「ヨットマスターIIって何がすごいの?」
「ヨットマスターIIの魅力について詳しく知りたい」
ロレックスを購入しようと思った時、恐らく多くの方がデイトナやGMTマスターII、エクスプローラーといった有名どころを挙げるかと思います。
しかしながら既にそれらは所有していたり、人と違った時計が欲しいと考えたり・・・そんな好事家たちは少なくないでしょう。
そこでお勧めしたいのが、ヨットマスターIIという選択です。
ヨットマスターの上位機種として2007年に誕生したコレクションで、ロレックスきっての多機能機でもあります。
一方でヨットマスターIIは、高級時計初心者が購入しよう!とは思いづらい時計の一つ。
職業柄、人様が着けている時計に目がいくのですが、ヨットマスターIIを身に着けていた方は、ここ数年で二人しか知りません。
ちなみにその二名は、無類のロレックス好きです。
そんなヨットマスターIIの魅力について詳しく知りたいという人は多いのではないでしょうか。
ヨットマスターIIは多機能なラグジュアリースポーツコレクションです。
この記事ではヨットマスターIIの魅力について、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
腕時計好きを魅了するポイントについても紹介しますので、ロレックスの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
ロレックス ヨットマスターIIとは
ヨットマスターIIは、冒頭でも述べたようにヨットマスターの上位機種として2007年に誕生した、比較的新しいコレクションです。さらに、スポーツロレックス(プロフェッショナルモデル)に属しますが、定番からは少し外れた立ち位置となります。
そもそも、基本モデルとなるヨットマスター自体が、ロレックス史の中では目新しいものとなります。
1992年、「ヨットクルージングを楽しむセレブに向けて」というコンセプトのもと、スポーツロレックスでありながらオール金無垢というゴージャスウォッチとして誕生しました。
なお、後年ステンレススティールとのコンビモデルがラインナップに追加されていきますが、ヨットマスターは時計業界に「ラグジュアリー・スポーツウォッチ(ラグスポ)」という理念を普及させるきっかけともなったロレックスです。
その15年後に誕生したヨットマスターIIもまた、ヨッティングをより充実させるためのコンセプト・ウォッチです。
※初期ヨットマスターII。当時は金無垢モデルが主流だった
しかしながらヨットマスターが優雅なヨット遊びにフォーカスされていたことに対し、ヨットマスターIIは本格的なヨットレースを念頭に置いたものとなります。
そのため、後述する「レガッタ・クロノグラフ」という、レース開始までのカウントダウン計測機能が付属していること。加えて直径44mm×厚さ約14mmという、シードゥエラーやディープシー並の精悍なボディを有していることが何よりの特徴となります。
それでいて、ヨットマスターならではの優雅なラグジュアリーも持ち合わせる・・・
そんな、一筋縄ではいかないロレックスがヨットマスターIIという存在です。
ロレックス ヨットマスターIIに搭載されるCal.4160(4161)とは
ヨットマスターIIを理解するためには、搭載されるムーブメントCal.4160について理解することが肝要です。
このムーブメントは、2000年にロレックス初の自社開発クロノグラフとしてデイトナ 116520とともにローンチされた、Cal.4130をベースに応用したものです。
Cal.4160のミソは
「レガッタ・クロノグラフ」
「リングコマンドベゼル」
「シンクロナイゼーション機能」
です。
ちなみにルイヴィトンやパネライも同様の機構のモデルをラインナップした過去がありますが、前者はクォーツ、後者は限定モデルであり、機械式かつレギュラー生産を実現したブランドはロレックスを置いてそうはないでしょう。
レガッタ・クロノグラフは、正式にはレガッタカウントダウンクロノグラフと呼ばれており、10分から1分までのカウントダウンが可能となった新機構です。
センターに時分針・クロノグラフ針の他、短い三角マークが付いた針をご確認頂けるでしょう。
この針が、10~0の目盛が刻まれた扇形インジケーターを指し示しながら、任意のカウントダウンタイムを計測します。クロノグラフ針と連動しており、クロノグラフの針が一周回るごとにカウントダウンゲージを進めていくのです(ちなみに6時位置はスモールセコンド)。
では、このカウントダウン針は、どのように設定すればいいのでしょうか。ここで効いてくるのが、リングコマンドベゼルです。
リングコマンドベゼルとは、ベゼル操作でムーブメント制御を行う機構です。ロレックスの特許テクノロジーで、スカイドゥエラーにも搭載されています。
ベゼルとムーブメントを連動させ、ベゼルでスイッチングを行うことで機能の切り替えが行われます。
ヨットマスターIIでは、ベゼルが通常位置にある時にリューズで時刻操作を行います。そしてこのベゼルを反時計回りに90度動かすと、リューズでカウントダウン針の操作が可能となります。
レガッタ・クロノグラフ専用のプッシャーや独立機構を必要としないため、機械もケースフォルムもコンパクトに収まるうえ、何より操作がわかりやすいのが良いですよね。
さらにもう一点忘れてはいけない機構が、シンクロナイゼーション機能です。シンクロナイゼーションとは、「同期」という意味を指します。
これまたロレックス独自機能なのですが、カウントダウンを計測している時、4時位置のプッシャーを推すとクロノグラフ針がゼロリセットし、プッシャーから手を離すとカウントダウンが再開します。ちなみにクロノグラフ針が30秒を超えている状態で上記操作を行うと、カウントダウン針が一つ(1分)カウントされ、30秒より前の位置であれば一つカウントがバックします。
つまり、このシンクロナイゼーションを使うことで、計測スタート後に公式シグナルに合わせたカウントダウンに修正が可能、ということです。「あ、公式とズレてる!」と思った時に、再度の設定が必要ない、ということですね。
このコンプリケーションの開発に、ロレックスは35,000時間(約四年!)かけたとか。
ちなみにCal.4160は、2013年にチューンアップしたCal.4161へと移行されました。
ただ、どちらも現行ロレックスに搭載されるブルーパラクロムヒゲゼンマイを採用し、従来品よりきわめて高い耐磁性能と耐衝撃性、そして耐久性を獲得したものとなります。そのため、性能が大きく異なるわけではありません。
ヨットマスターIIの操作方法については、以下の記事をご覧ください。
なぜ腕時計好きはロレックス ヨットマスターIIを選ぶのか?
レガッタ・クロノグラフを日常で使おう!そう思う方は少ないでしょう。
では、なぜ腕時計好きはロレックス ヨットマスターIIを選ぶのか?
その理由は、もちろん好みの問題もありますが、一つには「人と被らないロレックス」であること。そして「機能美と造形美が両立されている」こと。加えてスポーツロレックスの中では珍しく、「価格が高騰しすぎていない」ことが挙げられます。
まず、人と被らないということについて。
ロレックスは本当に人気のあるブランドです。世界で最も有名と言って過言ではありません。
そのため気になるのが「サブマリーナ被り」「デイトナ被り」等の、他人と着用モデルが同一になる、ということです。
現在、スポーツロレックスの相場が大きく高騰しており、多少のアップダウンはあれど、多くのモデルで定価を超えるプレミア価格です。
それは供給に比べて需要が圧倒的に高いことが一つの要因ですが、一方でロレックスは実用時計を輩出してきたブランドのため、生産量が全くないわけではありません。むしろロングセラーモデル等はよく出回っており、それ以上に欲しがる人が多い、ということを示唆しています。
そのためロレックス被りが起きがち。しかも、サブマリーナやシードゥエラー等、初代からデザインを大きく変えていないコレクションにとっては、より顕著な問題ですね。
しかしながら、冒頭でもご紹介したように、ヨットマスターIIを着用している、という方はそう多くはありません。
芸能人・有名人のヨットマスターII愛用者に目を向けてみても、デビッド・ベッカムさんや芸人の千鳥ノブさんと言った、時計好きに定評があるメンツばかりです。
つまり、自分だけの特別なロレックスを所有できる、ということ!
もっとも、ヨットマスターIIは定価自体が高いため、購入層が限られている、ということも意味しますが・・・
さらに、ヨットマスターIIは、機能美と造形美の両立が本当に素晴らしい時計です。
コンプリケーションと言うのは、とかくゴチャゴチャしがち。
それは文字盤デザインであったり、プッシャーであったり・・・もちろんそういった複雑なデザインにも味わいがありますし、ハイブランドの多くは絶妙な配置で端正に仕上げています。
ロレックスもまた、そんなハイブランドの一つなのでしょう。
リングコマンドベゼルを採用したことでフォルムはあくまでクロノグラフに則り、かつインダイアルが減らされたため時刻の視認性の邪魔をしません。
また、近年スポーツロレックスに採用されているセラクロムベゼルの光沢感が、爽やかなブルーと程よくマッチしています。
ケースのボリュームと併せてラグジュアリーに寄りすぎず、ロレックスらしいハンサムな顔立ちをお楽しみ頂けるでしょう。
ロレックス愛好家はロレックスのデザイン性の高さを評価することが少なくありませんが、ヨットマスターIIを一目見ると、その理由がよくわかりますね。
なお、前述の通りヨットマスターIIは上位機種&多機能モデルであるため、定価が高いです。
基幹モデルにあたるステンレススティール製Ref.116680の定価は、税込で1,975,600円です。デイトナ 116500LNの定価が1,387,100円ですから、ハイエンドであることがおわかり頂けるでしょう。
一方でヨットマスターIIは、他のスポーツロレックスほど相場を上げていません。
定番外しゆえか、ステンレススティール製であっても新品並行相場は190万円前後と、定価超えのプレミア価格・・・という領域ではありません。
金無垢やコンビモデルも同様に、定価割れの状態です。
そのため、上がりすぎた相場に辟易している昔ながらのロレックス愛好家にもお勧めです。
ロレックス ヨットマスターIIの主要モデル~ステンレススティールから金無垢まで~
最後に、ヨットマスターIIの現行主要モデルをご紹介して、筆をおきたいと思います。
なお、ヨットマスターIIは2017年にランニングチェンジしています。
リファレンスはそのままですが、主に針やインデックスの仕様が変わりました。
ただし、新旧の仕様違いで相場に大きな影響があるかと言うと、そのようなことはありません。
もっとも、コンプリケーションであるため、中古市場では新しい製品・コンディションの良い製品ほど高値が付けられる傾向にあります。
ヨットマスターII 116680
ケースサイズ:直径44mm×厚さ14mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:自動巻きCal.4161
防水性:100m
定価:1,975,600円
新品並行相場:190万円前後~
ヨットマスターIIの中で、最もスタンダードなオールステンレススティール製モデルです。
使いやすく傷つきづらいステンレススティールモデルを、まず購入候補に入れる方も少なくないでしょう。
新品並行相場は190万円前後ですが、中古市場でもそこそこ流通しています。しかしながらロレックスの定めか。中古でもそこまで価格は落ちておらず、新型は180万円台後半~、旧型でも180万円台~がだいたいの中古相場です(もちろん、状態にもよりますが)。
ヨットマスターII 116681
ケースサイズ:直径44mm×厚さ14mm
素材:ステンレススティール×エバーローズゴールド
ムーブメント:自動巻きCal.4161
防水性:100m
定価:2,686,200円
新品並行相場:250万円台~
エバーローズゴールドとロレックスが名づける素材を使用した、優しい色味のロレゾール(SSとのコンビ)モデルです。
エバーローズゴールドは言ってみればピンクゴールドなのですが、銅の含有率が高いピンクゴールドにありがちな変色を、独自配合によって抑えることに成功したとのこと。
最近ヨットマスターやデイトナ、GMTマスターII等、スポーツモデルのラインナップに追加されつつある素材なのですが、オシャレでどこかシックな色味が大人気!ロレックスの相場高騰の主役はステンレススティールモデルでしたが、最近ではこちらのエバーローズゴールドもまたジワジワ需要を上げており、シリーズによっては定価を大きく超えるプレミア価格となっているものもあります。
ヨットマスターIIにあしらわれたエバーローズゴールドのラグジュアリー・テイストはひとしおですね。スモールセコンドの外周やインデックスのフチ、針がエバーローズゴールドなのも、とってもオシャレ。
まだ116681はそこまで大きな価格高騰はしていませんが、流通量がそう多くはないため、欲しい方は見つけた時に買いましょう。
ヨットマスターII 116688
ケースサイズ:直径44mm×厚さ14mm
素材:イエローゴールド
ムーブメント:自動巻きCal.4161
防水性:100m
定価:4,605,700円
新品並行相場:450万円前後~
オール金無垢という、とにかくゴージャスなヨットマスターIIです!
ヨットマスターIIは直径44mmの大ぶりなケースも魅力の一つですが、重みのあるイエローゴールドを用いることで、重量260gとずっしり感を獲得しました。
こちらも大きく相場高騰はしていませんが、もともとの定価が高いこと。加えて流通量がそこまで多くないことから、購入層を選ぶかもしれません。
でも、色気溢れるメンズに着けて頂きたい逸品と言えるでしょう。
なお、掲載画像は旧型仕様の116688となります。
ヨットマスターII 116689
ケースサイズ:直径44mm×厚さ14mm
素材:ホワイトゴールド
ムーブメント:自動巻きCal.4161
防水性:100m
定価:5,094,100円
新品並行相場:470万円台後半~
ホワイトゴールド製のヨットマスターIIです!
白い輝きが美しく、イエローゴールドのような派手さはないものの、しっかりとした高級感がありますね。
ヨットマスターIIの爽やかなホワイト文字盤とよくマッチしています。
なお、ホワイトゴールド製の116689だけは、ベゼルがセラクロムではなくプラチナです。ヨットマスターの
126622(旧116622)にも採用されている、シンプルながらエレガントな仕様です。
こちらもなかなか流通していないため、気になる方はぜひ出会えた時にご購入頂きたいと思います。
なお、掲載画像は旧型仕様の116689となります。
まとめ
腕時計好きに選ばれるロレックス ヨットマスターIIについてご紹介いたしました!
ロレックスきっての多機能機で、しかも数々のギミックが仕掛けられているにもかかわらずラグジュアリー。そしてスポーティーさをも持ち合わせる。
そんな時計は、ヨットマスターIIを置いてなかなか無いでしょう。
デイトナとも、GMTマスターIIとも違った、自分だけのロレックスを着けてみませんか?
当記事の監修者
池田裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年