WEBマガジン, Watches and Wonders Geneva 2024 現地から速報!, 田中拓郎, ヴァシュロンコンスタンタン
速報!2023年ヴァシュロン・コンスタンタン新作モデルを発表!by Watches & Wonders Geneve
最終更新日:
出典:https://www.vacheron-constantin.com/gb/en/home.html
1755年の創業以来、時計製造の手を決して止めず、連綿と経営を続けてきたヴァシュロンコンスタンタン。その悠久の歴史と伝統を基調としつつも、一方で攻めの姿勢も忘れず、革新的な機構をコレクションも強みとしています。
こういったブランドの姿勢から、例年ヴァシュロンコンスタンタンの新作は華やかかつ独創的。パテックフィリップやロレックスが話題の中心になりがちですが、実は最もヴァシュロンコンスタンタンの作品を楽しみにしている方も少なくありません。
この記事では、そんなヴァシュロンコンスタンタンの2023年新作モデルをご紹介いたします!
目次
2023年ヴァシュロンコンスタンタン新作①オーヴァーシーズ ムーンフェイズ レトログラード デイト
出典:https://www.vacheron-constantin.com/gb/en/home.html
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径41mm×厚さ10.48mm |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | ブルー |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.2460 R31L/2 |
パワーリザーブ: | 約40時間 |
機能
防水: | 5気圧 |
予価: | 7,114,800円 |
2023年、ヴァシュロンコンスタンタンからレトログラード三部作(特別な超絶コンプリケーションであるレ・キャビノティエを入れると四種)がリリースされました!
レトログラードは表示機能の一種ですが、複雑機構に数え上げられることもあります。
一般的な表示だと文字盤を一周させる仕組みが多いですが、レトログラードでは針が終点まで到達すると、始点までフライバック。また始点から終点まで時を刻んでいくという仕組みになります。扇形のインジケーターを備えるため、デザインレイアウトの妙が求められるというのもレトログラードの特筆すべき点です。その意味でヴァシュロンコンスタンタンは、最高にエレガントながらユニークなレトログラードを打ち出してきました。
まず最初にご紹介するのは、みんな大好きオーヴァーシーズの、ムーンフェイズ レトログラード デイトです!
複雑機構に定評のあるヴァシュロンコンスタンタンですが、オーヴァーシーズコレクションではレトログラード表示は初と言います。
マルタ十字を思わせるユニークな、しかしスポーティーな、それでいてラグジュアリーなオーヴァーシーズが、レトログラードによってどこか特別な表情になっているのがご覧頂けるのではないでしょうか。
出典:https://www.facebook.com/vacheronconstantin/photos
ご存知オーヴァーシーズは、ヴァシュロンコンスタンタンが1996年より展開しているスポーツウォッチコレクションです。
近年ではラグジュアリー・スポーツウォッチの代表モデルの一つとしても数え上げられており、世界的に需要が集中していることから、二次流通市場では価格のプレミア化が進んでいることでも知られています。
そんなヴァシュロンコンスタンタンから新しいバリエーションとして、ムーンフェイズ×レトログラードの融合モデルが2023年新作として打ち出されたというわけです。
オーヴァーシーズ一番人気のブルー文字盤上に、レトログラード式のポインターデイトと6時位置のムーンフェイズ機構が、対になってレイアウトされていることが見て取れます。ヴァシュロンコンスタンタン曰く「月齢はデザインとして優れているだけでなく、このエレガントな時計に新次元の美しさをもたらす」と。31日を示した後、また1日の始点までフライバックするであろうブルースティール針が、このエレガンスを押し上げます。
出典:https://www.facebook.com/vacheronconstantin/photos
一方でエレガンス一辺倒ではないのが、さすがヴァシュロンコンスタンタン。
オーヴァーシーズはあくまでスポーツウォッチであることを思わせる、サテン仕上げを基調としたラグやブレスレットはいかにも堅牢です。一方でこの仕上げはあくまで丁寧であり、かつポリッシュ仕上げとのコンビネーションで、高級機としての風格を忘れていません。
厚さ10.48mmという薄型設計も、エレガントな印象をよりいっそう強めてくれることでしょう。
なお、扱いやすいステンレススティール製というのも特筆すべき点です。
防水性は50mと3針のSSモデルが150m防水であることと比べるとやや低めですが、オーヴァーシーズらしく耐磁性能も有しており、日常使いには十分です。
出典:https://www.vacheron-constantin.com/gb/en/home.html
搭載するムーブメントはCal.2460 R31L/2です。
既にパトリモニーのレトログラード×ムーンフェイズでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、ジュネーブシールを獲得した薄型自動巻きムーブメントというのみならず、利便性にも配慮された名機です。と言うのも、ムーンフェイズの操作はリューズとは別に設けられたプッシャーで行うことが一般的です。しかしながらヴァシュロンコンスタンタンはこのムーブメントで、リューズ操作一つでのゼンマイ巻き上げ・時刻合わせや日付合わせ、そしてムーンフェイズ修正を可能としました。
いちいち専用ピンを取り出さなくてはならない手間が減り、ユーザビリティ高い仕様でしょう。
なお、この美しい星と月が浮かぶ夜空のディスクで構成されるムーンフェイズは、122年に一度のみ調整を必要とする高精度をも誇ります。
シースルーバックからはオーヴァーシーズを象徴する、コンパスがエングレービングされたゴールド製センターローターが光ります。
出典:https://www.facebook.com/vacheronconstantin/photos
他のオーヴァーシーズ同様、工具いらずでストラップ交換ができるインターチェンジャブルシステムが搭載されています。
ステンレススティールの他、レザーストラップとラバーストラップが付属しているので、気分に合わせてカスタムできますね。
予価は7,114,800円とのこと。
なかなかのハイエンドですが、人気のステンレススティール×ブルー文字盤ということで、注目度の高さは必至。大量生産される個体ではないでしょうが、市場への出回りに期待したいところです!
2023年ヴァシュロンコンスタンタン新作②トラディショナル トゥールビヨン レトログラード デイト オープンフェイス
出典:https://www.vacheron-constantin.com/gb/en/home.html
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径41mm×厚さ11.07mm |
素材: | ピンクゴールド |
文字盤: | スケルトン |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.2162 R31 |
パワーリザーブ: | 約72時間 |
機能
防水: | 3気圧 |
予価: | 28,798,000円 |
2007年にパトリモニーの派生コレクションとして誕生したトラディショナル(2014年に独立コレクションへ)。
古典を再現したトラディショナルは、伝統的なレイルウェイサークルやドーフィン針、直線的なラグなどといったクラシック要素を盛り込みつつも、アヴァンギャルドな試みも取り入れることで、唯一無二の高級腕時計として名を馳せてきました。
2023年新作のトラディショナル トゥールビヨン レトログラード デイト オープンフェイスは、そんなトラディショナルのコンセプトをよく体現していると言えるのではないでしょうか。
ケースやドーフィン針はオーセンティックなままに、しかしながら大胆にスケルトナイズされた文字盤がとてもアヴァンギャルド!
出典:https://www.facebook.com/vacheronconstantin/photos
ポインターデイトのレトログラード表示は前項でご紹介した新作オーヴァーシーズと同じですが、背景に美しく装飾されたムーブメントのパーツが鑑賞でき、さらにフライバック時の内部の動きを見ることができるのでしょう。NAC処理でスレートグレーに仕上げられたパーツとのコントラストもよく映えます。
6時位置の、マルタ十字をモチーフとしたキャリッジによって演出されたトゥールビヨンも、この新作を特別なデザインに押し上げます。
トゥールビヨンは機械式時計の精度を司る脱進機と調速機を、キャリッジにまとめて、キャリッジごと回転させる複雑機構です。その美しくも楽しい動きから、フランス語で渦を意味するトゥールビヨンという名が付けられています。
キャリッジがある分どうしても高さが出てしまうものですが、ヴァシュロンコンスタンタンではこの2023年新作モデルのケース厚は、わずか11.07mmに収めました。複雑機構はえてして巨大になりがちなのですが、ケース直径41mmという常識的なサイズ感も見事です。
出典:https://www.facebook.com/vacheronconstantin/photos
文字盤のみならず、裏蓋側からも搭載するムーブメントCal.2162 R31が鑑賞できます。センターローターではなく、外周を動くペリフェラルローターによって、前述したNAC処理のスレートグレープレートやトゥールビヨンの機構を楽しめるのがまた素晴らしいですね。なお、パワーリザーブは約72時間です。
ヴァシュロンコンスタンタンの業界でのポジショニングを明確化するような、そんな2023年新作モデルではないでしょうか。
2023年ヴァシュロンコンスタンタン新作③パトリモニー レトログラード デイ/デイト サーモンダイアル
出典:https://www.vacheron-constantin.com/gb/en/home.html
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径42.5mm×厚さ9.7mm |
素材: | プラチナ |
文字盤: | サーモンピンク |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.2460 R31R7/3 |
パワーリザーブ: | 約40時間 |
機能
防水: | 3気圧 |
予価: | 9,970,400円 |
次にご紹介するのは、プラチナ製ケースを採用し、さらにサーモンカラーの文字盤を備えた、パトリモニー レトログラード デイ/デイトです!既にシルバーやブルー文字盤で登場していますが、プラチナ×サーモンピンクの組み合わせとなると、また違った魅力を湛えますね。
出典:https://www.facebook.com/vacheronconstantin/photos
こちらの新作レトログラードモデル、サンレイ仕上げが美しいサーモンカラー文字盤の表情で、さらに二つの扇形インジケーターが見受けられます。一つはポインターデイト。もう一つが曜日表示です。
1日、2日、3日・・・31日。あるいは月曜、火曜・・・日曜。ここに針が到達すると始点までブルースティール針がフライバックし、また再び時を進めていく仕様となります。パワーリザーブインジケーターを搭載する腕時計は結構増えてきましたが、二つのレトログラードを、ケース直径42mm×厚さ9.7mmというエレガントなサイズ感に収めるというのは、さすが伝統的に高度な時計製造を続けてきたヴァシュロンコンスタンタンですね。
さらに特筆すべきは、プラチナ製のケースとサーモンピンク文字盤の組み合わせでしょう。
出典:https://www.facebook.com/vacheronconstantin/photos
2022年にも同様の組み合わせでトラディショナル パーペチュアルカレンダー クロノグラフがリリースされて話題になりましたね。
レギュラーのパトリモニーはホワイトゴールドまたはピンクゴールドのラインナップなので、2023年新作モデルの特別感が引き立ちます(既存のパトリモニーの素晴らしさも言わずもがなですが)。なお、ピンバックルもプラチナ製です。
12時位置にはヴァシュロンコンスタンタンを象徴するマルタ十字が配されており、またホワイトゴールド製の力強い時分針と相まって、いかにも高級機然とした顔立ちを強調します。
出典:https://www.facebook.com/vacheronconstantin/photos
搭載するムーブメントは、自社製の自動巻きCal.2460 R31R7/3。
二つのレトログラードを搭載しながらもケース厚は10mm以下に抑えられており、またパワーリザーブ40時間となております。
マルタ十字が誇らしげに掲げられたオープンワークのセンターローター、そしてその奥に垣間見える、美しく仕上げられた各パーツが、ヴァシュロンコンスタンタンの雲上ブランドとしての手腕を感じさせます。
予価は9,970,400円。なかなか出回らない稀少モデルであろうことは想像に難くありません。しかしながらデザインといい機構といい、かなり時計好事家に刺さる逸品ではないでしょうか。
2023年ヴァシュロンコンスタンタン新作④レ・キャビノティエ デュアルムーン グランドコンプリケーション
出典:https://www.vacheron-constantin.com/gb/en/home.html
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径46mm×厚さ17.1mm |
素材: | ホワイトゴールド |
文字盤: | シルバー |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.2755 TMRCC QP |
パワーリザーブ: | 約58時間 |
機能
防水: | – |
予価: | 要問合せ |
ビスポークであるため一般市場には出回らないでしょうが、レ・キャビノティエからもレトログラード搭載の超絶コンプリケーションモデルが公開されたため、併せてご紹介いたします。
レ・キャビノティエとは、ジュネーブ伝統の時計製造技術を正当に受け継ぐ、ヴァシュロンコンスタンタンのビスポークサービス工房のことです。キャビノティエは18世紀、屋根裏部屋(キャビネット;キャビノティエ)を工房として時計製造に打ち込んだ職人を指します。「職人」とは言え、特に優れた技術やノウハウを有した彼らを指しており、敬意をこめてキャビノティエの呼び名が定着していったのでしょう。
この伝統を受け継ぐヴァシュロンコンスタンタンも、職人らへの敬意と継承を込めて、レ・キャビノティエを展開していることがわかります。
そんなヴァシュロンコンスタンタンのレ・キャビノティエは例年特別な超コンプリケーションを製造していますが、2023年は「デュアルムーン グランドコンプリケーション」!
出典:https://www.vacheron-constantin.com/gb/en/home.html
文字盤上には字分針の他、レトログラード式ポインターデイト、曜日、月、年、そして北半球・南半球の高精度ムーンフェイズが搭載されております。
なお、カレンダーはパーペチュアルカレンダーのため、時計が動き続けている限りは2100年までの手動修正を必要としません。
ミニッツリピーターが搭載されているのも、特筆すべき点です。
出典:https://www.facebook.com/vacheronconstantin/photos
さらに裏側にも、めくるめく複雑で精密な世界が広がっています。肉抜きされた部分からトゥールビヨンが鑑賞できることに加えて、星座が広がっているのです。
この星々は可動式のサファイアクリスタルに刻まれており、またその下部の固定文字盤と相まって、恒星時に従って回転を実行します。そのため時計を北に向けると、天文地平で区切られた、星座の性格な位置を示すとのことです。
この超絶な世界観を実現するのは、774個ものパーツで構成された手巻きCal.2755 TMRCCQPです。直径46mm×厚さ17.1mmのケースサイズに収められているのも素晴らしい点です。
レイアウトが絶妙ゆえに、文字盤側から見るとシンプルなデザインに収まりますが、複数の複雑機構が重なり合った、紛れもない傑作グランドコンプリケーションです。
一般販売される代物ではありませんが、一度は実機を見れないものか。そんな思いに駆られる2023年の特別ウォッチです。
2023年ヴァシュロンコンスタンタン新作⑤オーヴァーシーズ 34.5mm
出典:https://www.vacheron-constantin.com/gb/en/home.html
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径34.5mm×厚さ9.33mm(ベゼルダイヤは直径35mm) |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | ブルーまたはピンク |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.1088/1 |
パワーリザーブ: | 約40時間 |
機能
防水: | 15気圧 |
予価: | わかり次第掲載 |
レディース向けに34.5mm(ベゼルダイヤモデルは直径35mm)の、愛らしいオーヴァーシーズもコレクションに追加されたので、併せてご紹介いたします!
ピンクゴールドで二種、ステンレススティールモデルで二種が追加されています!
出典:https://www.vacheron-constantin.com/gb/en/home.html
ピンクゴールドモデルは、深みのあるブルー文字盤が追加されました。ピンクゴールド製の針・インデックスとマッチして、ラグジュアリーな印象が強まりますね。
出典:https://www.vacheron-constantin.com/gb/en/home.html
ステンレススティールモデルは、やはりブルーと、ベゼルダイヤのモデルで薄いピンク文字盤が追加されました。いずれも大人な可愛らしさを秘めていますね。
搭載するムーブメントは、小型の自動巻きCal.Cal.1088/1です。
インターチェンジャブルシステムによって、付属のレザーやラバーストラップに変更可能なため、ファッションに合わせて楽しみたい2023年新作です。
まとめ
ヴァシュロンコンスタンタンの2023年新作モデルをご紹介いたしました!
今年のテーマの一つは、レトログラードなのでしょう。ただ表示機構を変えたというのみならず、高級機としてデザインに調和する、見事なコンプリケーションを作り上げたところに、ヴァシュロンコンスタンタンの実力を感じさせられます。
2023年もヴァシュロンコンスタンタンの勢いは止まりそうもありません!
当記事の監修者
田中拓郎(たなか たくろう)
高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年