日に日に暑さが増し、汗をかくことが多くなってきました。
腕時計は身に付けているものなので、汗や皮脂汚れが付着しやすくなっています。ケース本体にも汚れはついてしまいますが、一番汚れが目立つのは「ベルト」部分。特に革ベルトは水や汗、直射日光に弱いので、汗をたくさんかくこの時期は避けた方が無難です。
しかし、よりフォーマルな印象を与える革ベルトを好まれる方は少なくないと思います。確かに夏の使用には不向きな素材ですが、ちょっとした装着方法や日々のお手入れで、ベルトを長く使うことも可能です。
そこで今回は革ベルト・ラバーベルトのお手入れ方法をまとめてみましたので、是非ご参考にして頂ければと思います。
目次
革ベルトの寿命について
使用頻度や季節、お手入れ状況によりますが、一般的に革ベルトの寿命は1~2年ほどであると言われています。
1~2年使用して、傷んできたら交換してください。
装着について
ベルトはきつく締めず、人差し指が入るくらいの余裕をもってはめて頂けると、通気性がよくなります。
きつく締めると小穴はもちろん革ベルト自体も引っ張られて傷みも早くなってしまいます。
ぴったりフィットしていた方がお好みの方もいらっしゃると思いますが、ベルトを長持ちさせるためにゆったりと嵌めるようにしてください。
また、手を洗ったり水仕事をされる際には腕から外して水が掛からないようにして頂けるとより長持ちします。少々面倒ではありますが、持ちが変わってきますので、できるだけ外すようにしてください。
加えてガソリンや揮発性の薬品を使う際にも腕から外して、それらが掛からないようにしてください。
日々のお手入れ
汗や水で湿ったままの状態が続くと革ベルトにシミが出来たり、革の染料が腕や衣類を汚す原因になってしまいます。
時計を腕から外したら吸湿性の良いやわらかい布で水分を吸い取るように軽くふいてください。
このときに強く拭くと色が落ちたり艶が無くなる場合もありますので、できる限り優しく拭きましょう。そして、拭いただけでは汗や水が乾ききらないので2~3日空けて使用するようにしてください。
また、早く乾かしたいからといって「ドライヤー」を使用するのはお控えください。金属と違って革は乾燥に弱く、ひび割れの原因にもなります。
急速に乾かさず、日陰で自然乾燥をさせるようにしてください。
革用のクリームを塗りこむことも効果的です。
保湿効果でひび割れを防ぐだけでなく、汗が入り込みづらくなり、臭いを防ぐといった効果もあります。
この際に使うクリームによって革が変色したりすることもありますので、一気に塗らず、少しずつ試してみて下さい。
塗り込むときにはベルトが完全に乾ききった状態でやりましょう。
洗浄について
使用しているうちに、日々のお手入れだけでは取り切れない汚れの蓄積が気になってくると思います。
時計がベルトを本体から取り外せるタイプの場合は水洗いをすることができます。
1. コップなどの容器にぬるま湯を入れ、中性洗剤を少量たらします。
2. ベルトを洗剤液の中に入れて手で汚れを落とすように揉み洗いします。
3. ベルトについた洗剤を水で濯ぎます。
4. 完全に乾くまで2日間ほど直射日光の当たらない風通しの良い場所で乾かします。
5. 仕上げに専用の革クリーナーを塗り、乾拭きします。
時計本体に水が入ってしまうと故障の原因となります。
高い防水機能のある時計でも経年劣化やリューズの閉じ忘れ等、不安要素がありますので、本体を外す方が安全です。ラップなどで保護をしても万全とは言えませんので、本体を外せない場合には無理に水洗いをしないことをお勧めします。
保管方法
使用しないときには直射日光の当たらない、通気性の良い場所に保管するようにしてください。
この際にはベルトは折り曲げないようにして裏素材に負荷が掛からないようにすると傷みにくいです。長期保存するとカビが出る場合があります。カビは一度発生してしまうと完全に取り除くことは難しいのでカビには十分気を付けて下さい。
革ベルトの素材について
これまで一般できなお手入れ方法をご紹介しましたが、革ベルトの素材によって、水や汗による影響を受けやすいもの、反対に防水加工されたベルトもあります。
暑い季節には水や汗に強い素材のベルトを選んでみるのも一つの方法と言えます。
■カーフ
時計のベルトに使用されていることが最も多い素材です。
生後6か月から1年くらいの仔牛の革で、非常に柔らかい風合いを持ち、比較的手入れも容易です。
■コードバン
馬の臀部から取れる素材です。独特の光沢としなやかさを持ち、「革のダイヤモンド」と称されます。
牛革と比較すると水に弱く、やや手入れに手間が必要です。
■オーストリッチ
ダチョウの背中の革です。皮質は重厚で耐久性は強いものの、薄茶やキャメル色は汗の跡が残りやすく、暑い時期には向きません。
■クロコダイル
爬虫類の中でも革の王様と言われるワニの革で、東南アジア産のクロコダイルから取れる革です。四角形の鱗模様が美しく、水にも比較的強い素材です。
■スコッチガード加工について
フッ素系の樹脂を繊維表面に付着させ、強力な撥水性と防汚性を持たせる加工です。加工前の染め色に影響が出にくいのでもともとの革の風合いを楽しむこともできます。
ラバーベルトについて
暑い時期に人気のラバーバルトのお手入れについても触れたいと思います。
ラバーベルトはプラスチック素材のため、革ベルトのように臭いがこもりません。たくさん汗をかいてもラバーベルトの場合にはベルトに汗が吸収されず、臭いがこもることがない為、革ベルトで日々お手入れをしていてもどうしても臭いが気になる方にはお勧めです。
また、金属ベルトと比較すると重さが半分以下ですので、装いも気持ちも軽やかになります。涼しげなファッションを好まれる方には最適な素材です。
しかしながら意外とキズがつきやすく、ゴミもたまりやすいといった性質もあります。
白色や淡い色のベルトですと汚れや他のものからの色の吸着による色移りが生じることがありますので、清潔にしておくことが必要です。
お手入れ方法
日々のお手入れとしましては、革ベルトと同様に、外したら柔らかい乾いた布で拭いて乾かすようにしてください。
また、光による色褪せが起こりやすい素材ですので、保管する場所にも注意が必要です。
車のダッシュボードや窓のそばなど、直射日光の当たる場所には置かないようにお気を付けください。劣化の原因にもなります。
乾いた布で拭いてもどうしても汚れが落ちない場合には食器用の中性洗剤を使って落としてみて下さい。
この時、水が入らないように時計本体をしっかりとラップで包んで作業をします。
1.中性洗剤を5倍に薄めたものを少量柔らかいタオルにつけて拭いていきます。
ラバーベルトは傷つきやすいので、歯ブラシなどは使わず、タオルで優しく拭いてください。
2.汚れが取れたら水で濡らしたタオルで拭き、中性洗剤を落とします。
3.ドライヤーを本体から10cm以上離して乾かします。
まとめ
革ベルトにしてもラバーベルトにしても、素材の性質上「傷みや汚れの蓄積」は避けられません。お手入れにより長く持たせることはできますが、結局のところベルトは消耗品ですので、傷んできましたら早めに交換するのがベターです。
羅針ではベルトのみのお取り扱いもございます。スタッフがお客様にとってより良い方法をご提案致しますので、迷った場合にはまずはご相談ください。
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年
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