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2023年チューダー新作モデルを発表!by Watches & Wonders Geneve
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出典:https://www.tudorwatch.com/ja
ロレックスのディフュージョンブランドとして誕生したチューダー。そのためロレックスとのWネームを感じさせつつも、独自路線によってファンを惹きつけてきました。チューダーはかっこよくも高品質な腕時計製造に定評がありますが、加えて良心的な価格設定を堅持しているところに、大いなる魅力を感じます。
そんなチューダー、近年では自社のレガシーを、最新技術と革新の姿勢で示し続けています。とりわけブラックベイ58の大成功は、チューダーの業界内でのポジショニングを象徴しているように思います。
2023年も、チューダーの新作が楽しみで仕方なかったファンも少なくないでしょう。かく言う私も、その一人。
この記事では、チューダーの2023年新作モデルをご紹介いたします!
目次
2023年チューダー新作①ブラックベイ54 Ref.79000N
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スペック
外装
ケースサイズ: | 直径37mm |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | ブラック |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.MT5400 |
パワーリザーブ: | 約70時間 |
機能
防水: | 200m |
定価: | 490,600円または463,100円 |
2023年、ブラックベイに新しいコレクションが追加されました!ブラックベイ 54です!
ブラックベイの後ろについている2桁の数字は、ベースとなるオリジナルモデルの初出年を示しています。そして1954年というのは、今日のブラックベイの礎を築いた、初代サブマリーナーがチューダーから生み出された年でした。
この1954年にリリースされたサブマリーナーはRef.7922。この当時のダイバーズウォッチに合わせて、新作ブラックベイ54は、ケース直径37mmとなっていることも驚くべき点です!現代としては、かなりクラシカルな小径ケースですよね。
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サブマリーナーについて解説を加えると、前述の通り1954年に誕生したチューダーのダイバーズウォッチコレクションです。
ご存知ロレックスのサブマリーナーから範を取ったコレクションとなり、デザインコードも共通しています。チューダーはロレックスの普及を目的に誕生したディフュージョンブランドであり、そのため「ロレックスとパーツを共有しながらも、ロレックスよりも安く購入できる」といった側面がありました。一方でチューダーならではの仕様を備えたモデルも多々存在しており、これがまたチューダーの魅力を押し上げたものです。
とりわけ1969年に誕生し、現行ブラックベイでも見られる「イカ針(スノーフレーク針)」を備えたRef.7016(またはRef.7021)等は、有名ですね。
そしてブラックベイ54は、チューダー サブマリーナーの初代モデルRef.7922をリバイバルしている、とのことです!
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確かにノンデイト、37mmケース、そしてシンプルになったベゼルが、かなりオリジナルに近いですね!
ブラックベイ58もかなりレトロチックなデザインですが、やはりオリジナルに近づけられたミニッツサークルや焼けたような風合いを醸し出すインデックスは、ヴィンテージ好きには堪りません。
なお、アップの宣材写真を見てみると文字盤がマットになっていることがわかります。これが、良い味出してます1
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ちなみにブラックベイは、ベゼルインサートにアルマイト加工処理を施したアルミを用いています。
近年のスポーツウォッチのスタンダードになりつつあるセラミックではなく、あえてアルミを採用する・・・。こういったところにも、ブラックベイがチューダーのレガシーを存分に誇るコレクションである、とわかりますね。
ドーム型サファイアクリスタルガラスやサテン仕上げが基調となった外装も、往年の名作ダイバーズウォッチといった装いです。
なお、ベゼル形状やリューズが若干変更されているようです。
一方でブラックベイのアイデンティティでもあるイカ針は健在です!
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このイカ針こそ、The チューダー製ダイバーズウォッチ!
ロリポップ秒針もチューダー サブマリーナーに見られた仕様で、アイコニックなデザインを形成します。
なお、初代サブマリーナー Ref.7922のロゴは薔薇ですが、現行は盾マークです。1970年代頃から盾マークが用いられるようになったのですが、これは一説にはコスト削減と言われています。もっとも個人的には、盾マークが見慣れていることもあり、チューダーを象徴するロゴだと感じています。
このようにそこかしこにレガシーを潜める一方で、性能・機能は最先端!
ラバーストラップまたはメタルブレスレットがラインナップされておりますが、いずれもチューダー独自の“T-fit”クイックアジャストクラスプとなっているのが嬉しいところです。この“T-fit”クイックアジャストクラスプは2022年に新作レンジャーやペラゴスで採用された機構で、コマを外したり工具に頼ることなく、9mmの微調整が可能となったもの。ダイバーズウォッチのように重要が出がちな腕時計は緻密な調整で装着感が驚くほど改善されます。実用性に配慮を欠かさない、チューダーらしい機構ではないでしょうか。
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他のブラックベイ同様、200m防水となっているので、デイリーユースにも最適です(ちなみにロレックスのサブマリーナーは後に200m防水から300m防水へとアップデートしますが、サブマリーナーは200m防水のままでした。チューダーの技術レベルを考えれば300m防水とすることは難しくないように思いますが、オリジナルを踏襲した200m防水なのかもしれませんね)。
また、ムーブメントも最先端です。
搭載するMT5400は、COSC認定の高精度を備えつつも、パワーリザーブ約70時間、そして高い信頼性を誇る自動巻きムーブメントです。ブラックベイ58や前述したペラゴス等でも活躍していますね。。耐磁性や堅牢性も申し分ありません。
さらにさらに、腕時計の高価格化が叫ばれる昨今、50万円未満の価格設定にしてくれるとは、さすが私たちのチューダー!
もちろん最近は度々の定価改定があり、今後値上がりの可能性がないわけではありませんが、良心的と言わざるをえないでしょう。
なお、ブラックベイ58はあまりの人気に、定価を上回るプレミア相場が続きました。じょじょに落ち着きを取り戻してきましたが、それでも品薄傾向に変わりはありません。
この新作ブラックベイ54も、そんな超人気モデルになるであろうことは、想像に難くありません。
2023年チューダー新作②ブラックベイ マスタークロノメーター Ref.7941A1A0RU
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スペック
外装
ケースサイズ: | 直径41mm |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | ブラック |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.MT5602-1U |
パワーリザーブ: | 約70時間 |
機能
防水: | 200m |
定価: | 572,000円または558,800円または531,300円 |
マスタークロノメーター認定ブラックベイに、第二弾が投入されました!
第一弾のアヴァンギャルドなオールブラックセラミックモデルとは打って変わって、ブラックベイの昔ながらのバーガンディベゼルをまといます。ちなみにバーガンディベゼルは、ブラックベイがコレクションとして打ち出された2012年に初期メンバーとしてラインナップされました。2015年にモデルチェンジした折にも登場し、どこかレトロさを感じさせる色合いから、高い人気を誇ってきたものです。
そんなバーガンディベゼルに、マスタークロノメータームーブメントが搭載されるとは、ファンとして喜びを隠しきれません。
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マスタークロノメーターとは、METAS(スイス連邦計量・認定局)とオメガがタッグを組んで開発した時計の規格です。COSC(クロノメーター)認定機を対象に、精度・耐磁性能・防水性・パワーリザーブなどといった包括的な時計の機能特性を検査を行ったうえで、認定機には「マスタークロノメーター」の称号を与えます。
COSCも厳格ですが、マスタークロノメーターはさらに厳しく緻密なテストを8つ課されます。
中でも「15,000ガウスの磁場下でのムーブメントの機能や精度誤差」においては、業界トップクラスの厳しさと言って良いでしょう。
これは、耐磁性能に対する検査です。機械式時計に磁気は大敵。ムーブメントのパーツ、とりわけヒゲゼンマイが磁化してしまうと、時計の正常な動きを妨げてしまうためです。そのため近年では耐磁性能に各時計メーカーが取り組んでいるのですが、一般的な耐磁時計はここまでの耐磁性は求められません。例えばJIS(日本産業規格)では、1種耐磁時計を4,800A/m、2種耐磁時計を16,000A/m以上と規定しています。1,200,000A/m(15,000ガウス)が、いかに突出しているかおわかり頂けるのではないでしょうか。
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こういった厳格さも手伝って、マスタークロノメーターはこれまでオメガのお家芸でした。
しかしながら2021年、突如としてブラックベイで、マスタークロノメーター認定のセラミックモデルをチューダーが打ち出したのです。
オメガは現在、既存コレクションの多くをマスタークロノメーター化しています。そのためチューダーもこれが期待されたのですが、2022年は特にそういった新作がリリースされず、続く2023年にベーシックモデルで採用に至ったというわけです。
搭載するムーブメントは2021年モデルと同様にCal.MT5602-1Uです。
前述した15,000ガウスもの耐磁性能を有しながらもケースの大型化は見受けられず、また約70時間の嬉しいロングパワーリザーブとなっております。
新作はバーガンディベゼルで3種がリリースされており、ドレッシーなジュビリーブレスレット、3列メタルブレスレット、ラバーストラップのラインナップです。いずれも前項でもご紹介した“T-fit”クイックアジャストクラスプを搭載しているため、こちらも工具なしでの微調整が可能です。
国内定価はジュビリーブレスモデルが572,000円、3列ブレスモデルが558,800円、ラバーストラップモデルが531,300円です。
マスタークロノメーター化を果たしているにもかかわらず既存コレクションとの価格差は10%以内となっており(SSの3列ブレスモデルの場合)、ここにもチューダーの企業努力の姿勢が見て取れますね。
2023年チューダー新作③ブラックベイ GMT 79830RB
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スペック
外装
ケースサイズ: | 直径41mm |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | オパーリン |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.MT5652 |
パワーリザーブ: | 約70時間 |
機能
防水: | 200m |
定価: | 551,100円または510,400円 |
2018年に誕生した、大人気ブラックベイ GMTコレクションにも、新しい文字盤が追加されています!ホワイト・・・ではなく、ガルバニック仕上げによって重厚感と上品な質感を醸し出すオパーリン文字盤です!ブラックベイと言うとブラックやブルーが主流であったため新しさを感じますが、一方でブラックベイらしいレトロさをも際立たせます。
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ちなみにチューダーはしばしばロレックスとの関係性への、オマージュをデザインやディテールに潜ませます。例えば2022年新作モデルでは、ロレックスの初代エクスプローラーIIを彷彿とさせる、ブラックベイProがリリースされました。
そして2023年の新作ブラックベイ GMTは、ロレックスが1950年代、パン・アメリカン航空のために製造したGMTマスター Ref.6542 ホワイト文字盤(パンナムモデル)へのオマージュなのではないか、とも言われています。
GMTマスターはロレックスのパイロットウォッチコレクションですが、初出時はパン・アメリカン航空のパイロットのための腕時計といった開発コンセプトがありました。とは言え、パンナムモデルは全く市場に出回らず、長らく存在すら真偽不明でした。
しかしながら近年、その個体の存在が発覚。発見されたパンナムモデルは、ブラック文字盤が主流のGMTマスターの中では非常に珍しくホワイト文字盤を採用していたのです。そして新作ブラックベイ GMTは、この往年のロレックスの激レア個体を彷彿とさせる、と。ちなみにこのホワイト文字盤のレア個体を、バニラコークなどと呼ぶことがあるようです。
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チューダーの真意はわかりませんが、ガルバニック仕上げによって実現された文字盤は、とてもエレガント。なお、ガルバニック仕上げは耐久性や耐食性に優れるため、経年変化に強いというのも嬉しいですね。
搭載するムーブメントは、従来品と同じくマニュファクチュールのCal.MT5652。高い精度と信頼性、そして約70時間のパワーリザーブを誇ります。
国内定価はメタルブレスモデルが551,100円、ファブリックストラップモデルが510,400円です。
GMT搭載機としては非常にお得感が強いため(ちなみにブラック文字盤モデルと同一価格)、初めてのチューダーにも最適ではないでしょうか。
2023年チューダー新作④ブラックベイ 31/36/39/41
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スペック
外装
ケースサイズ: | 直径31/36/39/41mm |
素材: | ステンレススティール他 |
文字盤: | ブラック・ブルー・シルバー |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.MT5601他 |
パワーリザーブ: | 約70時間(31mmサイズは約50時間) |
機能
防水: | 100m |
定価: | 518,100円他 |
ETAの汎用ムーブメントを搭載したシンプルでベーシックなSSブラックベイが、マニュファクチュールムーブメントを伴ってフルモデルチェンジしました!
2016年にブラックベイのバリエーションとして誕生したこのシンプルモデルは、エクスプローラーIを彷彿とさせる、日付表示すら持たない3針機能であることを特徴とします。価格もベーシックな立ち位置となっており、またサイズ展開が幅広いことからも、様々なファンを抱えてきました。
このブラックベイが、マニュファクチュールムーブメントを搭載することで、パワーリザーブが約70時間へと大幅アップ(31mmサイズは約50時間)。これまでは約38時間であったことを鑑みると、かなり大きなアップデートですよね。
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ベーシックなスタイルは変わっていませんが、文字盤が少し新しくなっており、とりわけアンスラサイトにゴールドのミニッツサークルをあしらったモデルは、唯一無二の存在感を放ちます。
なお、従来品は6時位置のROTOR SELF-WINDINGの文字がニッコリと笑ったようになった仕様が結構好きだったのですが、CHRONOMETER OFFICIALY CERTIFIEDへと変更になりました。
ジュビリーブレスレットと相まって、ラグジュアリー寄りな立ち位置となったのでしょうか。
防水性も150mから100mに変わっています(日常使いには十二分な性能ですが)。
もっとも、このコレクションも“T-fit”クイックアジャストクラスプが搭載されております。
ムーブメントは41mmサイズと39mmサイズがMT5601、36mmサイズがMT5400(前述したブラックベイ58やブラックベイ54と同じく)、そして小型サイズ用のMT5201が、搭載されることとなりました。MT5201は2022年にイエローゴールド×ステンレススティールのコンビブラックベイで既に採用されておりましたが、ステンレススティールモデルでも実装された形となります。
価格はサイズによって異なりますが、先代と比べるとやや高額になっております。
しかしながらSS素材のベーシックモデルであれば40万円台~50万円程度で購入できるので、エントリーモデルとしても最適ですね。
2023年チューダー新作⑤ロイヤル チョコレートブラウンおよびサーモンピンクダイアル
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スペック
外装
ケースサイズ: | 直径28/34/38/41mm |
素材: | ステンレススティール他 |
文字盤: | ブラウンまたはピンク |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.T603他 |
パワーリザーブ: | 約38時間 |
機能
防水: | 100m |
定価: | 470,800円他 |
ケース・ブレスレットが一体型となった、ラグジュアリー・スポーツウォッチのテイスト溢れるロイヤル。2020年にリリースされた「新たなる定番」であり、豊富なサイズ展開を行っていることからも、幅広いファン層から熱い支持を集めるコレクションです。
そんなロイヤル、ロレックスのデイトジャストのように文字盤カラーが多彩です。さらに2023年には、ここにチョコレートブラウンとサーモンピンクカラーが加わった形となります。
チョコレートブラウンはイエローゴールド×ステンレススティールのコンビモデルに採用されております。
出典:https://www.tudorwatch.com/ja
ローマンインデックスもエレガントですが、ダイヤモンドインデックスもラグジュアリーですね。
サーモンピンクダイアルは、ステンレススティールモデルで採用されました。
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サーモンピンクのファンは少なくないでしょう。とりわけロイヤルではサンレイ仕上げによって光沢を放っており、ラグジュアリーな印象が強まります。なお、こちらもインデックスにダイヤモンドがあしらわれたバリエーションも新作として発表されています。
チューダーらしいツール感溢れるスポーツウォッチも良いですが、ジャケットの袖元から控えめにそして上品に存在感を放ってくれるドレッシーなモデルを好む方は少なくありません。
価格帯もSSモデルで295,900円~315,700円。SS×YGモデルで444,400円~470,800円と非常にお得感が強いので、多くの方々にとって良い選択肢になることでしょう。
まとめ
チューダーが2023年に発表した、新作モデルをご紹介いたしました!
やはり主役はブラックベイ。一方でロイヤルの新バリエーションもエレガントで、心を奪われてしまうものです。
なお、文中でも言及しているように、近年チューダーも人気モデルは品薄傾向が続き、定価を超えるプレミア相場となることがままあります。2023年も魅力的な新作モデルばかりであったため、この傾向が強まるのではないかと危惧されます。
今年もチューダーから目が離せません!
当記事の監修者
田所 孝允(たどころ たかまさ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 営業物流部長/p>
1979年生まれ 神奈川県出身
ヒコみづのジュエリーカレッジ ウォッチメーカーコース卒業後、かねてより興味のあったアンティークウォッチの世界へ進む。 接客販売や広報などを経験した後に店長を務める。GINZA RASIN入社後は仕入れ・買取・商品管理などの業務に従事する。 未だにアンティークウォッチの査定が来るとついついときめいてしまうのは、アンティーク好きの性分か。
時計業界歴18年。