「ゼニス クロノマスタースポーツって何がすごいの?」
「ゼニス クロノマスタースポーツの魅力について詳しく知りたい」
2021年1月、ゼニスが同年の新作モデルの中でもいち早くローンチしたクロノマスター スポーツ。
伝説的名機エルプリメロの、最新世代となるCal.3600(エル・プリメロ2)を搭載していること。
加えて往年の名作から範を取りつつも、モダン・スポーティーにまとめあげたデザインを有していることから、クロノマスタースポーツは「高級スポーツウォッチ戦国時代」とも言うべき現代においてなお、いっそうの輝きを放つ新作として語られています。
話題性の高さも相まって品薄が続いていましたが、じょじょに市場に出回り始めています。
ご購入をお考えの方も多いでしょう。
そんなゼニス クロノマスタースポーツの魅力について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
クロノマスタースポーツは、ゼニスの歴史と伝統を随所に感じられる銘品です。
この記事ではゼニス屈指の2021年新作クロノマスター スポーツの魅力について、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
価格と評価についても解説しますので、ゼニスの購入をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
ゼニス クロノマスター スポーツとは?
まず始めに、ゼニスのコレクションに加わったクロノマスター スポーツの概要についてご紹介致します。
クロノマスター スポーツ
素材:ステンレススティールまたは18Kゴールド
ケースサイズ:直径41mm×厚さ13.5mm
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:エル・プリメロ3600(エル・プリメロ2)
パワーリザーブ:約60時間
防水性:10気圧
定価:1,166,000円(SSブレスモデル)
2021年1月、ゼニスからいち早く発表された新作クロノマスター スポーツ。デザインにおいても、ムーブメントにおいても、時計業界では各誌・各サイトで大きく取り上げられることとなりました。
クロノマスター自体は新しいコレクションではありません。
1994年からの歴史を持つゼニスの人気ラインで、基本的にはエルプリメロを搭載しています。エルプリメロならではの高精度・高性能スペックのみならず、文字盤上の横目のインダイアルをデザインコードとして活かし、多彩なバリエーション展開を行っていることも当該コレクションの特徴の一つです。
そんなクロノマスターのスポーツラインとして登場した当新作。
ブラックセラミック製ベゼルにオープンではないトリコロール文字盤,そしてケースと一体型となったシャープなブレスレットが、これまでのクロノマスターとは全く異なるテイストを有します。
※従来クロノマスターは多くのモデルでアウターベゼルを持たず、クロノメーターのタキメータースケールは文字盤外周に記されていたこと。また文字盤の一部を肉抜きしてエルプリメロのテンプの動きを見せる仕様が同コレクションのアイコンの一つであったことが「全く異なる」と言われる背景としてあります(オープン仕様のシリーズ化は2010年代~ですが、オリジナルは2003年に遡れます)。
過去、トリコロールダイアルを肉抜きしていないオリジナルなエルプリメロ 36000VpHなども当然ながらリリースされていますが、近年のクロノマスターと言えばオープン仕様が最も有名なように思います。
さらにクロノマスターは革ベルトやファブリックストラップを付属することで、クラシカルな印象を持ち合わせたモデルが少なくありませんでした。もちろんメタルブレスレットもラインナップにあり、人気商品とはなりますが、新クロノマスター スポーツではデザイン・構造を一新しています。
どちらかと言えばクラシックなクロノマスターが、大幅モダナイズされたと初見では感じたものです。
しかしながら、実は新作クロノマスター スポーツは、ゼニスがこれまでリリースしてきたエルプリメロ搭載モデルのいくつかから範を取られています。
「いくつか」は本当に多岐に渡るようなのですが、代表的なコレクションを挙げると近年同社からのリバイバルが盛んな初期エルプリメロ「A386」およびエルプリメロの前身「A277」です。また、外装については1990年代のデ・ルーカ(DE LUCA)にインスパイアされたとゼニスは語ります(ともに詳細は後述)。
さらに特筆すべきは、2019年に発表されたエルプリメロの最新世代Cal.3600(エル・プリメロ2)を搭載していること!
この傑出したムーブメントについても後述しますが、同機の10秒で一回転する高速クロノグラフ針の動きに、息をのんだファンも多いのではないでしょうか。
エルプリメロ誕生50周年に限定モデルとして搭載された同機は、2021年のクロノマスター スポーツにおいて、量産機となったことを意味します。
出典:https://www.zenith-watches.com/ja_jp
バリエーションは、ステンレススティールモデルで黒・白文字盤の二種。それぞれメタルブレスレットまたはラバーストラップをラインナップしています。ラバーストラップはデファイなどにも搭載されてきたコーデュラエフェクト。コーデュラ素材はきわめて頑強であるため、クロノマスターのスポーティーな印象をより高めることとなりました。
また、発表から3か月後に開催された新作見本市Watches & Wonders Geneve 2021では、18Kローズゴールドケース×カーフベルトのラグジュアリーなモデルが追加されました。なお、ゴールドモデルは白文字盤のみとなっております。
ケースサイズは41mm、厚さは13.5mm。
定価はオールステンレススティールモデルで1,166,000円、SS×ラバーストラップモデルで110万円。ゴールドモデルは2,365,000円となっております(いずれも税込み)。
それでは次項より、ゼニス渾身のクロノマスター スポーツについて、そのディテールをご紹介致します。
ここが凄い!ゼニス クロノマスター スポーツ
ゼニスのクロノマスター スポーツの素晴らしさ。それはブラッシュアップされた外観と、伝説的なムーブメントにあります。
それぞれをご紹介致します。
①モダンなのにトラディショナルなデザイン
近年、時計業界の多くのスポーツモデルが備えることとなった、セラミック製のアウターベゼル。
従来のクロノマスターはこのベゼルを持たなかったがゆえに、当新作でこれが採用され、大幅なモダナイズが図られたようにも思いました。また、外装のポリッシュ・サテン(ツヤ消し)仕上げのコンビネーションも、初見ではモダンな高級スポーツウォッチといった印象でした。
しかしながら前述の通り、クロノマスター スポーツは同社の往年の名作「A386」や「A277」、あるいは「デ・ルーカ」などに範を取られています。
A386については、既にご存知の方も多いかもしれません。なぜなら近年、ゼニスが意欲的にリバイバルを行っている名作の一つであるためです。
1969年、ゼニスは自動巻きクロノグラフ「エルプリメロCal.3019PFC」を発表しました。同年はホイヤー・ハミルトン・ブライトリング等がCal.11(クロノマティック)を、またセイコーがCal.6139を発表する等、自動巻きクロノグラフ元年とも言うべき年でした。今でこそ当たり前となったこの機構は、1969年以降花開いていくこととなります。
ゼニスは1969年1月10日と、他社に先駆けて同機構を発表しています。もっとも製品化は1969年の秋以降となっているため史上初の自動巻きクロノグラフについては諸説ありますが、いずれにしろゼニスが歴史的にクロノグラフに一家言持ってきたことに間違いはありません。なんせ、エルプリメロは当時から既に36,000振動(5㎐)の高速振動を実現していたのですから。ロレックスやパネライ,タグホイヤーといった名門ブランドもエルプリメロを搭載したエピソードは非常に有名です。
出典:https://www.instagram.com/zenithwatches/
そんな記念すべきエルプリメロはいくつかのモデルに搭載されましたが、そのうちの一つが上記画像のA386です(ちなみに同年にやはり初期エルプリメロとして発表されたA384やA385のリバイバルも行われています)。
インダイアルがシルバー・グレー・ブルーのトリコロールカラーとなっており、このアイコニックなデザインを1969ダイアルなどと呼ぶこともあります。また、4時位置のデイトやシンプルなバーインデックスもA386から搭載されることとなりました。
一方、外装フォルムや仕上げは1988~1996年に同社が製造した初のエルプリメロ搭載ダイバーズウォッチ「デ・ルーカ(DE LUCH)」にオリジナルを遡ることができます。
出典:https://www.instagram.com/zenithwatches/
もっとも外装については、従来のクロノマスターとそう異なるところは見受けられません。間延びすることのないラグやエッジの効いたケースライン、そしてポンプ式プッシャーや小さめのリューズなどはA386をも彷彿とさせます。ちなみにブレスレットも、1960年代当時、ゼニスにブレスレットを供給していたゲイ・フレアー社製のそれをインスパイアしているとのことです。
そしてクロノマスター スポーツ最大のモダンと思われたアウターベゼルもまた、実は往年の名作からのインスパイアでした。
エルプリメロの前身とも言われる「A277」です。1968年~1970年にかけて製造された、ダイバーズ・クロノグラフウォッチです。なお、A277は手巻きクロノグラフムーブメントが搭載されていました。
出典:https://www.instagram.com/zenithwatches/
こういった、ゼニスの歴史を彩るアイコニックなモデルたちが、2021年新作クロノマスター スポーツの精神を構成している、と。
ゼニスはクォーツショックによって余儀なくされた休眠期間はあったものの、紛れもない名門にして老舗の時計ブランド。ゼニスだからこそ打ち出せた、「懐かしくも鮮烈な新しさ」ではないでしょうか。
②特筆すべきはセラミック製ベゼル、そこから生まれるクラス感
モダナイズにも一役買いつつ、実はトラディショナルだったセラミック製ベゼル。
そう、やはり新作クロノマスター スポーツで特筆すべきはこのベゼルです。
傷や退色に強いセラミックを、最も外部要因に干渉されやすいベゼルに用いることは何もゼニスだけのお家芸ではありません。しかしながらこのセラミック製ベゼルを搭載したことで、これまでのクロノマスターにはなかったモダン・スポーティーな印象が加わったことは事実です。
独特の光沢があるため、ロジウムメッキが施されたインデックスと合わせて、高級機らしいクラス感も備えていますね。
ちなみにクロノマスター スポーツはケースサイズ41mmと決して小さくありません。しかしながらこのベゼルによって引き締められて、「大きさを感じさせない」「思ったよりもスタイリッシュ」といった声多数です。
前述の通りセラミック製ベゼルは現在では珍しくありませんが、ゼニスならではと言える特徴はベゼルのスケール。
クロノグラフはストップウォッチとしても用いることができますが、もともとはモーターレースなんかで走行距離と時間から平均速度を求めることを可能とした計器です。
多くのブランドのクロノグラフは専用針が1秒間に一回転するため、タキメーターのメモリもそれに準じた数値が印字されていました(例えば1キロ走行した際にクロノグラフ針が30秒の位置で泊まっていたら、時速120キロを示します)。
しかしながらエルプリメロ3600が画期的なのは、驚くべきことに10分の1秒という緻密な計測を可能としたこと!
ムーブメントについては次項でご紹介しますが、簡単に言うとクロノグラフ針が10秒で一回転することで、1秒計測から0.1秒計測の世界を実現したということです。そのため一般的なタキメーターメモリではなく、10分の1秒が刻めるスケール表示となっております。
キロメーターは記載されなくなりましたが、高速回転の動きに目を奪われる計器好きは少なくないでしょう。
なお、この10秒で一回転という軽快な稼働を行うクロノグラフ針。
A386では全体が赤く染めあげられていましたが、新作では赤みは先端部分に留まり、こちらもモダンな印象に。カウンターウェイトが星形になっていることと併せて、遊び心を感じさせます。なお、インデックス同様にロジウムメッキが施されています。
※ゼニスは英語で「天頂」を意味し、天空に浮かぶ星がブランドロゴとなっています。このロゴはカウンターウェイトや文字盤ロゴの他、リューズでも確認することができます。ちなみにエルプリメロはエスペラント語で「第一の」を意味します。
A386から受け継がれたトリコロールインダイアルは、3時位置が60秒計・6時位置が60分積算計・9時位置がスモールセコンドと配置されています。それぞれスネイル仕上げが施されているところも高級機らしい心遣いですね。
腕時計にクラス感を添えるセラミック製ベゼル。
41mmケースにポリッシュ・サテン仕上げのコンビネーション。
こういったモダンスタイルを持ちながらも、A386やデ・ルーカという往年の名作をインスパイアしたデザイン。
この新しくも伝統を感じさせる―すなわち、モダンなのにトラディショナルな新作だからこそ、クロノマスター スポーツは唯一無二の魅力を獲得したと言えるでしょう。
③エルプリメロ最新世代Cal.3600
出典:https://www.zenith-watches.com/ja_jp
もちろん外装だけに新しさが留まらないところも、クロノマスター スポーツが話題となった大きな所以です。
搭載するムーブメントに、エルプリメロの最新世代とも言うべきCal.3600が搭載されているのです。
繰り返しになりますが、このムーブメントは2021年が初出ではありません。2019年、エルプリメロ誕生50周年の節目に限定モデル「クロノマスター2」などで同時にローンチされています。
そして2021年、限定ではなくレギュラーモデルのクロノマスター スポーツに搭載されたということは、ゼニスがこの最新ムーブメントの量産化に成功したことを意味しています。
そんなCal.3600ことエル・プリメロ2、ベースはゼニスの基幹機としてお馴染みのCal.400です。
エルプリメロは1969年に登場した歴史ある自動巻きクロノグラフですが、特筆すべきはその基本設計を今なお大きく変えていないこと。
1969年当時から既に36,000振動というハイビートを実現していたのは前述の通りですが、さらに約50時間のパワーリザーブを備えていたことも驚きを禁じえません。
通常、テンプが高速振動するハイビート設計は、消費エネルギーも大きくなるためどうしても持続時間が短くなる傾向にあります。クロノグラフのような複雑機構を載せていればなおさらです。しかしながらエルプリメロは1969年―まだ自動巻きクロノグラフの黎明期―という時代に、既に十分なパワーリザーブとハイビートを両立させ、かつ今なお最高峰クロノグラフとしての地位を欲しいままにしている、と。
ハイビートならではのテンプの動きや機械が奏でるビート音によって、エルプリメロに魅せられていくものです。
一方Cal.3600では、基本設計は守りつつも大幅なアップデートが加えられています。
まずパーツ数が低減されていること。また、シリコン製パーツを導入したことも大きな特徴です。
さらには、従来4番車(ムーブメントの中でも、一秒間に一回転する歯車)でクロノグラフの駆動を担っていたのですが、ガンギ車にこれを求めるという設計に。ガンギ車は脱進機を構成する一つのパーツで、4番車に噛み合っています。ここから動力源を得るのみならず備わった二枚の中間車によって増速することで、10秒で一回転のクロノグラフ針を実現しているとのこと!確かに4番車より高速振動するガンギ車からトルクを得られれば、あのスピーディーな針の動きも納得できるように思います(もっともゼニスの特許機構であることは言うまでもありません)。
高効率な働きにより、従来品より10時間も延長した約60時間のパワーリザーブを獲得しました。
※補足すると、クロノグラフはエネルギー消費が激しい一方で、ゼンマイをもう一個用意する…といったことはなかなかしづらいものです。そこで多くのクロノグラフ機構では、4番車にクラッチを連結させることで稼働のオンオフを行い、必要な時だけ主ゼンマイからトルクをもらっています。しかしながらゼニスではガンギ車に大きな筒カナを搭載し、そこにクラッチを連結する構造としたことで、ガンギ車の運動がクロノグラフ秒針に伝達されることとなりました。
基本設計は変わっていないと述べた通り、昔ながらの水平クラッチ(クロノグラフの制御機構の一つ。近年の自動巻きは垂直クラッチが主流となっている)が採用されているため、シースルーバックからはクラシカルな意匠をお楽しみ頂けるでしょう。
ちなみにローターも肉抜きされているので、奥部まで堪能させてくれるのもさすがゼニスですね。
滑らかなプッシャー操作を可能とするコラムホイールの大型化(ブルーに彩られている)と合わせて、やはり「トラディショナルなのに最先端」といった趣を味わえるのではないでしょうか。
Column;エルプリメロってどんなムーブメント?
エルプリメロは世界初自動巻きクロノグラフのうちの一つとして。また、開発から50年以上の時を経てなお現役で活躍している伝説的ムーブメントとして高名です。
本稿でも言及していますが、ロレックスのデイトナやパネライのルミノールクロノグラフ。タグホイヤーのモンツァにウブロのスピリット・オブ・ビッグバンといった、数々の人気モデルにも搭載されてきたことから、いかに傑出したムーブメントだったかがおわかり頂けるでしょう。
そんなエルプリメロ、性能面もさることながら、復活劇においても非常にドラマチックと言わざるをえません。
実はゼニスは一度休眠しています。
と言うのも、1970年代、時計業界は安価で便利なクォーツ式時計のシェアが高まり続けていきました。
昔ながらの機械式時計ブランドは苦境に立たされることとなりますが、ゼニスもまた、そんな時代に翻弄されていくこととなります。ゼニスではクォーツ式時計の開発に着手するも、1971年にアメリカ企業により買収。以降、機械式ムーブメントの生産停止を余儀なくされました。
出典:https://www.facebook.com/zenithwatchesjapan
1975年、経営陣は伝説的名機エルプリメロの生産をも中止させます。さらに中止に留まらず、エルプリメロの金型や工具、図面の破棄をも命じられることに。
この指令に反したのが当時の技術者シャルル・ベルモ氏です。
氏は経営陣には秘密裡に、エルプリメロ製造にかかわる計画書や道具を、ゼニスのマニュファクチュールのグルニエ(フランス語で屋根裏部屋のこと)に隠します。
この英断が功を奏し、1978年スイス企業の手へとゼニスが渡った際、再びエルプリメロの製造を叶えることができたのです。つまり、シャルル・ベルモ氏がいなくては、現在のエルプリメロモデルはなかったと言えますね。
1980年代に入り、機械式時計が改めて評価され、再び市場のシェアを拡大していくこととなります。これがゼニスにとっては追い風となり、エルプリメロもまた栄光の歴史を再び刻んでいきます。同時代、ロレックスがデイトナの搭載機にエルプリメロを選んだのは、象徴的なエピソードですね。
1990年代にはゼニス自身もフラグシップのクロノマスターでエルプリメロを搭載させることで、自社コレクションの拡充、そしてブランディングを成功させるに至りました。
今でもゼニスはシャルル・ベルモ氏を「エルプリメロの守護者」と湛え、同氏の名前を冠した記念モデルをリリースしています。
ゼニス クロノマスター スポーツの価格と評価
最後に、クロノマスター スポーツの価格と実勢相場についてご紹介して、筆を置くこととします。
冒頭でご紹介したように、ステンレススティール製クロノマスター スポーツの国内定価は税込で1,166,000円、SS×ラバーストラップモデルで110万円となっております。傑出した高性能ムーブメントを搭載していることもあり、同価格帯のクロノグラフモデルの中でも良心的とさえ思える定価です。
一方、発売からしばらくは、定価を20~30万円程度上回る実勢相場を並行輸入市場では記録していました。
ゼニスにかかわらず、新作は往々にして「ご祝儀価格」とも言うべき高相場が、リリース直後は続きます。しばらくすると落ち着くものですが、ゼニスは今なお(2021年11月現在)白文字盤・黒文字盤ともに新品並行相場130万円前後~(SSブレスの場合)。依然として高値であることがおわかり頂けるでしょう。
まだ市場への出回りが限定的ということもあります。
Cal.3600が量産機になったとは言え、やはり内外ともに高級仕上げですから、大量生産というわけにはいかないものです。
加えて、クロノマスター スポーツは、リリース当初はロレックスのデイトナ 116500LNに雰囲気が似ているといったことでも話題になりました。
実際は類似点はそう多くないのですが(セラミックベゼルも、ベース文字盤とインダイアルの濃淡を変えることも、ブレスレットの中コマを美しいポリッシュに仕上げることも、現代クロノグラフのデザインコードとしては珍しくありません)、こういった話題性が逆にクロノマスター スポーツへの注目度をいや増し、人気に直結していると見ることもできます。実際、他の新作モデルと比べてもクロノマスター スポーツのお問合せはとても多いです。
さらにはゼニスの伝統や歴史を感じられるコンセプト,そして精度の高い加工によって構成された外装など、高級スポーツウォッチとして完成されいることも、発売からしばらく経てなお定価超えの実勢相場である背景に寄与していると考えられます。
いずれにせよ、実機を手に取って、針の高速回転を見てみれば、人気のほども「さもありなん」。
今後の出回り状況によって相場はまた変わってくるでしょうが、「高くても買いたい」といった購入マインドが伺える新作です。
まとめ
ゼニスが2021年に発表した、新作クロノマスター スポーツの魅力について解説致しました!
年明け、リリース画像を見た時は「ずいぶんモダンになったものだ」と思ったクロノマスター スポーツですが、実はゼニスの歴史と伝統を随所に感じられる銘品。最新世代のエルプリメロCal.3600を搭載していることも鑑みれば、2021年の時計業界を代表する新作の一つと言えるでしょう。
まだ出回りは限定的ですが、当店GINZA RASINでも入荷を頑張っていきますので、ぜひホームページをご確認下さい!
当記事の監修者
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年