歯車の動きのみで閏年までも自動で日付合わせをする複雑機構「パーペチュアルカレンダー」。
機械式時計に興味を持つ方であれば、一度は憧れる機構だと思います。
ただ、その複雑さ故に「止まったら合わせるの面倒なのかも・・・」と、躊躇されている方も少なくありません。
そこで今回は”パーペチュアルカレンダー”の時刻の合わせ方について解説致します。
モデルにより多少の違いはありますが、基本的な合わせ方を覚えておけば応用が効くので、この機会にぜひ覚えましょう!
目次
各種インダイヤルについて
今回は参考モデルとして、フランクミュラートノーカーベックス パーペチュアルカレンダーを使いながら学んでいきます。
文字盤には4つのインダイヤルが配されており、それぞれが独立した機能を持ち合わせます。
- 12時位置は月とうるう年
- 3時位置は日付
- 6時位置はムーンフェイズ
- 9時位置は曜日
12時のインダイヤルには月表示の内側に小さい円でB.1.2.3の数字が記載されていますが、これは今年が閏年から何年目であるかを表示しています。
“B”が閏年となるため、矢印が1を示す場合は「1年目」ということになります。
パーペチュアルカレンダーの時刻の合わせ方
では、さっそく合わせていきますが、その前に爪楊枝(または専用の調整ピン)をご用意ください。
今回は2019年11月20日(水)午後1時30分に時刻を合わせていきたいと思います。
【手順】
①まず、リュウズを引き出し、時分針を午前6時頃に合わせます。
なぜ午前6時に合わせるかは後ほど・・・
次に時計の9時側にある3つのボタンで使用して”月・日・曜日”を調整します。
②真ん中にある日付調整ボタンを合わせたい”20日”が表示されるまで複数回押し続けます。
③一番下にある曜日調整ボタンを押して合わせたい”WED(水曜日)”が表示されるまで複数回押し続けます。
④一番上にある月調整ボタンを複数回押して合わせたい”NOV(11月)が表示されるまで複数回押し続けます。
※ここで注意点・・・
2012年が閏年でしたので、2013年は”1”の位置になり、 2014年は”2″の位置となります。
今回は2019年に調整しますので、”3″に合わせましょう。
月の調整ボタンを押して月が変わっていくとうるう年を表示する小さな矢印が少しづつ進んで1⇒2と切り替わっていくので、その小さな矢印が3の位置になるまで進めて、月を示す長い針が”NOV(11月)”を表示させて下さい
⑤次は月齢=ムーンフェイズを合わせます。時計の右側に調整ボタンがあるので、これを押します。
・まず合わせたい日の直前の満月または新月を月齢カレンダーなどから見つけ出します。※月齢を調べる際には、こちらのページを参考にすると便利です。
・月齢カレンダーを見ると11月20日の直前は11月18日が満月である事が確認できます。
・直近が満月ですのでボタンを押して6時位置の月齢表示の金色の月が、ちょうど真ん中に来るまでボタンを複数回押してください。(新月の場合は月の表示が完全に隠れた状態です)
・次に合わせる11月20日は満月から2日後ですので、その日数分だけ調整ボタンを2回押します。
⑥リューズを一段階引き出して、合わせたい午後1時30分まで針を進めたらリューズを戻します
作業はこれで完了です。お疲れ様でした。
最後に①の工程で針を午前6時に合わせた理由について説明いたします。
午前6時に合わせる理由。それは各ボタンを押して調整するのに一番安全だとされているのが、午前6時頃と言われているからです。
例えば、午後9時に調整ボタンを押してしまったとします。この時間帯は各カレンダー機能の歯車が噛み合い日付などを変更する準備をしていますので、この時にボタンを押して無理矢理調整してしまうと、重大な故障を引き起こす原因となってしまうのです。
代理店のサービスセンター担当の方から、保証期間内に起こる故障の原因の上位だと伺った事があります。
工程を文章にすると面倒に思えますが、一度流れを覚えてしまうとさほど難しいものではありません。
ただ、時計によって表示されている機能・調整ボタンの配置などは様々ですので、操作の際には付属の説明書を必ずご確認ください。
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年
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