世界中のセレブに愛され続けている高級時計ブランド、フランクミュラー。
1992年に創業されてから現在までに「トノーカーベックス・カサブランカ・ロングアイランド・ヴァンガード」といった数々の人気シリーズを世に輩出し、一世を風靡してきました。
そんなフランクミュラーには様々なユニークなモデルがありますが、その一つが「ワールドワイド」です。
今回はこのワールドワイドがどのようなモデルで、どのような特徴があるのかをご紹介していこうと思います。
目次
フランクミュラー ワールドワイドはどんな時計?
フランクミュラー ワールドワイドは文字盤に「世界の大陸」が描かれた美しいGMTウォッチです。
ただ大陸が描かれているだけではなく、全てのモデルにクロワゾネ技法(七宝焼き)が施されているのが特徴で、クロワゾネ特有の色彩感が独特の魅力を醸し出しています。
また、ケースにはフランクミュラーの象徴であるトノーケースが採用されており、一風変わったデザインでありながらもフランクミュラーらしさは失っておりません。
フランクミュラー ワールドワイド ヨーロッパ 5850WW 5N
ちなみにワールドワイドの種類は計5種類。ヨーロッパ・アメリカ・オセアニア・アフリカ、そしてアジアの計5大陸がモチーフとされており、それぞれに個性的な魅力があります。
その中でも1番人気は”アメリカ 5850WW”ですが、なかなか市場に出回ることがないため、現在は見かけることすら困難です。
文字盤はブルーダイヤルのみだけでなく、シルバーダイヤルのモデルも存在します。おしゃれでファッションにも合わせやすいので大変人気があります。
こちらはホワイトゴールドモデルを採用したモデル。ブルーのダイアルが美しく大陸の描写がよく映えています。
ワールドワイドは偉大なるレアモデル
ワールドワイドが作られたのは1992年の創業から3年後の1995年。若き日のフランクミュラーの情熱が込められた渾身の逸品として世に輩出されました。このモデルは工芸品とも呼べる美しさで当時大きな話題を生みましたが、その中でも若者に機械式時計の素晴らしさを伝えた功績は非常に大きいです。
当時の時計界は*クォーツショックによる冬の時代から脱却し、機械式時計が再び注目され始めた時期でした。クォーツショックは1970年頃に発生した時計界を揺るがす大事件でしたが、その影響は20年が経った1990年にもいまだに残っていたのです。
そして、この時期に生まれた若者にとっての時計は「クォーツ時計」であり、機械式時計には馴染みのない人がほとんどでした。
※クォーツショックとは日本の時計メーカー セイコーが安価で精度が高いクォーツ時計を開発したことにより、機械式時計の価値が暴落したこと
この世代にとってワールドワイドはクラシックな雰囲気を持ちつつも現代風なデザインを持つ最先端の時計に見えたことでしょう。それまで、クォーツ時計しか見てこなかった若者はワールドワイドの魅力に大きな感銘を受け、機械式時計そのものに興味を持つ人が増えた歴史もあります。
つまり、ワールドワイドは機械式時計の人気復活に貢献した偉大なるモデルなのです。
繊細な手作業で作られるワールドワイドは生産数が少なかったため、今ではすっかり時計マニア垂涎の逸品となっています。
ワールドワイドがもつ美しい文字盤の秘密
ワールドワイド最大の魅力は「文字盤の美しさ」でしょう。
そして、その美しさの秘密は文字盤全体に施された”ギョーシェ彫り“と”クロワゾネ技法“によって描かれた大陸図にあります。
ギョーシェ彫りとは?
ギョーシェ彫りとは18世紀にアブラアン・ルイ・ブレゲ氏が考案した繊細な装飾、及びその技法です。動旋盤という機械 を使い、文字盤に規則正しく波縞模様を 彫り込みます。
装飾技法熟練の職人が1本1本手作業にて仕上げるこの装飾は割とメジャーな技法ではありますが、美しく仕上げるためには高度な技術が必要です。
出典:https://www.franckmuller-japan.com/brandstory/chapter2/
ギョーシェ彫りが施された文字盤は施されていないモデルとは比較にならないほど美しいです。また、光の反射を抑えて文字盤の視認性を高めるという実用的な役割も持ち合わせており、非常に有効な効果を発揮します。
現代では機械で加工していたり型押ししてしまうモデルも中にはありますが、高級モデルのほとんどは今でも手作業で仕上げています。
■ワールドワイドのギョーシェ彫りは「ソレイユ」
ギョーシェ彫りの模様は一つだけでなく、様々な模様が楽しめるのも大きな魅力。三角形の尖った鋲が規則的に並ぶ「クルー・ド・パリ」、ルイヴィトンのバッグにも採用されている「ダミエ」といった種類が代表格ですが、ワールドワイドにはこちらも定番模様の「ソレイユ」が使われました。
「ソレイユ」は太陽光のように放射状に広がる模様です。他の模様に比べると文字盤が明るく映る為、華やかなモデルが多いフランクミュラーはこの模様を好んで使用しています。
クロワゾネ技法とは?
クロワゾネ技法はとは、エナメルを使ってデザインを作り、高温で焼き上げることで美しい発色を作り上げる時計装飾の中でも特に高度な技術が要求される技法です。一般的に時計界におけるクロワゾネは、エナメルによる彩色技法、及びクロワゾネが施された腕時計の文字盤のことを指します。ちなみに日本語では七宝焼きとも呼ばれ、もっと細かく言うと「有線七宝」にあたります。
その作り方は非常に繊細です。髪の毛ほどの細い金線をピンセットで操り、デザインの輪郭を作り上げます。そして細かい金線で囲ったエリアをセルといいますが、その中を何層にも分けて少しずつエナメルで埋めていくことがクロワゾネの特徴です。
出典:https://metiersdart.vacheron-constantin.com/
このセルが多くなるほど、様々な色を駆使した華やかな文字盤を作り上げることができますが、その分焼き上げる回数も増え、工程も複雑化します。加えて、色彩・薬品・原料によって溶解する温度が異なるため、均等かつ美しく仕上げる為には相当の経験と技術が必要です。
言葉だけではなかなか理解が難しい技法だと思いますので、是非一度上記の動画をご覧ください。この動画ではクロワゾネ技法を得意とするヴァシュロンコンスタンタンの作業工程を見ることができます。
ワールドワイドではソレイユ仕上げのギョーシェ彫りの上に、クロワゾネが施されました。上の写真を見ると大陸の輪郭が盛り上がっているのが分かりますが、この輪郭の中をエナメルで埋めて焼き上げて作られたのがワールドワイドの文字盤というわけです。
このように細かな部分まで目を向けると、如何にワールドワイドは繊細な技術によって作られたかが分かり、同時に大量生産できない希少価値の高いモデルであることを感じ取ることができます。
まとめ
ワールドワイドは発売されてから20年以上経過した現代でも時計マニアに熱い支持を受けている逸品です。職人が1本1本手作業で施すギョーシェ彫りとクロワゾネの美しさは他の時計では決して再現できない唯一無二の価値があります。
どの大陸が描かれたモデルも希少価値が高く、今後価格が上昇する可能性もあります。流通量が少ないため、もし時計店で見かけるようなことがあれば”即決”してでも手にしたい時計です。
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