「高級時計を購入したいけどどこで買うのが良いんだろう」
「ブランド時計をお得に買うならどこがベストなの?」
腕時計の「正規店」「並行輸入店」の違いについて知っていますか。
高級時計を購入する際、どこの店舗で買うべきか知りたいという人は多いのではないでしょうか。
自分が何を重視しているかで、どこの店舗で購入するべきか決まります。
この記事では「正規店」と「並行輸入店」のメリット・デメリット、またヨドバシカメラなど「量販店」のメリット・デメリットについてGINZA RASINスタッフ監修のもと説明します。
中古販売店のメリット・デメリットについても解説していますので、高級時計の購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
「正規店」と「並行輸入店」
正規店と並行輸入店の違いを簡潔にまとめると、”正規店”はメーカーと代理店契約または販売店契約を結んだ会社が輸入した「正規輸入品」を販売する店舗です。対して並行輸入店は、海外直営ショップや海外量販店などで一般に流通している商品を買い付け、それを上記以外の会社や個人(バイヤー)が輸入して販売している店舗になります。
国内へ輸入される仕入れルートに違いはありますが、いずれも各時計メーカーが作り上げた紛れもない”本物”であることには変わりありません。
正規店について
正規店は各時計ブランドの本社と代理店契約または販売店契約を結んだ会社が輸入された時計を販売するショップです。
価格が国内同一の定価に設定されていることを特徴とします。
例えばあなたは百貨店に入っている時計店の価格が高いなぁ。と感じたことはありませんか?それもそのはず、百貨店に入っている時計店のほとんどが「正規店」だからです。
正規店は国内同一の定価設定の為、家電量販店やネットショップのように自由な値引きができません。常に定価で商品が並んでいるため、割引き価格に慣れている多くの日本人にとって高く感じます。
並行輸入店について
正規店は各ブランドの本国から日本の正規代理店を通して販売されるルートですが、並行輸入店は「正規代理店」を通さないルートで仕入れた時計を販売するショップです。
並行輸入品は、正規代理店以外の第三者が「海外の正規代理店」「卸会社」「海外バイヤー」などを通して仕入をした商品です。日本の正規代理店を通らない経路になるため、日本の定価に縛られず大幅な割引をして店頭に並べることが可能なことが最大の特徴です。
並行輸入品は仕入を正規代理店から行っていないだけなので、時計そのものは紛れもない本物。ただ、ショップによって仕入れ方やルート、更にはサービスに大きな違いがある為、時計の価格や品質は店ごとにバラツキがあります。
正規店とほとんど変わらない検品レベルを持つショップもあれば、検品などを行わず傷が多かったりする店舗もあるのが並行輸入店選びの難しいところ。
とはいえ本当に良い時計を提供してくれる優良店を選べば、並行輸入店はかなりお得な存在です。
正規店のメリット&デメリット
全国各地に存在する正規店は、どの店舗でも価格・品質・サービスに差がないことを基本としています。どこの店舗で購入しても同じ条件で購入できるのは大きなメリットです。
更には高級腕時計にとって重要なアフターメンテナンスもメーカーでの修理となるため、万が一の時でも安心。加えて商品知識の豊富なスタッフが揃っている点も見逃せないポイントです。
また、メーカーとの直接的な取引があるため、新作の詳細情報や入荷が並行輸入店よりも早い点もメリットです。
正規店で時計を購入したい場合、是非銀座を訪れるのをオススメします。なぜなら銀座はロレックス・パテックフィリップ・ランゲ&ゾーネ・ヴァシュロンコンスタンタン・カルティエ・ブルガリ・オメガ・タグホイヤー・IWCなど、数多くの直営店が立ち並ぶ日本最大の「正規店街」だからです。
確かな品質保証に加え、格調高い正規店で時計を購入したという満足感。
価格に関しては並行輸入店よりも高くなりますが、それを補うステータス性が正規店にはあります。
手厚い保証のある時計ブランド
正規店で購入した時計にはメーカーが独自に行っている手厚い「アフターサービス」が付きます。
これは正規店での購入者のみに与えられる特典であり、同じ時計を長期的に使う場合、かなりの得となるサービスです。
並行輸入店でも保証は付きますが、一部ブランドの保証はそれを大きく凌駕します。
ブライトリング
ブライトリングジャパンの保証は時計メーカーの中でも手厚いと有名です。内容は、自社ムーブ搭載モデルについては5年保証で、修理保証が2年。他社のムーブメント搭載モデルは2年保証、修理保証も1年間となります。
また、正規店で購入することでクラブ・ブライトリングに無料で加入でき、メンテナンスが半額で受けることが可能です。
永く使えば使うほど得になるので、一生モノとして時計を購入する方にはうってつけのブランドだと思います。
ロレックス
ロレックスはカードタイプの国際保証書を採用しています。カードには自分の名前・購入したモデルやシリアル、更には購入店が記載され、自分のロレックスということを証明することができます。以前は2年間だったロレックスの保証ですが、2015年7月から5年保証になり、より安心して購入ができるようになりました。
タグホイヤー
タグホイヤーは購入時にメンバープログラム「MY TAG HEUER」に登録することで、2年保証の保証期間を5年に延長することが可能です。
2022年5月16日以前であればエドワードクラブに入会することで2年保証、修理料金30%OFFの恩恵を受けることができましたが、こちらは廃止となっております。(修理代金30%OFFは2024年まで継続)
ゼニス
ゼニスの国内正規品は2年保証。WEBサイトで登録すると更に1年延長になります。さらには保証書を提示することで、修理代金が30%OFFになります。
リシュモン系列のブランド
カルティエやIWC、パネライといったリシュモングループは近年正規購入者への保証を厚くしています。
購入した時計、個人の情報を登録し、承認を受けることで最長8年まで国際保証を延長することができます。
なお、リシュモングループは購入元による差別を設けていないため、並行品でも条件が合えば登録することが可能です。
正規店のデメリット
正規品のデメリットはやはり価格面。値引きすることはほぼ不可能な為、購入価格を少しでも安くしたい方にとっては厳しい条件となります。また、人気の高いモデルはお問い合わせが殺到しており、購入が難しいケースもあります。有名な例としてはロレックスのデイトナは需要が供給を大きく上回っており、正規店で手に入れるのは難しいのが現状です。
さらには円安や原材料の高騰などの理由で、定価の値上げが行われている時計も数多く存在します。昨今は各ブランドが頻繁に値上げをしており、価格の問題で欲しいモデルが買えないと嘆く方も少なくありません。
並行輸入店のメリット&デメリット
並行輸入店のメリットは何といっても“価格”。並行輸入店で販売されている時計は輸入のルートが違うだけで“本物”であることには変わりません。
正規店の20~30%安いケースもあり、購入者にとっては大きなメリットになります。
また、保証面でも正規店との差を埋めるため、独自のサービスや保証を用意しているショップも数多く存在します。
並行輸入店のメリット① 定価より安く買うことが可能
正規店より価格が安いことが最大の特徴である並行輸入店。
人気モデルほど価格競争になり、販売価格が下がっていく傾向にあるため、定番モデルであればあるほど並行輸入店で買う方がお得です。
また、在庫の多い商品も安くなる傾向があります。
需要も流通も多いモデルは特に狙い目だといえるでしょう。
例えば、IWCの定番中の定番ポルトギーゼ。
こちらの時計は並行輸入店で購入しても正規の修理が受けられるため、単純に安く購入することができます。
流通量も多く、実に並行輸入店で買うのに適したモデルです。
並行輸入店のメリット② 正規品だと品薄で買えないモデルも手に入る
ロレックスやパテックフィリップ、オーデマピゲといったブランドにおいては、スポーツモデルを中心に一部の時計が正規店で手に入りにづらい状態が続いています。
しかし、並行輸入店であればそれらの時計もプレミア価格とはなりますが、購入することが可能です。
例えば、現行デイトナ116500LN。このモデルは定価1,309,000円で販売されていますが、製造数が限られているため、正規店で手に入れるのは困難です。
しかし、並行輸入店であれば人気商品を在庫している店舗が多く、時計を購入することができます。販売価格は約300万円(2020年12月現在の相場)です。
※価格は相場によって大きく変動します。
並行輸入店のメリット③ メンテナンス費用が安い
正規店でのメンテナンス割引が受けられないため、維持費にお金がかかるとお思いの方も多いかもしれませんが、自社で修理工房を持っていたり、時計修理専門業者と提携している並行輸入店では、安くメンテナンスが受けられます。
時計修理専門業者は正規店のメンテナンス料の半額~70%程度に設定されていることが多く、購入後の維持費が少ないことはオーナーにとって大きなメリットです。
例)ロレックス サブマリーナのオーバーホール料金
正規店でのオーバーホール ¥46,200~
時計修理専門業者 ¥31,500~
オーバーホール一回当たりのコストは民間修理業者の方が安く、お得であることが分かります。
職人の技術に関しても優良修理業者であれば、メーカーの職人と遜色ありません。安かろう悪かろうというわけではないので、ご安心ください。
並行輸入店のメリット④ 時計選びの幅が広い
並行輸入品は海外の正規販売店から買い付けるため、日本では入手困難なものも販売されています。
生産終了したものや世界で数本しかない限定モデル、コレクターやマニアが手放した貴重なモデルも並行輸入店なら入手可能です。
現行新品しか取り扱わない正規店に対し、並行輸入店は幅広い選択肢から時計を選ぶことができます。
左:現行 214270 右:旧型 114270
例えばロレックスのエクスプローラー。
エクスプローラーの現行モデルは214270。正規店でエクスプローラーを購入する際の選択肢はコチラしかありません。
しかし、並行輸入店であれば旧型の114270も候補にすることができます。
旧型は新型と殆ど同等の見た目とスペックを持ちながらリーズナブルな価格で購入することが可能です。サイズもワンサイズ小さめな設計となっているので、小柄な日本人に似合います。
高級時計は最新が正義というわけではないので、選べる時計の幅が広いことは大きなメリットだといるでしょう。
並行輸入店のデメリット① 正規修理が受けられないブランドがある
基本的にほとんどのブランドでは正規品・並行輸入品問わず、修理を受け付けます。
ただし、一部のブランドでは並行輸入品だと正規修理が受けられない場合があります。これを並行差別と呼びます。
並行差別はブランドが、ブティックや百貨店等の国内正規店で購入した顧客のみを優遇するサービス体制です。
正規店購入ユーザーのみが入会できる会員制度を導入することで、オーバーホールや修理に関するアフターサービスの料金に差を設けているブランドが存在します。
有名どころとしてはフランクミュラーやブライトリングやタグホイヤーなど。
LVMHグループ傘下のウブロやブルガリ、ゼニスにルイヴィトンといったブランドは、並行差別としてメンテナンスの価格差を設けています。
ただ、基本的に人気ブランドであれば並行品だからと言って修理を受け付けないといったことは殆どありません。
多少の価格差はあっても、修理を依頼することは可能です。
並行輸入店のデメリット ショップの見極めが必要
仕入れルートがショップによってバラバラな並行輸入店は品質にも大きなバラツキがあります。検品体制が甘いショップではキズなどが放置されて陳列されることも。そのため、販売している時計の品質が信頼できるショップかどうか見極めが必要です。
ただ、見極めに関しては以下を意識すれば状態の悪い個体や偽物を掴まされる可能性は低いです。
・時計専門店である(知識が豊富なスタッフが在籍している)
・激戦区に店舗を構えている
・ネット上の口コミ評価が高い
激戦区に店舗を構えている並行輸入店は競争が激しく、品質の悪い時計を扱えば、その悪評はスグに広まります。
逆に言うと、今激戦区にて営業を続けている店舗は長年高品質を維持してきたことの証明であり、特に口コミに優れる店舗は信頼性の高い店だといえるでしょう。
量販店のメリット&デメリット
ヨドバシカメラやビッグカメラなど、全国各地に存在する量販店。一部の店舗では高級腕時計も取り扱っています。時計を専門で取り扱っている店舗とは異なる「独自のメリット・デメリット」がありますので、こちらもご説明したいと思います。
量販店のメリット
販売方式は並行輸入店と一緒で、独自ルートで入荷し正規店よりも安く販売しているのが特徴。そして、量販店ならではのメリットは、なんといっても「ポイントカード」です。
10%以上のポイントが付く場合もあり、頻繁に量販店を利用する方にはとても有益です。
ただ、量販店の価格は時計を専門に取り扱っている並行輸入店の相場より高く設定されているケースが多く、ポイントの付与が少ない場合は量販店のメリットがなくなってしまうことには注意が必要です。
あまり知られていませんが、ビックカメラでは量販店ながらタグホイヤーの正規品を販売しています。もちろん正規品なので、修理を割引価格で利用できる「エドワードクラブ」にも入会できます。
タグホイヤーのご購入をお考えの方は、有力な候補の一つとなるでしょう。
量販店のデメリット
量販店は時計専門店ではないため、どうしても商品陳列や取扱いに不安を覚えるシーンが見受けられます。
また、時計に詳しい店員が常駐しているかも不明なため、時計に関して正確な情報を手に入れることができるかどうかは疑問です。そのためスペックや使い方については自分で調べておくことをお勧めします。またアフターメンテナンスについてもメーカーに丸投げしているところが多く、融通が利かない事が多いです。
メリットであるポイントの付与に関しても、人気商品は還元率が低く設定されていたり、そもそも付与されないモデルも存在します。
安心の正規店、価格の並行輸入店と比較するとやや中途半端な存在であることは否めません。
中古品のメリット・デメリット
高級腕時計はそのほとんどが機械式です。機械式時計はメンテナンスを怠らなければ、長い年月時を刻み続けるのが魅力です。その耐久性の高さから中古時計の買取・販売は盛んで、多くのショップで中古品が取り扱われています。
中古品の状態はショップによってバラツキはありますが、時計を専門で取り扱っている店舗では外装研磨や機械点検を徹底している店舗が多く、状態の良い品を新品より安く購入できます。
中古品のメリット① 生産終了品が買える
中古最大のメリットはもう正規品での取扱が終了してしまった旧型モデルが買えることにあります。
並行輸入店では正規店では取り扱わないモデルを販売していますが、特に中古はオトクです。
ロレックス GMTマスターII 赤青ベゼル Ref.16710
例えば、「ロレックス GMTマスターII 16710」。
生産終了してから10年が経過してもいまだに人気が衰えない「永遠の定番」ともいえるモデルです。
16710は正規店ではとっくに販売が終了しているため、誰も買うことはできません。しかし、中古店ならば、買うチャンスを逃してしまった生産終了品を手に入れるチャンスがあります。
また、激レア扱いになった時計を除けば、販売当時の定価よりもはるかに安く購入できるのが一般的です。
中古品のメリット② 新品では手が届かない時計も手にすることができる
高い資産価値をもつ高級時計は非常に高価です。エントリーモデルでも概ね20~30万、100万円を超えるモノも当たり前のように存在します。
そのため欲しいモデルが高くて買えないという方もいることでしょう。
しかしながら、中古であれば「パテックフィリップ」「ランゲ&ゾーネ」といった世界有数の高級腕時計も手が届く場合があります。
例えばこの「ランゲ1 ムーンフェイズ」。定価では5,194,800円ですが、中古品の場合は3,000,000円前後で取引されています。きちんとメンテナンスが行われていれば、品質において新品と大差は無く、これだけ安く買えるのは大きな魅力です。
ただ、中古店の時計は全て一点モノなので、売れてしまったら次にいつ入荷されるかはわかりません。
目当てのモデルがあるのなら、定期的に中古ショップを覗いて情報収集することも大切です。
中古品のデメリット
並行輸入店の紹介で、ショップによって品質にバラツキがあると記述しましたが、中古品の場合は更にそれが顕著になります。ショップにより、キズや精度の許容範囲に大きなバラツキがあり、それぞれ価格も異なります。
アフターサービスや保証も店舗により差があるためショップの見極めが大切です。
またバッグや服といったブランド品と同じく、腕時計にも本物そっくりに偽造されたコピー品が出回っています。以前よりショップ側の専門知識が高まっているため、店舗で販売されていることは滅多にありませんが、注意が必要です。
まとめ
正規店で買うか並行輸入店で買うかは、自分が何を重視しているかによって変わります。正規店での信頼を重視するのか?価格を重視するのか?
状態の良い品を安く買いたいなら、信頼できる並行輸入店で中古品を買うのもオススメです。メーカー以外の修理業者も選べる為、メンテナンス費用も安く済みます。
どうせ買うなら良い時計をお得に買いたいもの。自分の金銭事情とも相談しつつ、是非お気に入りの一本を見つけ出してください!
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年
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