出典:https://twitter.com/ZenithWatches
日本時間の1月22日朝、LVMHグループに属するゼニスより、いち早く2021年新作発表の報が届けられました。さらに1月25日はウブロ,ブルガリとともに独自新作見本市LVMH Watch Week 2021にて、特筆すべき銘品をリリースしています。
新型コロナウイルスが我々の生活を一変させてから約一年。
時計業界の新作発表も、大きな方向転換を余儀なくされています。しかしながらこれまで当サイトでお伝えしている通り、各社の新作が魅力的で、かつ我々時計ユーザーが例年発表を楽しみにしている事実は変わっていないと言っていいでしょう。
暗いニュースも多い中、ゼニスから差し込まれた2021年新作モデルとは?
目次
2021年新作① ゼニス クロノマスター スポーツ
出典:https://www.zenith-watches.com/ja_jp
スペック
外装
型番: | 03.3100.3600/69.M3100 / 03.3100.3600/21.M3100 |
ケースサイズ: | 直径41mm |
素材: | ステンレススティール×セラミック |
文字盤: | 白または黒 |
ムーブメント
ムーブメント: | エルプリメロ3600 |
駆動方式: | 自動巻き |
パワーリザーブ: | 約60時間 |
機能
防水: | 10気圧 |
予価: | 1,166,000円(メタルブレスレットモデル) |
①概要
2021年一発目の新作は、クロノマスターからローンチされることとなりました!その名も「クロノマスター スポーツ」です。
クロノマスターは1994年からスタートした、ゼニスの人気コレクションです。基本的にはエルプリメロを搭載することとなり、同機特有の高性能面のみならず、横目インダイアルをデザインコードの一つとしてバリエーション豊かに仕上げていることがクロノマスターの魅力の一つです。
9時~11時位置にかけて文字盤一部を肉抜きした「クロノマスター オープン」や、ダイアル・インダイアルそれぞれでトリコロールカラーを形成したスタイル等は、ゼニスを象徴する顔と言っていいでしょう。
そんなクロノマスター、当然2021年新作でもエルプリメロが搭載されて発表されているのですが、従来のクロノマスターと大きく異なる点が散見されます。そう、内外ともに「スポーツ」と呼ぶにふさわしい逸品に仕上がっているのです。
その詳細を、ご紹介いたします!
②スポーティーなデザイン
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従来のクロノマスターと大きく異なる、と申し上げました。
その最たるものが、セラミックベゼルが取り付けられていることが挙げられるのではないでしょうか。
従来の定番クロノマスターのタキメータースケールは、インナーベゼルに記されていることがほとんどでした。そのためクロノグラフのレーシーさの中にもクラシック・テイストが強いデザインとなっていましたね。
しかしながら今作では、セラミック製のブラックタキメーターベゼルが取り付けられ、インナーにはミニッツサークルのみの表記となりました。
セラミックベゼルは、現在時計業界の一つのトレンドと言ってもいいかもしれません。
セラミックは傷や退色,紫外線に強いことに加えて、ステンレススティール等とは異なる質感を有します。また、独特の光沢を放っており、高級感を感じさせます。
こういった利点から、タキメーターのみならず、回転ベゼルやケース一部にデザインコードとして用いている高級ブランドは少なくありません。
今作のクロノマスター スポーツでも、セラミック製タキメーターベゼルが搭載されたことでクロノマスターに独特の味わいを付加することとなりました。
ちなみに既にご存知の諸氏も多いかもしれませんが、タキメーターとは平均時速を求めるための機能です。ロレックス デイトナやオメガ スピードマスター,IWC ポルトギーゼとクロノグラフの名作は枚挙にいとまがありませんが、大半のモデルの当該スケールは2時位置に400、6時位置に120、12時位置に60 の数字が刻まれています。
もっとも、メーターに関する厳密な規格はありません。モデルによってデザインは異なります。
しかしながら今作のクロノマスターのように、12時位置に10、つまり1/10スケールを採用しているブランドと言うのはきわめてユニーク。
この秘密は後述するムーブメント「エルプリメロ」にあるのですが、とにもかくにもクロノグラフ針はこのスケールに合わせて、10秒で一回転するという驚きの稼働を魅せることとなりました(もっともゼニスは2017年、1秒間でクロノグラフ針が一回転するエルプリメロ9004を発表しています)。
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文字盤のインダイアルは、ゼニスでよくみられるトリコロール。ベースは白または黒となっていますが、マットな質感となっているようです。
ケース直径は41mm。クロノマスターは38mmサイズと42mmサイズが従来のスタンダードでしたので、ちょうどよいサイズ感ではないでしょうか。
また、ストラップモデルもあるのですが、特筆すべきはメタルブレスレットモデルがリリースされたことではないでしょうか。
クロノマスターは革ベルトやファブリックベルトとの組み合わせが多かったものですが、よりスポーティーなメタルブレスレットがこの度ローンチされています。
出典:https://monochrome-watches.com/2021-zenith-chronomaster-sport-video-review-price/
ポリッシュ・サテン仕上げが施されたブレスレットはキリっとした印象で、ベゼルと合わせて近年のトレンドをよく落とし込んでいると言えるのではないでしょうか。
なお、バックルも観音開きから二重ロックに採用されています。
なんだか新しいゼニスを感じさせる一本ですね!
③「エルプリメロ3600」というムーブメント
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この度の新作はとかくデザイン面に目がいきがちですが、実はムーブメントも特筆すべき事項があります。
搭載するムーブメントは「エルプリメロ」。1969年から続く、傑出した自動巻きハイビート・クロノグラフムーブメントですね。ゼニスは時計ブランドでありながらも、ロレックスやパネライ,タグホイヤーといった名門にエルプリメロを供給した歴史をも有します。
そんなエルプリメロが2019年―エルプリメロ50周年―、大きな進化を遂げてゼニスから発表されることとなりました。その名もエルプリメロ3600。
2021年新作でも、このエルプリメロ3600が搭載されることとなったのです。
※ちなみに2019年発表時にエルプリメロ3600搭載モデルがリリースされているため、全く真新しい新作というわけではありません。また、その際にもセラミック製のタキメーターベゼルが採用されるに至りました。しかしながら前作は世界限定生産モデルであったため、レギュラー陣としては初ということになります。
では、このエルプリメロ3600は、いったいどのような機械なのでしょうか。
そもそもエルプリメロとは、36,000振動というハイビートで、1/10秒まで計測可能な高性能クロノグラフです。
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そしてエルプリメロ3600ではこのハイビートを活かしてクロノグラフ針を10秒で1周させるよう設計し、より高精度な計測を実現しているのです。そのため、タキメータースケールは10までの印字となりました。
かつて「ストライキング10th」と題して同様の機構が限定生産されましたが、当然、2021年はさらにアップデートを果たしています。
まず、パーツ数が314と、スタンダードなエルプリメロ400に比べるとわずかに少なくなっています。にもかかわらず従来より10時間長い約60時間パワーリザーブを獲得することとなりました。
そんな名機エルプリメロ3600は、お馴染みシースルーバックから鑑賞することが可能です。ローターは新デザインとなり、肉抜き部分が大きくなっていますね。
見た目にも美しく、機能面でもアップデートが加えられている。まさにエルプリメロの50年の熟成を感じさせる逸品ではないでしょうか。
なお、ゼニス2021年新作 クロノマスター スポーツは、文字盤が黒・白、ストラップタイプがメタル・ファブリックストラップとバリエーションでリリースされているようです。既に販売がスタートしており、SNSでは早くも話題になっています。
2021年新作② ゼニス デファイ エルプリメロ21 アーバン ジャングル
出典:https://monochrome-watches.com/zenith-defy-21-urban-jungle-hands-on-price/
スペック
外装
型番: | 49.9006.9004/90.R942 |
ケースサイズ: | 直径44mm |
素材: | グリーンセラミック |
文字盤: | スケルトン |
ムーブメント
ムーブメント: | エルプリメロ9004 |
駆動方式: | 自動巻き |
パワーリザーブ: | 約50時間 |
機能
防水: | 10気圧 |
予価: | 1,705,000円 |
日本時間で1月26日から開催された、LVMH Watch Week 2021。
ゼニスは先行して前述したクロノマスター スポーツをローンチしていましたが、大人気デファイでも新バージョンが追加されています。
その名も「アーバン ジャングル」。カーキグリーンカラーのセラミックケースに同色のストラップをあしらった、モダン・スポーティーな一本です。好きな方にはかなり刺さるデザインではないでしょうか。
デファイはもともと1960年代後半に製造していたモデルをインスパイアしており、「挑戦する」という意味を持ちます。とは言えかつては「定番外し」の立ち位置で、クロノマスターやエリート クラシックなどと異なりかなり独創的なスポーツラインといった立ち位置でした。
しかしながら2017年、コレクションの一新が図られます。
以降、デファイと言えばエッジの効いたダイナミックなケースに一体化したブレスレット,そして特徴的な文字盤デザインを携える、洗練されたスポーツラインへと生まれ変わりました。
ケースサイズは44mmまたは41mmと大振りで、これまでクラシックデザインに人気が集まりがちであったゼニスの中で、圧倒的な売れ筋モデルとして君臨することとなります。
素材や機構の他、文字盤にもバリエーションがあるのですが、デファイらしさの一つと言えば全面オープンワーク仕様。2021年新作デファイでも、同様のデザインが採られることとなりました。
出典:https://monochrome-watches.com/zenith-defy-21-urban-jungle-hands-on-price/
全体をスケルトナイズしているため機械が透かし見えることがデファイのアイデンティティにもなっていますが、さらに見られることを前提に美しくパーツが仕上げされていることも、人気の秘訣の一端でしょう。
当新作のアーバン ジャングルモデルもまた、ケースと同系色のブリッジが用いられることで、統一感のある仕上がりに完成されました。
さらに、デファイの特徴―これは2017年より前も同様に―のもう一つとして、ムーブメントにも並々ならぬこだわりを持ちます。
「エルプリメロ21」と題されたモデルに搭載されるムーブメントは、エルプリメロ9004。この伝説的なムーブメントは、2017年にデファイとともに世に送り出されました。
エルプリメロ9004の驚くべき機構は以下の通り。
◆100分の1秒計測を可能にした新世代クロノグラフ
◆360,000振動/時という超ハイビートクロノグラフ
◆クロノグラフから独立した36,000振動/時
とりわけ100分の1秒計測は、リリース当初は大きな波紋を呼びました。
通常のクロノグラフは60秒で針が一回転しますね。しかしながらエルプリメロ9004は0.01秒計測を行うため、クロノグラフ針が1秒間に1回転の稼働を実現しているのです。
ちなみにこのクロノグラフ機構は360,000振動/時という超ハイビートであることにも驚かされるでしょう。もともとエルプリメロはハイビート設計の自動巻きクロノグラフとして名を馳せた歴史がありますが、さらにその10倍という驚くべき高周波が採用されました。
これだけ高周波だと、膨大なエネルギーが必須となるものです。しかしながらゼニスはエルプリメロ9004でクロノグラフと時刻用の脱進機を分割し、それぞれで装備することとなりました。これによってお互いが干渉し合わず、クロノグラフ休止時は従来のエルプリメロのように36,000振動で時を刻みます(もっとも、36,000振動もハイビートではありますが)。この機構によって、クロノグラフ休止時にはパワーリザーブ50時間が維持されていることも特筆すべき点です。
出典:https://monochrome-watches.com/zenith-defy-21-urban-jungle-hands-on-price/
裏蓋側からはゼニスの象徴でもある、天頂の星に象られたローターを垣間見ることができます。
こちらもグリーンカラーに彩られているため、まさに「アーバン ジャングル」を楽しめる意匠となっていますね。
ちなみにストラップは表側がグリーンのファブリック,裏側はブラックのラバー仕様となっています。
予価は税込1,705,000円。従来のデファイ エルプリメロ21が140万円前後~150万円前後の定価(ラバーモデル)であることを鑑みると、かなり高めの設定かとは思います。しかしながら切削・加工が難しいセラミックを使っていることもあり、この定価に落ち着いたのでしょう。
2021年新作③ ゼニス パイロット タイプ20 シルバークロノグラフ
出典:https://monochrome-watches.com/zenith-pilot-type-20-silver-chronograph-hands-on-price/
スペック
外装
型番: | 05.2430.4069/17.I011 |
ケースサイズ: | 直径45mm |
素材: | シルバー925 |
文字盤: | シルバー |
ムーブメント
ムーブメント: | エルプリメロ4069 |
駆動方式: | 自動巻き |
パワーリザーブ: | 約50時間 |
機能
防水: | 10気圧 |
予価: | 1,155,000円 |
ゼニスと言うとこれまでご紹介してきたクロノマスターとデファイが代表的なシリーズとなりますが、パイロットウォッチも同社の歴史を語るうえでは欠かせません。
英仏海峡横断飛行を成し遂げたルイ・ブリレオ氏や、世界初の時速100km飛行に成功したレオン・モラール氏などなど・・・偉大なパイロット達の腕元で飛行のサポートをしたのが、ゼニスでした。ちなみに、文字盤にPILOTと表記できるのはゼニスだけだとか。
そんなゼニスが誇るパイロットウォッチのタイプ20より、非常に珍しいケース素材を用いた新作がリリースしております。そう、なんとシルバー925(スターリングシルバー)なのです!
ちなみにゼニスのパイロットウォッチにはいくつかの派生がありますが、「タイプ20」は伝統的パイロットウォッチのDNAを受け継ぐシリーズです。
そのため堅牢な大型ケースにハッキリとしたアラビア数字,太い時分針等、視認性を最優先した文字盤意匠が特徴的です。また、パイロットグローブを着用しながらでもスムーズに操作が行えるよう、オニオンシェイプのリューズが非常に大型になっていることもタイプ20の個性ですね。
そんなタイプ20から、なんとシルバー素材ケースがリリースされました!
通常、時計に使用される素材はステンレススティールが主流です。
ステンレススティールは堅牢性に優れており、傷や衝撃に強いという特性を持つことから、デイリーユースするにはちょうどよいということがあるのでしょう。
しかしながらシルバーは伝統的な素材です。
前述したルイ・ブリレオ氏やレオン・モラール氏が伝説を残した20世紀初頭、ジュエリーや細工,食器等にも用いられており、その優しい輝きは他の金属素材とはまた違った味わいを有します。この20世紀初頭のオマージュも兼ねて、ゼニスではあえて2021年新作にシルバーケースを復刻させたのでしょう。
出典:https://monochrome-watches.com/zenith-pilot-type-20-silver-chronograph-hands-on-price/
直径45mm×厚さ14.25mmの外装は圧倒的な存在感です。また、タイプ20らしいビッグサイズのオニオンシェイプリューズも健在ですね。
そして航空機体の金属パネルを模した文字盤意匠が、またヴィンテージパイロットウォッチとしての魅力を存分に引き立てます。これはやはり20世紀初頭の航空機体の計器を模しているとのことで、アルミ製ベースにリベット留めが施されており、他のパイロットウォッチとは全く異なる個性を獲得しました。
ちなみにアラビアンインデックスと針にはスーパールミノバ夜光が塗布されているため、暗闇でも高い視認性を確保しています。
搭載するムーブメントは、ゼニスのパイロットウォッチ タイプ20やクロノメトロに搭載されてきた、エルプリメロ4069。36,000振動のハイビート設計とパワーリザーブ約50時間という実用性の高さを誇ります。
とは言え当新作は。世界限定250本生産。なかなか市場には出回らないかもしれませんが、一度往年のパイロットウォッチを彷彿とさせる意匠を実機で見てみたいものですね!
まとめ
LVMH Watch Week2021を中心に公開されている、ゼニスの新作モデルをご紹介いたしました!
新しいクロノマスターやデファイ,往年の銘パイロットウォッチを彷彿とさせるスターリングシルバーケースのタイプ20など、やはり今年も名作で新作公開の火ぶたが切って落とされたようです。
デファイの発売時期やその他新作動向などが分かり次第、おってお伝えしていきたいと思います!
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年