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なぜ金なのに白いの?ホワイトゴールド誕生の秘密と、多くの時計に使用される理由
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時計のケース素材にはステンレススティール・チタン・カーボン・金・プラチナといった様々な種類が存在します。
これらの素材にはそれぞれに特徴や魅力があり、時計愛好家の中にはケース素材から時計を選ぶ人もいるほど奥が深いです。
その中から今回取り上げたいのが宝飾時計によく使われる「18金ホワイトゴールド」について。
通称K18WGと呼ばれる18金ホワイトゴールドは他の金属には施さない「ロジウムメッキ加工」をするという特徴があります。
今回はなぜホワイトゴールドだけロジウムメッキ加工を施すのか?また、ロジウムメッキにはどんな利点があるのかを説明していこうと思います。
目次
①K18WG(ホワイトゴールド)とは?
金を使用した時計には「18K、14K、10K」といった刻印が施されていると思いますが、これは純金と他の金属の配合比率のことです。数字が下がれば下がるほど「金」の純度は下がっていき、他の金属の割合が高まっていきます。
- 24K=純度99.99%以上の「純金」
- 18K=金75%、残り25%に銀や銅といった金属を混ぜて作った「合金」
- 14K=金58.5%、残り41.5%の配合で作った「合金」
金は軟らかいため、通常は銀や銅、その他の金属と鍛錬されて合金として用いられるのが普通です。最も多く普及しているのは18Kで、加工しやすくなおかつ純度が高いこともあり、時計、アクセサリー、指輪など様々なものに使用されています。
そして、この18Kは「金75%、残り25%」という比率で作られることから、25%に使われる素材によって様々なカラーリングが実現しています。
主なカラーゴールドには以下のようなラインナップがあります。配合はブランドやモデルによって誤差があるため、配合比率は参考程度にお考え下さい。
イエローゴールド=金75%、残り25%のうち、銀と銅を5:5の同じ割合で混ぜたもの
ローズゴールド=金75%、残り25%が銅や銀、パラジウムなどを加えたもの(>銅の割合によって赤味が増減)
ホワイトゴールド=金75%、残り25%に銀やパラジウムなどの白色金属を加えたもの。
ここで現れたのがホワイトゴールド。つまり18KWGは18Kの金属比率で作られたホワイトカラーの「金」なのです。金なのに白いので、本当に18Kなのか心配になる方もいるかもしれませんね。
ホワイトゴールド誕生秘話
もともとホワイトゴールドは第一次世界大戦によって、ロシアからプラチナを供給することが難しくなったことをキッカケに作り出されたプラチナの代替品です。当時の時計界における白銀素材はプラチナだけだったので、新たなる白銀素材の開発は急務でした。
そこで、白羽の矢が立ったのが加工のしやすい「18Kゴールド」だったのです。
当初の18Kゴールドはイエローゴールドが主流だっため、ホワイトゴールドはあまりメジャーな金属として扱われてはいませんでした。ですが、徐々にローズゴールドや配合を変えたイエローゴールドが流行するにつれ、同じくカラーゴールドであるホワイトゴールドも代替品としてではなく「価値の高い18K」として評価を高めたのです。
現在の高級時計におけるホワイトゴールドのシェアはイエローゴールド・ローズゴールドと同等で、18K素材ではメジャーな存在になっています。
ホワイトゴールドはプラチナの代替品として作られましたが、今となっては時計素材としてプラチナよりも適しているといえます。その理由は値段がプラチナより安く、さらには軽くて硬いためです。加えて、プラチナよりもはるかに長持ちすることも利点でしょう。
ちなみにホワイトゴールドやプラチナといった白銀系素材はステンレススティールやイエロー・ローズゴールド素材よりもアレルギーが起こりづらいため、金属アレルギーを持っている人でも身に付けられる可能性が高いです。
②K18WG(ホワイトゴールド)ケースにロジウムメッキ加工をするのはなぜか?
K18WG(ホワイトゴールド)は金75%、その他25%に銀、パラジウム等を配合されて作られた合金ですが、よく考えると一つの疑問が浮かびます。
金が75%も入っているのに何で白いんだろう?と。
他のイエローゴールド・ローズゴールドはもともとの金の色味が残っていますが、ホワイトゴールドは金の色味が無くなっているため、ぱっと見た感じでは「金」ということが分かりません。
そのため、写真を見るとステンレススティールやプラチナと写真で見比べると、全部同じようにも見えるのです。
ホワイトゴールドは前述のとおり、銀やパラジウムなどの白色金属を混ぜることで銀白色の金を作り出しています。しかし18Kの場合、金に対して4分の1程度の配合率ですから完全に白色ではなく、薄い金色になります。これに白色金属の「ロジウムメッキ加工」を施すことで銀白色にしているのです。
③ロジウムメッキ加工とその利点
K18WG(ホワイトゴールド)は「より白くする」ためと「変色するのを防止する」ため、表面にロジウムメッキ加工を施しています。特にハリーウィンストンやカルティエなどの宝飾時計に使われるホワイトゴールドにはロジウムメッキが施されていることが多いです。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/ロジウム
ロジウムは高貴な銀白色の輝きを持つ優れた希少な金属です。採掘や精錬にコストがかかる上、金属を製錬する際のコストも高いため、非常に価値の高い素材としても知られています。
このロジウムは錆や汗に代表されるアルカリにも強い事が特徴で、さらに変色もほとんどありません。加えて、耐熱性や耐摩耗性にも優れているため、非常に丈夫な性質をもっているといえます。
そして、何よりも「鏡面反射率が高い」という点は見逃せないポイントです。
パテックフィリップ ノーチラス プチコンプリケーション ベゼルダイヤ 5722G-001
ロジウムは銀白色で美しく色味を持ち、まるで鏡のように反射します。この輝きは宝飾時計の宝石をより美しく見せ、高級感を演出してくれます。硬度もHv800~1000と非常に高く、メッキが簡単に剥がれることもありません。
- 鏡面反射により、装飾を美しく見せる
- 金属の腐食を防ぎ、見た目を綺麗に保つ
- 変色や錆・汗に強く、アレルギーを起こしにくくする
- 硬度を高め、耐久性を高める
④ホワイトゴールドケースが使われた時計の紹介
この記事の締めくくりとしてホワイトゴールドケースを採用した時計をご紹介致します。
カルティエ ミニベニュワール ベゼルダイヤ WB520025
カルティエ ミニベニュワール ベゼルダイヤ WB520025
バスタブをモチーフにした楕円形の滑らかな曲線が特徴的なミニベニュワール。
ベゼルに埋め込まれた大粒のダイヤを、ケース、ブレスレットに使用されたホワイトゴールドが上品に引き立てます。
ハリーウィンストン アヴェニューC ミッドサイズ 331/UQWW.MD/D3.1/D2.1
ハリーウィンストン アヴェニューC ミッドサイズ 331/UQWW.MD/D3.1/D2.1
多くのビルが連なるニューヨークの地平線から着想を得たアヴェニューシリーズ。
優雅なアールデコの時代を感じさせる長方形のケースにはホワイトゴールドを使用。ベゼルには世界有数の宝石商であるハリーウィンストンの上質なダイヤモンドがあしらわれています。
ショパール ハッピーダイヤモンド ベゼルダイヤ 20/4180
ショパール ハッピーダイヤモンド ベゼルダイヤ 20/4180
ショパールの代表的なモデルであるハッピーダイヤモンド。
ホワイトゴールドが使用された可愛らしい丸形のケースの中を、7個のダイヤモンドがくるくると滑るように回る遊び心溢れたモデルです。他とは少し違ったアイテムが欲しいという方におすすめです。
フランクミュラー トノーカーベックス インターミディエ ベゼルブレスダイヤ 2251MCD OG
フランクミュラー トノーカーベックス インターミディエ ベゼルブレスダイヤ 2251MCD OG
計算し尽くされた美しいカーブを描くトノー型ケースに、一目でフランクミュラーと分かるアイコニックなアラビアインデックスが特徴的なトノーカーベックス。
厳選された最高グレードのダイヤモンドが、ホワイトゴールド製のケース、ブレスレットを埋めつくほど使用された非常にラグジュアリーなモデルです。
ロレックス コスモグラフ デイトナ 116519LN
2017年発売の新作デイトナ”116519LN”は従来のステンレスケースではなく、ホワイトゴールドケースが採用されています。ベルトには「オイスターフレックス ブレスレット」が搭載されており、ラバーベルトの耐水性やスポーティーさを纏いながらも、メタルブレスレットに匹敵する強靭性・耐久性を誇ります。
まさにこのモデルは新時代のスポーツウォッチといえるでしょう。
パテックフィリップ カラトラバ 3919G
パテックの顔として広告イメージにも採用され、惜しまれながらも2006年頃に製造が終了した歴史的モデルがコチラ。生産が終了した現在でも高い人気を誇ります。3919は様々なラインナップが展開されましたが、その中でも1番人気だったのはホワイトゴールドです。
まとめ
ホワイトゴールドは非常に高い耐久性をもち、時計をいつまでも美しく保つことのできる優れた素材です。写真で見るとステンレススティールやプラチナと区別が付きづらいですが、実際に時計を手に取ってみると、その美しさを理解することができます。
店頭にお越しいただければ試着することも可能ですので、近隣にお住みの方は是非一度ご来店くださいませ。きっとその美しさを体感することができるはずです。
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年
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