機械式時計が「磁気」に弱いことは有名です。
スマホやパソコン、カバンのマグネットといった強い磁気に密着させてしまうと、ムーブメント内部の金属パーツが磁気帯びをしてしまい、心臓部であるテンプに悪影響を及ぼして精度を狂わせます。
では、クォーツ時計はどうなのでしょう。
おそらく大半の方は「磁気」を気にせずクォーツ時計を身に着けていているとは思いますが、帯磁することはないのでしょうか?
そこで今回はクォーツ時計は帯磁するのか、しないのかを解説していきます。
日常的にクォーツ時計を身に着けている方は是非ご一読くださいませ。
目次
クォーツ時計は帯磁するのか?
クォーツ時計はゼンマイが使用されているわけではないから帯磁しないのではないか?
おそらくこのような意識を持っている方は多いと思います。
確かにクォーツ時計は精密な歯車の集合体で作られている機械式時計と比較すると壊れにくく、不具合を起こすことも少ないので、そのように思うことは当然です。
しかしながら、クォーツ時計も精密機械であることには何ら変わりありません。
よって、
クォーツ時計も帯磁します。
クォーツ時計が帯磁するとどうなるのか?
機械式時計であれクォーツ時計であれ、時計が帯磁するとパーツが磁気化して精度に狂いが生じます。
進むのが早くなったり遅くなったり、症状は様々ですが正常な動作が行えなくなるわけです。
ただ、一度磁気を帯びてしまったら二度と元に戻らないわけではなく、脱磁器を利用することで磁気を抜くことは可能です。
磁気抜きには様々なタイプがありますが、一番使いやすいのが写真のような脱磁器。
時計を中央において、ボタンを押すだけで簡単に磁気を抜くことができます。
また、クォーツ時計は磁石の性質を使ったモーターが取り付けられているため、実は機械式時計よりも磁気の影響を受けやすくなっています。
強い磁気に時計が接すると、内部にあるモーターが影響を受け、時間の進みが不安定になったり、針が止まるといった症状がおこります。
しかしながら、クォーツ時計は構造上パーツが少し磁化されても殆ど影響がない作りとなっており、ずっと帯磁し続けるということがありません。
磁気の影響を受けやすくはあるものの、不具合を起こさせる「磁気を放つ物質」から時計を離せば、元通りになります。
例えばカバンに時計を入れていて、いざ使おうとしたときに時間が遅れていた場合。
このケースは時計が故障したわけではなく、もしかしたらスマホやカバンの金具に時計が接触して、一時的に時間が止まっていただけなのかもしれません。
時計をカバンから取り出せば、帯磁の影響を受けなくなるため普通に使えるようになります。
とはいえ、強い磁気に悪影響を受けていることは確かですので、クォーツ時計であっても磁気には十分お気を付けください。
強い磁気に長時間触れ続けてしまった場合、回路に問題が生じて故障に繋がることも十分考えられます。
磁気帯びしているか調べる方法
基本的にクォーツ時計は多少磁気帯びしても問題なく使用を続けることができます。
ただ、故障の原因になるかもしれない磁気帯びを完全に消したいという方もいるでしょう。
そのような方は「方位磁石」を使って磁気帯びをチェックしてみるのをお勧めします。
もし時計が磁気帯びしている場合、時計を方位磁石に近づけると方位磁石が振れます。
磁力に反応しているわけです。
少し動くぐらいなら神経質になる必要はありませんが、大幅に動くようなら磁気抜きをした方が良いかもしれません。
要注意!強い磁力を発する時計の天敵
この記事の締めくくりとして強い磁力を発する時計の天敵をご紹介します。
時計から離せば影響がなくなるクォーツ時計とはいえ、出来る限り接触させることはさけましょう。
10ガウス ・・・・・ ヘアドライヤー、電気毛布
30ガウス ・・・・・ テレビ用スピーカー
50ガウス ・・・・・ 電話機、電気カミソリ
60ガウス ・・・・・ マイクロホン、黒板用磁石
100ガウス ・・・・・ 大型スピーカー
600~700ガウス ・・・・・ 磁気敷布、磁石付指輪・ブレスレット
700~1000ガウス ・・・磁気付バンソウコウ
1000~1300ガウス ・・・・・磁気腹巻、磁気ネックレス
磁力の強さはガウスという単位で表され、数字が大きくなればなるほど磁力が強くなります。
電化製品で溢れている現代社会においては、いかなるシーンでも帯磁の危険性がありますが、特にスマホにはご注意ください。
何気なくスマホの上に時計を置いてしまうと、帯磁してしまいます。
最悪ムーブメントの分解修理が必要となってしまうこともあるので、絶対にお
止めください。
尚、磁気は距離の2乗で弱くなっていくといった特性があるので、磁気をもっているものから5cm以上は離すようにすれば、磁気帯びになってしまう確率はぐっと下がります。
密着させなければ滅多に磁気帯びすることはありません。
まとめ
クォーツ時計は磁石の性質を使ったモーターが取り付けられているため、強い磁気に触れると帯磁します。
ただ、多少帯磁したとしても大きな影響を受けることはなく、物質から時計を離せば普通に使えるようになる場合が多いです。
もし大きく帯磁してしまった場合は時計店に持ち込めば磁気抜きをしてくれます。
磁気抜き器を購入されるのもよいですが、時計店で磁気抜きをした方が安全かつ安上がりですので、お気軽にご利用ください。
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年