1990年代、時計界を席巻したデカ厚トレンドが落ち着き、再び薄型ブームがやってきた!
パネライやウブロなど、多くのブランドでボリューミーな時計がラインナップされ、体格に関係なくその屈強な時計を楽しむユーザーが増えました。
しかし昨今そのブームが落ち着き、再び薄型機械式時計が脚光を浴びています。
高い技術力が必要な薄型こそ、機械式時計の「真のスタイリッシュ」である、と。
でも、薄型ってドレスウォッチとか、シンプルなモデルばっかりじゃない?
薄型って高価なイメージ・・・
そんなユーザーのために、この記事では昨今の薄型時計事情、そして薄型でもかっこいいおすすめモデルをご紹介いたします!
目次
薄型時計事情① 見た目編
時計の厚みは、内部のムーブメントによって決まります。
防水モデルや耐磁力のある軟鉄製インナーケースの採用を除き、基本的にはムーブメントに合わせてケースが設計されるのです。
ムーブメントの厚さが3mm以下、ケース厚10mm以下だと薄型、ムーブメント厚7mm・ケース厚15mm以上だと厚型と一般的には定義されるのではないでしょうか。
左:ロレックス シードゥエラー116660/右:パテックフィリップ ノーチラス プチコンプリケーション 5712/1A-001
ケース径は同じ43mm、どちらもスポーツモデル。
左のシードゥエラーが厚さ18mm、右のノーチラスが8.52mmと、厚みが異なるだけでスーツの袖口からのぞく印象が全く変わってきますね。
薄型の機械式時計はクラシカルで、非常に上品。
細身の日本人にとてもよく合い、また大柄な方であってもスーツスタイルなどでさりげなく着けこなせば「上級者」なイメージをまといます。
薄型時計はその上品さゆえ、デザイン力や調和性が問われます。
文字盤やベゼルを華美にしすぎたりインダイアルなどを付しすぎるとうるさくなってしまうことも。
またフルーテッドやクルドパリなどドレッシーなベゼルがよく似合います。
ロレックス デイトジャスト
もちろん厚みある時計は「スポーティー」や「男らしさ」をよりよく表現でき、アウトドアシーンやカジュアルファッションでは抜群の存在感を発揮します。
しかし、シンプルさや上品さというのは、デザインの真骨頂的な意味合いを持つのではないでしょうか。
また、パテックフィリップのノーチラスを始め、最近ではスポーティーなデザインでも厚みを抑えたモデルが様々なブランドからラインナップされてくるようになりました。
薄型時計事情② ムーブメント編
時計の厚みはムーブメントで決まります。
ムーブメント、とりわけ自動巻き式を薄型にするにはブランドの高い技術力が必要で、かつて薄型であることはブランド力そのものでした。
高度な設計や組立、そしてメンテナンス技術が不可欠なためです。
もちろんクォーツ式であれば薄型が可能。
実際、華奢なデザインが好まれるレディース時計はクォーツ式が多いですね。
しかし、やはり時計は機械式でなければ!という方は多いもの。
近年のモデルは一部のメーカーを除き、手巻き式より自動巻き式が多くなっています。
身に着けていれば止まることがなく、精度も比較的安定する自動巻きは便利。
しかしゼンマイを巻き上げるローターというパーツを組み込む必要があるため厚みを持ちがち。
「薄型自動巻き式ムーブメント」は今なお限られたメーカーにのみ許された技法なのです。
早い段階で薄型自動巻きを実現していたのは、パテックフィリップやオーデマピゲなど名門が大多数。
そんな中で、「普段使い」の、高い耐久性を持つ薄型機械式時計製造にこだわり続けた中堅ブランドがあります。
それはピアジェ。
ピアジェは1874年の創業からムーブメント製造を手がけ、他メーカーから注文を受けていたこともある屈指のマニュファクチュールブランド。
「時計は薄型」であることを徹底し、ジュエリーウォッチや独創的なデザインウォッチはもちろん、スポーツモデルでも薄型のものを続々と発表してきました。
もちろんムーブメントは自社製。それどころか、1960年、世界最薄自動巻きムーブメント12pを開発。厚さはなんとたった2.3mm。
日本国内ではあまりその名を知られていませんが、実用性・耐久性優れた薄型時計製造の権威であることに間違いありません。
ちなみに、ムーブメントに厚みがあればそれだけ耐久性が高くなります。
しかしそこはピアジェ始め、老舗が居並ぶ時計界。
近年では技術開発目覚ましく、ピアジェでなくとも薄型ムーブの耐久性や耐磁性が格段に向上しつつあります。
「高価格」のイメージがあった薄型時計も、ピアジェやゼニス、そして日本のセイコーなどを筆頭に普段使いへと徐々に変遷を遂げました。
だからこそ現在、再び薄型の価値が見直されてきているのでしょう。
薄型時計事情③ スペック編
デカ厚が流行った背景に、時計にスペックが求められるようになった、というものがあります。
例えば高い防水性を持つダイバーズウォッチ。
ロレックスのサブマリーナが有名ですが、誕生当時の1953年は100m防水というと驚異的なスペックでした。
年月を経るにつれ100mが当たり前となり、300m、500m・・・
現在ではシードゥエラーのディープシーが3900mと、プロユースを想定したものへ。
防水性を始め、
耐磁性を備えた軟鉄製インナーケース、
ロングパワーリザーブ実現のためのツインバレル、
人気のフライバッククロノグラフなどなど・・・
スペックを高めるためにどんどん時計は大きく厚くなり、寧ろハイスペックがブランドの売りになりつつあります。
しかしこの分野でも近年では各社の企業努力により、スポーツウォッチの薄型化が進んでいることも確か。
その代表的な立ち役者は、薄型時計製造を貫くピアジェ。
こちらのピアジェのポロ Sウォッチ クロノグラフ G0A41006は、100m防水、クロノグラフ機能搭載モデルにもかかわらず厚さはわずか11.2mmしかありません。
ピアジェが新開発した極薄自動巻クロノグラフCal.1160Pを搭載しており、まさに薄型時計にこだわり続けたピアジェの傑作。
他にも、ジラールペルゴが2016年、機械式時計を搭載したロレアートを復活、スポーティーテイスト・しかも100m防水でケース厚約10mmの時計を発表しました。
出典:https://www.girard-perregaux.com/ja/heritage/laureato-81000-11-431-11a
時計は時刻を知るためだけのものではなく、ファッションやライフスタイルの一環として楽しむもの。
各ブランドが技術を高め、デカ厚、薄型、必須機能など選択肢が増えることは、ユーザーにとっては嬉しい風潮ですね。
薄型機械式時計 おすすめメンズモデル
ドレスウォッチはちょっと大人っぽすぎる、スポーティーな薄型時計が欲しい!
おしゃれで、でも普段も使えるドレスウォッチが欲しい・・・などという方に、おすすめモデルをご紹介いたします。
ケースサイズ、デザイン、スペックなど様々ですので、ぜひ自分に合った一本をお選びください!
①パテックフィリップ ノーチラス プチコンプリケーション 5712/1A-001
パテックフィリップ ノーチラス プチコンプリケーション 5712/1A-001
パテックフィリップのフラグシップ・ノーチラス。
個性的なオクタゴンフォルムに堅牢性を高めた「耳」と呼ばれるケースサイド突起がかっこよさとエレガントを同居させた一大コレクションです。
こちらはポインターデイト、ムーンフェイズ、パワーリザーブと様々な機能を付加した多機能モデルにもかかわらず、ケース厚8.52mmと非常にスタイリッシュ。
搭載されたCal.240PS IRM C LUは1970年代に発表され、「薄型自動巻きムーブの傑作」と呼び声高い240系。機能にのみ陥らないところはさすがパテック。非常に美しいムーブメントの動きをシースルーバックから垣間見ることができます。
高価格帯ではありますが、オールステンレスのため普段使いにも最適です。
②パテックフィリップ パーペチュアルカレンダー 5140P-013
パテックフィリップ パーペチュアルカレンダー 5140P-013
世界三大複雑機構のうちに数え上げられる永久カレンダー、ムーンフェイズ、月日や曜日、閏年などのポインターデイトを備えたコンプリケーションモデルながら、ケース厚8.8mmを実現したモデル。
古くから万国で愛される上品薄型ウォッチを製造し続けてきたパテックフィリップは、薄型自動巻きムーブメントでも先鞭をつけてきました。
シースルーバックからは薄型ならぬ「極薄」ムーブCal.240 Qの動きを楽しむことができます。
③ゼニス エリート ウルトラシン 03.2010.681/11.C493
ゼニス エリート ウルトラシン 03.2010.681/11.C493
強靭な名機と名高いエルプリメロをベースにしながら、クロノグラフを取り除き超薄型自動巻きを実現したゼニスの極薄モデルです。
搭載される厚さ3.81mmの超薄型ムーブメント“エリート681”は、ケースに収めた状態でも厚さはわずか7.6mm。
高い精度と品質を誇るゼニスの技術を投入して生み出された傑作であることがその外観からわかりますね。
薄さの割にケースサイズは40mmと、存在感もバッチリ。
自社ムーブメント搭載モデルでありながら、抑えた価格設定であることも魅力の一つです。
④ピアジェ アルティプラノG0A34116
あまり聞きなじみがないかもしれないピアジェは、時計業界ではムーブメントの製造で非常に有名で、多くのブランドから注文を受けてきました。
一貫して薄型にこだわり、ドレッシーからスポーティーまで、上品さを備えたモデルを数多く輩出、比較的手に届きやすい価格で提供されています。
そんなピアジェが誇るアルティプラノは、2017年で60周年を迎えるまさにピアジェの情熱そのもののようなシリーズ。
ムーブメントのパーツを薄くするだけでなく、歯車の距離を最小限に、そして中心軸を外したマイクロローターをムーブに埋め込むことなどにより実現しており、ピアジェの高い技術力がいかんなく発揮されます。
現行では厚さ2.1mmまで抑えたキャリバー430P、450Pそして438Pを開発。
トレンドに関係なく、ピアジェの薄さへのこだわりはまだまだ続きそうです。
⑤ジラールペルゴ ロレアート
出典:https://www.girard-perregaux.com/ja/laureato
質実剛健な機械職人。
そんなイメージの強いジラールペルゴは、完全自社製マニュファクチュールブランドとして有名です。
一時期倒産の危機に追い込まれるもなんとか回復し、2016年満を持して発表した薄型時計がロレアート。
ノーチラスやロイヤルオークのデザインを手がけたことでも有名なジェラルドジェンタの手腕を誠実に再現したモデルです。
スポーティーながら、ケース厚は10mm台。
秘訣は厚さ4mmに満たない自動巻きムーブメントにありますが、パワーリザーブ約54時間、毎時28,800ビートと信頼性に妥協はしていません。
⑥パネライ ルミノール ドゥエ 3デイズ アッチャイオ PAM00676
パネライ ルミノール ドゥエ 3デイズ アッチャイオ PAM00676
デカ厚ブームの火付け役のパネライが、薄型!?
そう思われた方も多いのではないでしょうか。
パネライは近年、ボリューミーで視認性高く、一目でパネライとわかるデザインアイデンティティはそのままに、ムーブメントを薄型化してきました。
こちらの2016年新作は、ケース厚わずか10.5mm。
歴代ルミノールの中で最も薄いモデルです。
ビジネスにもカジュアルにも、そしてどの年齢層にもおすすめ。300m防水。パネライ自社製手巻きキャリバーP.1000搭載。
ケース径は42mmと大型ですので、新たな「デカ薄」ブームが生まれるかもしれません。
⑦ジャガールクルト グランド レベルソ ウルトラスリムQ2788570(277.8.62)
ジャガールクルト グランド レベルソ ウルトラスリム Q2788570
ジャガールクルトの薄型ラインとしてはマスターシリーズの方が有名かもしれませんが、盤面がくるっと裏返るユニークなレベルソでも薄型モデルがラインナップされています。
搭載する手巻きCal.822は、ジャガールクルトの厳しい査定に合格した信頼性高い自社製ムーブ。
フォーマルシーンにも普段使いにもファッションの邪魔をしないシックなデザインが魅力です。
その他、ノモスやブルガリなど、普段使える薄型ウォッチがラインナップされています。
まとめ
20代、30代のうちはガッシリとしたスポーツウォッチを好む方が多いかもしれません。
しかし、ある程度の年齢を迎え、ライフスタイルやステータスを考えた時、やはり薄型を一本は持っておくと困らないように思います。
デカ厚にはデカ厚の、薄型には薄型の魅力があることも事実。
ご自身の体格やライフステージに合わせた一本を上手に選びたいものですね。