急に針の動きが遅くなってしまったり、動きがおかしくなったり、あるいは止まってしまったり…これは、クォーツ時計の電池交換のタイミングである可能性があります。
でも、いざ電池交換となった時、「どこに持ち込めばいいんだろう?」「値段はどれくらいかかるの?」「そもそも自分でできないかな?」
そんな風に思う方も少なくありません。
そこでこの記事では、腕時計の電池交換について徹底解説いたします。
目次
腕時計の電池交換。どこに持ち込む?価格はいくら?
いざ腕時計の電池交換をしようと思った時、どこに持ち込めばいいのかわからない…いくらかかるか不安…そんな風に思う方もいらっしゃるでしょう。
そこで、「持ち込み先」「電池交換の価格」についてご紹介いたします。
①持ち込み先
電池交換したい腕時計の持ち込み先として、一番のお勧めはその時計の購入店です。
安価な時計であれば購入店ではなくても対応してくれるケースが多く、価格も大抵数千円で済みます。
ただ高級時計の場合は他店で購入した時計のメンテナンスは断られることが多いです。そのため購入店に持ち込むのが一番確実な方法と言えます。しっかりとした時計専門店で購入したのであれば、独自保証が設けられていることも少なくなく、そういったお店は提携工房を抱えているもの。早ければ持ち込んだその日に電池交換を済ませてくれるでしょう。
また、メーカーへ直接依頼するのも安心です。電池交換の際は裏蓋を開く必要があります。詳細は後述しますが、一般的には「スクリューバック式」「スナッチバック式」等が裏蓋仕様に見られ、専用オープナーで開くこととなります。しかしながらメーカーの中には特殊な裏蓋を用いていることも。また、メーカー以外の器具で裏蓋が開かれた個体は「外部の手が加わった」を見なされ、正規メンテナンスの一切を断られてしまうケースもあるのです。そのため、メーカーは一番安心できる依頼先と言えるかもしれません。
それ以外に大手量販店等でも電池交換を行っています。ただ家電量販店やリサイクルショップはその時計に対して必ずしも知識が豊富というわけではなく、専門の技術者ではなく店舗のスタッフが電池交換を行うこともあります。
前述の通り電池交換は裏蓋を開くことで行われるため、時計の命とも言えるムーブメントが外気にさらされることとなります。しっかりと経験・ノウハウのある技師が手掛けないと、ゴミが入ってしまったり、外装に傷がついてしまったりすることも…!
その点、信頼できる購入店であれば商品知識があるため、メーカーに持ち込むか該当店舗の提携工房で行うかを提案してくれることでしょう。メーカーでの電池交換を希望する場合でも、購入店が時計専門店であれば、一度相談することをお勧めいたします。
②価格
では、電池交換は必ずメーカーに持ち込んだ方がいい…!とも、一概には言えません。なぜならメーカー正規メンテナンスは高額になるためです。
高級時計になれば4,000円以上かかることが多いです。
民間の時計修理店であれば、1,000円~、高級時計または特殊機構が付属したモデルだと2,000円~になります。
メーカーごとの電池交換費用
電池交換を正規メンテナンスに持ち込む場合、4,000円以上の費用がかかるとお伝えしましたが、厳密にはブランドによって大きく差があります。
ここでは主要メーカーの電池交換費用を記載いたしますので、参考としてご活用ください。
※価格は税込となります。また、推奨公示価格のため、パーツ交換などによっては別途料金が追加されます。
※一部国内対応不可モデルもあり、その場合は別途料金が発生します。
ブランド | 価格 |
---|---|
ダグホイヤー 3針/クロノグラフ | 9,900円 / 9,900円 |
オメガ 3針/クロノグラフ | 18,000円〜 |
ブライトリング 3針/クロノグラフ | 15,400円 / 26,400円 |
カルティエ 3針/クロノグラフ | 5,170円〜 |
ブルガリ 3針/クロノグラフ | 12,100円〜 |
ハミルトン 3針/クロノグラフ | 5,500円/7,500円 |
グランドセイコー 3針/クロノグラフ | 1,540円〜 |
シャネル 3針/クロノグラフ | 6,500円〜 |
ユンハンス 3針/クロノグラフ | 4,000円〜 |
ロンジン 3針/クロノグラフ | 4,400円 |
ブライトリング 3針/クロノグラフ | 6,600円〜/11,000円〜 |
メーカーによる電池交換を希望する場合、電池交換のみ可能なメーカーとメンテナンスも合わせて行うメーカーに分かれます。
電池交換のみであれば費用を抑えることができますが、メンテナンス込みの場合は1万円以上かかることが多いです。
腕時計の電池交換のタイミングはいつ?放置しておくとどうなる?
腕時計の電池の寿命は、だいたい2~3年程度。高級機や高性能機の中には5年~10年といった長寿命の個体も存在しますが、いずれにせよ末永く使い続けていくために電池交換は避けて通れません。
では、腕時計の電池交換は、どのようなタイミングで行えばいいのでしょうか。
一般的には運針が止まった時に行う方が多いと思います。
しかしながら高級機やソーラー電波時計を始めとした一部の腕時計には、電池交換が近づくと秒針の動きがおかしくなるものが存在します。「おかしい」と言うのは時刻の遅れ・進みが見られるわけではなく、秒針の運針が2秒に一回のステップになったり4秒に一回のステップになったりするのです。
これは、電池の電圧低下を示すものです。通常、クォーツ時計は1秒間に1回のパルス信号が電子回路に送られることで運針を果たしています。しかしながら電池切れを起こすとこの省エネのためにパルスを低減させ、間隔を広げて信号が伝送されます。
前述の通り、一部の時計に見られる機構ですが、故障と間違われやすいので覚えておくと良いでしょう。
なお、電池切れをそのまま放置しておくと内部で液漏れを起こしてしまい、ムーブメント全体に被害が及ぶ可能性があります。そのため電池が切れたら、早めに対処しましょう。
自分で時計の電池交換はできるの?
「時計の電池交換は自分でできますか?」
こんなお問合せを頂くことがあります。
裏蓋を開けるための専用工具をお持ちの方で、ご自身でおやりになる方も見受けられます。
専用工具とは、まず時計を固定するための保持器(上の画像をご参照ください)。
そしてケースオープナーが必要になってきますが、前述した通り裏蓋にはいくつかの種類があります。
まず防水性・気密性確保に適したねじ込み式のスクリューバック。裏蓋をケースにねじ込んだ仕様となり、ケースオープナー(側開器)が必要です。
また、裏蓋をケースをはめ込んだスナッチバックでは、「こじ開け」オープナーを用います。
裏蓋とケースがネジで止められた仕様だと、精密ドライバー等でネジを開きます。
ブレスレットやベルトを外してから行うため、バネ棒外しも必要になってきます。
※スクリューバック式オープナー。ひねるようにして開ける。
これらを、経験のない方が用意したり、実際に扱うのは大変です。
ムーブメントを外気に晒すことになるため、ゴミや塵といった異物が混入してしまうリスク。誤って落下させて、ムーブメントにダメージを負わせてしまうリスク。オープナーで開閉を行ったりブレスレットを外す際、外装を傷つけてしまうリスクが考えられます。よほど慣れている方でない限り自分で電池交換をするのはお勧めいたしません。
防水モデルとソーラー時計には注意が必要
電池交換を行う際、防水モデルとソーラー時計(ソーラー電波時計含)は特に注意が必要です。
防水モデルは裏蓋とケースにパッキンが仕込まれているなど特殊仕様となっているため、不用意に開けてしまうと防水性が著しく低下します。
同様に特殊機構ムーブメントも、個人では電池交換できないことがほとんどです。
これはソーラー時計にも言えることですが、汎用クォーツムーブメントと比べて複雑な機構をしているムーブメントは、一度蓋を開けると元に戻せなくなってしまい、かえって費用がかかってしまう場合があります。
繰り返しになりますが、電池交換は自分でやろうとはせず、購入店に相談したり、信頼できる修理店にお任せしましょう。
まとめ
クォーツ式腕時計の電池交換について解説いたしました。
腕時計の電池は通常2~3年、高級機や高性能機であれば5~10年スパンで交換の必要が出てくること。電池交換の費用は民間で1,000円~、メーカーで4,000円~であること。しかしながらご自身でやるには工具が必要だったり様々なリスクが考えられるため、信頼できる修理店やメーカーに依頼した方が良いことをご理解いただけたでしょうか。
大切な腕時計を末永く愛用するためにも、適切な対応を心掛けていきましょう!
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年