「グランドセイコー SBGA375・SBGA373って何がすごいの?」
「グランドセイコー SBGA375・SBGA373の魅力や特長について知りたい」
グランドセイコーのヘリテージコレクションSBGA375・SBGA373が継承する “セイコースタイル”。
セイコースタイルとはグランドセイコーのデザイン理念。
半世紀以上も前に当たる1967年誕生の、グランドセイコー 44GSというモデルがそのスタイルの基礎となっています。
そんなグランドセイコー SBGA375・SBGA373の魅力や特長について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
現在では44GSの以来確立したセイコースタイルを、現代的に解釈したデザインが脈々とグランドセイコーに受け継がれています。
この記事ではグランドセイコー SBGA375・SBGA373の魅力や特長を、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
SBGA375・SBGA373で使われる「44GSデザイン」についても解説しますので、グランドセイコーの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
グランドセイコー SBGA375・SBGA373で使われる「44GSデザイン」とは?
グランドセイコーの中でも根強い人気を誇るSBGA375・SBGA373は、「44GSデザイン」を現代によみがえらせたことが特徴的なモデルです。
44GSはグランドセイコーの高級腕時計として、1967年に発売されたモデルです。この誕生の背景は、さらにセイコー史を遡ることとなります。
1950年代後半のセイコーは初の独自設計腕時計「マーベル」「クラウン」を発表し、さらなる高みを目指していました。
そうして国産初の高級時計ブランドとして「グランドセイコー」が立ち上げられたのは、1960年のこと。当時のセイコーが持つ全ての技術を駆使したブランドとして、堂々市場に打って出ます。
グランドセイコーの腕時計が造り上げられていく過程で、セイコーではセイコースタイルというデザインロジックを確立します。
そしてセイコースタイルを実現するための細かな9つのデザイン要素もリストアップしました。
セイコースタイルと9つのデザイン要素を忠実に形にした腕時計が、1967年誕生の高級モデル44GSです。つまり44GSデザインとは、セイコースタイル×9つのデザイン要素から成る、グランドセイコー渾身のデザイン文法ということです。
※1967年発表 グランドセイコー 44GS(画像出典:https://www.seikowatches.com/jp-ja)
では44GSで用いられたセイコースタイルとは何か。これは、セイコーが「燦然と輝く腕時計」を作り上げるために打ち立てたデザイン方針です。多くの人々の感性に訴えかける鍵となったのは、「光」と「影」でした。
曰く、平面を主体に二次曲面でデザインを構成すること。三次曲面は原則採用しない。そしてケース・文字盤・針の全てで平面部の面積を基調とすること。さらに各面は原則鏡面(ポリッシュ)で、その鏡面に歪みを生じさせないこと。
そしてこのデザイン方針をもとに取り決められたのが、以下の9つのデザイン要素です。
※グランドセイコー 「DESIGN」https://www.grand-seiko.com/jp-ja/about/design
インデックスは角を研磨して多面体とすることで、より光を反射するようになります。
フラットダイヤルに多面カットのインデックスと針を組み合わせると、インデックスと針が生み出す光と影がダイヤルに美しく投影されます。
ケースとベゼルを鏡面研磨し、その側面を逆斜面カットすることで、鏡面の生む光と斜面の生む影が立体的な輝きを生み出すのです。
ケースとベゼル全体のサイドラインは大きな曲線を描き、エレガントに鋭さを和らげます。
上記3つのデザイン方針と9つのデザイン要素について、44GSデザインの生みの親・田中太郎氏は、明確な意図をもってこれらを定めたとのことです。
その意図とは「一目で高級腕時計と分かる、燦然と輝く腕時計に必要な要素を盛り込むこと」です。
要素のひとつは高性能であることがひと目で分かる機能美。もうひとつの要素は恒久的な価値を持つデザイン(普遍にして不変ということ。そしてさらにひとつ、高級時計の要素として田中氏がこだわったのは光と影の美でした。
日本の風土が培ってきた日本人の美意識にかなうデザインを探るにあたり、田中氏は光と影に注目したことはセイコースタイルを語るうえで欠かせない点でしょう。書院造や数寄屋造りなどの建築様式は、直線と平面・円などの明快な形を組み合わせ、光をどう取り入れるかを計算しつくして設計されています。
光が入れば影ができます。日本人は障子や簾、屏風などを通し、さまざまな光と陰影の組み合わせに美を感じてきました。
セイコースタイルは日本古来の美の象徴である光と陰影を重視し、面の研磨と角度にこだわり抜いていることが分かりますね。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/special/9f9s9stories/vol2/2/
なお、この面と角度をより美しくデザインとして活かすため、ザラツ研磨が用いられていることもセイコースタイルを語るうえで欠かせません。これは、非常に高精度かつ高難度の研磨技術です。ザラツ研磨によってくっきりとした稜線を描き出すことに成功しました。
※ザラツ研磨…研磨機の回転円盤正面で研磨を行う特殊な機器を用いる手法で、使いこなすには熟練の技術が必要。ゆがみの無い完璧な鏡面と、ザラツ研磨が生み出す完璧な角こそ、セイコースタイルの基礎と言えます。
以上がグランドセイコーの44GSに落とし込まれたセイコースタイルであり、44GSデザインとは燦然と輝きを持つ高級時計ということです。グランドセイコーという国産高級ブランドにとって、44GSデザインで開花したセイコースタイルは、特別な哲学と言えるでしょう。
なお、44GSデザインはクォーツ時計や手巻時計等にも採用され、SBGW047などグランドセイコーの腕時計の中に今なお活かされています。
中でもグランドセイコーの44GSデザイン、セイコースタイルを現代的に解釈したことで屈指の名機となったヘリテージコレクション SBGA375・SBGA373を次項で解説いたします。
グランドセイコー SBGA375・SBGA373のディテール
それでは44GSデザインを現代的に解釈した、SBGA375とSBGA373について詳細をご紹介いたします!
①DATA
グランドセイコー ヘリテージコレクション スプリングドライブ SBGA375
ケースサイズ:直径40mm×厚さ12.5mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブルー
駆動方式:スプリングドライブ自動巻き
ムーブメント:Cal.9R65/パワーリザーブ約54時間
防水性:10気圧
定価:594,000円(税込)
グランドセイコー ヘリテージコレクション スプリングドライブ SBGA373
ケースサイズ:直径40mm×厚さ12.5mm
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバー
駆動方式:スプリングドライブ自動巻き
ムーブメント:Cal.9R65/パワーリザーブ約54時間
防水性:10気圧
定価:594,000円(税込)
②概要
グランドセイコー SBGA375・SBGA373は、2018年に発表されたスプリングドライブ搭載モデルです。前項でご紹介した44GSデザインを現代風に解釈したというコンセプトもあり、ヘリテージコレクションからリリースされています。
この二機種の違いは文字盤です。
グランドセイコー SBGA375はミッドナイトブルー文字盤。グランドセイコー SBGA373は厚銀放射仕上げというグランドセイコーの特殊技術を施した文字盤が特徴となります。ちなみに厚銀放射仕上げは上質なシルクのような光沢をもった、シャンパンゴールド文字盤となります。
繰り返しになりますが燦然たる44GSデザインは、グランドセイコーというブランドの腕時計がひと目で高級・高品質と分かるよう構築されました。
それゆえSBGA375とSBGA373は、いずれも凛とした日本ならではの美しさをまといます。
ザラツ研磨によって光と影が際立ったケース・ブレスレットはまさにセイコースタイルの「燦然」を体現しており、さらに太く鋭い時分針,切り立ったインデックスは極上の光沢を放ちます。
そんなSBGA375とSBGA373はどちらも外装・スペックは同一となります。
人気は若干、ミッドナイトブルー文字盤の前者SBGA375の方が高め。黎明の空のような深いブルーの方が、インデックスや針のきらめきがより際立つからかもしれません。
しかしいずれもグランドセイコーの中で、人気伯仲という注目モデルです。
もっとも44GSデザインの復刻モデルにおいて屈指の人気を誇るのは、スプリングドライブを搭載しているということもあるでしょう。
詳細は後述しますが、これはセイコー独自の画期的機構。グランドセイコーを買うならスプリングドライブ、と決めている方もいらっしゃるほどです。
「ひと目見て高級・高品質であることが分かる」という44GSデザインの精神がしっかりと息づいていること。そしてミッドナイトブルー・厚銀放射仕上げそれぞれが44GSデザインの美しさを際立たせていること。さらにスプリングドライブを搭載していること。
こうった数々の魅力から、SBGA375とSBGA373はグランドセイコーの44GSの歴史の語り部として我々ユーザーを惹きつけているのです。
なお、相場はSBGA375・SBGA373どちらも50万円程度~となっております。
③スプリングドライブ 9R65とは?
前項でもご紹介しているように、グランドセイコー SBGA375とSBGA373はスプリングドライブ9R65を搭載していることが何よりの特徴です。
スプリングドライブとは、セイコー独自機構となります。機械式時計・クォーツ時計にならぶ「第三の心臓」と呼ばれることも。
ではいったいどのような機構なのか。
簡単に言うとスプリングドライブは、機械式時計とクォーツ時計の良いとこどりをしたシステムなのです。
機械式時計はぜんまいがほどける力で時計を動かします。
ぜんまい駆動はトルクが大きいため重厚な多面カット針もなめらかに動かすことができ、高級時計に多く使用されるムーブメントです。反面、テンプの振動によって制御を行うがゆえに精度が出にくいというデメリットも持ち合わせます。
一方のクォーツ時計は電池を動力として動く時計です。そして精度を水晶振動子(クォーツ)でとることとなります。水晶は不思議な特性を持っている物質で、電圧をかけると規則正しく振動します。水晶が決まった数だけ振動する性質を利用し、IC回路でより正確に制御することで、非常に高い精度が出せます。しかしクォーツ時計は小さなボタン電池を動力としているため、トルクが小さいというデメリットがあります。トルクが小さいと軽い力しか出せないため、高級時計には欠かせない重厚な針を回すことができません。
そこでスプリングドライブでは、動力を機械式時計のぜんまいに、そして精度をクォーツで取ることで、両方のメリットを兼ね備えることとなったムーブメントなのです。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/about/movement/springdrive/9r65
動力はぜんまいのためトルクが大きくグランドセイコー・セイコースタイルの重厚な針も回すことができますし、GMT機能のように針を増やすことも可能です。
そしてぜんまいがほどけることによって生まれるトルクで電気を起こし、搭載している水晶振動子を振動させてIC回路で制御します。IC回路は進める方向だけでなく、ローターにブレーキをかける役割も果たします。そのため正確な振動を恒久的に生み出し、高い精度を実現することが可能になるのです(しかも、従来のクォーツ時計よりもと言われている)。
機械式時計のぜんまい動力とクォーツ時計の精度をあわせ持つため、スプリングドライブはハイブリッドムーブメントとも呼ばれます。
また秒針がカチカチ動かない、なめらかなスイープ運針であることも魅力のひとつでしょう。
余談ですが、グランドセイコー SBGA375とSBGA373がデザインを継承した44GSは、5振動のロービートモデルでした。
その当時グランドセイコーでは61GSという10振動モデルや45GSという10振動モデルが登場していました。いずれも1秒間に10回、1時間に36,000回振動する画期的なハイビートモデルです。
10振動を可能にするには今でも難しい課題をクリアする必要があるという、非常にクオリティの高いムーブメントです。
一般的には6振動や8振動とされているため、非常に振動数が多く、精度の安定した腕時計となりました。
そんな10振動モデルが誕生している中、44GSは5振動のロービートで、高級時計に相応しい高精度を維持していました。
5振動ロービートムーブメントはこの時期を最後に姿を消してゆきます。
44GSは、デザインはもちろん、5振動ロービートで高い精度を誇るという意味でもグランドセイコー史に名を刻む名機なのです。
まとめ
44GSデザインを継承した、グランドセイコー SBGA375とSBGA373についてご紹介いたしました!
44GSデザインはセイコースタイルと呼ばれ、究極の面と角、ラインが特徴です。セイコースタイルはグランドセイコーの礎のひとつとして、さまざまな腕時計に引き継がれました。
中でも大変人気を博しているのが、ディープブルーのグランドセイコー SBGA375とシャンパンゴールドのSBGA373です。
現代解釈された44GSデザインは視認性も高く、高級感あふれる輝きとエッジの効いた角が光と影の美を具現しています。
さらにグランドセイコー最高の技術スプリングドライブを搭載した、生涯をともにするに相応しい腕時計です。
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年