「高級時計メーカーが作るスマートウォッチはどこがすごいの?」
「高級時計メーカーのスマートウォッチの種類が知りたい」
アップルウォッチが収益でロレックスを凌いだ―そんなセンセーショナルなニュースが走ったのは2017年のことでした。
アップルに限らず、ソニーやサムスンなど腕時計型端末は確実にシェアを伸ばしてきています。
その動きを見てか、伝統的な腕時計ブランドがスマートウォッチを開発する潮流が新たに生まれました。
早い段階ではFossilやシチズン。
そして近年、タグホイヤーやウブロにブライトリングなど由緒正しい高級時計ブランドに位置づけられるメーカーも参戦してきているのです。
高級時計メーカーのスマートウォッチについて知りたいという人は多いのではないでしょうか。
スマートウォッチの進出には目覚ましいものがありますが、機械式時計でも次々と新しい機構を開発しています。
この記事では機械式時計をメインに扱っていたブランドのスマートウォッチを、GINZA RASINスタッフ監修のもと紹介します。
機械式時計とスマートウォッチの違いについても解説しますので、高級時計の購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
出典:https://www.tagheuer.com/ja-jp
目次
スマートウォッチとは?
「スマートウォッチ」という言葉はよく聞くけど、どんな時計かわからない。
そんな方々も多いのではないでしょうか。
実際、腕時計型端末(ウェアラブルデバイス)の歴史は1980年代から始まり、2012年にスマートフォンと連動したスマートウォッチをソニーが開発しても、爆発的にヒットしたわけではありませんでした。
「スマートフォン」で十分。そんな声も聞かれていましたね。
近年のスマートウォッチとは、ほとんどがBluetoothを内蔵し、スマートフォンとの連携が可能となった腕時計型端末です。
電話やメールができたり、スマートフォンの通知やバッテリー管理を行うことができるので、スマートフォンをいちいち鞄などから出す必要性はなくなります。
もちろんスマートウォッチ単体でも通信したり機種によっては万歩計や走行距離を試算し健康管理をしてくれるものも。
スマートウォッチは、決してなくてはならないものではありません。
しかし、身に着けた人の多くが「この便利さを知ったら手放せない」とおっしゃいます。
腕時計を「時刻を知るための日用品」と考え、どうせ買うなら多機能なスマートウォッチを、という方が若い世代を中心に増えていることは事実です。
機械式時計とスマートウォッチ、どちらがいいの?
スマートウォッチ人気がロレックスを超えた。そんなことから、機械式時計の今後を案じる声は少なくありません。
実際スマートウォッチの開発は、多くの老舗ブランドにとってクォーツショック以来の変動期とも言えるのでしょう。
クォーツショックとは、1969年にセイコーが世界で初めて実用腕時計にクォーツを搭載したアストロンを発売した「事件」。
ゼンマイで動く機械式時計の平均日差は-10~+20秒が当たり前なことに対し、電池式クォーツは月差±3秒以内という超高精度なものでした。
大量生産による低価格化が可能だったこともあり、高級時計ブランドは大打撃。
ブランパンは休眠、ゼニスはアメリカ企業に買収、IWCは倒産寸前・・・由緒正しい超有名ブランドですらこの有様でした。
一方で「高級機械式時計だけを売る」ことをブランディング戦略として生き残ったメーカーも少なくありません。
ロレックスやパテックフィリップなどがその代表例ですね。
2000年代、再び機械式時計の価値は見直され、多くのブランドが再建していきました。
このエピソードからもわかるように、機械式時計の価値というのは、時代や利便性を超越する魅力を確実に有します。
電子機器には出せない味わい、高級感、芸術性などが挙げられますね。
ある腕時計界のドンは、スマートウォッチのデザイン性を一笑に付したと言います。
また、スマートウォッチはOSが古くなったりバッテリーの寿命がありますが、メンテナンスさえ行えば一生使い続けることができるのは機械式時計の醍醐味でしょう。
まだまだ堅調な高級時計市場。
ライフスタイルによって一長一短がありますが、大切な人へのプレゼントやここぞという時のシーンには、機械式時計をおすすめします。
タグホイヤーから示された「機械式時計×スマートウォッチ」という選択
出典:https://www.tagheuer.com/ja-jp
機械式時計とスマートウォッチ、どちらを購入しようか迷っている方に朗報です!
近年では、この二つのハイブリット型スマートウォッチが発売されているのです。しかも、ラグジュアリーブランドに位置づけられるメーカーから!
これは一つのメーカーに限定されるものでもないのですが、最もアップルなどに肉薄しているブランドと言えば、タグホイヤーでしょう。タグホイヤーは今年で創業158年を迎える老舗中の老舗。
にもかかわらず非常にコストパフォーマンスに優れた商品ラインナップが魅力で、カレラを筆頭にモナコやフォーミュラ1など多くのロングセラーを有しています。
そんなタグホイヤーがブランド初となるスマートウォッチ「コネクテッド」を発表したのは2015年。
同社のフラグシップである「カレラ」のデザインを踏襲したことで話題となりました。
時計メーカーだからこそできた、魅力的な仕様とはどのようなものなのか?
①交換可能なパーツ
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タッチ対応液晶、Android Wear(現在のWear OS)を搭載していることなど、基本的にはコネクテッドは従来のスマートウォッチと大きな違いはありませんでした。
IntelやGoogleTMと共同開発されており、Intel1.6GHzデュアルコアCPU搭載、ベース目盛り1GB/ストレージ4GBとそのスペックに申し分なし。
しかし、タグホイヤーのコネクテッドならではの大きな魅力は、文字盤交換が可能なこと。
同社のファンにはおなじみの、レーシングカーにインスパイアされたかっこいいデザインやクラシカルな三針などをスマートウォッチでも味わうことができるのです(仕様が合えば他社文字盤も交換可能)。
本体やバックルにチタニウムを採用し、安定性や耐久性が考慮されていることも時計屋ならでは。
この試みは大ヒットし、16万5,000円(税抜)というスマートウォッチとしては高価格帯にもかかわらず、品薄が続きました。
以来タグホイヤーは伝統的なバーゼルワールドで新作としてコネクテッドウォッチを発表。
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2017年の「コネクテッド モジュラー45」では文字盤のみならず、ラグやストラップ、バックルなどのパーツまでもをユーザー自身で選べるようにしたのです。
文字盤デザインはクラシカルな三針やクロノグラフなどから始まり、オリジナルアプリを用いてカスタマイズしたり写真を設定したりと選択肢は拡大。「自分だけのスマートウォッチ」を作成することができます。
そして最も特筆すべきは、なんと専用の機械式モジュールが用意され、機械式時計としても使用することも可能になったのです!
ちなみにトゥールビヨンのモジュールも用意されています。
まさに、スマートウォッチも機械式時計も楽しめる画期的な新作でした。
2018年には女性も仕様できる41mmサイズがラインナップに追加。もちろんカスタマイズ仕様は受け継がれ、人気のキャリバー5搭載機へ変更することもできます。
日本ではiphoneユーザーが多くその互換性がどうしても気になるところですが、Wear OSが搭載されていますので、iOS9以降の端末で可能です。
②ものづくりへのこだわり
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タグホイヤーは、コネクテッドウォッチのために工房を新設し、他のラインナップ同様熟練したスイス職人の手によって作り上げられています。
パーツもほとんどがスイスメイドという徹底っぷりで、世界初となるスイスメイドラベル入りのスマートウォッチです。
それゆえ、コネクテッドの作りこみの高さというのは圧巻。これまでのスマートウォッチになかった風格や高級感を感じさせます。
老舗ブランドが機械式時計へ傾けるクラフトマンシップと同様に情熱をかけて製造されたコネクテッドは、なかなか電子機器メーカーに真似できるものではないのでしょう。
また、「タグホイヤーならでは」を象徴するエピソードとして、コネクテッドのメーカー保証期間は2年ですが、その際追加で1500米ドルを支払うと機械式時計と交換できるオプションが付随します。
③スマートウォッチとは思えないスペック
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「スマートウォッチ」としてのスペックは従来のそれと遜色ないものです。
しかし、「日常使いの時計」として、スマートウォッチを超越するスペックを有します。
最も特筆すべきはなんと50m防水という性能。
タグホイヤーの時計はスポーツシーンに非常に似合うことをブランドはよく理解しているのでしょう。
また、ストラップの装着感やバックルの操作性の良さなんかは、時計メーカーでなくては気をくばれないきめ細かさでしょう。
よくスマートウォッチの拡張性や機械式時計の今後、といった議論がそれぞれ交わされることがあります。
その二つに対する答えを、タグホイヤーが示してくれているように思います。
ウブロのスマートウォッチ 「ビッグバン レフェリー」
出典:https://www.instagram.com/hublot/
野球選手の田中将大さんやサッカーの長友佑都さん、タレントのみのもんたさんなど、多くの著名人に愛されるウブロ。
時計ブランドの中でも高価格帯に位置し、フラグシップのビッグバンは100万円を超えることも珍しくありません。
しかし、1980年創業と比較的新しい会社ゆえか、新技術の採用には非常に意欲的。
2018年には、タグホイヤーに続きブランド初となるスマートウォッチを発表しました。
その名もビッグバン レフェリー FIFAワールドカップロシアです。
ウブロはワールドカップのオフィシャルタイムキーパ―を務めますが、ロシア大会開催を記念しFIFAとタイアップしたスマートウォッチです。
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49mmという大ぶりのチタンケース、サテン仕上げのベゼルやラグ、舷窓を思わせるビスなどビッグバンの外装をそのまま用いていることが特徴。
FIFAの「審判の為の時計がほしい」という要望に応えた結果で、ワールドカップ2018までのカウントダウンをしたり、イエローまたはレッドカード判定・選手交代を通知したり、得点が入ると「GOAL」と表示されたりと異色。
まさにサッカーファンのための時計に仕上がっています。
一方でWear OSが搭載されており、スマートウォッチとしてのスペックも十分。
ストラップが付け替え可能で、ワールドカップロシアのエンブレムとウブロのロゴが入ったストラップとブラックラバーストラップが付属します。
価格帯はなんと60万円!
スマートウォッチは寿命が確実に機械式時計に比べて早いため、高級なものでも30万円を超えることはあまりありません。
そこを60万円という強気の価格に、ウブロの自信のようなものが伺えます。
ちなみにウブロのスマートウォッチもまた50m防水を備えます。
ブライトリングのスマートウォッチ「エクゾスペース」
出典:https://www.breitling.co.jp/products/pickup/backnumber/16_jan/
ブライトリングもまたスマートウォッチの分野では目覚ましい進化を遂げています。
モデル名はEXOSPACE B55(エクゾスペース)。
ただし、ブライトリングのスマートウォッチは一風変わっています。
多くのスマートウォッチがスマートフォンと連携することが主目的となりつつある中で、ブライトリングは時計そのものの操作性や可能性を広げるためにスマートフォンを「補助的に」使用すると言うのです。
具体的には、時刻合わせやクロノグラフでの時間計測、フライトコンピューターなどをスマートフォンで操作ができるといったもの。計測結果をスマートフォンに転送し、別のアプリケーションで使ったりもできるようです。
GPSや歩行距離計算、文字盤デザインの変更などはできませんが、電話やメッセージ等の通知は可能。
エクゾスペースは自社製スーパークォーツムーブメントB55を搭載しており、このバッテリーは通常使用で1カ月程度も持続するとのこと!ちなみに長寿命で、10年以上の使用に耐えます。
お値段はなんと120万円(税抜)!!
前述のようにスマートウォッチは寿命があるため、どのブランドもそこまで価格を上げてはこないのですがOSが切れても「ブライトリングのクォーツウォッチ」として使えるからでしょうか・・・
確かに46mmという大ぶりチタン製ケースはしっかり仕上げられており、ブライトリングらしいタフさと高級感を併せ持ちます。100m防水と実用性も悪くありません。
かなり強気な値段設定は、やはり自信の現れなのでしょう。
ルイヴィトンのスマートウォッチ「タンブール ホライゾン」
出典:https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/homepage
まだまだハイブランドのスマートウォッチはあります!
「老舗時計メーカー」というわけではありませんが、前述したタグホイヤーやウブロ・ゼニスなどを傘下に加え、その技術力を存分に活かした本格的機械式時計を製造しているルイヴィトンから、2017年にタンブール ホライゾンが発表されています!
ラインナップは42mmケースに素材はステンレススティール,PVD加工ステンレススティール,42.9mmホワイトセラミックなど。さらにルイヴィトン製の上質な革ベルトまたはラバーベルトと任意で組み合わせが可能です。
このルイヴィトン製のスマートウォッチ、既存のどの製品とも異なるユニークさを抱えていることで、時計業界でも大きな話題となりました。
①「旅」に特化したユニークな機構
ルイヴィトンはブランドコンセプトのうちの一つに「旅」がありますが、そこに特化したスマートウォッチで、「My Flight」というフライト管理システム、また「City guide」という、パリやロンドン、ニューヨークなど29都市の観光名所を案内してくれるなどという、大変ユニークな機能を持ったことがポイントです。
出典:https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/stories/tambour-horizon#the-campaign
さらに言うと2019年からは、「My travel」という機能も追加。これは、ユーザーが専用アプリを通じて登録した予約ホテルやフライトを一括管理してくれるシステムで、それを手元で一度に確認することができます。「次の予定はどうだったっけ?」「ホテルの名前はなんだっけ?」といったことがなくなりますね。
このように、ルイヴィトンらしい「旅」を全面に押し出すことで、他のIT企業とも時計メーカーとも全く異なる、新しいスマートウォッチを市場に送り込むことに成功しました。
②スマートウォッチとしても十分な機能性
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当然ながら旅のみならず、スマートウォッチとしても十分な機能性を誇ります。
電話やメールの通知、アラーム、歩数計などのヘルス機能、位置情報、お天気情報などなど・・・タグホイヤーやウブロなどと同様に「Wear OS by Google」を搭載しているので、Google Play Storeからアプリをダウンロードすれば、機能を拡張してより利便性を高めることも可能です。
また、多くのスマートウォッチ同様、文字盤(液晶ディスプレイのデザイン)選択が可能なのですが、その中には「モノグラム」や「ダミエ」など、ルイヴィトンらしいロゴが選べます。カスタマイズは専用アプリをダウンロードするだけ。ルイヴィトン好きには嬉しいですね。
さらに2019年には、ルイヴィトンのスマートウォッチはバッテリーの持ちが延長されたことも大きなポイント。高機能な時計はどうしてもすぐに電池が切れがち。しかしながらタンブール ホライゾンなら、一度の充電で十分なバッテリーを確保できることはもちろん、バッテリー残量が15パーセントを切ると、「タイムオンリー機能」と呼ばれる時刻表示のみを行うシステムが立ち上がり、そこからなんと5日間も使用可能、と言うことです。
③高級時計らしい上質な外装
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「ものづくり」に一家言あるルイヴィトンらしく、ただ機能面に優れるだけでは終わりません。特筆すべきは外装技術。タグホイヤーの項でも言及しましたが、やはり高級品を伝統的に製造してきたブランドと言うのは、外装にこだわりを感じることができます。
タンブール ホライゾンの独特のケースフォルムは、もともとルイヴィトンのフラグシップ「タンブール」を踏襲したものとなります。これは2002年から販売スタートした新ラインで、同社にとっては初の本格腕時計シリーズ。フランス語で「太鼓」を意味するモデル名通り、インパクトあるケースフォルムが特徴です。ちなみに16世紀にドイツで初めて作られた寸胴ケースの旅行用小型携帯時計「ドラムウォッチ」に由来しています。
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この外装、実はとてもよく完成されています。外周にLouis Vuittonのロゴが一周していること。加えてスマートウォッチでは「タンブール ムーン」と呼ばれる、ケースがくびれて立体感を醸し出す仕様になっていることから、「奇抜なのにスタイリッシュ」「斬新なのに上品」といった評価を獲得してきました(現在は寸胴でボリュームのある無印タンブールでもラインナップ)。
なお、お値段はモデルにもよりますが、だいたい30万円台~50万円台。確かにスマートウォッチとしてみれば高額かもしれませんが、前述したウブロやブライトリングなど高級時計メーカーが輩出する製品のプライスレンジと比べるとお手頃と言えるでしょう。むしろ、ルイヴィトンのバッグは数十万円の定価も珍しくありませんので、この価格帯でスマートウォッチもルイヴィトンのステータスも楽しめると思うと優れたコストパフォーマンスと言えるでしょう。
モンブランのスマートウォッチ「サミット」
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ルイヴィトンの「タンブール ホライゾン」の誕生と同年にあたる2017年、モンブランからもスマートウォッチ「サミット」がラインナップされました。2018年にはさらにスペックアップしたサミット2へとモデルチェンジを果たしています。
モンブランと言えば筆記具が思い浮かびますが、1997年より時計事業にも参入。IWCやジャガールクルトなどが属するリシュモングループの傘下に加わっており、その資本力と時計製造ノウハウを武器に本格時計でも頭角を現していきました。
そんなモンブランが手掛けるサミット2。この名前は「頂上」を意味します。もともと同社のブランド名はイタリアとフランスの国境に位置するアルプス最高峰「モンブラン」にちなむため、スマートウォッチにおいても山頂を目指す、という意味合いでつけられたのでしょう。
サミット2は現在時計界の大きなトレンドともなっている「ヴィンテージ」「アンティーク」といったテイストを上手に取り入れていることが何よりの魅力です。
①モンブラン 1858を踏襲したヴィンテージな外装
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「モンブラン 1858」とは2017年から加わったモンブランの新シリーズです。モンブランはミネルバ社という老舗時計メーカーと共同で時計開発・製造を行っているのですが、そのミネルバへのオマージュとして誕生したヘリテージ(遺産)ラインとなります。ミネルバ社が1858年創業であることからこの名前がつけられました。
前述の通り、現在時計業界は「ヴィンテージ」「アンティーク」のデザインが流行っており、特に1950年代~1960年代あたりの古き良き時代のモデルをリバイバル(復刻)することがトレンドです。そんな潮流を汲んでか、モンブランはモダンの象徴であるスマートウォッチを、ヴィンテージ感も楽しめる外装としました。それがサミット2です。
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サミット2もまた任意の文字盤へのセッティングが可能ですが、その基本デザインが「モンブラン 1858」であることがその特筆すべき点です。往年の銘クロノグラフを思わせるツーカウンター(横にインダイアルが二つ並んでいる仕様)で、これはミネルバがとりわけクロノグラフムーブメントの製造に一家言持っていたことに由来します。視認性の高いアラビア数字なども、1950-60年代の軍用クロノグラフを思わせます。なお、もちろんスマートウォッチらしいデジタル表記も可能に。
また、機械的な機構はないにもかかわらず、リューズやボタンがクロノグラフ風になっているのも手が込んでいますね。
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さらに注目したいのが、ディスプレイ。実は、通常の高級時計のように、サファイアガラス製ドーム型風防が採用されています。これはスマートウォッチ初の試み。この風防によって、パッと見は本当に高級時計と遜色ありません。
ケースサイズは2017年初出時は46mmでしたが、サミット2からはよりヴィンテージを追求した小径42mmサイズへと変更されました。素材はステンレススティール,PVD加工のステンレススティール,チタンがラインナップされていますが、いずれも丁寧に仕上げが施されています。
5気圧防水・高耐久性と、実用時計としてのスペックは十分と言えるでしょう。
②スマートウォッチとしての機能は最先端
出典:https://www.montblanc.com/en-shop/home.html
スマートウォッチとしての機能も十分・・・いえ、最先端と言えるのがサミット2のもう一つの魅力です。
2018年に登場したサミット2からは、クアルコム(Qualcomm)製「Snapdragon(スナップドラゴン) Wear 3100チップセット」が搭載されることとなりました。これはフォッシルやシャオミーなどでも使用されている最先端プロセッサ(CPU)で、きわめて軽量なこと、そして省電力が優れていることで注目を浴びています。この「省電力」、実はスマートウォッチの大きな課題。充電し忘れたり、充電しても持ちが悪かったりすると、日常使いに支障が出てしまいますよね。
このSnapdragon Wear 3100を使うことで、バッテリー寿命は1週間という持続性を獲得。これは高級スマートウォッチという分野では、やはり初となります。また、消費電力をさらに抑制するために「Traditional Watch Mode」が設けられています。これはスマートウォッチとしての機能をストップさせ、単に「時計」としてのモードに切り替えるというもの。当該モードにすれば、充電しなくとも数日間は使用が可能とのことです。
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搭載OSには「Wear OS by Google」、iOSにもAndroidにも対応します。
さらに言うと、音声コマンドが可能なマイクを完備、また心拍モニターや歩数計などアクティビティ機能も十二分に備わっています。トラディショナルな外装を実現するため、直径42mm×厚さ14.3mmとスマートウォッチとしては大きめですが、Snapdragon Wear 3100のおかげで軽量。そのため運動やアウトドアにもお勧めできます。実際、ランニングサポートアプリがあり、独自の分析システムによってランニングをコーチングしてくれたり、5気圧を確保することでスイミングを可能にしたりと、モンブラン自身もフィットネスに積極的に用いることを推奨します。
③リーズナブルな価格設定
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モンブラン製サミット2が話題になるもう一つの点は、リーズナブルな価格設定。
前述の通りモンブランの外装は自社の「モンブラン 1858」を踏襲しており、1858シリーズのプライスレンジは定価30万円台~(素材によっては60万円台、70万円台のものも)で、外装に十分なコストがかけられていることがわかります。
この外装技術が楽しめるスマートウォッチであるにもかかわらず(そしてスマートウォッチとして最先端であるにもかかわらず)、サミット2の定価は127,490円。ゴールデンカラーのPVDスティールモデルは127,600円、ミラネーゼブレスレット搭載機は157,740円などモデルによって変わりますが、非常に優れたコストパフォーマンスを有します。
これくらいの価格帯であれば、既に機械式時計やスマートウォッチを所有している方でもサブ機として気軽に購入できますし、初めて高級スマートウォッチに挑戦する方でも入りやすいですね。
モンブランは「高級筆記具メーカー」といった印象が強いですが、実は良いものを極力手に入りやすい価格で提供するブランドとしても、ものづくりの世界では高名です。
まとめ
徐々に私たちの生活の中で当たり前の存在となってきているスマートウォッチ。
一方でロレックスやパテックフィリップなど飽くまで機械式時計にこだわるブランドの価格高騰は青天井で、その人気は衰え知らず。
それどころか新機能やデザインの開発に意欲的で、タイトなビジネスマンも納得の実用性を身に着けているブランドがほとんどです。
スマートウォッチの利便性も良いですが、やはりロマンや味わい深さ、ステータス性や一生使える永遠性など、機械式時計にしかない魅力というのは枚挙にいとまがありません。
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年