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速報!2023年ユリスナルダン新作モデルを発表!by Watches & Wonders Geneve
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出典:https://www.ulysse-nardin.com/jp_jp/
ユニークながら高度な時計製造技術を必要とする、複雑機構やデザインで名を馳せてきたユリスナルダン。
中でも2001年に誕生したフリークは、一目では腕時計であることを信じられないような。いったいどんなギミックが隠されているんだ?と謎めくような。そんな知的好奇心をそそられるユリスナルダンの代表コレクションです。
2023年、Watches & Wondersでユリスナルダンは、このフリークの最新作をローンチしました!
この記事では、ユリスナルダン最新モデルをご紹介いたします!
目次
2023年ユリスナルダン新作 Freak ONE(フリーク ワン)
出典:https://www.ulysse-nardin.com/jp_jp/
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径44mm×厚さ12mm |
素材: | チタン(ブラックDLC加工)×ピンクゴールド |
文字盤: | スケルトン |
ムーブメント
駆動方式: | 手巻き |
ムーブメント: | Cal.UN-240 |
パワーリザーブ: | 約72時間 |
機能
防水: | 30m |
定価: | 要問合せ |
ユリスナルダンは1846年に誕生した時計ブランドです。
わが国にも明治時代から輸入され、また戦前の帝国海軍が制式採用されていた歴史をご存知の方も多いでしょう。ちなみに日露戦争の日本海海戦で有名な戦艦「三笠」に、ユリスナルダンのクロノメーターが搭載されていたと言います。
ユリスナルダンは1970年代、クォーツショックの打撃を受けて、1983年に実業家のロルフ・シュナイダー氏に経営権が譲渡されます。このリスタート時にかの有名なルートヴィヒ・エクスリン博士が「天文三部作」を発表。ユリスナルダンは再び高級腕時計業界に返り咲き、以降は独自路線をひた走ってきました。
※天文三部作
「アストロラビウム・ガリレオ ガリレイ」(1985年)「プラネタリウム コペルニクス」(1988年)「テリリウム・ヨハネス ケプラー」(1992年)の三種の超複雑機械式時計から構成されるユリスナルダン渾身の三部作。「天体」から着想を得た機構を搭載した腕時計で、とりわけ第一作目の「アストロラビウム・ガリレオ ガリレイ(太陽や月,星座等を文字盤で視認できる天文時計をリューズ一つで操作させた驚きの機構)」は、ギネスブックにも搭載されています。
このルートヴィヒ・エクスリン博士はその後も業界を湧かせるような創意工夫をこらした複雑機構を製造していくのですが、そのうちの一つが2001年発表のフリークです。
フリークとは、ユリスナルダン曰く「文字盤なし。針なし。境界なし。」と。
フリークを一目みると、本当に文字盤や時分針がありません。代わりに文字盤中央に1時間で一周するフライング・カルーセル・ムーブメントを、そして回転ディスクを設置。アイコニックなム脱進機のブリッジで分を、回転ディスクのプレートの矢印で時間を示す機構となっているのです。ちなみにフリークは英語で、変種などといった意味を持ちます。
なお、2001年当時からフリークにはシリコン製ガンギ車が用いられていました。今でこそムーブメントにシリコンを用いることは珍しくありませんが、2001年当時は世界初。その後シリコンが業界のスタンダードになりつつあることを鑑みれば、ユリスナルダンはただ奇抜なだけではないことがわかりますね。
そんなフリークの最新作は、その名もフリークワン。
2022年に発表されたスペシャルエディションのフリークSを彷彿とさせる外装ですが、2023年モデルはオリジナルのフリークに近い、オーセンティックなスタイルを醸し出します。
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ピンクゴールドのベゼルとブラックDLCコーティングが施されたチタンで形成された直径44mmケースは、いかにもダイナミックです!独特の切れ込みの入ったベゼルは、大胆ながら丁寧な仕上げが施されており、高級感も忘れていないのがさすがユリスナルダンです。チタンもエッジが効いており、多くのユリスナルダンウォッチに言えることですが、外装の加工に大きな手間とコストをかけていることが見てとれるのではないでしょうか。
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さらに文字盤なし、針なし、ついでにリューズも持たない構造は、一度目にしたら忘れられないインパクトを備えます。
一方で針はないとは言え、巨大な脱進機に取り付けられた矢印や、回転ディスクの矢印が大きく見やすいため、視認性は悪くありません。矢印にはスーパールミノバが塗布されているため、暗所での時間確認も問題ないでしょう。
この独自機構を実現するのは、自動巻きムーブメントU-240です。
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先ほどオーセンティックと述べましたが、機構は最先端技術が詰め込まれました。
腕の動きに合わせてゼンマイ巻き上げを行えるとてもポピュラーな自動巻き、フリークで採用されたのは2018年のフリーク ビジョン以降でした。それまではリューズを持たないゆえに(現在はリューズ搭載のフリークXもありますが)、手巻きフリークはケースバックを回転させてゼンマイ巻き上げを行う仕様が採用されていました。
しかしながら自動巻きであれば、定期的に身に着けることでこの作業を必要とせず、より利便性の高い逸品に仕上がっていますね。なお、自動巻きについてもユリスナルダンらしい技術力が見られます。ローターに4つのブレードを備えており、手首のわずかな動きでも高効率にエネルギー変換してくれることが特徴です。ちなみにユリスナルダン曰く、市場に出回っている巻き上げシステムの2倍の効率なのだとか!
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ヒゲゼンマイはもちろんシリコン製で、また特大脱進機はDIAMonSIL(ダイアモンシル)加工が施されます。
DIAMonSIL加工は2009年に同社によって特許取得された処理手法で、シリコンにプラズマ処理で合成ダイヤモンドを組み合わせます。これによってムーブメントの、耐摩耗性と耐衝撃性をいっそう向上させました。
ストラップはリサイクルラバーを30%使用した、BIWI社のブラックのラバー製「バリスティック」。
購入後、5年間の延長保証が適用されます。
まとめ
数ある高級時計ブランドの中でも、確かな時計製造技術と卓越した発想で、唯一無二の複雑機構を製造するユリスナルダンの、最新フリークについてご紹介いたしました!
文中でも述べているように、フリークは奇抜なだけでなく、世界で初めてムーブメントパーツにシリコンを用いた画期的なコレクションでもあります。ユリスナルダンの伝統と最先端を、存分に味わえるコレクションと言えるでしょう。
ユリスナルダン自体が少量生産なブランドのため市場にはなかなか出回りませんが、時計好きの方はぜひ一度フライング・カルーセル・ムーブメントの動きを目の当たりにしてみることをお勧めいたします。きっと、虜になるはずです。
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年