ブライトリングと言うと、どのようなコレクションを思い浮かべるでしょうか。
内外ともに強靭なクロノマット?コックピットの航空用計器をそのまま時計に落とし込んだかのようなナビタイマー?こういった「パイロットウォッチ」がブライトリングのイメージとして定着しているのではないでしょうか。
しかしながら2017年に経営体制が変わって以降、ブライトリングはコレクション傾向の刷新に舵を切っており、従来とは異なる路線展開も行うようになりました。プレミエは、そんな新生ブライトリング・コレクションの一つです。
「ブライトリング史上、最もモダン」「空から陸(タウンユース)へ」といった評価を得ているプレミエとは、いったいどのような時計なのでしょうか。
この記事では、ブライトリングの新たなる定番・プレミエについて解説いたします。
ブライトリングLOVERにも、ワンランク上のオシャレ時計をお探しの方にも、お勧めできるエレガンスウォッチとは?
目次
ブライトリング プレミエはどんなモデル?
プレミエは2018年末に突如としてブライトリングから発表された新コレクションです。
当時、中国で開かれた巨大イベントの中で、プレミエやその他新作と並んでブライトリングの歴史的ヴィンテージウォッチが展示されていたと言います。
これはブライトリングの歴史を誇示する目的もあったのかもしれませんが、プレミエにはおあつらえ向きの趣向でした。なぜならプレミエは、1943年に誕生した同名コレクションをリバイバルしたものであるためです。
※1943年に発表されたプレミエ(画像出典:https://www.breitling.com/jp-ja/heritage/premier/)
もっともブライトリングの歴史を調べていると、1940年代前半―第二次世界大戦が勃発した頃―、クロノマットが発表されています。
ややこしいですがこちらは後年のナビタイマーのオリジンであり、まぎれもなくパイロットのための時計。同時代は軍用時計のニーズがきわめて高く、タフで高性能な製品が時代の要請でもありました。
しかしながら時のブライトリングトップであったウィリー・ブライトリング氏は、同時にエレガンス・ウォッチのニーズをも敏感に察知していました。そこで、ブライトリング曰く「洞察力に富むスタイリッシュな顧客」に向けたコレクションとして、プレミエを誕生させた、と。
ちなみにプレミエとは、仏語で「最初」を意味します。
そしてプレミエはクロノグラフを搭載しながらも、美しく端正な顔立ちが前面に押し出されたコレクションとして展開していくことになりました。
もっともその後のクォーツショックにより、プレミエは姿を消すこととなります。クォーツ時計の席巻から、コレクションを絞らざるを得なかったのでしょう。
出典:https://www.instagram.com/breitling_japan/
そうして2018年に復刻したプレミエもまた、美しいエレガンスウォッチとしてリリースされました。
詳細は次項で後述しますが、まず目に飛び込んでくるのはクラシカルなツーカウンター設計のインダイアル。ベースとカラーリングを変えることで流行りのパンダ(または逆パンダ)顔を構成します。薄くオーセンティックなラウンドケースもまた、クラシックな印象を強めますね。
クロノマットやナビタイマーとはまた違ったハンサムな顔立ちは、まさにタウンユースを想定した洗練さを持ち合わせていると大きな話題になりました。
その後コレクションを拡充し、現行ではクロノグラフモデルの他、3針モデルやデイデイトモデルがラインナップ。
また、陸を想定したコレクションであることからベントレーとのコラボレーションに早くから乗り出しており、レーシングウォッチとしても高い評価を得ていることも注目すべきポイントです。
ブライトリング プレミエの魅力とは?
次に、プレミエの魅力を「デザイン」「機能」「バリエーション」面で解説いたします。
①ヴィンテージを感じさせるデザイン
出典:https://www.facebook.com/Breitling/photos/
前述の通り、プレミエは1940年代から製造されていた同名コレクションのリバイバルです。
近年では時計業界に限らず、メンズファッションを中心に「クラシック回帰」が一つの主流となりつつあること。加えてプレミエの完成されたエレガンスから、発売してすぐに当店にもとても多くのお問合せを頂きました。
ちなみに初入荷は2019年2月だったのですが、わずか数日ほどで売れてしまったと記憶しています。
従来のブライトリングとは異なる上品かつ薄型ケースであることも、ヴィンテージテイストをよく強調していますね。なお、プレミエの基幹モデル・B01搭載機は厚さ13.65mmほどです。対して同ムーブメントを搭載したナビタイマーは14.2mmほど。クロノマットは15mmほどです。
もっともただのリバイバルに留まらないのも、そこはブライトリング。
「モダン」と称されるように、文字盤にグレーやライトブルーといったハイセンスなカラーリングを用いたり、シンプルなバーインデックスをあしらったりと、洗練さも忘れていません。
また、ポリッシュ仕上げをケースに施すことで美しいツヤを得ており、ジャケットの袖口からもその存在感を発揮します。
ケース径も現代のスタンダードである42mmまたは40mm展開としており、時代のニーズに合わせるスタンスもまた引き継がれていることがわかります。
②高い実用性
プレミエは「日常のエレガンス」をコンセプトとします。
そのためデイリーユースを想定した実用性を獲得しており、薄型設計ながらも100m防水を確保しています。
さらに言うと他のブライトリングコレクション同様、クロノメーター認定を得た高精度ムーブメントを搭載していることも特筆すべき点です。
ブライトリングは「全てのモデルにクロノメーター認定機を載せる」と公言する非常に稀有なブランドとして知られていますが、新体制であってもこの理念は変わっていません。
出典:https://www.breitling.co.jp/models/caliber.php
なお、前項でも軽く言及していますが、ブライトリングの基幹ムーブメントは自社開発のB01です。プレミエでも、当ムーブメント搭載機がフラグシップとなります。
このB01、誕生は2009年と10年以上も経過する機械ながら、今なお業界屈指の名機。ちなみに2017年の業務提携をきっかけに、チューダー社に提供されてもいます。
クロノメーター認定の高精度であることは言わずもがな。パワーリザーブ約70時間という実用面の高さに加えて、機械式時計では切っても切り離せなかった「カレンダー操作禁止時間帯」を撤廃しました。
こうった熟練の時計製造技術とノウハウを味わえることも、プレミエ、ひいてはブライトリングウォッチならではの魅力と言えるでしょう。
③これまでにないラインナップ
出典:https://www.facebook.com/Breitling
ブライトリングはクロノグラフ開発において、歴史的に一家言持ってきたブランドです。数々の特許をいち早く取得しており、近代クロノグラフの発展に大きな一石を投じました。
こういった歴史的背景があったためか、ラインナップの主眼はクロノグラフモデルであったことは事実です。
しかしながら新体制下で「空」のイメージに留まらせないためか、他機能モデルの展開も充実することとなりました。
プレミエにも、3針(後述しますが、しかもクラシカルなスモールセコンドモデルです),あるいはデイデイトといった、これまでのブライトリングとはまた違ったデザイン・機能を楽しめるのが大きな魅力として備わります。
なお、クロノグラフは42mmケース。3針とデイデイトは40mmケースのサイズ展開となります。
素材は基本的にはステンレススティールモデルとなりますが、3針または特別モデルで華やかなレッドゴールドが用いられます。
ブライトリング プレミエを代表するラインナップ
前述の通り、プレミエはこれまでにないブライトリングのラインナップを楽しめる新コレクションでもあります。
また、時計ファンからはベントレーとのコラボモデルを中心に高い評価を得ており、今後はブライトリングの新定番として地位を築いていくことが期待されています。
この項では、プレミエを代表するラインナップをご紹介いたします!
プレミエB01搭載クロノグラフ42
出典:https://www.breitling.com/jp-ja/watches/premier/
プレミエにおいても最も人気のあるモデルが自社製キャリバーB01を搭載したクロノグラフ42シリーズです。
前述の通り、B01はブライトリングが誇る自社製クロノグラフムーブメント。高精度かつ実用性に長けており、時計業界でも非常に評価の高い名機です。
さらにクロノグラフプッシャーは高級感のあるスクエア型。ケースバックにはブライトリングとしては非常に珍しいシースルーバックを採用するなど、視覚的な美しさをとことん追求しています。
定番のブラック×メタルブレスレットを中心に、シルバーやアンスラサイトといったバリエーションもラインナップされ、プレミエの顔としてその注目度は増す一方です。
B01搭載機がハイエンドに位置づけられているため、定価はどのモデルも約100万円と高価ではありますが、ワンランク上の時計をお探しの方には最適なモデルだと言えます。
人気オススメモデルプレミエ B01 クロノグラフ 42 A007G-1NAA(AB0118)
[ムーブメント] 自動巻きクロノグラフB01
[ケース材質] ステンレススティール
[ケースサイズ] 直径42mm
[文字盤] シルバー×ブラック
[防水] 100m
シルバー×ブラックの今流行のパンダダイヤルモデル。上品でエレガントなクロノグラフとして、B01の定番に君臨しています。
3時位置にクロノグラフの分積算計が配置された2カウンタークロノグラフ仕様となっており、9時位置にスモールセコンドサブダイアル、そして6時位置に日付が配されたシンプルなデザインです。
ムーブメントにはモデルに名にも記載されている自社製ムーブメントCal.ブライトリングB01を搭載。シースルーバック仕様の裏蓋からはその緻密な動きを堪能することができます。
付け心地の良い直径42mmケースは、スーツの袖口からも悪目立ちしないでしょう。
価格は並行新品で50万円台後半です。
プレミエ B13搭載クロノグラフ42
出典:https://www.breitling.com/jp-ja/watches/premier/
こちらも42mmサイズのクラシカルなクロノグラフモデルですが、縦三つ目の文字盤レイアウトであることが見て取れるでしょう。
こちらは、ムーブメントに「ブライトリング13」に搭載していることが特徴です。
ブライトリング13は、信頼性の高いムーブメントETA7750を同社が独自にチューンアップしたモノで、COSC公認クロノメーターの精度を誇ります。
自社製のB01と比べると開発コストが抑えられていることから、定価は70万円前後とB01シリーズよりも良心的。初めてブライトリングをご購入になる方は、こちらをまずご検討されてもいいかもしれませんね。
人気オススメモデル ブライトリング プレミエ クロノグラフ42 A117B-1NP(A13315)
[ムーブメント] 自動巻きクロノグラフCal.13
[ケース材質] ステンレススティール
[ケースサイズ] 直径42mm
[文字盤] シルバー
[防水] 100m
ブライトリング13を搭載したプレミエ クロノグラフ42は、縦目のクロノグラフに6時位置のデイト表示と抜群な機能性を有するモデルです。
特にシックな印象を与えてくれる定番のブラックは、スポーティーさと美しさを両立させた魅力的な一本に仕上がっています。
並行新品であれば40万円台で買えるリーズナブルさも相まって、早くも人気を博しています。
プレミエ オートマチック40
出典:https://www.breitling.com/jp-ja/watches/premier/
プレミエ オートマチック40はシンプルな3針モデルです。ブライトリングとしては珍しいケース径40mmで作られており、さらに6時位置にスモールセコンドを設置した、非常にクラシカルな一本です。
と言うのも、センター3針はロレックスのデイトジャストが普及したことで広まった、と言われています。そのため伝統的な3針と言えば、スモールセコンドでした。ブライトリングはプレミエの歴史的意義を踏まえたうえで、該当レイアウトを採用したのでしょう。
ムーブメントには信頼性高いCOSC認定Cal.37を搭載し、美しい見た目からは想像出来ない100m防水も備えます。
カラーバリエーションとしてはブルー・シルバー・グレーなどが用意され、18Kレッドゴールドもラインナップ。
派生モデルとしてデイデイトモデルも発売されており、普段使いに最適な一本として評価が高いです。
人気オススメモデル プレミエ オートマチック 40 A377C-1WAA
[ムーブメント] 自動巻きクロノグラフ Cal.37
[ケース材質] ステンレススティール
[ケースサイズ] 直径40mm
[文字盤] ブルー
[防水] 100m
ブライトリング史上最も気品を感じるモデル「プレミエ」の3針デイトモデルです。1940年代に製造された時計を連想させるこちらのモデルは、良い意味で現在のブライトリングらしくない仕上がりとなっています。どんなシーンにも付けやすいシンプルかつ上品なデザインとなっているため、時計初心者にもオススメです。
並行新品においては30万円台が相場となっています。
プレミエ オートマチック デイ&デイト40
出典:https://www.breitling.com/jp-ja/
ブライトリングでは非常に珍しい、デイデイトモデルです。文字盤12時位置に曜日、6時位置にデイト窓を擁しており、利便性の高いシリーズと言えるでしょう。
こちらも40mmサイズとスタンダードであること。一方で厚さは抑えられているため上品で、ビジネスシーンでも活躍できる一本ですね。
搭載するムーブメントはCal.45。
ちなみに全てのモデルに言えることですが、秒針またはクロノグラフ針に赤がワンポイントとして添えられており、デザインアクセントとして、そして視認性の維持として役割を果たします。
プレミエ ベントレーコラボ
出典:https://www.breitling.com/jp-ja/watches/premier/
プレミエのリミテッド エディションとして展開されているベントレーコラボモデル。
創業者レオン・ブライトリングの孫ウィリー・ブライトリングがベントレーファンであったことから両社の関係が始まり、それから約70年が経過した今も深い関係が続いています。
プレミエが陸をテーマにしているモデルにあること、そして1940年代のデザインコードを復刻していることからコラボモデルの製作が決定。クラシックカーを彷彿とさせる上品な佇まいには定評があります。
Cal.B01を搭載していることもあり、定価は約120万とかなり高価なモデルにはなります。しかし、現代的なスポーツウォッチの意匠を持ちながらここまでモダンに仕上がった時計は他のモデルでは味わえません。
トップタイム リミテッド エディション
出典:https://www.breitling.com/jp-ja/watches/premier/
トップタイムは1960年代に発売された古き良きクロノグラフで、「ゾロ・ダイヤル」と呼ばれる特徴的な文字盤を持つことで知られます。
コレクターからは「怪傑ゾロ」と親しまれており、2020年にリミテッド エディションとしてプレミエコレクションに加わりました。
オリジナルの意匠は残しつつも現代的な一本として生まれ変わり、ヴィンテージな雰囲気は残しつつも最先端の技術が採用されています。
ムーブメントにはブライトリング キャリバーB23クロノグラフムーブメントを搭載。世界2000本限定のレアモデルです。
まとめ
「時計ではなく、計器」という言葉をコンセプトに数々の名機を生み出してきたブライトリングですが、新作プレミエは都会的でエレガントなコレクションに仕上がっています。
ヴィンテージ感を放つ美しいデザイン性に、信頼性の高い高性能ムーブメント。
現代のトレンドを取り入れたまさに最高品質の時計であるといえるでしょう。
品格のある時計を求める方に、うってつけのモデルですので、ぜひこの機会に一度プレミエ をご検討くださいませ。
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当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年