近年、高級時計市場は成長を続けています。
新型コロナウイルスの影響で、一時市場が落ち込んだこともあります。スイス時計協会の発表によると、スイス時計の輸出額は2020年、未曾有の金融危機に陥っていた2009年―前年にリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻したことに端を発するいわゆるリーマンショック―に次ぐ減少を記録した、と。しかしながらワクチン接種が浸透したこともあり、じょじょに各国で経済活動が回復。2021年にはスイス時計輸出高で好景気だった2019年を上回り、過去最高となる223億スイスフランと叩き出すこととなりました。さらに2022年は、これを凌いだと言われています。
国内市場に目を向けてみても、しかり。大手ネットショッピングモールの腕時計ジャンルは増税となった2019年・そしてコロナ禍が始まった2020年にいったん落ち込むものの、2021年~2022年にかけて売上高を伸ばしており、高級時計へのニーズは過去類を見ないほど絶好調と言っていいでしょう。
こういったマーケットで追い風となっているのが、時計の「資産価値(リセールバリュー)」です。
資産価値は簡単に言うと値崩れしないこと。「買って楽しんだ後、売却時にも大きな損をしない」といった人気ブランド時計ならではのメリットが、時計購買のマインドに大きく影響するようになってきています。これは時計の売買に慣れた愛好家のみならず、一般ユーザーであってもよく知るところですね。
事実、大手メディアやインターネットサイトには、時計の資産価値を取り上げるコンテンツが選り取り見取りの状態です。
もっとも、この話題の中心にいつもいるのがロレックスであることは否めません。しかしながら当然ロレックス以外にも、資産価値の高いブランドは数多く存在します。値崩れしづらいことはもちろん、着実に実勢相場を上げていっている人気モデルも。
「どうせ買うなら、資産価値も高い一本を」
「今愛用しているモデル、これからの価格高騰に期待したい」
そんな方々に向けて、ロレックス以外で近年価格高騰しており、2023年もこの勢いが止まらないであろうブランドを6選、集めてみました。
※本稿で取り上げるブランド・モデルの、今後の価格高騰をお約束するものではありません。
目次
ロレックスの次に価格高騰している高級時計。その調査方法とは
冒頭でも述べているように、ロレックス以外にもきわめて高い資産価値を有するブランド時計は数多くあります。
しかしながら、その時計の価値が今後も続くかどうかは誰にも予測することができません。ロレックスもまた、もともと資産価値には定評のあるブランドであったとは言え、現在のような狂騒的な価格高騰を予測していた方は少ないでしょう。
しかしながら、過去の実勢相場の動向を見た時、値上がりしているブランド・モデルは、マーケットの状況にもよるものの今後も高騰する傾向にあると言えます。なぜなら時計市場はメーカーが決めた「定価」の他に実勢相場が存在しますが、これは人気(需要)に大きく影響を受けるもののためです。
もちろん為替やメーカーの定価動向も少なからず影響しています。とりわけ2022年、ロシアのウクライナ侵攻などといった社会情勢によって貴金属・原油価格が高騰したことをきっかけに、各時計メーカーの定価改定ラッシュが続いています。
しかしながら二次流通市場、とりわけ中古価格であれば、上記のような要因よりも人気がその価格を底支えしています。また、頻繁に中古で売買がされているということは中古市場が形成されており、消費者にとって売りやすく買いやすい時計である、ということをも意味します。
そこで本項では、東京 銀座に高級時計専門店を構えるGINZA RASINにおいて、2017年~2022年までの中古販売価格をもとに、実勢相場が上昇しているブランドを6選ピックアップ致しました!
なお、中古価格は個体の状態や付属品の有無によっても大きく上下するものですが、各年ごとの平均販売価格をもとに算出しているため、上昇している・あるいは大きく変わらないブランドは「マーケットで値崩れしづらい」と言うことができます。
併せて各ブランドの人気モデルの実勢相場動向も掲載致しますので、もしお持ちの一本が出てきたら、チェックしてみて下さいね。
ロレックスの次に価格高騰しているブランド①オメガ
それでは実際に2017年~2023年の間で価格高騰している、ロレックス以外のブランドをご紹介致します。まず一発目は、みんな大好きオメガから!
オメガのブランド全体で見た価格動向推移は、こちらです。
上昇率:161.7%
ロレックスと並んで、人気の高級時計の代名詞的存在であるオメガ。やはり知名度の高いブランドは資産価値も高い傾向にあり、ことオメガほどの人気ブランドとなると、長年大規模な中古市場が形成されてきました。
なお、オメガはかつてエントリープライスのモデルも少なくありませんでしたが、定価の値上がりなども影響して全体的に相場が底上げされている状態です。既に今現在、かつて十数万円で購入したスピードマスターが二倍の相場になっている!そんな方もいらっしゃるでしょう。
そう、オメガの二大柱はスピードマスターとシーマスターです。
派生モデルが大変多いため、大幅に値上がりしているモデルもあれば、まだそこまでの価格帯には突入していないモデルもあります。しかしながら、基幹モデルにあたる以下のモデルは、現在既に価格を上げており、紛れもなく価格高騰していると断言できます。
主要モデルの中でも、特に上昇率が高いモデルを見ていきましょう。
スピードマスター プロフェッショナル 311.30.42.30.01.005
型番:311.30.42.30.01.005
ベルト素材:ステンレススティール
ケース素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径42mm
文字盤:ブラック
駆動方式:手巻き
ムーブメント:Cal.1861
パワーリザーブ:約48時間
防水性:50m防水
スピードマスター プロフェッショナル 311.30.42.30.01.005の、2017年~2023年の価格推移はこちらです。
スピードマスター プロフェッショナル 311.30.42.30.01.006
型番:311.30.42.30.01.006
ベルト素材:ステンレススティール
ケース素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径42mm
文字盤:ブラック
駆動方式:手巻き
ムーブメント:Cal.1863
パワーリザーブ:約48時間
防水性:50m防水
次に、スピードマスター プロフェッショナル 311.30.42.30.01.006の、2017年~2022年の価格推移を掲載致します。
オメガを代表するモデルと言えば、スピードマスターがまず挙がるでしょう。
1957年に誕生して以来、手巻きクロノグラフの金字塔的存在としても君臨してきました。また、NASAの公式装備品として月面着陸に携行されたエピソードから、「ムーンウォッチ」の名でも親しまれます。
2021年にモデルチェンジがあったものの、2014年から長らく現行品の顔を張ってきたのが上記2機種Ref.311.30.42.30.01.005とRef.311.30.42.30.01.006です。
※Ref. 311.30.42.30.01.005とRef. 311.30.42.30.01.006の違い
・・・風防・裏蓋仕様・ムーブメントが異なる。Ref. 311.30.42.30.01.005はプラスティック風防・ソリッドバック・Cal.1861搭載。Ref.311.30.42.30.01.006はサファイアクリスタルガラス・シースルーバック・Cal.1863を搭載します。ちなみにCal.1861とCal.1863は設計・スペックは同一。後者はシースルーバックに合わせてブリッジ等が美観を意識したものとなっている
いずれも、決して流通量は少なくありませんでしたが、2019年の定価改定もあってかジワジワ高騰。さらに生産終了した一方で、冒頭でも述べたように需要が世界的に高まり続けてきた結果、実勢相場が急激に上がることとなりました。Ref.311.30.42.30.01.005の現在の中古平均価格は約55万円~、Ref.311.30.42.30.01.006に至っては70万円になろうかという勢いで、オメガの定番モデルの中では過去類を見ない相場感です。
新型スピードマスター プロフェッショナルの出回りにより、今後新旧で人気が分散するかもしれません。しかしながら新型・旧型ともに「売れる商品」であることから業者間で争奪戦が起きており、新旧ともに並行市場で品薄状態です。
どの店も在庫確保が大きな課題であり、当店でもRef.311.30.42.30.01.005を48万円、Ref.311.30.42.30.01.006を50万円前後にて買取価格とさせて頂いております(ちなみにこの買取価格、3年前と比べて、それぞれ10万円ほども値上がり!)。もし新品並行相場が35~38万円程度であった5年前に入手していたら…大きな買取率で手放すことができるでしょう。
次に、スピードマスターとともにオメガ定番の双璧を成すシーマスターの、2017年~2022年の中古販売価格推移を掲載致します。
シーマスター300 233.30.41.21.01.001
型番:300 233.30.41.21.01.001
ベルト素材:ステンレススティール
ケース素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径41mm
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.8400
パワーリザーブ:約60時間
防水性:300m防水
前述したスピードマスター プロフェッショナルと並んで当店で非常によく売れるのが、こちらのシーマスター 300です。
1957年、スピードマスターとともに誕生した初代プロフェッショナルダイバーズウォッチに範を取ったデザインが特徴でありながら、300m防水という高いスペックを誇ってきました。
こちらも2014年にリリースされており、決して流通量が少ないモデルではないものの、ジワジワと高騰。新品であっても並行市場では45・46万円程度が相場感でしたが、現在では中古販売価格が50万円台~となっております。
やはりシーマスター300も同様に2021年モデルチェンジを果たしましたが、旧型の品薄は依然として解消しておらず、しばらくこの高値が続くのではないでしょうか。
なお、シーマスターはエレガンスなアクアテラ,定番のダイバー300M,600m防水を誇るプラネットオーシャン等、そのバリエーションが多岐に渡ります。
上記三機種は2016年~2018年にかけてモデルチェンジされたばかりで中古販売価格よりも新品の方がよく出回っていること,加えて文字盤・素材も豊富ゆえに人気が分散しがちであることから今回は取り上げておりませんが、やはり実勢相場は上昇傾向にあります。
ちなみに何度かモデルチェンジについて言及しました。近年のオメガのモデルチェンジの要は、「マスタークロノメーター認定機」にあると言えます。
マスタークロノメーターとは、オメガがMETAS(スイス連邦計量・認定局)と共同で制定した時計のための工業規格です。オメガではコーアクシャル搭載機を対象にこのマスタークロノメーターを通したムーブメント開発に近年注力していますが、とりわけ15,000ガウスもの磁力に耐えうるという「超高耐磁性能」を備えることが同規格の大きな魅力。ちなみにコーアクシャルとはオメガが誇る新・脱進機構で、ムーブメントの摩耗を最小限に抑え、オーバーホールの回数を減らしたものです。マスタークロノメーターは超高耐磁などに代表される、厳格な標準規格の認定機を指します。
このマスタークロノメーター認定ムーブメントを搭載させることで既存コレクションのますますの高性能化を図っており、ユーザーのみならず業界内でも耳目を集め続けてきました。
こういったオメガ特有の魅力は、2023年のこれからも実勢相場を高騰させることを示唆しています。
なぜなら前述した機能性の著しい高まりは、「末永く安心して使える」という価値を製品に付加するためです。とりわけマスタークロノメーターは機械式時計に付き物の磁気帯びリスクを低下させることに成功しており、オメガの技術力を誇示する結果にも繋がりました。
こういった製品・メーカーへの安心感は、二次流通市場において「中古でも性能が良い」というイメージを喚起し(もちろんイメージに留まらず、実際にオメガ製品は中古であってもきわめて優れた性能を維持します)、結果としてさらなるニーズを呼び込むこととなるのです。人気すなわち需要が高まれば実勢相場も上がる。高級時計市場の拡大とともに、オメガの価格が高騰しているのは、当然と言えるのかもしれません。
なお、オメガの実勢相場を語る上で「過去のモデル」も外せません。
オメガのような歴史ある老舗は、早い段階から完成された高級時計を世に輩出してきました。そのためアンティークと呼ばれる年代の個体も売買が活発で、1950年代のスピードマスターやシーマスターの初期モデル、あるいは1970年代~1980年代のこれらの派生モデル・・・相場が一頃と比べて、飛躍的に高まっています。
オメガに限らずヴィンテージ人気が高まっていることも大きく関係しているとは思いますが、シーマスター300とかレイルマスターなど、過去モデルのリバイバルで相場を上げていることも鑑みて、今後の人気は必至。状態の良い個体は年々少なくなるため、価格高騰は避けられないと言えるでしょう。
ロレックスの次に価格高騰しているブランド②チューダー(チュードル)
2018年に日本上陸を果たして以降、その人気は高まるばかりのチューダー。ロレックスのディフュージョンブランドとして誕生した歴史を持つことでも有名ですね。現在ではロレックスとは全く異なる路線を突き進むチューダーですが、実勢相場の高騰具合は本家ロレックス譲りとなっています。
2017年~2022年の、チューダー全体で見た中古販売価格推移は下記の通りです。
上昇率:168.4%
そう、チューダーと言えばロレックスの弟分といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
ロレックスは1905年にイギリスで創業しましたが、いまいち民間で認知度が上がらなかったことから、1930年代に入るとディフュージョン(廉価版)ブランドを創設しました。それがチューダーというブランドの始まりです。
廉価ブランドだけあり、ロレックスと共有する技術やパーツも少なくありません。しかしながらチューダー独自のモデルやデザインもまた豊富で、「チューダーがイイ!」というチューダーファンを世界各国で増やしていきました。
日本には長らく正規店がない空白地帯でしたが、2018年秋についに上陸!これまではチュードルの愛称で親しまれてきましたが、チューダーを正式名称に。さらに注目度が上がることとなりました。
上記価格推移をご覧頂くと、2018年を境に実勢相場が大きく上昇していることがわかります。
そう、チューダーはもともと人気ブランドではあったものの日本上陸によってさらにその認知度が上昇し、需要もまた大きく高まりを見せることとなりました。事実、当店での2018年6月~2019年6月の同ブランドの売上推移からも、チューダー正規店オープン前後で熱が大きく異なることがわかります。
こちらは、2018年6月の売上を100とし、2019年6月までの比率をグラフにしたものです。
正規店ができた2018年10月31日以降、当店での売り上げは伸び続けており、前年の2~3倍売れています。この勢いは今なお健在で、当店でもチューダー在庫を大きく増やした結果、現在ではロレックス,オメガ,タグホイヤー等と並んでトップ10に入る売上高を記録しています。
さらに人気モデルに至っては正規店で手に入れることは難しく、当店でも入荷すると即完売。ロレックス同様にマラソン(目当てのモデルを求めて、正規店を順番に回ること)を行うファンも見受けられ、近年の価格高騰を肌で感じている方も少なくないでしょう。
では、人気モデルそれぞれは、どのような実勢相場を描いているのでしょうか。
チューダー ブラックベイ GMT 79830RB
ケースサイズ:直径41mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.MT5652/パワーリザーブ約70時間
防水性:200m
参考定価:SSブレス 568,700円/ストラップ 526,900円(いずれも税込)
79830RBは2018年が初出。奇しくも日本進出と同年ですね。当店での中古入荷は2019年以降となるため、過去3年の価格推移を掲載致します。
ブラックベイ GMT 79830RBは、チューダー屈指の人気モデルです。ロレックスのGMTマスターII 126710BLROを彷彿とさせるような赤青ペプシベゼルと、チューダー特有のイカ針が、非常に独創性溢れる一本ですね。
ステンレスブレスレットと革ベルト,ファブリックベルトの三種があり、それぞれで人気となりますが、一番の売れ筋はステンレスブレスタイプとなります。
発売当初から非常に注目度が高く、2019年頃までは新品並行相場50万円前後~と定価超えのプレミア価格。現在は落ち着いてきたとは言え中古であっても状態によっては定価超えが当たり前となっており、2022年の平均は465,000円となりました。なお、この数字は定価が若干お安い革ベルト・ファブリックストラップを含む価格となります。
同様に、定価を大きく超えるプレミア価格で推移してきたのが、ブラックベイ58(フィフティーエイト)です。
チューダー ブラックベイ58 79030N
ケースサイズ:直径39mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.MT5402/パワーリザーブ約70時間
防水性:200m
参考定価:SSブレス 519,200円/ストラップ 477,400円(いずれも税込)
1958年に発表された、同社初となる200m防水ダイバーズウォッチ7924―通称ビッグクラウン―へのオマージュとして誕生したブラックベイ58は、前述したGMTモデルと同年にリリースされました。
ブラックベイ初となる39mmサイズであることも、大きな特徴となります。
過去の中古価格推移はこちらです。
ブラックベイ58は発売当初は落ち着いた実勢相場であったものの、ジワジワと人気が上昇。こちらも現在では、中古であっても定価を超えるプレミア価格となることが珍しくなく2022年の平均は468,000円となりました。
ちなみにブラックベイ58は2020年にブルーモデルが登場しています。
ブラックと並んで高値続きの人気モデルであり、流通が増えつつあるとは言え、正規店では入手困難モデルと話を聞きます。
さらに続々とバリエーションが追加されているブラックベイ58…チューダーの中で最も勢いのあるコレクションではないでしょうか。
なお、「プレミアム価格」というほどでなくとも、チューダーの価格高騰モデルは多岐に渡ります。
チューダー ブラックベイ 79230N
ケースサイズ:直径41mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.MT5602/パワーリザーブ約70時間
防水性:200m
参考定価:SSブレス 533,500円/ストラップ 491,700円(いずれも税込)
さらに、オメガ同様ヴィンテージチューダーの値上がりは現行を凌ぐ凄まじさ。
その代表格が、サブマリーナーとクロノタイムです。
チューダー サブマリーナー 79090
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラックまたはブルー
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.ETA2824-2
防水性:200m
参考定価:-
上記のグラフはブラックのRef.79090が対象となります。
チューダー クロノタイム 79260
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック、グレー等
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:バルジュー7750
防水性:100m
参考定価:-
ヴィンテージの個体は状態や仕様によって価格が大きく上下するため、あくまで参考程度とはなるものの、同一型番で中古販売価格の平均を取ってみました。すると、上記のように1970年代~1990年代のクロノタイムやサブマリーナが既に価格高騰しており、その値上がり率は凄まじいばかりということが明白ですね。
ヴィンテージロレックスとも遜色ない金額の個体まであるほどです。
また、クロノタイムもサブマリーナもそれぞれロレックスのデイトナ・サブマリーナが原型としてありますが、同時にロレックスにはない仕様もあることがポイント。かまぼこケース、イカ針、ミニサブ、クロノタイムのタイガーウッズモデル・・・チューダー独自人気が高まれば、こういったロレックスにはない仕様がますます注目を浴び、相場上昇することは想像に難くないと言えるでしょう。
ロレックスの次に価格高騰しているブランド③ブレゲ
時計好きにとっては特別な存在であるブレゲ。天才時計師アブラアム=ルイ・ブレゲのDNAを受け継ぐブランドです。
現在はスウォッチグループに所属しますが、同グループ内屈指のハイエンドライン。定価自体が高いこと、年間製造本数が多くないことから、もともと相場自体が高めです。
加えて、パテックフィリップ、オーデマピゲ、ヴァシュロンコンスタンタンなどと並び世界五大時計ブランドに数え上げられています。この御三家が現在相場を急上昇させていますが、ブレゲは比較的高値安定といったところでした。しかしながら、やはり実勢相場推移を見てみると、確実に上昇していることが見てとれます。
ブレゲ全体の、2017年~2022年の、中古販売価格推移はこちらです。
上昇率:162.5%
ブレゲにはドレスウォッチのクラシックコレクションやパイロットウォッチのアエロナバルなどがラインナップされています。
しかしながら、定番であり、最も価格高騰が顕著であったのはマリーンIIでした。
マリーンシリーズは1990年に登場した、同社初のスポーツウォッチです。
18世紀後半に製造していた海洋時計「マリン・クロノメーター」から系譜を引く一大コレクションであり、後述するヴァシュロンコンスタンタンのRef.222やタグホイヤー キリウムをもデザインしたヨルグ・イゼック氏が手掛けた時計としても知られています。
長い歴史の中でモデルチェンジが行われてきましたが、最たる人気を集めているのが第二世代にあたるマリーンIIです。2004年~2018年まで製造されました。
美しきヴァーグ(波)模様のギョーシェ彫りが施された文字盤やブレゲ針,ケースのコインエッジ装飾などなど…ブレゲのアイデンティティがそこかしこに詰まった、エレガンス・スポーツウォッチとして、唯一無二の存在感を発揮してきました。
マリーンII ラージデイト 5817ST/12/5V8
ケースサイズ:直径39mm
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバー
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.517GG/パワーリザーブ約65時間
防水性:100m
参考定価:1,848,000円(税込)
マリーンII 5817BR/Z2/5V8
ケースサイズ:直径39mm
素材:ローズゴールド
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.517GG/パワーリザーブ約65時間
防水性:100m
参考定価:2,618,000円(税込)
マリーンII クロノグラフ 5827BR/Z2/5ZU
ケースサイズ:直径43mm
素材:ローズゴールド
文字盤:グレー
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.583 Q/1/パワーリザーブ約48時間
防水性:100m
参考定価:3,255,000円(税込)
Ref.5827BR/Z2/5ZUは2017年の入荷が少ないため、2018年~2022年までの平均価格からグラフを作成しております。
前述の通りブレゲは流通量がとても豊富というブランドではありません。しかしながら上記の三機種は当店でも売れ筋であるため活発に売買されてきました。
長年取り扱う中で思うのが、やはり近年、価格高騰が著しいということです。
これは他社と同様に新型コロナウイルスの影響下による流通不足や、市場の拡大に伴う需要増加も一つの要因でしょう。
加えて、2018年にブレゲからリリースされた新型マリーンが、これまでの同シリーズとは大きくデザインを変えたことが、少なからず影響していると見受けられます。
※2018年以降製造されることになった新型マリーン 5517系
新型マリーンはより洗練された印象が強まったという評価がある一方で、長らく愛され続けてきたマリーンIIの生産終了を惜しむ声は大きいもの。また、ステンレスモデルは今のところ完全廃盤で、代わりにチタンモデルへと移行したことも往年の名機への追慕にも繋がってます。そのため先代マリーンIIに需要が集まった結果、実勢相場もまた上がっていることが考えられます。
とは言えまだロレックスのような、定価超えのプレミア相場、と言うわけではありません。また、詳細は後述しますが、現在パテックフィリップ ノーチラスやオーデマピゲ ロイヤルオークといった「ラグジュアリー・スポーツウォッチ」が軒並み価格を上げる中、同じラグジュアリーメゾンであるブレゲのマリーンはベーシックなステンレススティールモデルで中古170万円台~とお得感が強いことも、特筆すべき点です。
こういったお得感から需要が流れてきている、という背景も見てとれます。
マリーンIIはすぐに相場がどうこう、と言う類の製品ではありませんが、今後マリーンIIの価値が再認識されていけば、現在買った金額より数年後にさらに上がっている、という可能性はあるでしょう。
もっともブレゲは投機目的という意味ではなく、何代も継承していけるような、そんな家宝のような存在です。事実、マリーンIIは本当に美しく、こういった普遍的に美しいデザインと言うのはずっと変わらない価値を持つため、値崩れしづらい時計です。
また、長い歴史で培われた高い技術力のもと丁寧に製造されており、メンテナンスをしっかりすれば長持ちする。他の資産価値が高いブランド同様、時計として価値が高い製品は相場も上がりやすい傾向にあります。
ロレックスの次に価格高騰しているブランド④ヴァシュロンコンスタンタン
ヴァシュロンコンスタンタンは、パテックフィリップ・オーデマピゲと並んで、世界三大時計ブランドに名を連ねる名門です。
この二つの影に隠れがちですが、歴史の長さで言えばピカイチ。創業1755年と世界最古のブランドの一つで、しかも一度もその歴史を途切れさせていません。
そんなヴァシュロンコンスタンタン全体での、2017年~2022年の中古販売価格推移はこちらです。
上昇率:206.4%
ヴァシュロンコンスタンタンもまた、輩出してきた名作の数は枚挙にいとまがないほどです。薄型時計の王道「パトリモニー」や独創性溢れる「ヒストリーク」,また、一般販売はほとんど行われず、専用のビスポークサービス工房で製造される超絶複雑精緻な「レ・キャビノティエ」等、老舗ならではのコレクションを紡いできました。
とは言えヴァシュロンコンスタンタンの中で、価格高騰が最も過熱しているのは、ラグジュアリー・スポーツウォッチラインの「オーヴァーシーズ」です。事実、2017年と比較した際のヴァシュロンコンスタンタン全体の実勢相場上昇率は200%超となっていますが、この高騰を下支えしているのが他ならぬオーヴァーシーズです。
何度か言及しているように、近年高級時計市場で大きく取り沙汰されている「ラグジュアリー・スポーツウォッチ」の価格急騰。ラグジュアリー・スポーツウォッチ―通称ラグスポ―に決まった定義はありませんが、一般的にはラグジュアリーブランドが製造するスポーツウォッチで、かつ薄型でメタルブレスレットとケースがシームレスになったエレガンス・スポーティーデザインを備えた製品を指すと言えます。
パテックフィリップ ノーチラスやオーデマピゲ ロイヤルオークがこのラグスポ市場を牽引してきましたが、白熱する需要とハイメゾンゆえの圧倒的供給量の少なさ・稀少性の高さから、定価超えは当たり前。さらにステンレスモデルが数百万円~1000万円超えの値付けが行われるという事態になってきました。
そんな中においてもオーヴァーシーズだけは、落ち着いた実勢相場を保ってきました。オーヴァーシーズは1996年に誕生して以来、三世代に渡ってモデルチェンジしているため人気が分散しがちであったこと。ノーチラスやロイヤルオークよりもややスポーティーなきらいが強かったことなどが影響しているかもしれませんね。
ちなみにオーヴァーシーズの誕生は1996年でしたが、そのオリジナルは1977年登場のRef.222に遡るとされています。
ヴァシュロンコンスタンタン創立222周年を記念して製造されたモデルで、前項でご紹介したマリーンをも手掛けたヨルグ・イゼック氏がデザインしました。
余談が長くなりましたが、実際にオーヴァーシーズ主要モデルの価格推移を見ていきましょう。
※現行オーヴァーシーズは2016年登場と言うこともあり2017年以前は入荷が少なかったため、2018年以降で集計致しました。
オーヴァーシーズ 4500V/110A-B483
ケースサイズ:直径41mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.5100/パワーリザーブ約60時間
防水性:150m
参考定価:3,586,000円(税込)
オーヴァーシーズ 4500V/110A-B126
ケースサイズ:直径41mm
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバー
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.5100/パワーリザーブ約60時間
防水性:150m
参考定価:3,586,000円(税込)
現行オーヴァーシーズの基幹モデルとなる4500V。いずれも2022年、定価を大きく超える実勢相場を記録しました。
ちなみに、さらに価格高騰が顕著なのが「青文字盤」です。
品薄が手伝って2019年以前はデータ集計できるほどの入荷がなかったゆえにグラフにはしておりませんが、2022年は中古販売価格が平均して520万円と、きわめて高額なプレミア値を記録しています。
とは言え超高級機のスポーツウォッチとしては、「まだちょうどよい」といって良い価格。
繰り返しになりますが、ラグジュアリー・スポーツウォッチの相場がものによっては高級車一台買えるものが増えてきた昨今。その点ヴァシュロンコンスタンタンであれば、『超高級機』としてちょうど良い価格。オメガやIWC、ブライトリングといったミドルレンジのブランドよりかは高くて特別感がある。でも、ハイメゾンとしては常識的な相場感。こういった背景から需要が流れつつもあり、今後手が届かなくなるほど高騰してしまう前に、買っておくべき一本ではありますね。
ロレックスの次に価格高騰しているブランド⑤オーデマピゲ
ヴァシュロンコンスタンタンと並んで世界三大時計ブランドに名を連ねるオーデマピゲ。1875年の創業以来、一度も他社からの買収を許しておらず創業者一族が連綿と経営を続けており、そういったオーデマピゲならではの特色から「経営者に愛されるブランド」「成功者が身に着ける時計」などと称されることもしばしばです。
なお、オーデマピゲはパテックフィリップ、ロレックスと並んで、非常に価格高騰が目立つブランドでもあります。
オーデマピゲ全体での2017年~2022年の、中古販売価格推移はこちらです。
上昇率:215.8%
特に強いのがロイヤルオークです。
ロイヤルオークは、長年オーデマピゲの顔を張ってきたフラグシップであり、腕時計業界に「ラグジュアリー・スポーツウォッチ」という概念を持ち込んだ歴史的に意義深いモデルでもあります。
何度かラグジュアリー・スポーツウォッチ市場について言及していますが、もともと高級腕時計と言えばドレスウォッチというのがかつての主流(そもそも、腕時計の普及はまだ1世紀も経っていませんからね)。しかしながら1972年、オーデマピゲがロイヤルオークをリリースしたことで、その常識は打ち破られることとなります。なぜならロイヤルオークはスポーツウォッチであったことはもちろん、ハイメゾンでは使用がきわめて限定的であったステンレススティール製、さらにはラウンドではなくオクタゴン(八角)フォルムにメタルブレスレットがシームレスに搭載された、ともすれば独創的すぎる一本であったのですから。
なお、このロイヤルオークをデザインしたのは、後述するパテックフィリップ ノーチラスをも手掛けたジェラルド・ジェンタ氏です。
ハイメゾンの独創的ドレスウォッチが高い評価を受け、一大市場を築いてきたのはご存知の通り。
この評価は近年、狂騒的な価格高騰を伴ってもいます。
ロイヤルオーク 15400ST.OO.1220ST.01
ケースサイズ:直径41mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.3120/パワーリザーブ約60時間
防水性:50m
参考定価:2,035,000円(税込)
ロイヤルオーク 15400ST.OO.1220ST.02
ケースサイズ:直径41mm
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバー
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.3120/パワーリザーブ約60時間
防水性:50m
参考定価:2,035,000円(税込)
ロイヤルオーク 15400ST.OO.1220ST.03
ケースサイズ:直径41mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブルー
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.3120/パワーリザーブ約60時間
防水性:50m
参考定価:2,035,000円(税込)
※Ref.15400ST.OO.1220ST.03は、2017年及び2019年に中古入荷が少なかったため割愛しています
ロイヤルオークの、一世代前のRef.15400ST系。2012年~2020年にかけて販売されてきました。
ロイヤルオークはほとんど全ての世代で価格高騰していますが、現行15500STと15400STは別格。
とりわけブルー文字盤はブティック限定販売と言うこともあり流通量が圧倒的に少なく、一時期は1000万円超と、驚くべき値付けを記録することとなりました。いくらハイメゾンらしく作り込まれているとは言え、ステンレススティールモデルで現在も600万円近い実勢相場を叩き出しているのですから。
なお、ロイヤルオークの現行モデルRef.15500STもまた、きわめて高い実勢相場を記録しています。
Ref.15500STは、2019年にオーデマピゲ ロイヤルオークの最新機種としてリリースされました。
外観は大きく変わらず、また文字盤バリエーションも黒・青・グレー・シルバーと既存モデルに踏襲されました(シルバーは2020年~)。しかしながら、ムーブメントがアップデートされたことが、大きな変化として特筆すべき点です。
搭載するCal.4302は、同時リリースされた全く新しいコレクションCODE11.59のために、オーデマピゲが5年の歳月をかけて開発したという傑作機。オーデマピゲならではの丁寧な仕上げと装飾が施された高級機でありながら、28,800振動/時とハイビート化されており、また10時間アップした約70時間パワーリザーブを実現しています。
これだけの名機を搭載しているため定価も2,915,000円→3,300,000円→現在は3,465,000円に引き上げられています。実勢相場を鑑みれば、もはや定価はあってないようなもの。比較的よく流通している黒文字盤のRef.15500ST.OO.1220ST.03の現在の実売価格は中古であっても500万円を切ることはなかなかないといった状況です。
普通、新作は発売当初はご祝儀価格的な側面があって大きく高騰しますが、流通するにしたがってじょじょに落ち着ていくもの。しかしながら15500STは、むしろどんどん相場を上げており、にもかかわらず「高くても買いたい」というマインドが健在ということに驚かされます。
オーデマピゲ特有の「値崩れしない」資産価値を有していることから、一過性の高騰では終わらず、一つの財産の形として後世に受け継いでいけるでしょう。
ロレックスの次に価格高騰しているブランド⑥パテックフィリップ
最後にご紹介するのは、世界最高峰の高級時計ブランドと名高いパテックフィリップです!
もともと、どのモデルも非常に高い価値を持ち続けてきた同社製品。世界最高峰の時計製造技術で作り上げた銘品の数々は、まさに家宝と呼ぶべき輝きを放ちます。パテックフィリップは「永久修理」を掲げていることも、この揺るぎない資産価値を根底から支えています。
永久修理は文字通り「自社製品を永久に修理・サポートする」というアフターサービスのこと。
一般的に、メーカーには「パーツ保有期間」があります。高級ブランドであればこの期間を過ぎてもメンテナンスを受け付けてくれることがほとんどですが、とは言え当該期間を超えた個体に関して、メンテナンスの責任を負わないといったことは珍しくありません。
もっともメーカーはずっと同じ製品を作っているわけではないため、もし永遠に生産終了個体のパーツを作り続けなくてはならないとしたら、それはとてもコストがかかってしまうことを示唆しますね。ノウハウを維持するのだって、管理にやはりコストがかかってきます。
しかしながらパテックフィリップでは、このきわめてコストのかかるアフターサービスをやってのけているのです。
もちろん必ずしもオリジナルと同じパーツ・技術が使われるというわけではありませんが、この「永久修理」を設けることでパテックフィリップの時計=一生ものというイメージを構築することとなりました。
ちなみにこの永久修理を設ける時計ブランドは、オーデマピゲやIWC、ジャガールクルトといった名門に留まります。
前置きが長くなりましたが、そんなパテックフィリップは価値が落ちないことはもちろん、高まり続ける需要によって近年の価格高騰は時計業界随一です。
下記グラフが、パテックフィリップ全体での2017年~2022年の中古販売価格です。
上昇率:144.2%
この価格高騰を根底から押し上げているのが、世界最高峰スポーツウォッチ「ノーチラス」です。ちなみにオーデマピゲほど上昇率の数字が高くないのは、ノーチラスが品薄すぎて2021年以降は、現行に至ってはほとんど滅多に入ってこなくなったことが関係しています。
ノーチラス 5711/1A-010
ケースサイズ:縦38mm×横43mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブルー
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.324SC(2019年より順次Cal.26-330SC)
防水性:120m
参考定価:3,510,000円(税込)
ロイヤルオークの後を追うようにして1976年に誕生したノーチラス。やはりジェラルド・ジェンタ氏が手掛けることとなりました。
ちなみにロイヤルオークは同名の戦艦がモチーフとなっていますが、こちらは潜水艦。また、「タキシードにもウェットスーツにもマッチする」というコンセプトのもとにリリースされた背景もあり、ドレッシーな印象をよく持ち合わせるラグジュアリー・スポーツウォッチとなっています。
ロイヤルオーク同様に青文字盤の値上がりが凄まじく、さらに実勢相場はそれ以上。なんと、現在2000万円超えの値付けが行われているのです。
もっともこれは、2021年の生産終了が大きく影響していると思われます。
長らく現行ノーチラスとして愛されてきたRef.5711/1Aは、2020年にホワイト文字盤が、次いで2021年に一番人気のブルー文字盤が相次いで生産終了となりました。変わってグリーン文字盤が登場することとなりましたが、市場にはなかなか出回っていません。
生産終了とは、すなわち供給がなくなると言うこと。後継機があればいざ知らず、ノーチラスは今後ステンレススティールモデルの製造に関しては何らわかっていることがないため、年を経るごとに市場から個体が消えていくことを示唆します。
こういった背景から「まだ市場にあるうちに入手しておきたい」「さらに価格が上がってしまう前に買っておきたい」というマインドが需要急騰へ。もともと製造期間は2010年~(5711/1A自体は2006年~)とロングセラーであるにもかかわらず、圧倒的な需要によって品薄が加速。ついには2000万円超えに至ったというわけですね。
5711/1Aは、ブルー文字盤でも2016年以前は200万円前後で販売されていることもありました。その頃に入手した方で、今売却したら…かなりの利益を手にすることとなるでしょう。
加えて、ノーチラスに釣られる形で価格高騰しているのがアクアノートです。
アクアノートは1997年に誕生したスポーツラインです。「シンプルなカラトラバ」と「スポーティーなノーチラス」の中間のような立ち位置が魅力の一つ。とは言えノーチラスほど価格は上がっていませんでしたが、近年の上昇率は追随する勢いです。
アクアノート エクストララージ 5167/1A-001
ケースサイズ:直径40.8mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.324SC/パワーリザーブ最大45時間
防水性:120m
参考定価:4,191,000円(税込)
また、現在多くの時計市場での高騰が「ラグジュアリー・スポーツウォッチ」にあると言及してきましたが、ことパテックフィリップに至ってはドレス系のカラトラバも値上がり続けており、パテックフィリップ自体の高い需要をひしひしと感じます。
カラトラバは、現行パテックフィリップ随一のロングセラーです。
1932年に誕生したRef.96―通称クンロク―から端を発する一大コレクションで(もっとも、当時はカラトラバの名前は出ておらず、1980年代頃から出回り始めました)、「丸形時計の規範」「名門ドレスウォッチの本質」と称される屈指の名作でもあります。
製造期間が長く、また派生リファレンスが非常に多いことから、一部の稀少個体を除いて大きく価格高騰している…ということはありませんでした。
しかしながら前述の通りパテックフィリップ自体の需要が世界的に著しく高まったことを背景に、カラトラバもまた紛れもない価格高騰モデルとなりつつあります。
上記はカラトラバ全体で見た、中古販売価格推移です。
メンズ・レディースやアンティーク・現行全てが混在していますが、上昇率は149.2%!ドレスウォッチでこれだけの数値を叩き出しているのは、カラトラバを置いてなかなかないでしょう。
このように、定番モデルのほとんどを高騰させるパテックフィリップ、恐るべし。
なお、パテックフィリップは年間製造数6万本と言われています。これは、13億人以上の人口を抱えている、中国の巨大市場の需要に全く追い付かないことを意味しています。
いまや中国は世界の高級品消費額の3分の1を占めています。ちなみに中国人富裕層と呼ぶ時、いくつかの定義の中で「投資可能な資産を1000万元(約1億3000万円)以上所有している」というものがあります。そして、現在中国人で純資産1000万元以上の富裕層は、180万人を超えていると言われています。ある程度の中産階級ともなると、3億人超です。
2020年にパテックフィリップは新工場を落成しましたが、これは製造本数を拡大するのではなく、長い歴史の中で膨大になったパーツやノウハウを収めるたり、生産工程を統合したりすることを目的としているとか。
もっともパテックフィリップが生産ラインを多少増やしたとしても、現在の顧客たち全員に配分するには数が足りないことがわかりますね。正規店は言わずもがな、国内並行輸入店も、在庫確保に頑張ってはいますが、難しい状況です。
こういった様相から、パテックフィリップは今後も相場をどんどん上げていく代表格のようなブランドと言えます。
まとめ
ロレックスの価格高騰は有名ですが、他ブランドの近年の実勢相場動向をご紹介致しました!
なお、今回は2017年~2022年までの中古販売価格で価格高騰が顕著なブランド6選をご紹介していますが、ウブロやパネライ,タグホイヤーといった主要ブランドもまた値崩れしない高級時計の代表格です。中にはロレックスを凌ぐ超高騰を果たしているものもございます。そのため在庫確保が難しい状態にあり、欲しいと思った時に出会ったら買い時と言えます。
気になる時計がある方は、ぜひ一度お問合せくださいませ!
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年