「デイトナってなんでこんなに人気があるの?」
「デイトナの今後の資産価値が気になる」
「キング・オブ・ロレックス」「キング・オブ・クロノグラフ」などといった称号を欲しいままにしてきたデイトナ。
いつかは欲しい腕時計として、憧憬を頂き続けてきた方は少なくないでしょう。
デイトナは人気・実勢相場ともに王者の風格を湛えます。
とりわけ2016年にデイトナ 116500LNがローンチされて以来、その勢いは留まるところを知りません。
そんなロレックス デイトナの価値や魅力について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
デイトナの過去の価格推移を見ると、その価値と人気がよく見えてきます。
この記事ではロレックス デイトナ歴代ステンレススティールモデルの2017年~2023年4月初旬までの価格推移を、GINZA RASINスタッフ監修のもと紹介しています。
価格が高くなりやすい個体の特徴についても紹介していますので、ロレックスの投資に興味がある人はぜひ参考にしてください。
※掲載している定価・相場は2023年4月現在のものとなります。
※当店に入荷した中古個体をもとに平均相場を採っております。状態・仕様によっては価格は上下します。
目次
ロレックス デイトナとは?
ロレックス デイトナの正式名称は「オイスターパーペチュアル コスモグラフ デイトナ」です。
1963年にこの名が誕生しますが、当時世界を席捲していたモーターレースと宇宙開発への夢を馳せて生み出された背景がこの名前から垣間見ることができます。すなわち、ラテン語で宇宙を意味するcosmoとchronographが融合した名機である、と。
なお、初期デイトナには文字盤のモデル名にデイトナ表記がなく「コスモグラフ」オンリーの個体もあります。
当時アメリカ・旧ソ連で宇宙開発競争が繰り広げられていたこと。人工衛星や有人飛行が現実のものとなりつつあったことから、「宇宙」市場でのシェア拡大を目指してこの名前が付けられたのではないでしょうか。
※上記画像は「プレデイトナ 6238」。デイトナ第一世代は1963年~と言われていますが、1950年代にクロノグラフ搭載モデルのRef.6238が既に製造されていました。この6238をプレデイトナと呼び、ファーストデイトナ同様にバルジュー社製Cal.72Bが搭載されています。
実際にはデイトナにそう高い宇宙との関連性はありません。
しかしながら同じく当時世界中で盛んに開催されていたモーターレース分野において、その才能を開花させることとなります。
1962年、アメリカ フロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイのオフィシャルタイムキーパーに就任したロレックスは、翌年新たにモデル名にデイトナを加え、レーシングスピリットを全面に押し出したプロモーションを行いました。
これが功を奏し、以降、ロレックスの銘クロノグラフとして認知されていきます。
もっともデイトナはロレックスの巧みなマーケティングによってのみ成功したのかと言うと、そうではありません。
ロレックスは同時代の人気時計ブランドと比べるとクロノグラフ分野では後発と言われていますが、現在に続くクロノグラフ・デザインの礎を築いたことは事実です。
現在のクロノグラフウォッチの多くがタキメーターベゼルを備えていますね。このアイコンを生み出したのがロレックスと言われています。1960年代当時は文字盤インナー部分にタキメーターを印字することが一般的だったのですが、ロレックスはこれをベゼル部分に分離させ、優れた視認性を獲得しました。
また、インダイアルと文字盤のカラーに濃淡をつける、いわゆる「パンダ顔」もまた視認性を高めるためにロレックスがデザインコードに加えた仕様ですが、同様に高い視認性を生み出す結果に。この視認性のための工夫はアイコニックなデザインをも作り上げ、結果として現在に続くデイトナの絶対人気を築き上げることとなりました。
速い段階で防水性能を有したオイスターケースを採用したことと相まって、ロレックスが伝統的に実用時計の最高峰ブランドであった事実もまた垣間見えますね。
そんなデイトナは、1963年以降、大きく七つの世代に分けることができます。
初代 Ref.6239・6241:1963年頃~1965年頃
二代目 Ref.6262・6264:1965年頃~1969年頃
三代目 Ref.6263・6265:1970年頃~1987年頃
四代目 Ref.16520:1988年~2000年
五代目 Ref.116520:2000年~2016年
六代目 Ref.116500LN:2016年~2023年
七代目 Ref.1126500LN:2023年~
※1960年代後半~1970年頃まで製造されたRef.6240もあり。第三世代のプロトタイプなのでは、と言われています。
なぜなら第二世代までは30m防水であったことに対して第三世代からは50m防水になるものの、実はRef.6240も50m防水。また、第三世代以降から見られる文字盤の「オイスター表記」やねじ込み式プッシャーがやはり6240でも採用されており、にもかかわらず製造期間は第二世代と被っていることから、なかなかミステリアスな存在としてデイトナファンの心をくすぐります。
歴史的には実に半世紀以上にも渡るデイトナですが、クロノグラフが自社製になったのが第五世代より。
初代~三代目まではかの有名なバルジュー社製Cal.72をベースに自社改良した手巻きクロノグラフを、第四世代ではゼニス エルプリメロCal.4021をベースにやはり自社改良した初の自動巻きクロノグラフをデイトナは搭載してきました。その後、2000年登場のRef.116520より、自社開発Cal.4130がリリースされ、この完成された実用型クロノグラフはデイトナの堅牢性を下支えしてきました。改良の余地なしとも称されたCal.4130ですが、2023年にはデイトナのフルモデルチェンジとともに、Cal.4131へアップデートされています。
このように長い歴史の中で普遍にして不変の魅力を湛えてきたデイトナの過去の価格推移を、次項でご紹介致します。
歴代ロレックス デイトナの価格推移と価値
既にご存知の方も多いでしょうが、ロレックスの数ある人気モデルの中でも抜群の資産価値を形成しているのがデイトナです。
歴代モデルの全てで定価を大きく上回るプレミア相場を築いており、近年ではいずれも過去最高となる高騰を記録することとなりました。これだけ価格が上がっても「買い控え」が見られないのがデイトナの凄まじさ。
むしろ「高く売れる」「今後さらに高騰する」といった期待感も相まって、多少のアップダウンはあるものの、この6年間は右肩上がりの相場感を描き続けてきました。
今後デイトナの相場がさらに上がるのかはたまた落ち着くのかは、誰にもわかりません。
しかしながら過去の価格推移を知ることで、デイトナの価値の手堅さと人気の傾向―すなわち、値崩れのしづらさ,普遍の人気―を知り、予測を立てることはできます。
そこでデイトナの歴代モデルの、2017年~2022年4月初旬までの過去6年間の価格推移を掲載致します(6263および6265はコンディションや仕様での価格変動が大きいため、現在の相場範囲を掲載)。価格推移は当店GINZA RASINに入荷した中古モデルから一年間の平均相場を採り、グラフ化したものとなります。
中古時計は状態や仕様によって大きく価格が変動するためあくまで平均とはなりますが、ぜひ動向をチェックしてみてくださいね。
ただし、初代デイトナおよび第二世代は市場流通量がきわめて少なく、当店の入荷実績もまた少ないため、第三世代以降の主要モデルを対象と致します。また、手巻きデイトナの中にはポールニューマンダイアルといったレア仕様も存在しますが、下記価格推移グラフでは対象としていません。
①デイトナ 6263
ケースサイズ:37mm
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバーまたはブラック
駆動方式:手巻き
ムーブメント:Cal.727
防水性:50m
製造年:1970年頃~1987年頃
デイトナ第三世代にして、ロレックスの手巻きクロノグラフの最終世代となるのがこちらのRef.6263です。
なお、同世代に後述するRef.6265も存在しますが、6265がメタルベゼルであることに対して6263はプラスティックベゼル。このベゼルの雰囲気がレトロチックで、現行デイトナ116500LNもまたこのプラベゼルを彷彿とさせるデザインであることが、人気の一つの要因とも言われています。
とは言えプラスティックベゼルは6263が最終世代であるため、「高くても欲しい」というマインドが如実に表れるモデルでもあります。
第三世代6263および6265は、18年にも渡って製造されたデイトナ屈指のロングセラーです。
第二世代に比べて大幅にスペックアップしており、前述の通りねじ込み式リューズを採用して50m防水に。ちなみにこの高い防水性は、当時のクロノグラフモデルとしては世界初の偉業。デイトナは第三世代より、オイスターケースの称号を獲得することとなりました。
また、二代目から引き続きバルジュー社製手巻きクロノグラフをベースに改良したCal.727を搭載しています。この手巻きクロノグラフの傑作機は21,600振動/時ときわめてハイビートで、当時から高い精度と安定性を誇っていました。
※振動とは、テンプの振動数のこと。振動数が高く速ければ速いほど安定した高精度を出す一方で、パワーリザーブが短かったりパーツの摩耗を促進してしまうことも。
そんなデイトナ 6263の現在の相場は下記の通りです。
800万円台~1200万円超
前述の通り、手巻き時代のデイトナは仕様やコンディションによる価格変動がきわめて大きいため、当店で販売した価格をもとに相場範囲をお出しさせて頂きました。
ただし、2017年から見ても、この相場観は大きくは変わっていません。
ムーブメントや防水性のスペックアップにより「アンティークでも普段使いできる」といった安心感が手伝い、ここ5年と言わず、長らく絶大な人気を誇ります。
なお、後述するRef.6265よりもRef.6263の方が相場は高くなります。デザイン的な人気はもちろん、プラスティックベゼルは割れやすいため良好な状態の個体に買いが集中していることが大きいでしょう。
ちなみにRef.6263は、かの有名な俳優ポール・ニューマン氏が映画「レーサー」で着用していたことでも知られています。
当該モデルは厳密には6263のエキゾチックダイアル(ポールニューマンダイアル)となり、前述の通り今回の価格推移グラフには入っていません。なぜならオークション級であるため。しかしながらこういったコレクター心をくすぐる背景が、Ref.6263をアンティーク市場屈指の人気モデルとして打ち立てていきました。
事実、6263全体を通して「500万円を切ることはない」と言われており、一方状態の良い個体が年々市場から姿を消している昨今は、「見つけた時に買っておきたい」デイトナモデルの一つとも言えるでしょう。
②デイトナ 6265
ケースサイズ:37mm
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバーまたはブラック
駆動方式:手巻き
ムーブメント:Cal.727
防水性:50m
製造年:1970年頃~1987年頃
同じく第三世代のデイトナで、ロレックス 手巻きクロノグラフの最終世代がRef.6265です。
メタルベゼルを有しており、プラベゼルの6263と比べると人気の面でやや後塵を拝していたものの、精悍な印象が「これぞデイトナ、これぞロレックス」といった雰囲気です。ちなみに嵐の松本潤さんが所有されているようですね。
デイトナ Ref.6265の、大まかな相場はこちら。6265も、コンディションで大きく相場が左右するため、過去5年間の当店取り扱い個体から、その範囲をお出ししております。
600万円前後~900万円超
Ref.6263と比べると若干お求めやすくなります。
流通量が少ないわけではないので、希望と合った個体を探しやすいメリットもあります。
とは言え数あるロレックスの中でも、なかなか凄まじいお値段ですよね。
ちなみに第三世代のデイトナ(6263・6265ともに)にも「DAYTONA」表記なし個体が存在し、これは1970年頃製造されたもののみに見られるレア仕様。表記なし個体は上記相場をはるかに超える値付けとなります。
なお、アンティークロレックスは文字盤や針,その他外装パーツが交換されていることが往々にしてあります。
機械式時計はその構造上、メンテナンスを繰り返すことで末永く愛用していける魅力を抱えます。製造から半世紀以上を経てなおロレックスの数々の人気モデルが市場で活発に売買されているのは、そういったメンテナンスに拠るところがあります。そしてこのメンテナンスには、当然各パーツの交換も含まれる、というわけです。
時計本来の価値を守るためにも、また実用時計としてデイリーユースするためにもパーツ交換は必要不可欠ですが、アンティーク品の中には「オリジナル性」によって市場評価が決定されるという側面もあります。
デイトナのように世界的な需要が圧倒的であるにもかかわらず生産数がそこまで多くないモデル(ロングセラーではありますが、1970年代の機械式時計の不振,また生産終了から年数を経ていることから決して豊富な流通量ではありません)はこの傾向が強く、とりわけトリチウム夜光を湛えた、オリジナルの文字盤・針は高く評価されることとなります(1997年頃~ルミノバ夜光にシフトしたため)。
デイトナ 6265では―前項でご紹介したRef.6263にも言えることですが―6時位置インダイアル上部の「DAYTONA」の赤いロゴも印象的ですが、後年交換された文字盤はこのロゴが若干オリジナルよりも小ぶりとなります。
そのためオリジナル文字盤を「ビッグデイトナ(またはビッグロゴ)」と呼ぶことがあります(ただし同一リファレンス内にデイトナ表記のない仕様も有り)。
こういったオリジナル性を有した手巻きデイトナは、1000万円をゆうに超える値付けとなることもままあります。
③デイトナ 16520
ケースサイズ:40mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ホワイトまたはブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.4030
防水性:100m
製造年:1988年~2000年
デイトナ第四世代として、またロレックス初の自動巻きクロノグラフとして1988年にリリースされたのがデイトナ 16520です。
ベゼルはメタル製に統一され、文字盤カラーもブラック・ホワイトの二色展開に。また、これまで文字盤・インダイアルが反転カラーとなっていましたが、16520からインダイアルのサークル部分を縁取ったデザインが採用されることとなりました。
この16520より、現代デイトナのデザインコードが確立したと言われています。また、風防もプラスティックからサファイアクリスタルガラスが採用され、100m防水をついに獲得するに至りました。
一方、ムーブメントもまたデイトナ 16520を特徴づけるポイントです。
これまでバルジュー社製の手巻きムーブメントをベースとしてきたロレックスですが、自動巻きへと駆動方式を転換するにあたり、そのベースにゼニス社製のエルプリメロ Cal.400を据えることとしました。
もっとも多少のモデファイを加えるだけに留まらないのがロレックス。エルプリメロは36,000振動/時の超ハイビート設計。前述の通りハイビートは時計の精度を高める反面、パーツ摩耗しやすいといった課題も抱えてきました。そのためロレックスでは堅牢性を守るため(なんせ、実用時計の最高峰ですから)、あえて振動数を28,800振動/時に低減。
振動数を抑えた分、テンワ(時計の精度を司るパーツのうちの一つ)を大型化・テンワの内部アームを3本⇒4本へと設計変更することで、安定した高精度を実現しました。なお、現在では高級時計に装備されるフリースプラング(精度調整のための機構。ロレックスではマイクロステラスナット式)を採用しているのも、特筆すべき点でしょう。これによって当時から既に最高峰の精度と安定性を誇ることとなりました。
現在のデイトナ相場は、確かに「人気が人気を呼ぶ」感はあります。
世界的な需要ゆえに資産価値(リセールバリュー)もまた高まり、そこに投機的な意味を見出す向きもあるのでしょう。
しかしながらデイトナの、そしてロレックスの人気の真髄はこの「早い段階から確立されていた実用性」にあり。事実、いくら価値があっても普段使いできないほど繊細だったり、精度がいまいちだったり、耐久性がないのであれば世界的な人気には直結するとは到底思えません。
ロレックスの、完成されたエルプリメロすら自社流にモデファイするような姿勢こそが、経年にも強い名機の数々を生み出し、一大中古・アンティーク市場を作り上げていると言えるでしょう。
前置きが長くなりましたが、デイトナ 16520の、2017年~2023年4月初旬までの価格推移は下記の通りです。
◆黒文字盤の価格推移
年 | 付属品 | 平均相場 |
2017年 | 箱/保証書 有 | 2,110,000円 |
2018年 | 箱/保証書 有 | 2,882,000円 |
2019年 | 箱/保証書 有 | 3,405,000円 |
2020年 | 箱/保証書 有 | 3,017,000円 |
2021年 | 箱/保証書 有 | 3,710,000円 |
2022年 | 箱/保証書 有 | 4,579,000円 |
2023年 | 箱/保証書 有 | 4,679,000円 |
◆白文字盤の価格推移
年 | 付属品 | 平均相場 |
2017年 | 箱/保証書 有 | 2,070,000円 |
2018年 | 箱/保証書 有 | 2,801,000円 |
2019年 | 箱/保証書 有 | 3,255,000円 |
2020年 | 箱/保証書 有 | 3,147,000円 |
2021年 | 箱/保証書 有 | 3,637,000円 |
2022年 | 箱/保証書 有 | 4,440,000円 |
2023年 | 箱/保証書 有 | 4,280,000円 |
2020年に一度下落しているものの、例年急激と言っていい右肩上がりを続けているデイトナ 16520。
ちなみに2020年は新型コロナウイルスの影響が大きいことが伺えます。この年は各国で緊急事態宣言やロックダウンが敷かれたことで海外仕入れが激減。中古仕入れの要であったオークションや個人買取りもまた外出自粛や人流抑制によって制限されたことから入荷がまず少なく、同時に消費者の買い控えも起こったことが背景です。
もっともこの「買い控え」については、中国を始めアジア圏での経済活動がいち早く再開したことで鳴りを潜め、むしろ活発化へ。2019年は下回ったものの、その平均販売価格は過去最高値に付けることとなり、2021年には360万円台を、続く2022年には440万円台を突破しました。2022年後半~2023年にかけては少し落ち着きを取り戻したかに思われましたが、3月の新作発表でデイトナがモデルチェンジとなり、改めて歴代モデルへの注目度が上昇していると言えます。
なお、上記グラフは黒・白文字盤それぞれの中古販売価格推移となっており、レア仕様やデッドストック品は覗いています。
また文字盤カラーは黒の方が人気においては軍配が上がりますが、相場となるとカラーというより、「年式」「仕様」が価格の大きい部分を決定づけます。
この年式・仕様によって数万円~数十万円,時には100万円以上の価格差が発生することもあります。
まず「年式」については、高年式(製造年が新しい)の個体ほど価格は高くなる傾向にあります。
デイトナ 16520の製造期間は1988年~2000年。やはり新しい個体はデイリーユースの安心感がある、ということから、需要も集中しやすいというわけです(とは言え年式による性能の著しい違いはありません。使用環境にもよるため、低年式=性能が劣ると断じることは早計です)。
ちなみにロレックスは、2010年頃より前に製造された個体であれば、シリアルナンバーからある程度の製造年を割り出すことができます。そしてあるリファレンス内で生産終了直前に製造されたシリアルを「最終品番」と呼び、これが高値で売買される代表格です。
デイトナ 16520で言うと「P番(2000年頃)」が最終品番。その一つ前の「A番(1998年~1999年頃)」と併せて、高年式16520の代表格となり高騰中。グッドコンディション&付属品完品であれば、2023年4月現在、500万円超の値付けとなることも。この高年式個体が16520の実勢相場を押し上げていると言えるでしょう。
一方で16520ほど生産終了から年数を経たモデルであると(リファレンスが5桁時代のロレックスはポストヴィンテージなどと呼ぶこともあります)、「稀少性」もまた市場評価の重大な基準となってきます。
デイトナ 16520の稀少個体と言うと、まず挙げられるのが「経年変化」によるもの。それは黒文字盤の「ブラウンアイ(パトリッツイ)」です。
これはインダイアルのオーナメントが、琥珀のようなブラウンにカラーチェンジした個体を指します。ちなみにこのブラウンアイを発見したイタリアの研究家がオズワルド・パトリッツイ氏であったことから、氏の名前で当該仕様を呼ぶことも。
1994年~1995年にかけて製造されたS番~W番(上記画像のような濃さはないものの、1996年~1997年製造のT番・U番でも出現)に現れますが、美しく色づいた個体はそう多くはなく、またその現象の理由もハッキリとはわかっていないことから、なんともミステリアスなレア個体。コンディションにもよりますが、700万円を超える値付けとなるケースも少なくありません。
その他では初期製造個体のさらに最初期にあたるマークIダイアルなどが高値売買される16520の代表格です。
16520の細かな仕様やレア個体については、下記記事がご参考になれば幸いです。
もっとも最終品番やレア仕様ではない、通常個体も400万円前後の値付けが当たり前の現在。デイトナのモデルチェンジも相まって、今後の16520の相場は青天井と言っても過言ではないでしょう。
④デイトナ 116520
ケースサイズ:40mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ホワイトまたはブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.4130
防水性:100m
製造年:2000年~2016年
先代Ref.16520とデザインは大きく変わらないものの、自社製クロノグラフムーブメントCal.4130を引っ提げて登場したのが、こちらのRef.116520です!
16年と、三代目デイトナに次ぐ超ロングセラーも納得のハイスペックとデザインを有しており、11650からデイトナに魅せられたファンも少なくないでしょう。
リーマンショックやそれに続く急激な円高を経験し、ロレックス相場が急落した時期においてもいち早く回復。以降のロレックス人気や相場を牽引したのはこの116520です。
ちなみに、昨今では「マニュファクチュール」と称してムーブメントを内製化する向きがありますが、もともとスイス時計メーカーは分業制だったこともあり、サプライヤーが供給する汎用機を用いる方が一般的でした。とりわけクロノグラフは前述するバルジュー(現在はETAが買収)やフレデリック・ピゲといった優れたサプライヤーが手掛けてきたことから、ロレックスのみならずパテックフィリップやヴァシュロンコンスタンタン、オメガといった人気有名ブランドの数々が汎用機を自社流にモデファイしてきた歴史があります。
もっとも、ロレックスファンとしては自社製クロノグラフがリリースされ、完全マニュファクチュール化したことは何とも嬉しいことでした。
さらに、ロレックスは自社開発クロノグラフCal.4130で、大幅なスペックアップを図ったことも特筆すべき点です。パワーリザーブを従来の54時間から72時間へと延長。また現在ではロレックスのプロフェッショナルモデルの標準装備となりつつあるパラクロム・ヒゲゼンマイ(2007年頃~ブルーパラクロム・ヒゲゼンマイ)を搭載させ、耐磁性・耐衝撃性,メンテナンス性にも配慮がなされました。
そんな自社製クロノグラフを載せた新たなるデイトナ 116520の、過去5年間の価格推移は下記の通りです。
◆黒文字盤
年 | 付属品 | 平均相場 |
2017年 | 箱/保証書 有 | 1,629,000円 |
2018年 | 箱/保証書 有 | 1,988,000円 |
2019年 | 箱/保証書 有 | 2,192,000円 |
2020年 | 箱/保証書 有 | 2,334,000円 |
2021年 | 箱/保証書 有 | 2,847,000円 |
2022年 | 箱/保証書 有 | 3,667,000円 |
2023年 | 箱/保証書 有 | 3,494,000円 |
◆白文字盤
年 | 付属品 | 平均相場 |
2017年 | 箱/保証書 有 | 1,605,000円 |
2018年 | 箱/保証書 有 | 1,968,000円 |
2019年 | 箱/保証書 有 | 2,138,000円 |
2020年 | 箱/保証書 有 | 2,300,000円 |
2021年 | 箱/保証書 有 | 2,832,000円 |
2022年 | 箱/保証書 有 | 3,764,000円 |
2023年 | 箱/保証書 有 | 3,753,000円 |
116520は、歴代デイトナの中では「まだお得に買えるモデル」ではありました。確かに先代16520や手巻き時代、あるいは現行モデルと比べると相場の上昇率は緩やかでした。
しかしながら現在、きわめて高い上昇率であることは、ご覧の通りです。
なお、ロレックスのスポーツモデルは黒文字盤に人気の軍配が上がりました。
デイトナもまたその傾向が顕著で、大きな差ではないものの、黒文字盤の方が人気・実勢相場ともに高いといった常識がかつてはありました。
しかしながら近年では、人気の逆転現象が起きています。白文字盤の方の人気が高まり、ジワジワと相場にも反映されることとなったのです。
スポーツロレックスには白文字盤が少なく、人気が集中しやすいこと。また、後述する116500LNの白文字盤人気が飛躍的に高まったこと。「アイボリー」への変色個体が注目度を高めていることなどが背景でしょうか。
とは言え、カラーによる価格差よりもむしろ、116520も先代デイトナ同様に、年式や仕様によって価格が大きく上下します。
やはり価格が高くなりやすい個体は、高年式です。
デイトナ 116520の、2010年頃より後に製造された個体のシリアルは「ランダム番」となり、英数字がランダムに羅列されたものとなります。したがって具体的な製造年の特定は難しいのですが、やはりこのランダム番が高値となる傾向にあります。
さらに116520はロングセラーゆえに多岐に渡って仕様変更が行われてきており、「新型バックル(2008年頃~、中板部分が梨地⇒ポリッシュ仕様となった)」「ルーレット刻印(2006年頃~偽造防止のため、シリアルが文字盤外周部分に印字されることとなった)」等といった新しい仕様に高騰が見受けられます。
とは言え16520に比べればまだ流通量が豊富なことも手伝ってお求めやすく、ランダム番・鏡面バックル仕様であっても400万円前後~が相場感です。
画像:デイトナ 116520 クリームダイヤル
なお、デイトナ 116520屈指の価格高騰個体と言えば前述した「アイボリー文字盤(クリームダイアル)」が挙げられます。
初期製造個体(2000年~2004年頃まで。シリアルにするとP番・K番・Y番・F番)に散見される経年変化で、もともと白であったにもかかわらずアイボリーに変色している、というもの。
なぜこのように変色する個体があるのか、はっきりしたことはわかっておらず(どうもホワイトとは異なる文字盤塗料が使われているようです)、その謎めいた背景も相まって早い段階から高騰。最近では「アイボリーに変色する条件を有した個体」についても研究が進んでいるほどです。上記の価格推移グラフはアイボリー文字盤を抜いたデータとなり、アイボリー文字盤の現在の実勢相場は400万円台~。濃く美しく色づいた個体だと、800万円超の相場感となったこともあります。
こういったレア仕様でなくともデイトナ 116520は生産終了から、はや7年。今後、年数を経ていくとこの流通量が減少し、グッドコンディションの個体の価格が上がるのみならず探しづらくなってくることが予想されるので、気になる方は早めに入手しておきましょう!
⑤デイトナ 116500LN
ケースサイズ:40mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ホワイトまたはブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.4130
防水性:100m
製造年:2016年~2023年
最後にご紹介するのは、手巻き時代のプラベゼルデイトナを彷彿とさせつつ、モダナイズによって圧倒的人気を誇ってきた116500LNです!
デイトナ人気をさらに押し上げ、ロレックス相場全体に影響を与えた存在と言って過言ではないでしょう。
ムーブメントは先代から引き続きCal.4130を採用しており、スペックはそう大きくは変わりません。
しかしながらベゼルが伝統的なメタルからセラクロム製へ。このセラクロムとはロレックスの独自用語で、傷つきづらく経年や紫外線の影響を受けづらいセラミックを素材とした採用した仕様です。
さらにメモリ部分にプラチナコーティングを施して視認性を高めると同時に、えも言われぬ光沢を添えることとなりました。
インダイアルのオーナメントも黒はメタル、白は黒く縁取りすることで、とりわけ白文字盤人気を高めた功績は計り知れません。
そんな116500LNは発売当初から非常に注目度が高く、実勢相場が定価を下回ったことは一度もありませんでした。
価格推移は下記の通りです。
◆黒文字盤
年 | 付属品 | 平均相場 |
2017年 | 箱/保証書 有 | 1,974,000円 |
2018年 | 箱/保証書 有 | 2,274,000円 |
2019年 | 箱/保証書 有 | 2,539,000円 |
2020年 | 箱/保証書 有 | 2,629,000円 |
2021年 | 箱/保証書 有 | 3,529,000円 |
2022年 | 箱/保証書 有 | 4,465,000円 |
2023年 | 箱/保証書 有 | 4,228,000円 |
◆白文字盤
年 | 付属品 | 平均相場 |
2017年 | 箱/保証書 有 | 2,080,000円 |
2018年 | 箱/保証書 有 | 2,494,000円 |
2019年 | 箱/保証書 有 | 2,759,000円 |
2020年 | 箱/保証書 有 | 2,891,000円 |
2021年 | 箱/保証書 有 | 4,085,000円 |
2022年 | 箱/保証書 有 | 5,262,000円 |
2023年 | 箱/保証書 有 | 4,680,000円 |
バーゼルワールド2016で発表されたデイトナ 116500LN。
前述の通り、手巻きデイトナを彷彿とさせつつも最高にモダンになったデザインは、時計業界に驚きを以て伝えられたものです。
なお、ロレックスはどのモデルも、発売してすぐは「ご祝儀価格」があるもの。初年度に買いが集中して、じょじょに落ち着いていく・・・そんな相場形成が従来の定石でした。
しかしながら初年度から年々相場が上昇し、「さすがにもう下がる」と言われ続けてなお右肩上がりを止めず、記録更新しているのが116500LNです。
2022年後半から2023年にかけて、ロレックス相場全体が落ち着いたとも言われてきました。116500LNもこの流れの中で、ほぼ右肩上がりだった価格がいったん下落します。
しかしながら2023年3月、ロレックスからデイトナのフルモデルチェンジが敢行され、新型126500LNが登場したことから、116500LNは生産終了となったことでにわかに市場が騒めきます。
出典:https://www.rolex.com/ja
もともと116500LNは、そろそろ生産終了するのではないかと囁かれ続けてきました。
と言うのも、まだ116500LN自体は発売から5年程度なのですが、Cal.4130自体は既に20年選手であり、そろそろアップデートされるのではないかといった噂があったためです。また、2023年はデイトナ60周年であったことも大きいでしょう。
果たして126500LNが登場して、この噂は現実のものとなりました。
ちなみにCal.4130はもともと傑出したムーブメントであったことから、アップデートしたとは言えベースは変わらず、キャリバーナンバーも4131としてリリースされています。
「生産終了したロレックスは値上がりする」というのは長らく業界の定説でしたが、近年ではこの傾向が過熱しています。モデルチェンジによって生産終了となったリファレンスに買いが集中する現象が強まっているのです。これは、今後の資産価値の上昇に期待する、あるいは手に入りづらくなる前に買っておくといったマインドですね。
なお、新型デイトナは大きくデザインを変えていなかったこともあってか、新作発表後、思ったよりかは116500LNの相場は急騰しなかった印象です。
しかしながら大人気モデルの生産終了。決して流通量は少なくありませんが、今後はじょじょに市場から個体が減っていくことが考えられます。2023年4月現時点での116500LNの実勢相場は白文字盤が440万円前後~、黒文字盤が400万円前後~。これ以上高騰してしまう前に、欲しい方は早めに買っておきたいですね。
なお、黒文字盤よりも白文字盤の方が人気が高く、実勢相場にもその傾向が現れます。
まとめ
ロレックス歴代モデルで他の追随を許さない人気を誇る、デイトナの過去の価格推移をご紹介致しました!
どの時代でも高値が続いてきたモデルですが、近年の高騰は過去類を見ないほど。
下がる下がる言われて上がり続けてきたモデルであるがゆえ、今が最後の買い時かもしれません。気になっている方は、ぜひ一度手に取ってみて下さいね。
当記事の監修者
池田裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年