「腕時計にはどんなバックルがあるの?」
「自分の時計に合ったバックルはどれ?」
バックルは、簡単に言うと時計のベルトを固定するための留め金です。
さらに、ピンバックル(尾錠)やDバックル(フォールディングバックル)など、いくつかの種類があります。
腕時計のバックルについて知りたい方は多いのではないでしょうか。
バックル選びによって腕時計の使用感は変わってきます。
この記事では腕時計のバックルについて、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
ピンバックルとDバックルの違いについても解説していますので、自分に合ったバックル選びで迷ったときはぜひ参考にしてください。
目次
時計のバックル比較①ピンバックル(尾錠)
腕時計に使われるバックルの種類は大きく分けて2つあります。
1つは「ピンバックル(尾錠)」そしてもう1つが「フォールディングバックル」です。
「ピンバックル」あるいは「尾錠」は、すぐにどんなものか想像がつきますね。
昔ながらの時計ベルトの留め金で、付属のピンをベルト穴に通して固定するタイプのバックルです。なお、四角い部分は尾錠枠、内部のピンはつく棒と呼ばれることもあります。
時計以外にもカバンやベルトなどにも使われており、現在販売されている革ベルトの多くはピンバックル。使い方も非常にシンプルとなります。
ピンバックルのメリットは、比較的リーズナブルなこと。
もし同一モデルの中にピンバックルとフォールディングバックルがあったら、ピンバックルの方が安いケースがほとんどです。シンプルな形状であるため設計も容易で、かつ使う素材も少ないので、製造コストが安いのです。
例えばゴージャスなゴールドモデルが欲しい、でもなるべく予算を抑えたい・・・そんな時はピンバックルタイプを選ぶのがお勧めです。
また、軽くてゴツゴツもしていないので、手首内側の負担が少なくなります。
見た目的には、クラシカルな印象が強まるのが嬉しいですね。実際、各ブランドではドレスウォッチや正統派モデルに付属されることが多いです。
ちなみにピンバックルは「シンプルすぎる」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は尾錠枠やピンの形状、あるいは素材でバリエーションがあります。尾錠幅とベルト幅が合ってさえいればご自身で別作品や中古品を購入してカスタマイズできるのも嬉しいですね。
一方のデメリットとしては、ベルトへの負担が大きいことです。
使う度に都度ピンをベルト穴に通しているため、穴が広がってしまいがち。穴が広がったままにしておくと、そこから切れたり(実際、ラバーは傷つきづらいが切れやすい)、ピンから外れてしまって危険です。
革やラバーにこだわりがある方は、買い替えが必要で面倒と思うかもしれませんね。
また、時計・ベルトを支えるのは基本的にピン一つ。後述するフォールディングバックルに比べて、時計を落下させてしまいやすいというデメリットも知っておきましょう。
時計のバックル比較②Dバックル(フォールディングバックル)
folding「折り畳み」という英語名が付いているように、フォールディングバックルはバックル内部にベルト(またはブレスレット)を折りたたむようにして収納し、固定するバックルとなります。
フォールディングバックルと言った時、何もベルトの留め金だけを指しません。と言うのも、メタルブレスレットの方で最初に普及し始めた経緯があるためです(もっとも、元祖フォールディングバックルはカルティエ サントスの革ベルトタイプと言われていますが)。
バックルには片開き・両開き(観音開き)、そしてDバックルとがあります。
そして片開き・両開きが、メタルブレスレットによく使われる仕様です。
左:片開き式バックル / 右:両開き式
対してDバックルは、主にベルトで用いられる留め金となります。
ちなみにDはDeproymentのイニシャルで、「展開するバックル」といった意味です。
前述のようにベルトを折りたたむようにして留めるのですが、ちょっと行程が複雑です。
もちろん一度覚えてしまえば簡単なのですが、ベルト先端を通す専用の枠にベルトを入れ(最初は結構強引にねじ込まないと入らないことも)、ご自身のお腕回りとちょうど良い位置を探します。
恐らく時計を腕にはめたままだと難しいので、外したり通したりを何度か繰り返しながら「ここ!」という位置を探すこととなります。
位置が決まったら折りたたみ部分を時計本体の反対側に倒し、さらに上部に留め具がついている方の折りたたみ部分をベルト方向に倒し込み、カチッと留めます。
外す時は留め具をまたカチッと外し、折りたたみ部分を上に持ってくることとなるため、開閉式留め具と呼ばれることもあります。
若干ややこしいと思われるDバックルですが、メリットは盛沢山。むしろ近年ではジワジワとDバックルが時計のバックル市場のシェアを広げつつあります。
なぜなら、ピンバックルと比べて、非常に実用性が高いため。
一度ベルトを通してしまえば都度ベルトを外す必要がないため、留め金部分の開け閉めだけで時計を脱着することが可能です。つまり、らくちん。
これは、ベルトが傷まないことにも繋がります。
ベルトを折りたたんでるなんて、早く傷みそうだけど・・・?そう思われるかもしれませんが、毎度毎度折り曲げるわけではないため、ベルトにとって負担が少なくなります。都度穴に通すピンバックルよりもずっと。
また、かなりしっかりと固定されますので、時計が落下しづらい仕様でもあります。ちなみにピンバックルのピンを穴に通す時、手が滑って時計を落としてしまった、なんてトラブルを聞いたことがありますが、Dバックルであればそのリスクはぐっと少なくなりますね。
なお、ピンバックル同様、あるいはそれ以上にデザインを楽しめるのがDバックルの魅力の一つです。
留め具の部分がブランドロゴになっていたり、スクエアやラウンドなど様々なフォルムがあったりと、見ているだけで楽しいものです。
一方のデメリットとしては、バックル自体にそこそこボリュームがあるので、どうしても腕回りがダイナミックな印象になってしまいがちなところです。
パソコン作業などをしていると、邪魔に思ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。
とは言え、これはスポーツウォッチとしては望むところ、な方も多いでしょう。
ちなみにパテックフィリップやオーデマピゲなどハイメゾンは、自社のベルト製品にマッチしたスタイリッシュなDバックルの数々を採用しています。
しかしながら、ピンバックルよりも製造コストがかかるため、価格が高くなってしまうのは避けられません。金無垢製だと、バックルだけで何十万・・・なんてこともありますからね。
また、体型が変わってサイズを変更したい時、ピンバックルと比べるとちょっと大変です。
一度ベルトを枠から外して、またちょうど良いところを探して折りたたまなくてはなりません。
ピンバックルとDバックル、どちらが良いの?
ここまでピンバックルとフォールディングバックル(主にDバックル)をご紹介しましたが、では、いったいどちらを選ぶのが正解なのでしょうか。
これは使い方や好みによるところが大きくなりますが、前述の通り年々フォールディングバックルのシェアは高まっています。そのため実用性を意識するのであれば、こちらをお選び頂くのが良いでしょう。
一方でピンバックルが実用性がないかと言うと、そうではありません。長年親しまれてきた時計ベルトのバックルですし、何よりデスクでの作業が多い方にとっては、キーボードを売ったり物を書いたりする時、ピンバックルのシンプルさを重宝することも少なくないでしょう。
なお、「デザインで選ぶ」というのもオススメです。
例えばスッキリとしたデザインや、クラシカルな時計がお好きであればピンバックルを。
あるいはDバックルは留め金部分で如実に個性が出やすい特徴があります。これはズボンを留めるベルトにも言えることですが、グッチですとかルイヴィトンですとか、好きなブランドロゴのバックルのベルトを愛用している、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
上の画像、右はパテックフィリップ、左はブレゲです。
時計のバックルは腕の内側に隠れてしまうことが多いかと思いますが、それでもそのブランドのファンにとっては堪りませんね。
「それでも何がいいかわからない・・・」そんな方は、ぜひ実際に試着してみましょう!
時計を購入する際にデザインや機能も大切ですが、モロに実用性にかかわってくるバックルの存在も、ぜひ気にしてみてくださいね。
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年