブランドとして君臨するブレゲ。 「時計の歴史を200年早めた」と名高い天才時計師アブラアン=ルイ・ブレゲを創始者とし、高度な技術力と気品溢れる美しさは他のブランドとは一線を画す超高級時計メーカーです。
そんなブレゲが展開するパイロットウォッチが、アエロナバル。 正式名称はタイプXX(トゥエンティ―) アエロナバルですが、ルーツは海軍航空隊にあります。
フランス海軍航空部隊のために1950年代に設計された「タイプXX」が、手巻きから自動巻きムーブメント搭載の民間用時計として現代に復刻したのです。 パイロットウォッチの代表的機能であるフライバッククロノグラフムーブメントもそのまま復活する運びとなりました。
ちなみにパイロットウォッチとは言え、ブレゲらしいクラシックなデザイン、上品なディテールをも備えるところが、さすがです。
パイロットウォッチはかっこいい反面、スーツスタイルに合わせることに躊躇してしまうスポーティーさを持つものもありますが、アエロナバルであればその心配は無用ですね。むしろ、ちょっと良いパーティーシーンに着けていっても周囲から見劣りしないでしょう。
なお、似たモデルで「トランスアトランティック」もありますが、こちらはアエロナバルのデイト搭載機です。トランスアトランティックではデイト表示が搭載され、デザイン面でもモダンな印象が強くなります。
ブレゲ タイプXX アエロナバル 3800ST/92/9W6
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.]Cal.582
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 20気圧防水
[ケースサイズ] 直径40mm
[定価] 1,166,000円
40mmというちょうどよいケースに、マットブラックの文字盤が男らしい一本です。とは言えケースの出来栄えや丁寧な仕上げはブレゲらしい仕事。ポリッシュでツヤがだされたボディは、高級感を醸し出します。
ちなみにムーブメントには1950年代当時のレマニア製フライバッククロノグラフが採用されており、時計好きにもまたたまらない仕様。
ブレゲはラグジュアリーメゾンゆえ、大量生産とは無縁。そのため生産量はそう多くないゆえ、中古であっても70万円台~が相場となります。しかしながら、その高級感と高級機らしい風格はブレゲならでは。
どんな高級スーツにもマッチする、高級パイロットウォッチと言えるのではないでしょうか。
ブレゲ アエロナバル 3800BR/Y2/3W6
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.]Cal.582
[ケース材質] ローズゴールド
[防水] 20気圧防水
[ケースサイズ] 直径39mm
[定価] –
ローズゴールドを素材に使用し、スポーティー・高級感、そして気品がオールインワンになった一本です。
今ランキングの中でも、ミリタリーテイストと高級感を最も上手に両立しているモデルと言えるのではないでしょうか。 現行モデルではRef.3800ST/92/SW9が製造されているため、希少価値の高さも注目です。
おすすめパイロットウォッチ⑧ゼニス パイロット タイプ20
出典:https://www.instagram.com/zenithwatches/
あらゆる一流から愛され続けてきたゼニス。国内芸能人でも愛用者が多く、俳優の山田孝之さんや沢村一樹さん、谷原章介さんなどがその名に連ねています。また、ルパン三世の次元大介も、ゼニスのクロノマスターを作中で身に着けているとか。
なぜゼニスがこれほどまで一流から評価されるか。その理由の一つは、一流のムーブメントにあると言って良いでしょう。
ゼニスはまだ自社でムーブメント製造を行うことが一般的ではなかった20世紀初頭(当時はムーブメント会社に外注することが普通だった)から既にマニュファクチュールと呼ばれる、自社一貫製造の生産ラインを確立し、高品質なムーブメントを安定して供給してきました。特にクロノグラフ生産には一家言持っています。とりわけ1969年に登場したエルプリメロは、自動巻きクロノグラフに先鞭をつけるとともに、50年経った今なお歴史的名機。このエルプリメロをベースに、数々の名作を打ち出しています。ちなみにロレックスのデイトナやパネライにも、かつてエルプリメロベースのムーブメントが搭載されていました。
出典:https://www.instagram.com/zenithwatches/
そんなスイス屈指の老舗マニュファクチュラーとしてゼニスが展開するパイロットウォッチ。 空との関わりは印象に薄いと思われがちな同社ですが、英仏海峡横断飛行を成し遂げたルイ・ブリレオ氏や、世界初の時速100km飛行に成功したレオン・モラール氏など、1900年代始めに活躍し、歴史上に名を遺したパイロットたちがゼニスのパイロットウォッチを実際の飛行中に使用しました。また、文字盤上にPILOTと表記できるのはゼニスだけ、という事実も意外と知られていません。
パイロットウォッチにもいくつかの種類がありますが、ゼニスおすすめはタイプ20。グローブを付けたままでも操作しやすいビッグシェイプなオニオンリューズと、視認性を最大限考慮された大振りの針・アラビア数字がタイプ20の特徴です。
シンプルな中にもヴィンテージ感があふれ出ており、パイロットウェアにもスーツスタイルにもとてもマッチする逸品と言えるでしょう。
ゼニス パイロット タイプ20 エクストラスペシャル 03.2430.3000/21.C738
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.]Cal.3000
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 100M防水
[ケースサイズ] 直径45mm
[定価] 518,400円
前述したルイ・ブリレオ氏が装着していた時代の、ゼニス パイロットウォッチへのオマージュとして誕生したのがこちらです。2012年に一度スペシャルエディションとして限定販売されましたが、大好評だったためか2014年に正式にゼニスのラインナップに仲間入りしました。
センターセコンドのシンプルな3針モデルながら、45mmとボリューミーなケースが特徴的。 ムーブメントにはお手頃価格のセリタベースCal.3000を搭載しており、抜群のコストパフォーマンスを発揮します。
裏蓋にはゼニスのロゴと、ルイ・ブリレオ氏が搭乗していた航空計器のエングレーヴィングがあしらわれ、なんとも味わい深い一本に。
生産終了しており、そうたくさん出回るモデルではないため、出会った時が買い時です!
ゼニス パイロット タイプ20 クロノグラフ エクストラスペシャル 29.2430.4069/21.C800
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.]エルプリメロ4069
[ケース材質] ブロンズ
[防水] 100M防水
[ケースサイズ] 直径45mm
[定価] 924,000円
最近流行りのブロンズをあしらい、より往年の名パイロットウォッチを思わせる風合いを獲得した、2017年登場のパイロット タイプ20です。
2カウンタークロノグラフのため、スッキリみやすく、それでいて男らしさも感じさせる逸品です。
なお、こちらは汎用ムーブメントではなく、ゼニスが誇るエルプリメロを搭載しているため、パイロットウォッチが欲しい、といった方はもちろん、高精度な時計が欲しいといったニーズも満たしてくれる逸品です。
エルプリメロ搭載というっことで若干お値段はお高めで定価924,000円。とは言え、お値段以上の価値があることは間違いありません。
おすすめパイロットウォッチ⑨ハミルトン カーキ アビエーション
出典:https://www.instagram.com/hamiltonwatch/
アメリカ生まれという珍しい経歴を持つブランド・ハミルトン。現在はスイスに本社を構えますが、アメトラ(アメリカン・トラディショナル)感溢れるデザインは同社の持ち味。また、アメリカらしくシンプルで合理的な機能が大切にされており、奇抜な機構や超複雑なコンプリケーションなどはないものの、質の高い時計製造を貫き通している面もあります。
一方で「映画界から愛されるブランド」という一面を持つことでも有名。『ダイ・ハード』を始めとするアクションから『さらば、ベルリン』の社会派作品など、400を超えるハリウッド映画に登場しました。
そんなハミルトン、1919年航空海上用時計がワシントンとニューヨーク間の航空郵便サービスに採用され、以来大手航空会社の公式ウォッチを担っているという、業界が認めるパイロットウォッチの名手。ちなみに日本が誇るJALもハミルトンをオフィシャルウォッチに制定しています。
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ハミルトンと言えばオシャレなジャズマスター、斬新なベンチュラなどが有名ですが、産業・軍事両面で活躍してきたのはカーキシリーズです。
「海」「陸」「空」ごとにそれぞれカーキ ネイビー、カーキ フィールド、カーキ アビエーションに分類され、パイロットウォッチにあたるカーキ アビエーションがとにかくかっこいいと話題なのです!
実際に第二次世界大戦の米軍御用達であった時計をリバイバルした、という経緯もあってか、頑丈でハイスペックという機能面もまた特筆すべき点です。
なお、優れたコストパフォーマンスを誇ることもまたハミルトンの人気の秘訣で、ハイスペックにもかかわらず並行輸入店であれば10万円台で手に入る個体は少なくありません。
ハミルトン カーキ アビエーション パイロット パイオニア H76455133
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.]Cal.H-10/パワーリザーブ約80時間
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 10気圧防水
[ケースサイズ] 直径41mm
[定価] 126,500円
第二次世界大戦下の1940年代、実際に使用されていた空軍用時計をモチーフとしたモデルです。 このケースは左右が非対称になっていますが、これは軍用時計によくある仕様。実際に装着してみると、腕を傾けなくとも時刻に目がいきやすく、視認性への心遣いを感じます。
ちなみに搭載するムーブメントH-10はハミルトンの次世代機で、80時間ものロングパワーリザーブが自慢です。
ハミルトン カーキ パイロット H64715545
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.]Cal.H-30/パワーリザーブ約80時間
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 20気圧防水
[ケースサイズ] 直径46mm
[定価] 122,100円
20世紀初頭の「パイオニア」に敬意を表して開発された、エメラルドグリーンが美しいカーキシリーズです。
46mmという大型ケースのため、スーツの袖口からも否応なしに存在感を発揮します。
デイデイト表記ですので機能性もバッチリで、スペック重視の王道パイロットウォッチといった様相でしょう。
おすすめパイロットウォッチ⑩ジン 103シリーズ
出典:https://www.instagram.com/sinn_spezialuhren/?hl=ja
先ほどから何度か言及しているジン。
ドイツの時計メーカーですが、その創業者ヘルムート・ジン氏の出自はパイロットであり、『使うためだけの時計作り』 を企業理念にしてきた、世界的に見ても稀有なブランドとなります。ブランドの正式名称がドイツ語でジン スペツィアルウーレン ジン特殊時計会社、というところに、その質実剛健さがにじみ出ていますよね。
独自の開発ノウハウを持ち、伝統的で精緻な職人技と革新性を一体化させることによって、身に着ける人が生涯信頼できる時計を製作し続けています。
ちなみに現在ジンのCEOであるローター・シュミット氏はIWCでも手腕をふるった実力者で、新しい技術開発に取り組み、ジン独自の「特殊時計」という地位をさらに強固なものにしました。
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『使うためだけの時計』というコンセプトがあるため、外観はシンプルで洗練されたカッコよさが特徴。無駄な装飾は一切せず、視認性と実用性を追求したモデルがほとんどです。
なお、ジンのシリーズは創業者が作り始めたパイロットウォッチのDNAを引き継ぐ個体も多く、どのモデルが最もパイロットユースに優れている、と明言することは非常に困難です。むしろ、どのモデルも十分すぎる堅牢性・耐磁性を有しており、それでいて特殊技術によって分厚さはなく、腕に巻くことが前提となったスタイリッシュさをも持ち合わせます。
しかしながら、あえて特筆するとしたら、それは103シリーズです。
1960年代にドイツ空軍クロノグラフとして制式採用されたモデル155の伝統を踏襲したクロノグラフ搭載の当シリーズは、同社が「ジンの基本精神を表す」と自負しています。
ジン 103シリーズ 103.B.SA.AUTO
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.]Concepto C99001
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 20気圧防水
[ケースサイズ] 直径41mm
[定価] 484,000円
均整のとれたシンプルな美しさとジンの哲学を体現したかのような性能が、とりわけ高い人気を誇る一本がこちらです。
耐久性高いステンレス製ケースやねじ込み式リューズ、サファイアクリスタルの風防など、必要最小限のスペックを突き詰めており、加えて「絶対に外れないと話題の特殊結合方式回転ベゼル」や「除湿機構Arドライテクノロジー」など、ジンならではの特殊技術も満載されます(ただしArドライテクノロジーは2018年デリバリー分から。見分け方としては文字盤にArのロ赤いロゴの有無)。
ジン 103シリーズ 103.TI.AR
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.]Cal.7750(バルジュー)
[ケース材質] チタン
[防水] 20気圧防水
[ケースサイズ] 直径41mm
[定価] –
先ほどご紹介した103シリーズと同スペックですが、チタンを使うことでステンレススティール製モデルに比べて2割ほど重量を減らすことに成功したモデルです。ちなみにIWCでチタン加工ノウハウを育てたのは、何を隠そうローター・シュミット氏だとか。
軽量で堅牢なため、アクティブなシーンにも活躍してくれることでしょう。
おすすめパイロットウォッチ⑪オリス アヴィエーション ビッグクラウン
出展:https://www.instagram.com/oris/
次にご紹介するのは、オリスのビッグクラウンです!
オリスとは、全ての時計がスイス人の時計職人によりスイスで作られているという、真のスイス製時計を大切にしてきたブランド。 奇をてらわず、実用性に徹した高品質・高機能の時計を創業から変わらず製造し続けてきました。
そんなオリスの成功を語るうえで、パイロットウォッチの存在は欠かせません。と言うのも、オリスが創業した1904年は、あらゆる産業や軍事が盛隆を描いており、「正確な時間を知ることのできる時計」へのニーズが従来に比べ格段に高くなっていました。前述の通り「高品質・高機能」をモットーとしていたオリスは、とりわけアメリカ空軍を中心にプロパイロットから重宝されることとなったのです。
出展:https://www.instagram.com/oris/
この20世紀初頭に愛されたパイロットウォッチの系譜を引くのがビッグクラウンです。
「アヴィエーション」(航空と言う意味。同社のパイロットウォッチシリーズ)の中の派生モデルとしてラインナップしていますが、オリスにとっては歴史そのもの。初出の1938年の頃のデザインを踏襲した、なんともヴィンテージ感溢れる代物です。
また、精度・性能の高さはもちろん、高度な技術を要するコンプリケーションやポインターデイト(文字盤上に配された日付の数字を、専用の針で指し示すカレンダー機構のこと)を搭載した多彩なバリエーションを展開しています。
さらにオリスの魅力―正統な歴史と優れた品質を誇るにもかかわらず、他の老舗高級ブランドと比べてコストパフォーマンス抜群なことです! 20~30代の、初めて高級時計を視野に入れる若年層のエントリーモデルとしても高い人気です。
オリス ビッグクラウン ポインターデイト 754 7679 4031M
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.]Oris 754 (セリタSW200-1ベース)
[パワーリザーブ] 最大38時間
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 100M防水
[ケースサイズ] 直径40mm
[定価] –
ビッグクラウンの特徴はパイロットが操縦の際、グローブをつけたままでも操作しやすいようにと、大型のリューズを配したところにあります。このオリス独自のリューズがビッグクラウンと呼ばれ、そこから名をちなむようです。
アヴィエーションの1シリーズと言えど、いくつかのバリエーションを持ちます。そんな中で基幹モデルはこちら!丁寧にギョーシェ加工が施された文字盤、コインエッジのベゼルなど、高度な技術が必要とされるクラシカルなデザインが、おしゃれでラグジュアリーな外観です。ポインターデイトも良い味を出しています。
プロパイロットのみならず、ビジネススーツで上品に着けこなせるような風格を有しますね。
ムーブメントには自社製のポインターデイト付き自動巻きCal.Oris Oris 754を搭載。
ちなみにオリスならではのもう一つの特典として、裏蓋から赤いローターと精緻な意匠が鑑賞できることが挙げられます。
この赤いローターは、「高性能の証」として、伝統的に同社で採用されてきました。
これだけ美しい外装・高い性能を誇るにもかかわらず、新品並行相場は10万円程度!驚きのコストパフォーマンスと言えるでしょう。
オリス ビッグクラウン 751 7697 4164M
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.]Oris 751 (セリタSW200-1ベース)
[パワーリザーブ] 最大38時間
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 100M防水
[ケースサイズ] 直径41mm
[定価] –
ビッグクラウンの中でも、メンズに人気の高いブラックダイアルとステンレスブレスレットの組み合わせで、シーンを選ばず愛用できる一本です。
41mmというオーソドックスなケース径や、3針・デイト表示のみのシンプルなダイアルも使いやすいです。
ムーブメントには自社製自動巻きCal.Oris Oris 751を搭載。こちらも裏蓋から赤いローターと精緻な意匠が鑑賞できます。
新品並行相場は10万円程度~。
おすすめパイロットウォッチ⑫ベル&ロス インスツルメント BRシリーズ
ベル&ロスというブランドをご存知でしょうか。
1991年、後述する「ジン」の協力の下、フランスのパリで創業に至った比較的新しい時計メーカーです。
理念は 「形は機能に従う」。すなわち、時計には必ず視認性・機能性・信頼性・高精度の基本原理4つを盛り込むこととし、実際の職業軍人やプロフェッショナルの使用を前提とした高機能の時計をブランドコンセプトとしていました。
特にパイロット仕様には一家言持ちます。もともとジンの創業者の出自が飛行機乗り、ということもありますが、パイロットウォッチらしい機能美を大切にした製品を誠実に作り続けており、ベル&ロスの時計は戦闘機パイロットや宇宙飛行士などプロフェッショナル愛されています。
とは言え誕生当初は「知る人ぞ知る」といった立ち位置でしたが、今回ご紹介する、スクエア型の超斬新なインスツルメンツ BRシリーズが2005年にリリースしたことにより、世界中の著名人がこぞってベル&ロスを身に着けるようになりました。とりわけラルフローレンが惚れ込んだことは時計業界では有名です。
出典:https://www.bellross.com
創業当初から続くオーソドックスなラウンドケース「ヴィンテージ」もラインナップしていますが、やはりベル&ロスと言えばこのインパクト大のこちらが印象的です。
航空機のコックピットクロックをそのまま時計にしたかのような外装は、一目で新しさや独創性が感じられます。ベル&ロス自身も、「コックピットから手元に移動して現代的な美しさを獲得した」と自負するほど。
現行のサイズ展開は46mm(BR01)、42mm(BR03)、39mm(BR S)。また、派生としてケースに優美な曲線を加えた40mmサイズの05シリーズ、ダイバーズラインの42mmサイズもラインナップされています。
「40mm超えるとちょっと大きすぎない?」と思うかもしれませんが、ベル&ロスはフレンチブランドだけあり、奇抜さの中にスタイリッシュもあるのでご安心ください。実際、これだけダイナミックにもかかわらず、ケース厚は約10mm前後。
とは言えスクエア型は結構目立つので、ビジネスシーンで用いる方は、小径の39mm(BR Sシリーズ)にした方が無難かもしれません。一度スーツでご試着のうえ、どんな雰囲気かご確認していただくのが良いでしょう。
ベル&ロス インスツルメンツ BR03-92 ゴールデンヘリテージ
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.]BR-CAL.302
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 100M防水
[ケースサイズ] 直径42mmr /> [定価] 直径42mm
2013年、42mmサイズのBR03シリーズだけに登場した「ゴールデン ヘリテージ」。6年経つ今なおベル&ロスきっての人気モデルです。
1940年代に活躍していた軍用パイロットウォッチにインスピレーションを受けて誕生しました。ベル&ロス特有のスクエアケースに収まってはいますが、マットブラックで視認性に特化した武骨な文字盤、ヴィンテージな風合いの針・インデックス、クラシックな革ベルトが古き良き時代のパイロットウォッチを感じさせます。
42mmケースですのでスーツの袖口からは目立ちますが、逆に存在感を発揮したい、という方にはお勧め。
人とデザイン被りをしたくない、という方もぜひ選んでみてくださいね。
なお、相場は20万円台後半~。20代・30代の方がパイロットウォッチを買おう、と思った時に想定しやすいプライスレンジでしょう。
ベル&ロス インスツルメンツ BR03-92 ナイトラム
[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.]BR-CAL.302
[ケース材質] セラミック
[防水] 100M防水
[ケースサイズ] 直径42mmr /> [定価] 直径42mm
2018年にBR03シリーズのラインナップに加わったのがこちら。針とインデックスにスーパールミノバ夜光塗料を塗布することで、長時間暗闇に身をおいていても時刻を確認できる、というコンセプトで誕生しました。
イメージとしては夜間飛行でしょうか。マット仕上げのブラックセラミックケースが、より一層の特別感を醸し出します。
相場は30万円前後~。
まとめ
デザイン、性能、そして歴史において特別な存在感を放つパイロットウォッチについて、ご紹介いたしました。
パイロットウォッチが有する耐久性や正確性は、アクティブなスポーツシーンでガンガン使用するもよし、スーツスタイルで男らしくカッコよく決めるもよし、とオールマイティー。 また、人類が大空へと羽ばたき始めた頃からその進化の歩を進めてきたパイロットウォッチのロマンには、他のスポーツラインとは一線を画しているように思います。
これから時計を買おうと思っている方は、存在感あるパイロットウォッチを一度手にとってみてはいかがでしょうか。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年